3 個性的な社会科授業
私自身の今回の研修の目的の一つに、「アメリカの社会科教育は、どのように
行われているか」ということがあった。ここでは、二つの社会科の授業例を紹介する。
(1) 具体的な作業学習を通して地形的な特徴をつかむ
5年生の社会科。アメリカ合衆国の地形についての学習である。
通常の授業であれば、印刷した白地図に山脈の名前を書き込んだり、どこに平野が
広がっているか考えたりといったような、いわば頭の中での作業が多いであろう。とこ
ろが、私が見た授業は具体的な作業を通して地図作りであった。
作り方は次の通りである。
@ 各自、4つ切り画用紙より少し大きめの板やダンボール箱を用意する。教師はそれ
にアメリカ合衆国の大まかな地図を書く。
A 各自が持ってきた小麦粉を水にとかし粘土のようなものを作る。子供たちは、地図
帳を見て山脈・川・平野を意識しながら立体的に小麦粉をつけていく。
B 小麦粉が固まったら、その白地図にペイントしていく。平野の部分は緑、川は青、山
脈は茶色というようにである。隣国のカナダ・メキシコには別の色をぬって、自分だけの
アメリカ合衆国の立体地図の完成である。
このような具体的な作業の過程で、子供たちは「この山脈は〇州と〇州にまたがって
いる」というようなことを自分で発見する。教師から与えられた知識と違って、そのようにし
て得た知識は、次の地理的な学習に応用されていくものであろう。
(2) 子供たちの追究意欲を喚起し、単元の学習中その意欲を持続させる
4〜5年のクラスの社会科。世界各国のことについて、一人が一国ずつ調べるという学
習である。
この学習は1ヶ月半にわたる長期的なものである。私が見たのは単元の最後の部分で
ある。子供達が今まで学習したことをもとにして、自分と等身大の紙の人形を作るというも
のである。その人形は、その国を表す衣装や動作を取り入れる。どの子も自分が調べた
ノートをもとにして、人形作りに取り組んでいた。
この単元の大まかな流れは、次の通りである。
@ 自分の名前や家にある物、家族の趣味などから、自分の調べる国を決める。
A その国の本を図書館で探し、自分なりに調べる。
B 学級で話し合いをして、自分たちでまとめる視点を方向づける。
C 各自、その方向づけに沿って、ミニレポートにまとめる。
D 学習のまとめとして、等身大人形にその国を表現する。
私が感心したのは、どの子も意欲的に学習活動をしている点である。ノートを見ても、自
分が家族から聞き取り調査をしたこと、本で調べたことがぎっしりと書かれていた。
1ヶ月半に及ぶ学習で、なぜこんなに意欲が持続するのだろうか。次の二つの理由が考
えられる。
一つは、単元の導入に、身近な存在である家族を対象としているからということである。
身近なものであれば、興味が増し、聞き取り調査もしやすい。家族も進んで外国に行った
時の写真や資料を出してくれたという。
もう一つは、教師が4枚にわたる単元の学習の手引きを出しているからである。その手
引きには、この単元でどんな学習をどのような方法でするかが書かれている。しかも、何
月何日まで聞き取り調査をするように期日が明示されている。だから、子供達は見通しを
持って、自力で学習することが可能となるのである。もちろん、このような手引きを作るため
には、しっかりとした単元構想が教師に必要である。改めて教材研究の重要性を自覚した
次第である。
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