連載 私の教材開発物語 第6回
「メディアリテラシーの視点を深める」
佐藤 正寿
■NHKテレビ教育番組「体験!メディアのABC」
「体験!メディアのABC」というテレビ番組をご存知だろうか。
小学校5・6年生向けの、初めての本格的なメディアリテラシー教
育番組である。メディアリテラシー教育となると、教材の準備が大
変であった。しかし、この番組の登場により、その大変さは大幅に
解消される。それぐらい画期的な番組と私は思っている。
http://www.nhk.or.jp/abc/
今年度、この番組の実践協力員になった。番組を活用して、実際
に授業を実践し、その報告を行うのである。
私は一回目の「映像の合成」を担当した。4時間で合成写真を体
験するというものであった。
http://www.nhk.or.jp/abc/html/contents_01/contents_01_report.html
この学習での子供たちの意欲は相当のものであった。授業後でも
合成写真を家庭学習ノートに貼りつけてくるほどであった。
■ テレビの合成映像で教材開発できないか?
先の合成写真の授業というのは、合成写真を作成するだけではな
い。作成した上でメディアリテラシー的な視点を育てることをねら
いとしている。
子供たちの意欲ぶりを見て、ふと頭にひらめいたことがあった。
「合成写真」だけではなく、「テレビの合成映像」も活用して、さら
にメディアリテラシー的な視点を深めることができないかと。
一つの小単元は終わっているが、それにプラスアルファとして、
追加の授業を行ってみたいと考えたわけである。
テレビの合成映像は子供たちにとってはおなじみである。しかし
ながら、ふだんは何げなく見ているに過ぎない。そこにスポットを
当てるわけである。
■ 二つのコマーシャルを比較させる
テレビの合成映像として目をつけたのはテレビコマーシャルであ
る。子供たちが実際に見ている可能性が高い。しかも、おもしろい
内容のものが多い。さらには一本が短く15秒のものが多い。教材
としてうってつけである。
「子供たちに人気のある合成映像のコマーシャルを見せ、それを
分析させ、その効果を考える」……そんな授業を最初は考えた。
しかし、それではどうも深まりがない。子供たちの食いつきもそ
れほどではないと予想できた。どうしたらいいか。
そこで考えたのが、「2つの商品(同種類)の合成映像コマーシャ
ルを比較する」ということである。
商品はドリンク剤。一つのドリンク剤のコマーシャルは、合成映
像で小さくなった外国人が、サラリーマンとコミカルな会話をする
というもの。もう一つのドリンク剤のコマーシャルは、元日本代表
のサッカー選手が燃えているボールを蹴る(合成映像)というもの。
暗い映像と独特の歌が特徴的である。
「同じドリンク剤なのに、どうしてこんなに雰囲気が違うのか」
「合成映像を活用して、それぞれどんなイメージを出そうとしてい
るのか。」
「何のために、このような合成映像を使ったコマーシャルを作った
のか。」
こんな視点から、子供達のメディアリテラシー的な視野を深める
ことができるのではないか。そう考えた。
■ 授業の様子
実際の授業は次のような流れであった。
★単元名「合成映像CMの秘密をさぐろう!」
★授業のねらい CMの分析を通して、合成映像他の効果につい
て考え、CMに対する見方を深めることができる。
★本時の流れ
1 子供たちに人気CMについて発表を聞く
・ CM人気アンケート結果を発表する。合わせて、合成映像が使
われているCMについて確認をする。
・ そのCMについて、CM観察日記を書いている子の日記を紹介
する。
2 二つのCMについて、分析をする
・合成映像だけではなく、その他の工夫について考えさせる。
★1本目のCM
人気NO.1のドリンク剤のCM。小さい人がいて、サラリーマ
ンの人と会話をするもの。シリーズ物となっている。
「思ったこと、気付いたことは何ですか。」
・ どうしてあんなに小さくなるのか
・ どうやったら小さくなるのか不思議
・ なんで普通の人と小さい人を組み合わせているのだろう
・ 人を小さくするのはいい工夫
・ だれが見ても合成映像ということがわかる
・ みんなが見たくなるように工夫している
★2本目のCM
同じくドリンク剤のCM。独特の音楽で有名サッカー選手が炎の
ついているボールをけるもの。
「思ったこと、気付いたことは何ですか。」
・ なぜボールが燃えているのか
・ 曲がとてもおもしろい
・ コマーシャルの商品と関係がない
・ おりみたいなものをボールで破るのがおもしろい(合成)
3 CMで合成映像等の工夫を使う効果について考える
「合成映像だからできることは何ですか」
「それはどんな効果がありますか」
「これらはどんな感じの商品だと思いましたか」
といった発問で深めた。
ちなみに、どちらも同じ種類の商品。なのに、こんなにCMのイ
メージが違う。そのことを子供たちは興味を持って発言していた。
4 CM制作者の意図について考える
「何のためにこんなコマーシャルを作っているのでしょうか」
・ おもしろくて、みんなに噂されてできるだけ、多くの商品を買
ってもらうため。
・みんなに注目してもらうため
・ 商品を広めるため
・ 流行をつくるため
5 授業の感想を発表して授業を終える。
■ 今度は発信型でメディアリテラシー授業を
この授業で子供たちは、次のような感想を持った。
「合成映像は、私たちがひきつけられつい注目してしまうものばか
りだなあと思いました。それに私たちを楽しませてくれる事も分か
りました。」
「合成映像は、商品を買ってもらうために作っていることがわかっ
た。そしておもしろい。」
「合成映像は商品がうれるようにという願いが込められいるんだな
あと思ったし、同じのみものでもかっこいいし、おもしろいし、いろ
いろ個性があるんだなあと思いました。」
子供たちの合成映像の見方が深まったことがわかる。
現在は、分析するだけではない「発信型」のメディアリテラシー
の教材開発を構想中である。実際に自分が発信する立場に立つこ
とによって、メディアリテラシーの見方がより深まると思われるから
である。
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