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@ みどりの予兆
「宣戦布告と受け取ったわ」
すっと目を細めて4番さんが私をじろり。うっわーっと動揺。
こ、この口がね、ついうっかりね、言っちゃったんです!
宣戦布告なんてもってのほか・・・ってもうだいぶ試合始まっちゃってるけど、とにかく
違うんです!・・・と、言いたかった。でもね、チームの勢いを大切にしたかったから私は
黙ったまま。相手チームの人たちの視線がちくりちくりと・・・
ふとみどりと目があった。
(ぎゃーーー!)
内心で叫んで私はのけぞった。み、みどりさん・・・・
しかし、そんな私の思惑をよそに試合が再開される。私は急いで面如技ゴール下に
向かう。
(ま、まさかね、もう高校生だもんね・・・・ね? みどり・・・)
「つかさ!」
真詩子さんの声に私ははっと我に返る。
4番さんに張り付く私。さっきやっと勝てたけど、でも怖い事に変わりありません(涙)し
かもなんかさらに殺気立っているような気も・・・
面如技陣地のフリースローラインあたりまで来て、ゴールに背を向けて両手を広げる
4番さん。私は彼女の背中に。でもこのままじゃ相手はパス受けたい放題。でもそれじゃ
いけない。パスカットに行きたいけど逆に裏をとられてしまう危険性も。
それでも先に4番さんにボールがわたるのは避けたい。縦のブロックも、ホントドンぴ
しゃでタイミング合わせて、めいっぱいの力でジャンプしないとできない。
そう、まだバスケ部素人な私はちょちょいとフェイク入れられたらすぐに引っかかって
しまう。騙されやすい私。
だから、4番さんにパスが出た瞬間、ズバッと4番さんの前に出てパスカット。それし
かない・・・かなぁ・・・
じっといろんな方向との間合いを計る私の感にヒット! 真詩子と対峙するみどりが4番
さんを見た。
瞬間! 来ると直感して、私は4番さんの右脇に低く飛び込む。そして着地した右足を
すっごいふみしめて素早く4番さんの正面に左足をとばす。4番さんの手の下をくぐり抜
ける超低空飛び込みで、4番さんの前に立ちはだか・・・
「え!?」
みどりはパスを出していた。でもそれは4番さんではなくて、面如技陣地のサイドにいた
相手さんの6番さん。私はそっちを見たときにはその6番さんも折り返しのパスを出してい
た。私の背後に・・・
4番さんへのパスをカットしようと前に出たから、逆にゴールまで4番さんを阻む者は何も
なくなってしまったのだ。完全に裏をかかれた!
パスを受け取る4番さん。ほぼフリー。
(・・・やらせない!)
私、眼光鋭く、駆ける。4番さん、そのままドリブルシュート。
「ほいあ!」
全力でダッシュして、全力で飛び込んだ。4番さんの打点には間に合わなかった。
でも伸ばした手の指先に手応え。放たれたボールに少しさわれた! ちょっとボールの
軌道がそれた。右足で着地と、ボールがリングをそれてゴールのボードに当たった音は
ほぼ同時。跳ね返ってきたボールを私はしっかりとキャッチ。
「ちょっと・・・何でよ!」
驚愕の目の4番さん。完全にフリーだと思っていたようだ。甘いよ、お滝さん・・・
そして私のドリブル開始、4番さんの手前で大きくそれて彼女を抜き去る。
面如技の味方もみんな相手コートに向かう。
ふと真詩子にマークしていたみどりが、そばを離れて私に向かってくる。また早めに
チェックして速攻を送らせる気だ。と思ったときには私はパスを出していた。大きく、正面
に。あわててみどりは立ち止まったけど、届かない高さ。さっきのお返しだ。
ボールは面如技の誇るガードの真詩子さんに。
と、なんとその真詩子さんに、ブロックが二人も飛んできた。両手に花状態の真詩子
さん。その分面如技の他の人がフリーになるわけだけど、パスコースをうまくふさがれて
いて、さすがの真詩子さんも立ち止まってしまった。
とにかく私は相手陣地のゴール下に行こうと向かう。でも私の背後に圧倒的なあの感じ。
も、戻りはやいっすね(汗)
みどりは私に背を向けて真詩子に向かう。3人に囲まれたら真詩子さんも・・・と思った
とき、あるアイデアが浮かんだ。無謀かも知れない。でもできる自信もあった。
半円の中に少し入ったところで、
「真詩子!」
と私は叫んだ。真詩子ははっとして、とっさにパスを出した。しかも、真詩子さんちゃんと
私の意図を分かってらっしゃる。たぶんヤツはエスパーだと私は思った。
私、走るスピードを緩める。相手の4番さんはそのとき私の横を通過。ここが難しい
タイミング。ちょっとでもずれたら相手に私の考えが読まれてしまう。
一歩、二歩。私の前に距離を置いて立ちはだかるために4番さんが歩いたとき!
