駅まで歩いてリハビリ行きのバスに乗る。5時50分は少々早い時間帯だが、早く出かけないと「またまたまたまたです。どうしましょう?」という電話がかかってくるかもしれないから、そうなったら出かけられない。急いで出なくちゃあ。
 でも一歩立ち止まって考えたら、稼働は土曜日の22時迄だったことを思い出した。日曜日はさすがに休みなんだよ。だからこそ、昨日は久しぶりに自宅に帰り、床に入って寝たんだっけ。
 そうして朝まで寝たのって先週は一日しか無かった。今日は一週間の出来事で頭の中にたまった心の垢と恥を山の中で洗って落とさなくてはと出かけたんだった。

 馬場リハビリ入り口で降り、小金井君ちの前を通り、七沢の奥に位置する旅館方向に10分ほど歩き、小高い丘の上にある七沢旅館の玄関前を突っ切ったら玉川を渡り広沢寺に入る。
 山には靄がかかり、雨は止んではいるが、これからも大丈夫かどうかは分からないように感じる。もしも体に感じるほどの雨量だったら今日は帰ろう。そう思って出かけてきたんだ。

 弁天岩への道を左に見て山神隧道へ進む。水に濡れたコンクリの道は傾斜が増してぬめぬめと滑る。大平の石切場あたりの前後は道端を杉の大木に覆われている。杉の暗い道は嫌いだという人も多いがマシラはそうではない。だって日光の並木だって杉だろう。手入れされた杉というのはスクッと天に向かって伸び、それを見上げると杉の木が空に吸い込まれていくように自身の気も高く遠くなって洗われるように感じる。その先の10年前には人が住んでいた家も今では廃屋になってしまった。七沢城址付近では雨が降る可能性もあるって思っていたのに、わずか15分後の山神隧道を抜けたところから見た山は雲は上空に上がり始め、これからしばらくは雨は無いと感じた。

 旧不動尻キャンプ場管理棟跡の手前の沢の右岸につけられた仕事道に入る。八太郎川は三峰方向にいくいのが本流だと思っていたが、水量から見れば、こちらの方が多く、本流はこちらでも良いのかもしれない。仕事道は浮き石が多く歩きにくいが、それでも沢沿いを歩くよりは遙かに歩きやすい。

 目指す不動の滝まではキャンプ場から五分ほどで着く。ここまでは数週間前にも訪れた。
 仕事道から沢に降りて、滝をさてと眺め直す。今日は曇り空、普段でも暗い周辺がなおいっそう暗い。シャッター速度を1/2秒くらいに落としても尚暗い。手ぶれを防ごうとすると1/10秒以下は絶対ダメ そう思っていてもカメラは言うことを聞いてくれない。石の上にカメラを添えてシャッターを切ることくらいしか、ぶれを防ぐ対策が浮かばない。これは結構有効だとおもうが、いつもいつも手身近に手頃なカメラ台があるとは限らない。急な滝場になればなるほど手持ちでシャッターを切らなくてはならない確率が増え、勢い何回もシャッターを切って、そのうちの一枚くらいまともだろうと期待するのだ。言ってみれば下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると考えるが、相手となる獲物だって馬鹿じゃない。一発目が当たらなければ逃げの体勢に入り、次を構える前に逃げれるだけ逃げるから、一発目より二発目、二発目より三発目というように距離だって遠くなって立つ確率は指数関数的に低くなる。それと同じで一発目のシャッターでうまく撮れなかった画像が二枚目三枚目でうまく撮れるなんてことは少なく、まともなのが全くとれない場合も多い。だから、これぞというシーンほど、みんなに見せられないのだ。単に腕が悪いだけなんだけどね、何かとメカのせいにしたいマシラである。

不動の滝
 その滝の左のドロ斜面を登る。仕事道に戻り、二つほど砂防堤を越える。左岸に渡り、更に仕事道を進むと右手にガレ崖状の滝から水が落ちる。上には窪地はないから滝の上で水が噴き出しているんだろう。

