汁垂沢(丹沢 宮ヶ瀬)
最近 なかなか自転車を引っ張り出せない。土山峠を登り切るのが辛いという弱気な心が「下山ルートを好きに選択できるから」という理由に置き換わり、「自転車は帰りが楽だぞ」という気持ちを押し返す。
終点から早戸川林道に入り歩く。自転車では何十回と走ったところだが歩くのは四十年ぶりということだ。昔には山道だったが、今では舗装道路に変わっている。道筋も小尾根を越えて宮ヶ瀬金沢を堤防の上の歩廊で渡ったのがダムが出来てからは湖岸に沿ったものに変わったので似て非なる路なのだが、単に付け替えたのだとも言えなくも無いから、同じと言えば同じだろう。
(アレッ 言葉がなんか変)
たしか、あの時は鳥屋鐘沢に行こうとして夜道を歩いたのだった。夏の日である。四人くらいのパーティーだったと記憶している。Kさんがリーダーだった。予定どおりに宮ヶ瀬鐘沢の橋のたもとで仮眠体勢に入ったのだが、寝付く前に全員が蛭に吸い付かれ、山の静寂の中に轟き渡る「もう いやだ」との大声を響かせて橋本屋(宮ヶ瀬バス終点の売店)の前まで夜道を退散したのだった。
そのKさんは昨年夏の日に突然の病で亡くなった。
その2年ほど前、先輩の送り出しパーティで久しぶりに会ったときに
「おまえ暇になったら、もう一回あの甲斐駒へ行こうよな」と言ってたなと思い出す。
そして今となっては実行不可能な山行計画書が、一枚、また積み上がったのだった。
この計画の山はどうやって取り崩せばいんだろう。
通常なら林道は各所で凍結していて自転車で走るのも慎重にならざるを得ない時期だが、路面をこすれば露が僅かに凍り付いていることは確認できるが、今冬は目に見えるような凍結箇所は未だにない。路肩の上の林の中からは鳥が歌い、獣が鳴く声が伝え聞こえる。バード・ウォッチングの団体さんもまだご出陣の時間ではないらしい。
対岸に虹の大橋が見えると汁垂橋は近い。
橋の向こうは汁垂隧道である。その橋を渡らずに袂から右岸側に降りる。以前に歩いたときは沢床に降りるまでのきつい茨に難渋した記憶がある。それに、もそもそと動く動作が湖上の監視カメラに胡散臭く写ったらしく拡声器から「すぐに退散しなさい」との警告放送も受けたが、今回はステップ付きの仕事路がついているから、動作もスムーズにいき、監視システムもうまうまとくぐり抜けたらしく楽勝である。仕事路は湖面が上がったために水の中に隠れたのを一番目の砂防堤とすると三番目の砂防堤を越えたところで沢床に降りる。
汁垂沢は出会いの橋の上からなら手が届く距離に山稜が見える程に感じる小さな沢である。沢床に入り急傾斜に山腹を登って30分もあれば沢は終わりと、そんな風に感じられるのだ。
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汁垂橋の上から 宮ヶ瀬虹の大橋
実際に短い沢なのだが、沢床につくと狭いながらも平坦な流れが山腹をくねって僅かに古い小さな石堤が数mでの僅かな傾斜を感じさせるだけで奥に続き、沢の形態を思いの外にしっかりした長く保っている。途中にはつぶれた炭焼窯が三箇所四箇所ある。滝らしきものが見えてくるのは稜線が指呼の距離に来てからだ。
二俣で水が流れている右に最初の滝がある。5m程の高度差で右から岩にしがみつけば登れそうだが、今日は左側から小さく巻いて登る。この滝から先の石積み堤防までは両岸が狭まり小さなゴルジュ状になっている。でもそこは通行困難なんて事はなく、ただ舞積もった枯れ葉が流れやよどみをカモフラージュしているので、そこを大地勘違いして踏み込むと靴がずぶずぶと沈み込んで膝の深さまで濡れてしまう事くらいが困ることかな。
3m滝(平板岩の一番奥が滝となっている)
3m滝は流れの左脇を登る。砂岩が思いの外にフリクションが良い。四m二段滝は右から登るが、ホールドが無いので木の根っこを頼りにしたら、根っ子が動いて上に止まっていた小石が落っこってきて頭に当たる。コツンと痛みは感じたが、小さな石だったこともありヘルメットをかぶってくれば良かったという程の事でもない。最後の3m滝は長い平板(鳥屋待沢の幕岩を小型にした感じに似ている)の左端が滝になっていて、その左端の先の砂地を登ると先が石積砂防堤となって奥の二俣である。
左は狭い隘路状の窪がくねって山の中に入っていく。以前来たときには、この左側を登ったと思う。今日は流れのある右を選らぶ。しかし、どっちを選ぼうと短い沢である。既に沢は終わりに近い。小さな滝を二個ほど越えると水は消える。そして急な露岩が上の稜線への間を遮る。この露岩は左から回り込めば逃げることが可能である。傾斜度は60〜70°と手頃だし、純層で登りやすそうなので、登高距離が短いこちらを選ぶ。ただし、人の手に触れることの少ない露岩である。顔ほどもあるホールドと思った岩角が体重を掛けた瞬間に抵抗もなく崩れ落ちることもあるから岩場を抜けるまで気は休められない。そして岩場を抜け50m程緩傾斜を登ると黒樅の大木二本が立つ小さなピークに着く。木々の間から宮ヶ瀬湖畔の家々がすぐそこに見える。
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P470m(おおよそ)のピークに立つ黒樅?が二本
ここからは踏み跡がある。それほど多くの人が歩いた跡ではないが、方向を定めるには十分な濃さだと思う。小さな鞍部を越え、左手の鹿柵を途中から右手に変え、その鹿柵が途切れ、なだらかに登っていくと「春の木丸(ヒノチ山)」の分岐に出る。ここからは整備された良い道が続く。宮ヶ瀬金沢方向から複数の犬の鳴き声が響き、どうやらこちらに向かっているようだから、小一時間もしないうちに辺りは鉄砲打ちの世界になるだろうと思われる。そんな犬に追いつかれないためにちょっとだけ急ぐことにする。途中の石祠にご挨拶すると御殿森の頭下まではすぐだ。
御殿森の頭まで行ってから下りをどうするか決めるつもりだったが、
「一日三食キチンと食べて規則的な生活をして下さい」と指導されているのだが、朝飯を今日は食って来なかったことを、その場所で思い出した。そんなことで家に帰って朝飯を食べるため下山路は最短の宮ヶ瀬を選ぶ。
前回の記録
汁垂の小沢 宮ヶ瀬(1999・12)
自宅6:45〜千頭橋7:07〜宮ヶ瀬7:40〜汁垂橋8:00〜汁垂沢〜最初の滝5m8:30〜P470m9:10〜春の木丸分岐9:20〜御殿森頭下(登山道)9:30〜宮ノ平(宮ヶ瀬)9:45_9:52〜千頭橋10:25〜自宅(朝飯)10:40
2007/01/28 完璧な晴れではなかったが、まあまあ暖かくまあまあ晴れた日でした。
沢のページ マシラのHP