私は後ろに方向転換。といってもすっごいもどるわけじゃなくて、半円の外まで。真詩子
さんのパスはその場所にピンポイントで飛んできた。半円の外。つまりここは・・・
4番さん察してダッシュしてくるけど、たぶん間に合わない。私ジャンプして・・・シュート。
審判さんの人が指を三本立てる。半円の中で決める2点のシュートよりちょっとお得な
3点のシュートです。難しいけど。大きな弧を描いて飛んでいくボール。4番さんジャンプ
するけど届かない。
時間が止まったかのように静まる会場。そしてボールは・・・ぱさり!
「よーっしゃ!」
私、笑顔でガッツポーズ。拳を握る。沸き上がる会場。
「ナイッシュ! つかさ!」
駆けてくる真詩子さん。手をお互い合わせて私も応じた。他の人からも歓喜の声。こう
いうのってむずがゆいけど、やっぱりうれしい。
私もにこにこ。にこにこ・・・ふとみどりさんが視界に入った。
にこにこ・・に・・ぎ、ぎゃーー!
あ、青くなる私! さらにすごいことになっているみどり。ちらりと私は佐恵子を見た。私と
目が合うとすべてを察した顔で、両手の平を合わせて佐恵子さんが私に向かって合掌
した。あ、やっぱり・・・そうなんですね・・・
微妙に落ち込む私。
「つかさ、戻って!」
真詩子さんの声。はっと我に返る。そう、試合はすぐに再開した。
もう前半も12分になろうかというところ。面如技7点。相手さん11点。まだ負けてます。
相手チームの司令塔のみどりにボールがわたった。プレイ中のみどりは真剣そのもの。
プレイの合間の私情をびた一文はさまない冷静さ。真詩子さんのガン付けもさらりと流
せる強者でもあった。でも・・・なんか焦ってるような・・・
と相変わらずの4番さんの巨体(失礼)の陰でそう思ったとき、みどりはやや強引に真詩
子を抜いた。でも真詩子もすぐに反応して、追撃する。抜いたとはいえない密着状態だ。
さらに強引にみどりは飛び上がってシュートした。真詩子の手をうまく制して、シュート
自体はすんなり撃ったけど、ボールの軌道はややゴールのリングからはずれ気味。
これは「落ちる」と思った。
こうなると、ゴール下のポジションの腕の見せ所。俗に言うリバウンド合戦だ。
簡単に言うと、シュートしてはずれて、ゴールリングなりボードに当たって跳ね返った
ボールを、奪い合う行為。当然ボールは頭上から落ちてくるから、手を高く伸ばせる人が
有利。つまり身長の高い人。それでさらにジャンプ力が秀でてる人。多少の身長差は
カバーできるかも。それでていて奪い合いに負けない体力の持ち主。
さらにボールの落下点の場所をキープできるほどの威圧感の持ち主。ということで、
何から何までセンターというポジションにふさわしい行為なのだ。
つまりですね。面如技のセンターは私。相手さんのセンターはお滝さん(4番さん)。
・・・この人と奪い合いは自信ないです(涙)
ガン!っとみどりのはなったシュートはゴールリングに当たって、少し上に跳ね返る。
リングから遠ざかるように跳ねたから、シュートは失敗確実だ。
と、私の首の下あたりに大きな腕、それに肩。そう、4番さんがぐいっと割り込んできた。
強引です。
落下点でボールの向かってくる方向に身体を向けて待つ。つまりそこがリバウンドの絶好
のポイント。その見極めは思いきり経験がモノを言うから、今までずっと私は一歩後れを
とっていたのだ。
私も無理矢理前に出ようとするけど、そうはさせないと両手を広げて私を制する4番
さん。びくともしません(涙)
このままじゃリバウンドをとられてしまう。4番さんがとれば、相手にとってまたシュートを
打つチャンスができる。私がとればすぐに反撃するチャンスが生まれる。
シュートして失敗したボールの奪い合い。言葉にしてみれば地味な感じだけど、これが
強いチームは俄然有利なのだ。
シュートハズしても味方がとってくれる!って信頼があれば、思い切ってシュート打てる。
安心して打てる。そんなシュートは成功率が高いのは当たり前。
ディフェンスのときはリバウンドが強いだけで、反撃のチャンスがそれだけ多くなる。
・・・だからリバウンド合戦は大事なのです。
・・・と、試合前にさんざん、くどくど、耳たこ、夢に出る・・・くらいに真詩子さんから聞か
された私。真詩子さんが怖かった。
今まで負け続け。でも、もう負けない!
