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 @ 縦の勝負、横の勝負

 前半6分経過。面如技 0点、相手さん7点。ピンチです。
「つかさ」
 声。振り向くとゆっくりドリブルしながらの真詩子さん。7点目のあとプレイの再開。
 どうもうまくいかない。やっぱり流れってあるんだと思う。確実に今は相手さんの流れでゲーム
が進んでいる。
「こういう悪い流れを変えるときってさ、どうすればいいと思う?」
 がむしゃらに速攻を駆けるわけでもなくゆっくりスペース。合間の隙をついたのか相手さんも
ゆっくりな私たちに飛びかかるタイミングを逃していた。
「ど、どうって・・・」
「簡単。チームで一番信頼のある人がね、一発どかんと点を取ってくれること」
「なーんだ。・・・で、だれ?」
 たしかにたしかに。私も球技と格闘技で違ってもスポーツ少女の端くれ、よく分かる。
「鷲名野先輩」
 真詩子の笑顔。信頼の証。鷲名野という勇ましい名を持つその人は今コートにはいない。
なぜならその人が持つ背番号を私が身につけているからだ。つまり今日はご家族の法事で
休んでいるのである。キャプテンだ。
「ダメじゃん」
 ちょっと苦笑でつっこむ私。くすっと真詩子は笑んで、それからきりりと相手コートに目を向
けた。
「でもね、今日はつかさなの。信頼というか、期待だね。すんごい期待。だからつかさが決める
までつかさにボール集めるからね!」
 チェンジオブペース。駆け出す真詩子。ちょっとかっこいい! でも私は焦る。
「で、でもあの人(4番さん)すごいんですけど!」
 いろいろとね! ぺろっと内心舌を出してから私も走る。
「縦でダメなら横!」
 真詩子の叫び! そして反撃再開!
(横・・・胸かな? そっちの方が圧倒的に負けてそうなんですが・・・)

 バン! 私のシュートがまたもやはじかれた。始まる相手さんの速攻。
 走る。走る。相手さん前に大きくパス。カウンターの先頭を走るみどり。その少し後ろに真詩子。
 みどり、すごく速い。真詩子も速いけどさらに。
 そのまま・・・シュート。ぱさり。
 このカウンターの速さバスケットの醍醐味であり怖さだと思う。カウンターされた方にはもの
すごいボディーブローです。ずしっと、また私のシュート失敗から・・・
「つかさ!」
 えっと顔を上げた私に真詩子さんからの強烈なパス。
「うわ!」
 ばし!と受け止める。
「ごー! つかさ!」
 相手ゴールを指さす真詩子。スポコンのラストシーンみたいだ。
 そっか、カウンターの速さはお互い様だ。速攻かけようとした私の前に人影。
 せっかく今からまた超特急で、かけだそうとしたのに・・・速いチェックです。
 しかも相手は6番。みどり。
「行かさない!」
 通せんぼするように両手を広げるみどり。まだ相手陣地にも入っていないこんな遠いところ
で私は足止めされてしまった。
「つかさ!」
 真詩子の声。瞬間にパスを出せていた。みどりのパスブロックよりも刹那速かった。さらに
刹那速く私はくるりと身を返してマーカーをかわしてダッシュ!
 みどりも当然私のすぐ後を追ってくる。私が目指すのは私の定位置。ゴール下。
 そこには相手さんの4番。そして面如技の5番の先輩。私が視認すると、なんとその先輩は
まっすぐ私の方に向かってきた。
 真詩子は半円やや外でボールをキープしたまま、まだパスを出さない。
 私はゴール下に向かう足を止めない。私のほぼ横にみっちりとみどり。
 と面如技の5番さんがなんとみどりの前に立ちはだかって、みどりをブロックした。私から
ひきはがされるみどり。あ、これってたしか・・・
「スイッチ!」
 みどりの叫び。そうスイッチ。マークの入れ替え。強引に。それで有利な組み合わせを作る。
背の高いマーカーを阻んで低い人に入れ替え。そうするとさっきませ背の高い人にマークされ
ていた人に仕方なしに背の低い人がマークに付く。するとどうでしょう!
 とてもとても有利になりますね。でもみどりの代わりに私のマークになったのは・・・
「またはじき返してやるわ!」
 殺気ぎんぎんのお目目の4番さん。目が光りそう・・・
 私にとって有利とは言えないけど、何となく理解した。
 この人に私は負け続けている。でもここで勝てれば・・・逆転へのすごい勢いが付きそうだ。
4番さんの前で私は身を反転。4番さんはドンと私の背に居構える。
 よっしゃ、こい! と真詩子を見・・・
 うわ!・・・ばし! あわてて受け取る。振り向きながら内心のつぶやきの、・・しゃ!のあたり
ですでに鋭いパスが私に向かってきた。ホント、真詩子さんのパスはアポなしで困ったモンで
す。でも、私にパスが通った。
(・・・・・・・・・・・・・・・・どしよ)
 どう動こうか考える前にパスが来てしまった。でも早く撃たないとあっという間に囲まれる。
意を決して私は身を反転。もう弾かれまくったパターン。威圧感「強」の4番さんが正面。
 でも・・・こうすればどう?
 びよーんと私はジャンプ。4番さんも当然ジャンプ。手を大きく挙げて。普通に打ったらとて
もその壁を越えられそうにない。身長も高度も重量も断然負けているのだ。
「どりゃ!」
 私のシュート! 強く打ちました。4番さんのブロック・・・届かない。
 私は斜め後ろにジャンプしていた。体まで傾けて。そうすると相手のブロックの打点と私の
シュートの打点の距離が大きくなって、角度と力加減が厳しいけど、ブロックをやり過ごせる
シュートが打てる。我ながら策士だと思った。びっくり目の4番さん。
 とととと、私は右足を突いてすぐさま左足をあとずらせてぐっと踏ん張って着地。ただでさえ
後ろ向きにジャンプしたのにそうしないとマジでこけます。
 ボールは・・・がん!っとゴールのリングに当たって上に跳ねた。見守る面々。
 そしてボールはリングの内側に・・・ぱさり!
「よっし!」
 私はガッツポーズ!同時に場内が沸く!
「ナイシュー!」
「すげーーーーーー!」
「つ!か!さ!」
 つかさコールまでわき起こる。私は真詩子にぶいサイン。真詩子も返す。
「ナイス、フェイドアウェイ!」
「え! あ、うん・・・」
 ・・・・名前あったんだ・・・
 とにかく、待望の面如技初ゴールが生まれた。

