雪の寿岳(塔ヶ岳 日高よりキューハ沢出会いへの尾根道)1331m


雪の山を歩く
鹿と兎とイタチとリスと犬以外は歩いていない雪の中を歩く
鹿も兎も歩いていない雪の中を歩く
歩いて歩く

日だまりを、吹きさらしを、稜線を、樹林の中を
膝まで潜り、腰まで潜り、あるいは雪面を軽やかに歩く
辺りの景色も気にせず上空の天気にも煩わされずに
歩くために歩く

まるで人生を追いかけるようなフリをして
でもそんな小難しいことは何にも分からないから
考えるフリだけをして
歩くために歩く

そんな歩きの時はリズム良くタッタカタッタカGOGO行きたいのに
今日の雪面は不規則でタッタカズボッズボッ、ひっくり返り
人生と同じ、思うとおりには描けない
おもわずコンチクショとののしり
何にも考えずに歩く

あ〜あ すこし疲れたけれど気分がいいね

   今日のストックは深雪用に一寸長めです


朝の道路はつるんつるん。仕事に行く車が通るだけ。柿木平から土山峠への登りの道はいたるところガードレールの脇が凍結していてやむを得ず道路の中央を自転車でのっそりのっそり進み、後方に車の気配がすると乾いたところを探していったん立ち止まってやり過ごす。厚木市内にはもうこの前の降雪は残っていないが土山峠から先の宮ヶ瀬はまだまだ一面の雪だ。

 宮ヶ瀬湖辺りの標高は400m程度だから多少の寒波でも日中には融雪して、夜間にそれが凍結する。この中途半端さが朝方だけ日影にツルンツルンのアイスバーンを形成する。宮ヶ瀬のもう少し高地、例えば丹沢観光センター辺りまで行くと、ほとんど凍結したままで降雪は昇華作用によってその量をへらしていく。この場合は一面が凍結しているからそうなったら自転車を降りて行くしかないが、土山峠周辺だと、どこが凍っているか地形を見て事前に判断して予め減速したり降車して安全のためには待避する様にする必要がある。それでも伊勢原〜宮ヶ瀬線はまだ凍結防止剤でも散布されているのか凍結量は大したことはない。三叉路から札掛への県道に入ると積雪も増すがそれ以上に凍結場所も増えてくる。多分、その朝方の凍結に起因するのだと思うが、バンパーをまくり上げ助手席からそのバンパーを支えながらと、前哨部がぺちゃんこの車が相次いで走って行く。路肩には側壁に運転席をこすりつけたままの車も2台。通りかかるのはこれから山仕事に行く車が数台だけ。

 ゲートをくぐると塩水橋から先の本谷川林道、瀬戸橋の手前で新しい崩落があり、堂平に仕事にいくおっちゃん達が車で行くためとりあえずの落石を取り除いている。キューハ沢に続く本谷川林道は予想に反して除雪されていて、無論、凍結のため車輪の空滑りはしょっちゅうだが、それでも何とか自転車で走ることが出来る。この除雪は本谷川の吊り橋の手前で林道が昨年竣工した直後に発生した崩落の対策工事の為の物だったから、崩落場所から先はいきなりの積雪となり、自転車はここに置いていく。吊り橋から先のモチゴヤ沢までは二人ほどスノーシューズで歩いた跡があって、膝下までのラッセルを少しは楽にしてくれるて助かりだよ。
 モチゴヤ沢からは降雪後にはもう人は歩いていなくて、動物達の天国だ。縦横に鹿跡や兎、リスの走った痕跡が残り、しばらくは人間達が入ってくる心配はないと彼らは勝手に思いこんでいるようだ。
 ある浅い角を曲がったところで鹿が土手の土を無心になめていた。彼はまったっく無防備だったので、人間になれている鹿かなと思って、5m程の距離で驚かすつもりは無かったので『ほ〜ほ〜』と軽く声を掛けたら彼はギョッとして反射的に横走りしたが、雪に足を取られてそのまま横転してしまった。さすがに野生の鹿だから横転しても、すかさず立ち上がり道路暫く走ってから土手を掛け登って逃げていった。

 大棚沢の出会いから本谷川に入る。沢沿いは早速の腰上までの深雪となり、次に川面を渡る時、いきなりのツルッで片足が水の中。続いて凍った水たまりの上の雪たまりを足がかりに岩に登ろうとしたら、足がかりの雪がそのままズボッと水たまりに腰上まで沈没してしまって、へそまで冠水する。足の中、パンツまでも冷水でもまれて、おまけにゴアテックスでラミネートされていると信じて買った3000円のマウンテンウォーキングシューズが水に全く抵抗の無い安物だったとこの前に気が付いたので、このまま進んでもう何回か水の中に沈没してから稜線に上がったら凍傷間違いなしだろう。

 沢沿いの遡行はあきらめ、さっさとキューハ沢まで戻りルートを三角の頭から1331m(寿岳)の尾根に変更する。

 この尾根はキューハ沢の付け根から小尾根を忠実にたどり、三角の頭から日高に続いていている。1331m(2等三各点)ピークはその途中にあって寿岳と誰かが勝手に命名している。このネーミングは昔っぽいけど、場所の雰囲気からはよい名前だとかなり気に入っている。運動靴の中は先ほどの水でたっぷり濡れているが幸い指先は暖かい。土手を上がり、おそらく一匹の鹿が何回か忠実に尾根をたどって上がり下がりして付けた踏み跡を借りて登る。最初は膝下だった雪が傾斜が急になる頃には股下までになる。鹿が付けてくれた踏み跡も彼の縄張りの範囲を超えたのか無くなってしまう。風が吹きさらすところは堅く絞まって沈まずに歩くところも所々にはあるが、たいがいの所は表面は堅い様に見えるが一次的に融けた雪面が粗目になっているだけで体重を表面で受け止めるほどは強くなくって、立ち枯れ木2本のストックで体重を前に掛け、雪面に立ってから腰まで沈み込みの苦しいラッセルが三角の頭に至るまで続く。樹林の中に竜が馬場がそぐそこだ。照葉樹林に入って傾斜が緩くなり、それまでのきついラッセルから膝までのラッセルに変わってから暫くして積雪に柱の大部分が埋まる寿岳の標識のある1331mに達する。下り一五分程の時間を登りに、二時間たっぷり掛けて登ったことになるが積雪の状態から見ると一人にしては早かったかな。

塔ヶ岳の山頂に立つ山小屋がすぐそこに見える。三峰に時々かかるガスを見ながらさっき来た踏み跡をたどって尻敷があれば雪にまみれて尻セード出来そうな斜面を一時間ほど掛けてキューハ沢の出会いに帰る。本谷川林道の帰り道は雪が朝方より更に柔らかくってズボッズボッズボッとうずくまりながらもう動物も徘徊していない踏み跡をよたりよたり歩く。吊り橋には『丹沢山は大雪で大変だったよ』と教えくれた同年代のおじさんが帰り支度をしていた。そう言えば先週、大倉の山岳SCに行った時は大雪の真っ最中だったからバス停前の樹木は倒れる、吊り橋は揺れる状態で大変だったな。



自宅7:00〜塩水橋〜瀬戸橋〜吊り橋〜キューハ沢出会い8:40〜お化け沢〜キューハ沢出会い〜寿岳11:30〜キューハ沢出会い〜吊り橋12:50〜自宅14:00 2001/02/04(薄曇り)


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