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@ これには深いわけが・・・
ド、リ、ブ、ル、シュート! ぱさり!
いい感じでシュートが決まった私はほっと笑み。少しずつ体が温まってきた。
「きゃー! すてきー!」
「ナイッシュウ! つかさ先輩ー!」
「さすが軍神」
「武神」
「絶対無敵守護神ー!」
・・・何ですか、それ?
まったく知らない間に物騒なあだ名が付けられたもんです。
普段からバスケ部の練習に参加しているわけじゃないから、どんな練習をどんな流れで
やってるかなんて知らない。だから前の人の通りにやらなきゃならないわけで。だから集
中したいんですけど・・・ちなみに「絶対〜」なんたらは好美です。あの子絶対私以上にこの
場を楽しんでる。あのランランの笑顔・・・
「つかさ!」
真詩子の声。顔を上げるとなんかいきなりパスが来た。びっくりしながらも受け取る私。
「シュート!」
真詩子の声、というか威嚇。止まって、私はジャンピングシュート。女の子らしく両手でで
す。男子みたいに片手でなんて・・・できちゃったらなんて言われるか分からない。今日は
絶対両手でだなと私は心に決めた。
ガッ! とボールはゴールのリングに当たって強く跳ね返った。
「あらら」
ちょっと力加減が弱かったようだ。だん、だん、と高くコートを跳ねて、ボールは相手チーム
の陣地まで飛んでいった。追いかける私。
と、そのボールが、同じく練習中の相手チームの人の足に当たってしまった。勢いもない
から、痛くはないだろう。スタメンの選手のようで背番号は6。
「あ、すみませーん」
謝る私に振り向いた6番の人。足下のボールを拾い上げて、顔を上げてお互いの顔を見た
瞬間。時間が止まった。衝撃が走る。なんかサスペンスっぽい。
「つかさ?」
「み、みどり?」
3秒お互い金縛り。
「うっわー! つかさじゃん! ひさしぶりー! な、なにそれー!」
はじけるように笑い出して妙なことを口走る6番さん。みどり。私の中学生の時のクラスメイ
ト。ちらっと見ると佐恵子もびっくりしている。佐恵子は中学の時からのつきあいだから当然
知っている。
「や、やあ、みどりも・・・また伸びたの?」
ほへーっとみどりを見てしまう私。確か中学の時は私よりもちょっと背が高かったぐらいだった
はず・・・
「うん、なんかねー伸びちゃった。175あったら怖いなーとか思ってるんだけど・・・」
あははと苦笑した。もう見上げるばかりのかっこよさになってます。ショートでホント美少
年って感じだ。この子も女の子にきゃーきゃー言われていたのを思い出した。
「つかさこそ、なにそれ?」
にやにやしながら私のユニフォームを指さすみどり。
「面如技に行ったのは知っていたけど、バスケ部に入ったんだ?」
「違うよう。私はなぎなた部だよ」
「なぎなた?」
えいや、と振り下ろす仕草。うなずく私に、
「じゃ何でバスケの試合に? しかも「4」じゃない」
品定めするようにじろじろと私の体を見るみどり。やめて!セクハラ!と身をよじる私。
「これには深いわけが・・・」
ため息。
「あ、また黒船やってるんだ」
でも、あっさり言われた。あまり深いわけじゃなかったようです。しかもなんか懐かしい言
葉だ。うれしくないけど(涙)。
「なるほど・・・つかさスタメンなんだ。これは間違っても油断できないね。敵にまわしたら一
番怖い相手だと思っていたけど、まさか本当になるとは・・・」
口元に手を当ててぶつぶつとつぶやくみどり。でもね、聞こえてますよ?
「物騒なこと言わないでもらえます?」
「本当なの! ただでさえ面如技って結構強いんだから!」
キッ!とにらまれ、逆ギレされた。
「ご、ごめんなさい」
素直に謝ってしまう私。何も悪いことしてないのに・・・
「とにかく作戦練り直さなきゃ」
とみどりさんは仰いました。なんか大げさだなあと思う私に、
「ま、とにかくお手柔らかにね」
「あ、うん。こちらこそ」
とぺこりと一礼。軽く手を挙げてみどりは自分の陣地にぴゅ〜と飛んでいった。元気だなぁ
と私は思った。
「こらー! つかさ!」
今度は面如技の陣地から怒声。振り向くと真詩子。おお!アップ中でしたよと私は手を
打った。とととと戻った私は真詩子の視線と一緒にいろいろ怒られました。
もうなんか、わけわからないです(涙)
そのあと少しシュートの練習をして・・・
そして試合の時間を待つ・・・
ベンチの後ろで待機している一年生の集団の中に隠れるように紛れ込んだ私は、まあ、
当然のように見つかって引っ張り出された。
部活中の真詩子さんはいつも以上に鬼でした。まる。
@ なんだかんだで結構ムキに(涙)
なんで?