 確かに流れがこっちに来た感じだ。前半9分ちょい。面如技2点、相手さん9点。
 私のかっちょええしゅーとに動揺したのか、相手さんのミスが目立ってきた。みどりも2本続
けてシュ−トを外してしまっている。
「つかさ、無茶しないでね!」
 真詩子。相手の4番さんすごすぎで、サイズ、高さ、重量(失礼)、パワー、威圧感、胸・・・
などなどで対抗できる人は面如技には居なかった。唯一の人はキャプテンさんのようだけど
今は不在。普通にガチンコ勝負したらあっさり吹っ飛ばされそうだ。
 だから自然にこの4番さんにボールが良く集まってくる。
 真詩子さんから受けていたアドバイスは『なるべく4番には中で持たせないこと』だった。少
し離れたところからのシュートなら格段に成功率が落ちるそうだ。だから中に入れないようにこうやって・・・・
(よいしょ、こらしょ・・・)
 っと全力で体で押し出すのです。手で突きだしてえい!っとかやれば早いのだけど、そうし
たらすぐに審判の人にお縄を頂戴してしまう。体を張って通せんぼです。
 でもあまり動きません(涙)
「滝さん!」
 シュッとみどりがパスを出した。受け取る4番さん。ゴールまで近くもないけど遠くもない微妙
な位置。っていうかここで初めて分かった4番さんの名前!
 来るか!と身構える。でも、そこから4番さんは全然見ていない方にパスを出した!これが
噂のノールックパス??受け取ったのは相手さんの8番。一瞬の隙をついてマークを振り切った
よう。ゴールまですぐ!
 私はすぐに4番さんのところを離れてその人に向かう!ちらっと私を見る8番さん。私と同じ
ぐらいの身長だから高さではなんとかな・・・
 シュッ!と8番さんはいきなりボールを手放した。向かってくる私の後ろの方に・・・
「あ!」
 と思ったときには受け取ってシュート体制になった4番さん。踏みとどまったけどとても間に
合わない!と、真詩子が4番さんにブロックに飛んだ。タイミングは遅れ気味だから・・・弾かれた!体ごと!
 どっしーんと尻餅つく真詩子。そして・・・ぱさりとネットが揺れた。
「真詩子!」
 駆け寄る。私が手を貸すとお尻をさすりながら立ち上がる。
「ごめん、勢い止めちゃったかも」
 なんと!あの真詩子さんが弱気です。でも私だって反省していた。
「私こそ4番さんのマーク離れちゃったから・・・」
 確かにあの4番さんをフリーにするのは一番怖い。と、真詩子はぶんぶんと首を振って、
「あれはあれでいいの。8番完全にフリーになってたもん。つかさの判断間違ってないよ」
「真詩子・・・」
「さ、へこみはここまで! 反撃するわよ!」
 がしっとコブシを合わせる真詩子さん。さっきまでの弱気はかけらも見あたらない。
 さすがです。私もウシ!と気合いを入れた。

