河原
家のすぐ近所に川がある。
この河原、小さいころに不思議な事があった。
ある夏、私がひとりで河原で遊んでいる時だった。
背の高い、黒いコートのような衣服をまとった人がこう言った。
「そこの砂を掘ってごらん」
私は何の気なしに河原の砂(・・・って言うか砂利)を掘ってみた。
そこからはなぜか生きた魚が出てきた。
私はその魚を手にとって川に放してやった。
その人はその光景を見て、「あっちも掘ってごらん」と言って別の場所を指差した。
私は言われるままに砂利を掘り始めた。
・・・また魚が出てきた。
何度かそういう事を繰り返して、気がつくとその人はいなくなっていた。
私はひとりで川に遊びに行くと、かならずその河原を掘るようになった。
なぜか魚が出てくる。
しかも生きている。
私は魚を掘り出しては川に放すという行為を繰り返していた。
それはひとつの遊びにしか過ぎない行為だった。
「生きた魚」が砂利の中にいる事になんの疑問も持たなかった。
ただ、それは宝探しのような遊びでしかなかった。
やがて秋がきて、寒くなってきたので河原で遊ぶ事はなくなった。
そのうち、ひとりで川に行く事もなく今まで過ごしている。
その河原は今もそこにある。
今、河原を掘るとどうなるのかわからない。