「つかさちゃーん、ふぁいとー!」
どうして?
「つかさ先輩! 一発お願いします!」
あ、あのね・・・?
じりじり迫る緊張。私の背中やら前やら顔やらにつき刺さる視線。コート上に両校のスター
ティングメンバー勢揃い。黒、面如技。白、相手さん。
張りつめる空気の中、私はコート中央、センターサークルの中にいた。
今から始まるのはまあ、どっちが先に先手をとるかという、審判が投げたボールを奪い合
う行為・・・何だっけ?・・・です。
ごくりとつばを飲み込む私。目の前にはみどりをも凌駕する身長と、ダンプカーを彷彿させ
るほどのがっしりした体格の相手さんのキャプテン。背番号はおそろいの4。
何でいきなりこんな修羅場に出なくちゃならないのよ!というツッコミはここに立つ前にさん
ざん言った。「見たいから」とさくっと言われたけど。
でもねでもね、バスケ部のみなさん。目の前の人すっごい怖いんですけど(汗)
がるるる・・・とうなってはいないけどそんな視線を私に向けています。ええ、まじで。
私、平均的な身長だし、もう見上げるばかりの相手さん。審判が高く投げたボールをジャン
プして奪い合うのに、すでにすごい差が付いてるんですけど?
「バーゲンの奪い合いのノリでいいから」
と真詩子さん。あの、そんな経験ないし、あからさまに間違った喩えだと思う。でも私はここ
に押し出されてしまった。
やるしかないよね・・・もし負けても私のせいじゃないもん!と開き直ることにした。
「みどりが絶対要注意人物って言ってたけど、たいしたことなさそうね。まだ7番の方がいい
んじゃない?」
ふと相手4番さんのつぶやき。私は忙しかった。
絶対要注意人物って・・・あの、向こうにもそんなこと言ってるんですか?あの子・・・(涙)
たいしたことなさそうね・・・カチン! あのですね、まだやってもいないのにずいぶんで
すね!(怒)
まだ7番(真詩子)の方が・・・私もそう思います。何で私が・・・(哀)
・・・で、総合的にむすっとした顔を相手さんに向けた。コンチクショウ!と思った。
だからがんばろうと思った。挑発に乗りやすい私(涙)
審判がボールを投げた。瞬間、私と相手さん、ジャンプ!
「むん!」
「おりゃー!」
お互いに気合いのかけ声。肩と肩がぶつかり、結構パワー勝負の感じもある。
ちょっと運があったと思う。私の右肩が相手の肩を抑えるようにのった。だから相手さんは
手が伸びきらずに、先に私の方がボールにさわれた。事前に言われていたようにそのまま
面如技コートの方にボールをたたき落とした。
「ナイス! つかさ!」
拾ったのはポジション、ガードの真詩子。私はセンターだってさ。絶対無理だと思います。
マンツーマンの相手はあの4番さんです。怖いよぅ(涙)
面如技の攻撃。バスケ不慣れな私に出た指示は簡単なモノで、面如技ボールの時は
相手のゴール下に速攻ダッシュしろ! 相手ボールの時は面如技のゴール下に速攻ダッ
シュで戻れ!・・・本当に簡単です。すっごいハードだけど。
文句聞いてくれる人いないから(悲しい)、とにかく、私は一目散に相手コートのゴール下
に走る。真詩子は速攻かけながらも微妙に相手と距離をとって、味方の上がりを待った。
私、ゴール下に到着。と思ったら背後にすっごい存在感のあるあの4番さんが。
振り返らなくても分かるほどの威圧感。あと鼻息。たらーっと冷や汗かいたとき。
「つかさ!」
真詩子の声と同時にボールが飛んできた。みんなうまく散らばっていて、きれいに私に。
はしっと受け取る私。えっと・・・正直びびった。ど、どうしよう!
「シュートー!」
こんな時に不思議とよく耳に入る好美の声。はっとして、私は身を反転。
ゴールを見据え、ジャンプ。ちゃんと両手で・・・シュート!
ば!・・・ば?と思ったとき、せっかく打ったシュートがいきなりはじき返された。バレーボール
のスパイクのような感じで、ダン!と強くコートにたたきつけられた!
相手4番さんの強烈なブロックだ・・・と気づいたときには相手ボールでカウンターが始まって
いた。一瞬唖然とする私。
「つかさ! 戻って!」
真詩子の叫びに、はっとして、私もすぐにダッシュ。守りの時にはいの一番でゴール下で
スタンバイしなくてはならないセンターが、最後尾になってしまった。
(えっと・・・)
戻りながら私は唇をかんだ。油断していたわけじゃない。ただ、びびっちゃって動きが
ぎごちなくなった。マークがいることも忘れてたし・・・
(・・・・・・・・・・・・・・・・)
グン!と私は足に力を入れる。アキレス腱がバネになるような感覚。ミサイルダッシュ。
ボールはみどり(相手)が、キープしていて、ちょっと味方にパス。で、真詩子(面如技)の
注意を引いて、もう一度みどりにパスを折り返す。真詩子の脇を抜けたみどりは受け取って
すぐにジャンプ。シュート!・・・
「・・・・たりゃ!」
跳躍!