ふっと私は半歩身を引いた。肩と背中のぶつかり合いで背後に私を感じていたはずの
4番さんは急に感覚が変わって、戸惑うように一瞬動きが止まった、
瞬間、さっきのパスカットの時と同様、4番さんの腕より下。腰の辺りまで低く飛び込んで、
右足だけの折り返しで4番さんの前に出た。
2度も通用したのはさっきよりもより鋭く飛び込んだからだ。で、すぐに全力ジャンプ!
「おりゃー!」
めいっぱい手を伸ばす私。単純な高さならまだちょっと私の負け。でも4番さんは私の
背後。しかもちょっと出遅れたから落ちてきたボールには私が先にさわれた。
右手の人差し指と中指に乗ったボールをがばっとたぐり寄せる。そして両手でしっかり
と固定。・・・着地!
(着地しても油断しない! ハイエナのような人にとられるよ!)
と真詩子さんからのありがたい忠告を思い出す。目が血走ってました。
せっかくリバウンドをとっても着地したとき油断すると手にあるボールをがしっと横から
とられることもあるとか。確かに上は高い人が有利。でも下はみんなにチャンスがある。
でもね? 真詩子さん。ハイエナって言うのはいつも人のお弁当のおかずを横から
かっさらう好美みたいな子を言うんですよー。
低く構えて間合いを探る。攻める方向に背を向けている私を振り向かせないように
すぐに4番さんがプレッシャーをかけてくる。すごい腰を落として重心を低くしている。
(本当にこの人すごい)
と思った。びくともしないは相変わらず、でも今まで以上に隙がない。
「つかさ! 出して!」
真詩子さんの声! でもパスを出そうにも声が聞こえたのは真後ろ。私の後ろには
ぴったりと4番さん。でも私を囲むように敵さんが集まってきたから、とにかく出すしか
ない。
(え〜っと、ん〜と・・・たりゃ!)
パスを出した。後ろに。
ただし私の股の下をバウンドさせて。股抜きとも言う。でもうまくバウンドの角度を調節
しないと後ろの4番さんのお尻にどすんとヒットしてしまう。それだけはいけない。乱闘騒ぎ
になったら絶対に勝てません(涙)
つまり、4番さんの股をも二人分抜くようなバウンドパスになった。低く当てて、低く跳ね
るように。
「わっと!」
真詩子さんの驚きの声。と同時に私は横に回り込んで4番さんを振り払う。
こういう静から動への速さは私に分があるのだ。ドリブルを開始した真詩子さんのやや
後ろを私は追走する。真詩子のマーカーのみどりもすぐに追いかける。
相手の戻りも早い。私の一番近くにいた5番の人が私のそばに。
でも、ゼロ4じゃ負けません!
ということで、ダッシュのギアをマックスに。少しずつ差を付ける。
「く!」
舌打ちしたのはみどり。彼女はこのまま真詩子に付こうか、私に付こうか迷っている
よう。と、真詩子さんもスピードを上げた。相手陣地の半円に深く潜り込む。
みどりはそのまま真詩子に張り付いた。真詩子さん、そのままシュートに行くつもりだ。
みどりのマークが引きはがされたわけじゃないけど、勢いを止めるよりそのまま行った
方がいいかもしれない。後ろから怖いお姉さん方がたくさん向かってきているので。
真詩子さんボールをつかんで、一歩・二歩、ジャンプ、しゅー・・ぎゃ!
後ろに放り投げたよ、あの子! ってバックパスです。回り込んだみどりのブロックも
高かった。で、そのバックパスは私に来ました。
はしっと受け取る。フリースローラインテ前で立ち止まる私。
手は添えるだけ。ジャンプシュート。
「させない!」
ぶおう!という感じで二つの影が私の目前に! 両手をあげてブロックの相手の5番
さんと、鬼のような形相の4番さん。でも私はシュートを放っていなかった。
ちょっとシュートするそぶりをしてみただけ。フェイク。うそつきさん。そりゃあ、背後から
すごい足音がするんだもの。警戒したんです。
で、大きな、あのまま撃っていたら確実に防がれていた壁をすっとやり過ごしてから、
私は落ち着いてジャンプシュートした。またドリブルしたら反則なんですよ。
ボールはきれいな弧を描いて・・・ぱさり。
審判さんの笛!
「おっしー!」
ガッツポーズ。で、大歓声。
と、そこでいったん相手さんのタイムアウト。試合合間の小休止・・・じゃなくて、作戦
タイム。いい勢いだったのに切られてしまった。
でもそれも作戦の一つ。
試合はまだまだこれからのようです。
−つづく−