★この原稿は、「TOSS向山型社会26号」に書いたもの(一部修正)です。2001年に
「向山型社会科授業づくりQ&A小事典」(明治図書)の編集を一部お手伝いをしました。
その活用方法についての原稿です。

    活用方法は幅広い!QA事典

1 ここには指導のエキスがぎっしりと詰まっている。その通り実践するこ
 とにより、授業の腕が上がる。


 QA事典には指導のエキスが詰まっている。私は主として「V調べる力をつける
指導の原理原則」を担当した。執筆のために向山氏の著作を読む。その過程で、
何度も「まさに一貫した主張だ」ということを感じた。発問作り。討論の手立て。調
べる力を育てるための手立て。まさにどれも骨太である。それらは細かな指導方
法でも同じである。例をあげる。
 「資料を見せ、意見をノートに書かせるのには何分ぐらいがいいか。」
 それまで私は、資料の読み取りをさせる時には「この資料なら簡単なので4分」
「これは、たくさん書かせたいから8分」と資料によって変えていた。
 QA事典には、資料の読み取り時間についての具体的な数値が示されている。
 「資料を見せるだけなら三分、意見をノートに書かせるなら五分あたりが原則」と
いうように。
 この「五分間」という数字は他にも数箇所出てくる。そして、その「五分間」の意
味についても言及されている。また、この五分間に教師は何をすべきか。「途中で
いくつ書けたかをたずねること。子どもがノートに書く目安になる。」と書かれている。
 このことを知ってから、私は資料の読み取り時間はきっちりと5分にしている。また、
途中で「2つ以上書けた人?」といった問いかけを入れ、子供たちの様子を意識的に
見ることにした。
 その結果、次のようなことが見えてきた。
・5分間というのは子供たちにとって最適な時間であること。4分を過ぎると今まで張
 り詰めて書いていた子供たちのスピードもゆっくりとなる。
・常に5分間という時間を設定することで、子供たち自身が自分の書く量を自覚する 
 ようになる。「今回は5つ書けた」というように。これは、資料によって書く時間を変え
 ていたら自覚できないことである。
・「途中でいくつ書けたかたずねる」ことは、子供たちを追い込み、いい緊張感を生む。

 これらはQA事典を読み、その通り行ってみて初めて見えてきたことである。同時に
今まで資料の読み取りの時間を変えてきた方法がいかに我流であったかということを
実感した。

 また、このように授業に直接関わる部分だけではなく、「ここまで配慮していたのだ」
という部分も見られる。たとえば「水道局に行った子などを出させ、応対のしかた、お礼
の言い方を教える。」という部分。
 日常での細かな指導。この箇所を読んだ時に、改めて向山氏の実践を支える「大事
なもの」を発見した思いであった。「次の代の子に役立つお礼」を教師が意識する。それ
だけで、子供たちへの働きかけが変化する。私自身、「君たちだけではなく、君たちの
来年見学する君たちの後輩のためにも、しっかりとしたお礼をしなさい。」と子供たちに
言うようになった。

2 自分の理論的バックボーンとする

 私はこのQA事典の「U歴史授業の原理原則」が大好きである。社会科における自分
の立場を改めて考えることができるからである。Q11では、「どのような歴史認識を子ど
もたちに育てるといいのですか」という問いに、「前向きに、前進的にとらえるように育て
ることが大切である。」と答えている。また、「私たちは日本の教師なのですから、日本
人の立場に立ち、日本人のことを温かく見る。まずそういった視点を貫いていただきたい
のです。」という記述もある。
 私はこの立場、そしてこの視点に共感を覚える。そして、社会科教育の中でもっと、「日
本人の気概」に触れた授業を行うべきと考える。
 これはあくまでも歴史教育でのことである。だが、産業教育でも同様のことが言えるので
はないか。そう考えて、5年生の「森林の働き」で「緑を蘇らせたえりも岬の人々」という学
習を行った。これはNHK「プロジェクトX」を視聴して、いつか教材化したいと考えていたも
のである。次のような流れで行った。

1 50年前の写真「えりも砂漠」と現在の写真「緑の多いえりも岬」の写
真を見比べる。→「どうやって砂漠から緑に変わったのか」という反応
2 えりも岬が緑化していく様子を知る(「えりも岬の自然環境」「えりも式
緑化工法」「木を根付かせるための工夫」等をインターネットで示す)
 →中心になった漁師さんや役所の人に共感
3 グラフから、現在のえりも岬の様子について読み取る。
4 えりも岬の例から言えることは何か考える。
 (例)人類は自然をこわすだけではなく、自然をよみがえらせることもで
きる。だから、一人一人がちょっと環境を気にするだけで、自然はよみが
えるのである。


 子供たちは、「こんなに努力をした人たちのおかげで今のえりも岬の緑があるのだと思っ
た」というような感想を持った。このような共感を育てるような授業をしたいともっと行いたい
と考えている。そのための理論的なバックボーンがこのQA事典に書かれているのである。

3 読み物としても魅力的。自分の教師修業のために活用していく。

 QA事典はあくまでも「事典」である。困った時に引くためのものである。しかしながら、
「読み物」としての魅力も大きい。
 たとえば、\章は「教師の力量はこうつける」という内容である。ここは向山氏の知的
生産の方法の情報が満載である。「本や資料の整理法」「資料の選び方」「教材研究の
ためのノート作り」といったように教師であれば誰でも興味を持つような内容になっている。
「なるほど」と思い、すぐに実行をしてみたくなる。
 今現在、QA事典は教室・職員室・家庭に常備している。疑問があったら、すぐに引くこ
とができるようにしている。それぐらい活用度が高いものなのである。

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