2 オレゴン州の教育

(1) オレゴン州について

 オレゴン州は、アメリカ合衆国の北西部に位置している。州の面積の半分がダグラスモミ
等の森林で覆われており、その他にも海岸あり、平原ありとたいへん自然に恵まれている。
年平均気温は12度と気温は温和であり、草木は1年中緑色を保っている。

 州の経済は、林業・農業・観光業といった豊かな自然環境に依存した産業を中心に発展し
てきた。最近は、海外からの投資が活発となり、ハイテク産業を中心とした製造業が成長し、
産業構造の多角化が図られてきた。オレゴン州への投資の魅力としては、豊富で低廉なエ
ネルギーと水、質の高い労働力、環太平洋諸国との貿易の玄関口、州政府をはじめとする
行政機関等の積極的な企業誘致製作等が挙げられる。日本との貿易もさかんであり、穀物・
木材・パルプ等を輸出し、自動車およびその部品・電気機器等を輸入している。

 オレゴン州の日本への関心はきわめて高く、各種団体による日本関係の行事、フェスティ
バル等がよく開催されている。また、日本語教育の面では質量とも、国内では有数のレベル
である。

(2) オレゴン州の教育の現状

 先に述べたように、アメリカ合衆国の具体的な学校運営は、地区あるいは学校そのものに
委ねられている。オレゴン州も例外ではなく、同じ州内の学校でありながらも、一日の時間
数、単位数が異なる。つまり、地区の実態に合わせた教育が可能となるわけである。ただ、
我々が見た範囲においてはオレゴン州は二つの特徴を持っているように思われた。

 第1は、柔軟性に富む教育を行っているということである。

 中学校は高校では、数多くの選択教科が用意されており、生徒はその中から自分の能力や
興味に応じて自由にカリキュラムを組めるシステムの学校が多い。また、同じ教科でも何種類
かのレベルの違った授業があるので、能力に応じた教育が実践されている。小学校において
も、専科の時間を除いては、教科の授業時間は教師の裁量によって決めることができる。だか
ら、教える内容によって弾力的な運用が可能となるわけである。

 この柔軟性は、公立初等・中等教育だけにとどまらない。一般社会人でも、コミュニティカレッ
ジに通って単位を取得している人も数多くいる。特に、ポーランド・コミュニティカレッジのシルベ
ニア校の学生の平均年齢は32才という。学びたいときに学べるシステムであり、生涯教育が
浸透していることの証左であろう。このほかにも、日本にはないシステムとして、ホームスクーリ
ングの制度がある。これは、親が自分の子に学校教育と同じ内容の教育を施すものである。州
全体の1%がこの制度を利用しているという。このような権利を認めているのも大きな特色であ
る。

 第2の特徴としてあげられるのは、社会的弱者に対して教育を受ける権利を保障しているとい
うことである。

 たとえば障害児教育。障害を持った子どもは、就学年令に達すれば、障害の程度に関わらず、
その学区の小学校に入学することができる。そして学校は、その子どもが学習できる環境整備
を図る義務がある。地区で持っているスクールバスの中には、車いすのまま乗降できる装置を
備えているものもある。社会全体が人権の保障に理解を示しているこの国ならではのシステム
である。

 また、ここ数年増加しつつある海外からの移民者に対する教育制度も整えられている。その子
たちは英語が話せないので、ESL(English as Second Language)と言われる英語を特別に教え
る教育が実践されている。様々な国から移民してきた子たちなので、ESLの教師の他に他国語
のアシスタントがつく場合もあるという。

 そのほかにも、クリスティースクールという情緒障害児を扱う学級もあった。この学校は、アルコ
ールや麻薬などのために家庭が崩壊したり、家族から性的、肉体的、精神的虐待を受けて情緒
障害になった子たちが寮生活をしながら学んでいた。アメリカ社会特有の背景がそこにはあるが、
そのような子たちにも援助の手をさしのべているわけである。

(3) 地区ごとに特色のある教育

 先に述べたように、アメリカ合衆国では、同じ州内の同じ地区の学校でも、その様子は異なって
いることが多い。
 ただ共通して言えることは、自分の地区の実態に合わせた教育を行っているということである。
たとえば、ポートランド市リッチモンド小学校の日本語教育を我々は参観した。世界でも難しい言
語とされている日本語をなぜ教えるのかという問いに対する答えは、「最初は他の小学校でスペ
イン語教育を始めた。そうしたら、『次は日本語教育を』と親が希望するようになったからだ」という
ものだった。このようなところにも、地区の特色を生かしていく姿勢が伺える。

(この報告は1993年に書いたものである。)

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