みどりが打ったシュート、放たれてすぐのボールの打点に、私の右手、追いついた!
そのまま、バレーのスパイクのように、さっきの4番さんのように、思い切りうち下ろした!
ボールはうなりをあげてコートに衝突、跳ね返って体育館の壁にもぶつかってまた跳ね返った。
着地して息を落ち着かせる私。静まる会場。驚愕の顔(4番さん)、顔(真詩子)、顔(みどり)・・・
「ナーイスブロック!(好美)」
として歓声がどーっと沸き上がった。全力ダッシュで戻った私は息を整えるのに集中。
ぽんと、肩がたたかれた。真詩子。
「ナイス、つかさ・・・ホント、すごい・・・」
冗談なしの賛美。私は真詩子の背中を軽くたたいて応じた。さっきの失敗は返上できたかな・・・
ぱしゅ!
「ナイシュー!」
相手チームから歓声。相手ボールで始まって結局先制された。決めたのはみどり。素人目
にも分かるほどきれいなフォーム。中学の時よりも一段とかっこよかった。私は4番さんに
体で制されて動けない。
さっきの私のブロックから、明らかに雰囲気が変わった。
試合が始まる前に「たいしたことなさそう」って言っていたけど、今はきっとそんなこと思って
いないのだろう。プレッシャーも真剣そのもの。相手をなめたままズルズルしないところはさ
すが強豪チームのキャプテンだ。
すぐに始まる面如技の攻撃。バスケはサッカーのように点が決まったからって仕切直しはない。
ボールを中に入れればそこから即スタートだ。
だからほとんど気が抜けない。ハーフ20分という長さでもすごい運動量が要求される。
と、私にパス。真詩子から。まだ相手コートに入っていない。慣れていない私に早く慣れさ
せようとする真詩子の考えだろう。
はっきり言って漫画のように技を使って相手を抜くなんて私にはできない。くるりくるりターン、
できそうな気もするけど、そんな付け焼き刃が通用する相手じゃないと思う。
そんな私にできるのは非公式ながら県記録の足の勝負。直線の勝負。センターサークル
を越えたあたりで、私は一気に駆ける!
ダンダンダンダン!ドリブル!でもすんなり行かせてはくれない。相手のゴール下には4
番さん。そこには私の代わりに面如技で一番背の高い5番の先輩が。つまりマークが入れ
替わっている。
右左の選択。直感で右! 代わりにマークに来た相手さんの右を一気にずばっと駆け
抜けた。
「な、はや!」
の声は背中から。私は抜き去っていた。ゴール下! ボールをつかんで、一歩、二歩!
ドリブルシュート!
でも目の前に大きな陰! 4番さんの巨体(失礼)が唐突に現れた。あっと思ったときには
指先からボールが放たれていて、いっと思ったときにはブロックされていた。しかも今度はた
たき落とすのではなくすぐに両手でホールド、で、着地。
「ソッコー!」
4番さんの声。同時に前方にボールを投げた。速攻の先頭はみどり。あの子もかなり足が
速い。私もすぐに戻る。今度は向こうも警戒している。
みどりの前に回り込む真詩子。腕を広げてみどりを制する。そこで流れが切れ・・・シュ!ッと
みどりがパス。中央から走り込む相手。マークも付いているけど振り切られ気味だ。受け取って
そのまま・・・ぱさり・・・
歓声。明らかに空気が重くなる面如技。明るくなる相手チーム。
(ど、どうしよう。私だ・・・私のせいだ・・・)
くやしい、くやしい・・・
慣れてないなんて言い訳にしたくなかった。コートに立った以上私もチームの一員だからだ。
うつむきかけたそのとき、
「お! つかさのへこんだ顔、もらい!」
言葉のすぐあとにパシャ!ッとシャッター音。フラッシュはキャンセルしてあるよう。
面如技ベンチにて、にまにまの佐恵子さん。横に好美も控えていて、なぜかピースを私に
向けていた。
一瞬頭が真っ白になった。
「さ、佐恵子!」
ぴー!ッと赤くなって私は叫んだ。こ、こんな時に! でも気づいた。佐恵子のあの表情。
笑顔だけど・・・でも・・・
(ふう・・・)
息を付いた。力が抜けた。肩と顔の余計な力が・・・
そう、試合はまだ始まったばかり。まだまだこれからなんだ。
コートを振り返る私。
ぽつーん・・・面如技陣内には誰もいなかった。
速攻に置いて行かれた私は急いで(赤くなって)駆けだした。
−つづく−