この提案は、平成13年2月15日に筑波大学附属小学校で行われた「初等教育研修会」
で発表したレポート「よりよい生活人をめざす新家庭科教育」のうちの一部です。詳しいレポ
ートは「家庭科発見シリーズ」のサイトにあります。
また、内容の一部は他のサイトに掲載したものもあります。
提案 「家族のよさ・地域のよさ・日本のよさ」を伝える視点で
1 子供たちに「誇り」を持たせる
学習をする中で、子供たちに「家族のよさ・地域のよさ・日本のよさ」を感じ取らせる
ことが大切だと考えている。自分自身の生活の根本のよさを感じることは、「よりよい
生活人」になることに直結するものと思うからである。
「家族のよさ・地域のよさ・日本のよさ」を知ることにより、「家族っていいな」「自分
たちの地域や国にはこんなすばらしいことがあるんだ」といった「誇り」を持つであろう。
国際化の波が教育界にも押し寄せている。総合的な学習で国際理解教育も盛んで
ある。こういう時代だからこそ、「自分の家族のよさ」「自分の地域のよさ」「自分の国の
よさ」を堂々と語ることができる子供たちに育ってほしいと願う。
何も1時間、「家族のよさ」「地域のよさ」というように抽象的に考えさせる必要はない。
具体的な事例の中で子供たちが意識化するような手立てをとっていくことが大切と思う。
場合によっては、5分程度のちょっとした話でも可能である。
そのような観点から教材開発をしていくことが大切と考える。
たとえば、「よりよい生活人の見本、家族から『家庭での仕事のこつ』を学ぶ」「日本に
伝わるくらしの伝統行事をさぐる」といったようにである。他にも地域の特産物とその調理
法、地域にある住環境等、素材は幅広い。
2 例1「よりよい生活人の見本、
家族から『家庭での仕事のこつ』を学ぶ」
5年生最初の単元は「仕事、任せて大作戦」であった。
家庭での仕事について考え、実際に自分ができる仕事について実践してみるというもの
である。日常でお手伝いをしている子がほとんどであったが、そのお手伝い以外に1週間、
家の仕事を行うというものである。「玄関そうじ」「食事作り」「洗濯物の後片付け」等、子供
たちは自分の興味のあるテーマを選んだ。
自分が選んだ仕事については、ふだんしているわけではないので、当然わからないところ
が出てくる。そこで、次のように指示をした。
家族から「家庭での仕事のこつ」を聞きなさい。それをあとで「5年生・家族の仕事百科」
にまとめます。
家庭での仕事については、やはり母親や祖母はプロである。子供たちは1週間、家の人
から学んだことをもとに実践をした。そして、今まで気付かなかった「家庭での仕事のこつ」
を各自がつかんだ。
それを表に一人一人まとめた。全員分を閉じると、「5年生・家族の仕事百科」の完成で
ある。読んでみるとなかなかおもしろい。
お家の人へのお礼の意味もあって、授業参観(算数)の冒頭の時間を使い、その「仕事
のこつ20秒スピーチ」を行った。
子供たちの一人一人の仕事での奮闘ぶりや実際に道具を持ってきてこつを紹介する度
に、大きくうなずいたり、思わず拍手をしたりする家の人もいた。いい場面であった。
単元終了での感想では、「お母さんから、仕事のこつを学んでもの知りになることができ、
よかった」といったことが多く出てきた。
家庭での仕事はやはり「家庭での仕事のプロに」に聞くのは一番、ということを子供は実
感した。
3 例2「おせち料理の意味は?」
日本の伝統行事の中でも「おせち料理」は、子供たちになじみの深いものである。
しかし、その料理自体の知識はあまり家庭で話されることがないという。そこで、2学期最
後の家庭科の最初の時間を使い、「おせち料理の意味は?」という学習をした。(15分ほど)
1 おせち料理にはどんなものが入っていますか
(黒豆、伊勢海老、田作り、かまぼこ・・・等いろいろと出てくる。「あまり食べ
ないといった」声も聞こえる。)
2 実は一つ一つの料理にはいろいろな願いがこめられています。
・黒豆の「まめ」には、まめに「 」という思いがあります。「 」には何が入る
でしょうか。(すぐに「働く」という言葉が出てくる。)そうですね。健康に働
けることは今も昔も大切なことです。さらに関東地方では、「しわがよるま
で長生きできるように」ということで、黒豆をしわがよるまで煮込むそうです。
・数の子も縁起がよいとされています。何かに恵まれるからです。(子供)
それだけではなく、「よいことに数々恵まれる」とも言われています。
・栗きんとんも縁起のよいものです。漢字では、「栗金団」と書きます。「金」
がたまるとされています。
・かまぼこは、どこが縁起がいいのでしょうか。(色、紅白)
赤色は難しいことは退ける、白は清らかなことを表しています。
3 おせち料理はこのように一つ一つ願いが込められているのです。
★子供たちの感想
・私が知らなかったお正月のことがわかってうれしいです。子宝に恵まれるように、
私はお正月に数の子を食べようと思いました。
・正月は今まで何となくやってきたけど、こうして学習してみると由来がたくさんある
ことがわかりました。
・大掃除は何となくめんどうくさいと思っていたけれど、必要があったことがわかりま
した。
・ぼくはおせち料理をあまり食べないから今度は食べるようにしたいです。
感想からもわかるように、子供たちは改めて「おせち料理」に関する意味を知ること
ができた。
このように伝統行事やならわしで衣食住に関わることはけっこう多い。「お月見」「七
五三の晴れ着」もそうである。それに関わる学習を、月に一回ぐらい10分程度で行う。
子供たちは今まで知らなかったことが多いので、喜んで話を聞く。
私自身もこのようなことを伝えていくことの大切さを感じる。
4 「家庭・地域・日本」のよさを伝えることのメリット
「家族のよさ・地域のよさ・日本のよさ」を伝える視点を持つことによって、次のような
メリットがあると感じている。
・家族を含め、その道の専門家から直接学ぶことができるので、子供たちの学習意欲
が高まる。同時に、人から学ぶことは生き方が学ぶことにつながる。
・家族・地域の一員としての自覚や誇りが高まる。
・学習する対象が身近なことが多く、今までの生活経験の中で得た知識が活用できる。
そのような教材開発をするためには、まず教師自身が「家族のよさ・地域のよさ・日本の
よさ」を学ぶことが大切と考える。そして、教師自身が「おもしろい」「感動した」というもの
は、子供たちもやはり興味を持つ。そのような内容をたくさん蓄えることの必要性を感じる。
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