ヒルベルト空間

定義(ヒルベルト空間) 内積空間Xがその内積から定義されたノルムに関して完備であるとき,Xはヒルベルト空間(Hilbert space)であるという.ヒルベルト空間の系数体がRであるとき実ヒルベルト空間,Cの場合は複素ヒルベルト空間といわれる.
定義(ヒルベルト空間の同形) X,Yをヒルベルト空間として,XからYの上への線形作用素Tについて,
(Tx,Ty)=(x,y)  (内積保存)
がすべての x,y∈X について成り立つとき,X,Yは同形(isomorphic)である,という.また,このような作用素Tをユニタリ作用素(unitary operator)という.また,上の内積保存の性質から,
‖Tx‖=‖x‖
となり,X,Yの等長性といわれる性質が得られる.

数列空間 l2

無限個の複素数の組 x=(x1,x2,・・・,xn,・・・) について条件
を満たすものの全体を l2 で表す.以下に,この l2 の性質を調べていく.
命題(スカラー倍) xl2x=(x1,x2,・・・,xn,・・・) とする.このとき,複素数cに対してxのc倍 cx を
cx=(cx1,cx2,...,cxn,...)
で定義する.このとき,cxl2 である.
証明 実際,次の式が成立する
よって示された.
命題() x,yl2x=(x1,x2,...,xn,...)y=(y1,y2,...,yn,...) とする.このとき,xとyの和 x+y を
x+y = (x1+y1,x2+y2,...,xn+yn,...)
で定義する.このとき,x+yl2 である.このことから,l2 が線形空間であることがわかる.
証明 実際,中線定理から,

   |xn+yn|2=2(|xn|2+|yn|2)−|xn−yn|
 ≦2(|xn|2+|yn|2)
が成り立ち,従って
となる.よって示された.
命題(内積) x,yl2x=(x1,x2,・・・,xn,・・・),y=(y1,y2,・・・,yn,・・・) とする.このとき,xとyの積(x,y)を

 (1) 


によって定めると,これは内積の性質を満たす.このことから,l2 が内積空間であることがわかる.
証明 (1)式の右辺が絶対収束することを確かめる.実際,
より示される.内積の性質を満たすことの証明は簡単なので省略する.