 真詩子へのパスがカットされた。真詩子にマンツーマンでマークに突いていたみどりだ。
同じコートに立ってみてよく分かる。みどりもやっぱりすごい。相手の動きを読むことがずば
抜けて正確だ。それに足も速いし、高さもある。あの真詩子が可愛く見えます。
 って思ってる場合じゃない。今度は攻められる側になってしまった。
 私は急いで自分の場所に向かう。私の背後に感! この威圧感、やっぱりあの4番(滝)さ
んだ。お滝さんって呼んでみようかな?
「つかさ!」
 真詩子の声。うん、わかってる。私の体重じゃあっさり吹っ飛ばされるでしょう。
 縦の勝負じゃ勝ち目が・・・
 でもね・・・真詩子さん。あなたの要望には応えられないと思います。
 ふっと、気配がして私の目の前にいる4番さんにパスが通った。やはり一番成功率が高い得
点パターンだ。マークは私です。
 今まで一度も勝ててない。後ろジャンプでシュートは成功したけどあれはただの奇襲。
 そう何度も通じないと思う。
 私に振り向いて目で圧す4番さん。そして鋭く振り向く。そしてそのまま跳躍。ぐい〜んと伸び
ます。この人の高さは本物だと思う。ただ高いだけでなく、びくともしない強靱さも兼ね備えて
いる。
 横での・・・敏捷さの勝負じゃ私にブがあると思う。でもね・・・
(でもね、やっぱり悔しいから・・・私!)
 私も力一杯ジャンプする。手をいっぱいに伸ばして。
「・・・縦でも勝ちます!」
 叫ぶ!と同時に私の手に衝撃。見事4番さんのシュートを手のひらでブロックできた!
「たりゃ!」
 そのまま弾き落とす! 驚愕の目の4番さん。それもそうだろう。自分よりずっと身長の引く
い私にフルパワージャンプのシュートをブロックされたのだ。
 私着地。でもってすぐに速攻のダッシュを駆けた。ボールは面如技チームがキープしていた。
「そっこー!」
 笑顔で私はそう叫んでいた。そして怒濤のカウンターの面如技軍団。先頭は真詩子・・・に
今ボールがわたる。相手さんは約ふたり戻りが早くて待ちかまえていた。真詩子は相手コート
にはいると外側に巻くように移動。一人マークが付いてその人も真詩子につられて外側に。
 つまり今現在ゴール下には一人だけ。そこに素早く私が滑り込む。うかうかしてられない。
 マジですぐに4番さんやみどりも追いついてくる。私に付くマークさんは4番さんほど背も高
くないし、威圧感もない。これなら・・・
「つかさ!」
 真詩子の声と同時に、バウンドを利用した低い速いパスが来た。はしっと受け取る。背中に
はマークさんを背負う。
 と、私はボールを持つと同時に、ゴールの方向とは逆の方にくるりとターンした。つられて足を
止めるマークの人。一回ボールをダムッとついてさらに回り込むように身をひねって、もう一度
ボールをドリブルしたときには抜き去っていた。
 つかさちゃんターンと名付けようと思った。
 そしてドリブルシュート・・・ぱさり・・・
「よっしゃ!」
 ぐぐっとガッツ! 面如技ベンチもどどっと沸く。振り向くと相手さんの驚愕の面々。
 ふふっと私は笑みを浮かべて・・・
 さあ、つかさちゃんエンジン全開よ!
 びっとひと差し指を立てる!
 我ながらこっぱずかしい。
 でもねでもね! 後悔先に立たずと言う言葉があります。
 青くなる私!
 内心のつぶやきだけですませるつもりが・・・・声に出ちゃいました!
 うわ・・・はずっ!


 −つづく−