転置行列2

定義(行列のトレース) n次正方行列 A=[aij] の対角成分の和 a11+・・・+ann を行列Aのトレースといい,tr(A) で表す.すなわち,
tr(A)=a11+・・・+ann
である.
定理 行列のトレースについて,次の性質が成り立つ.
(1) tr(cA)=ctr(A), cは複素数,Aは正方行列,
(2) tr(A+B)=tr(A)+tr(B), A,Bは正方行列,
(3) tr(AB)=tr(BA), Aは(m,n)型行列,Bは(n,m)型行列.
証明 実際に成分で書き下せば明らかだから省略.
定義(上三角行列,下三角行列) 正方行列 A=[aij] について,i>j のとき aij=0 ならば,Aは上三角行列である,といい,i<j のとき aij=0 ならばAは下三角行列である,という.これらをまとめて三角行列という.
定理 行列A,Bがともに上(下)三角行列であれば,和A+B,および積 AB はいずれも上(下)三角行列である.
証明 A,B が上三角行列を考える.和A+Bが上三角行列になることは明らかなので省略し,積ABについて考える.A=[aij],B=[bij] をn次正方行列とする.ABの第(i,k)成分をcikとすると,
となる.ここで,i>j のとき,aij=0,j>k のとき,bjk=0 なので i>k のときは,cik=0.よって,ABは上三角行列である.下三角行列の場合も同じだから省略.