行列1
■ 行列の定義
定義(
行列)
m×n 個の数 a
ij を長方形に並べたもの
をm行n列の
行列または(m,n)型行列または(m,n)行列という.a
i,jは式や関数のときもある.また,これを

A=(a
i,j)

または A=[a
i,j] などとも書く.またこのとき,a
i,jをAの(i,j)
成分という.行列の横方向の並び
行,縦方向の並びを列という.上から数えて第i番目の行を第i行,左から数えて第j番目の列を第j列という.
定義(
行ベクトル,列ベクトル)
縦にm個の数を並べた (m,1) 型の行列を
m次列ベクトルとよび,横にn個の数を並べた (1,n) 型の行列を
n次行ベクトルという.特に (m,n) 型行列 A=(a
ij) の第i行に配置されているn個の成分 a
i1,a
i2,... ,a
in の並びを A の第i行ベクトルとよび,第j列に配置されているm個の成分 a
1j,a
2j,... ,a
mj の並びを A の第i列ベクトルとよぶ.
定義(
正方行列)
行の数と列の数が等しい行列を
正方行列(square matrix)という.
定義(
実行列,複素行列)
すべての成分が実数である行列を
実行列(real matrix)といい,複素数の成分を含む行列を
複素行列(complex matrix)という.
■ 行列の演算
ある制限のもとで行列に対して和,差,積,逆,スカラ倍などの演算を定義できる.
定義(
和)
二つの (m,n) 型の行列 A=(a
ij),B=(b
ij) に対して和 A+B を (i,j) 成分が a
ij+b
ij に等しいような (m,n) 型の行列として定義する.すなわち,
のとき,
となる.
定義(
スカラ倍)
cを実数,または複素数とする.二つの (m,n) 型の行列 A=(a
ij) に対してc倍 cA を (i,j) 成分が ca
ij に等しいような (m,n) 型の行列として定義する.すなわち,
のとき,
となる.これを行列の
スカラ倍という.特に (−1)A を −A で表す.
定義(
差)
行列A,Bの差 A−B も (i,j) 成分が a
ij−b
ij に等しいような (m,n) 型の行列として定義される.
定義(
零行列)
全ての成分が 0 である行列を
零行列という.(m,n) 型の零行列をその型を明示するために O
m,n で表すこともある.また特に m=n のときには O
n で表す.
定理(
行列の演算法則)
A,B,C を(m,n) 型の行列とし,a,b

C とする.このとき,和とスカラ倍の定義から直ちに次の関係が成り立つ.
| (1) | 1A=A,0A=0,A−A=0 |
| (2) | A+B=B+A |
| (3) | (A+B)+C=A+(B+C) |
| (4) | (ab)A=a(bA) |
| (5) | (a+b)A=aA+bA |
| (6) | a(A+B)=aA+aA |
定義(
積)
A=(a
ij) を (l,m) 行列,B=(b
ij) を (m,n) 型の行列とする.このとき

を (i,k) 成分としてもつ (l,n) 型の行列を A と B の積 AB と定義する.すなわち,

のとき

となる.
定義(
零因子)
行列AとBがどちらも0行列でないときでも,その積 AB=0 となることがある.このとき,AやBを
零因子(zero divisor, nil factor)という.