バナッハ空間

■ コーシー列

定義(コーシー列) Xをノルム空間とする.X上の点列 {xn} (n=1,2,・・・) について,任意の実数 ε>0 に対し,ある自然数Nが存在し,すべての k,m≧N に対して
‖xn−xm‖<ε
が成り立つとき,点列 {xn} はコーシー列(Cauchy sequence),または基本列であるという.
定義(収束列) Xをノルム空間とする.X上の点列 {xn} (n=1,2,・・・) について任意の実数ε>0 に対し,ある自然数Nが存在し,すべての n≧N に対して
‖xn−x‖<ε (n>N)
となる x∈X が存在するとき,点列 {xn} は収束列(convergent sequence)であるという.またこのとき,
または
xnx (n→∞)
などと書く.
命題 ノルム空間の任意のコーシー列は有界である.
証明 {xk} をコーシー列とすると,任意の実数 ε>0 に対してある整数Nが存在し,k>N に対して
‖xk‖=‖xk−xN+xN‖≦‖xk−xN‖+‖xN‖≦ε+‖xN
となる.ここで,
M=max{‖x1‖,‖x2‖,・・・,‖xN-1‖,ε+‖xN‖}
とおけば任意のkに対して ‖xk‖≦M となる.
命題 ノルム空間の任意の収束列はコーシー列である.
証明 点列{xn}をノルム空間上の収束列であるとする.すなわち任意の実数 ε>0 に対してある整数Nが存在し,n>N に対して
‖xnx‖<ε
とすると,
   ‖xn−xm‖xn−x+x−xm
‖xn−x‖+‖xm−x‖
となりコーシー列となる.

■ バナッハ空間

定義(完備) ノルム空間Xのすべてのコーシー列がXの中に極限をもつとき,すなわちXの中の収束列であるとき,ノルム空間Xは完備(completeness)であるという.
定義(バナッハ空間) 完備なノルム空間をバナッハ空間(Banach space)という.
定理 最大値ノルムによる連続関数の空間 C[a,b] はバナッハ空間である.
証明 C[a,b] が最大値ノルムによってノルム空間となることはすでに分かっているものとする(ノルム空間のページ).以下に完備性の証明を与える.まず,xn(t) を C[a,b] 内のコーシー列であるとする.このとき t∈[a,b] を一つ決めると,
|xm−xn|≦‖xm−xn
となる.この式から xn(t) がR内の基本列となることがわかる.Rの完備性から,
を満たす実数 x(t) が存在する.このようにして区間[a,b]上の関数 x(t) を構成する.いま,数列 xn が C[a,b] 内のコーシー列であることから,ある正の正数Nが存在して,任意の整数 m,n≧N に対して
‖xm−xn‖<ε
が成り立つ.すなわち,
|xm(t)−xn(t)|≦‖xm−xn<ε
となり,
が得られる.また,有界閉区間上の連続関数は一様連続なので,[a,b] 上で xn(t) は一様連続である.よって,上のεに対してある正数δが存在して|t-s|<δ,t,s∈[a,b] であれば
 |x(t)−x(s)||x(t)−xn(t)|+|xn(t)−xn(s)|+|xn(s)−xn(s)|
となり,x∈C[a,b] が分かる.このことから,各 t∈[a,b]について,n≧N のとき,
|x(t)−xn(t)|≦ε
となり,‖x−xn0 が得られる.よって示された.
定理 X,Yをバナッハ空間とする.X,Yのノルムをそれぞれ‖・‖,‖・‖とする.このとき,X,Yの直積 Z=X×Y は
‖[x,y]‖=‖・‖+‖・‖ (x∈X, y∈Y)
をノルムとしてバナッハ空間である.
証明 ‖・‖がノルムの公理を満たすことは定義から明らかである.よって完備性を調べればよい.zn=[xn,yn]∈Z (n=1,2,・・・) がコーシー列であるとする.すなわち,
‖zn−zm=‖xn−xm+‖yn−ym0 (n,m→∞)
とする.このことから,点列{xn},{yn}がそれぞれX,Yのコーシー列であることは明らかである.X,Yは完備なので xnx0, yny0 となる点 x0∈X,y0∈Y が存在する.いま z0=[x0,y0] とすると,
‖zn−z0=‖xn−x0+‖yn−y00 (n→∞)
より,{zn} は収束する.よって定理が示された.
定義(lp空間) 1≦p≦+∞ に対して,
を満たす無限級数列 a1,a2, ・・・ ,an, ・・・ の全体を lpで表す.初等的な不等式 |a+b|p2p-1(|a|p+|b|p) から,
が得られる.この式から,lpが線形空間であることがわかる.また,lp空間の元 x=(a1,a2,・・・) のノルムを
とおくと,‖・‖lp はノルムの条件を満たす.このことかから,lp空間がノルム空間であることがわかる.
命題 lp空間はバナッハ空間である.

■ 連続写像

定義(連続写像) X,Yをバナッハ空間として,Xの部分集合Ω上で定義される写像(作用素)T:X→Y について
xnx ならば Txn→Tx (xn,x∈X,Txn , Tx∈Y)
となるとき,写像Tは連続(continuous)であるという.
定理(線形作用素の連続性) X,Yをバナッハ空間として,線形作用素 T:X→Y が連続となるための必要十分条件は,有界性
‖Tx‖≦M‖x‖ (x∈X,Tx∈Y)
を満たすある定数M(≧0)が存在することである.また,この意味においてTを有界作用素(bounded operator)という.
証明 [線形作用素]-[有界作用素] 参照