線形作用素

定義(作用素) 空間X,Yについて,Xの各点xに対してただ一つのYの点yへの対応させる規則を作用素(operator)といい,XからYへの作用素をTとしたとき
T:X→Y , y=Tx
などと表す.
定義(定義域,値域) 空間Xの部分集合Aの元xに空間Yの元 Tx を対応させる写像TをAからYへの作用素といい,T:A→Y で表す.またこの場合,Aを作用素Tの定義域(domain),{Tx;x∈X}値域(renge)といい,それぞれ D(T),R(T) などと表す.
定義(線形作用素) 線形空間Xの線形部分空間X0から線形空間Yへ作用素Tについて,線形性
(1) T(x1+x2)=Tx1+Tx2  (x1,x2∈D(T))
(2) T(αx)=αTx , α∈K
が満たされるときTは線形作用素(linear operator)である,という.
命題 TがX0からYへの線形作用素のとき R(T) は Y の線形部分空間となる.
証明 y1,y2∈R(T) に対して T(x1)=y1 , T(x2)=y2 となるx1,x2∈X0 が存在する.Tは線形作用素であることから,
(1) y1+y2=Tx1+Tx2=(x1+x2)∈R(T)
となり,さらに α∈K に対して,
(2) αy1=αTx1=T(αx1)∈R(T)
となる.従って(1), (2)より,R(T)はYの線形部分空間である.
定義(有界性) 線形空間X上の線形作用素について,すべての x∈X がある正の正数Mに対して
‖Tx‖≦M‖x‖
が成り立つときTは有界性をもつという.
定義(有界作用素) 有界性をもつ作用素を有界作用素(bounded operator)という.
定理 線形作用素Tがノルム空間Xで連続性
xn→x のとき,Txn→Tx
をみたすための必要十分条件は,Tが有界性をみたすことである.すなわち,線形作用素に関して連続性と有界性は同値である.
証明 必要性:Tが連続性を満たしているものとする.このとき,有界性が成り立たないとすると,どんな自然数nに対しても
‖Txn‖> n‖xn
となる xn が存在する.このとき,
とおくと yn→0 となる.このとき,
より,‖Tyn‖→∞ となり,これは仮定である連続性に反する.
十分性:有界性が成り立つと仮定する.このとき,xnx とすると,
‖Txn−Tx‖=‖T(xn−x)‖≦‖T‖‖xn−x‖→0
となり,Txn→Tx (n→∞) が示される.
定義(線形作用素の和,スカラ倍) X,Yを線形空間とする.2つの線形作用素Ti(i=1,2)についてD(Ti)X,R(Ti)Y なる線形作用素とする.このとき和 T1+T2 ,およびスカラー倍 aT1 (a∈K,KはX,Yの係数体)は次のように定義される.すなわち,
(1) D(T1+T2)=D(T1)D(T2) , (T1+T2)x=T1x+T2x (x∈D(T1)D(T2))
(2) D(aT1)=D(T1) , (aT1)x=a(T1x) (x∈D(T1))
このことから,T1+T2,aT1 はともに線形作用素であることがわかる.
定義(作用素のノルム) 空間Xから空間Yへの線形作用素 T∈(X,Y)作用素ノルム(norm of an operator)‖T‖は u∈X に対し,
と定義される.定義から直ちに不等式
‖Tu‖≦‖T‖・‖u‖
が得られる.
定義(ノルム収束) X,Yをバナッハ空間として,T,Tn∈L(X,Y) とする.このとき‖Tn−T‖→0 (n→∞)であれば,TnはTに一様収束(uniform convergence)する,またはノルム収束する,という.
定義(等長作用素) X,Yをノルム空間とする.このとき,作用素T∈L(X,Y)について,
‖u‖=‖Tu‖
が成り立つとき,TはXからYへの等長作用素(isometric operator)であるという.