 そして、右手に傾斜度45°ほどのナメ滝がかかる二俣である。本来はここに入る予定でいた。でも、まっすぐ進む流れの少し上流には、すてきな滝が一つか二つあったはずだった。それを見てから、ここに戻っても、それほど時間はかからないだろう。見に行くことは行きがけの駄賃だと考えたのだ。
 そして今日はここに戻れず。よくあることさ。
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左俣出会いの8m滝
 さてと 石ゴロを進むと左岸に直瀑8mが見える。流れはその直瀑方向と直進方向に分かれる。直進方向には水はあんまり流れていない(こっちにも奥には滝があるんだよ)
 直瀑の左側を簡単に乗り越える。そうすると次のが見える。流れを石が割って出来たような6mの滝である。もちろんこれも登れない。流れ左に木の根っこが階段状に並んだ巻き道があるのでそれを使う。
石割の滝の上にはナメが続き、その先を見るとアッチこっちから水がしみ出し岩を伝って流れ落ちている湧水帯となる。それも一箇所二箇所からしょぼしょぼ吹き出すのではなく、幅30m高さ50m程の一面全体から水がしみだしているのだ。
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石割状の滝(左俣F2 6m)
 八太郎川の水源は尾根を一つ越えた唐沢川の伏流水だと聞いたことがある。確かに、あの川の中流(唐沢峠から30m程の標高差で沢床になる)の標高から吸い込まれたと考えれば、その水がこのあたりで湧き出したとしても高さ的には合理性があるとは思う。けどさ、それだけで決め込んで良いのかな。誰が既に確認すみかもしれないが、論理的な水脈調査をして確かな証拠を示してくれなければマシラは信用しない。
 その湧水帯の一番右端が滝になって奥に続いている。滝の高さは14,5mはある。傾斜はそれほどでもないが立派な滝である。
 登れるかな。でも、もしも登ったらロープなしのマシラには下れないかも。そうしたら上流に進むしかない。その場合には今日の行き先からは逸脱することになるけど、戻れないのだからしょうがないだろう。それに、この先にはもう一つすてきな滝があったはずで、どんなだったかは忘れたが、それも見ておきたいじゃないか。
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あたりは一面の湧水帯
 ところがだよ、易々と登れると見た滝なんだが、一つ問題が生じた。ホールドにする岩が剥離するんだ。手で引っ張ってみたときには
「大丈夫 利いている岩だ」
と思えた奴が、いざ全体重を掛けると、抵抗もなく「スポッ」と剥離する。一回目は危うく後ろにのけぞりそうになった。それからは慎重に確認したつもりなのにもう一回。その時は2/3は登り切っていた。もう下には戻れなかった。
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湧水帯右端の15m滝(下部の岩はボロボロ)流れの左端を登る
 登るしかない。そう決めたが、先ほどの岩の剥離に体が怯えてなかなか上に体が動かない。そんな気分にならなければ、いとも簡単に登れる岩だとは思うけど、慎重に慎重に しかし、慎重=安全では無い / 慎重=マシラの場合はへっぴり腰になる構図はいつものことで、および腰の分だけ不安定さを増して、同じ場所を登るとしてスパッと大胆に登るよりも、この状態は明らかに危険だ。石橋は叩きすぎると橋そのものが壊れて渡れなくなる。岩は叩きすぎるとホールドが崩壊して上にも下にも動けなくなって自落の道を辿る。自戒だな。
 もしもフリクションに心配がないと体が感じれば、この滝はしごく簡単な登りだと思う。

 滝を登り終える。あたりは岩に覆われ、抜け出すには上に進むより無い状況だった。目の前には左は垂壁、右も急なスラブが立つ。左の垂壁の中程から水が噴き出している。正面はえぐれて出来た4m程の滝があり、その上も滝になっているようだが、下からはどうなっているのか分からない。下れないので登るしか手がないだが、でも、ここって登れたっけ!!! 登ったのを「止めとけば良かったのに」と、ちょっぴり反省する。(登れるのだ)


 三方を覆われた井戸状の一番奥にある4m滝に取りつく。幸いに岩はフリクションが利く。一歩上がったら体重を保持できる手がかりが腕を上した所にあった。そいつでグイッと上半身を呼び込み、左足を苔の上に乗せ、その反動を使ってもう一歩上がると最初の一番目がクリアする。そのまま2m進んで深い凹状溝の一番奥に身を反転させて入れると両肩を岩が支えるので安定する。ここからの登りは面倒かもしれないが、立ち止まっているだけなら落ちる心配をしなくても良い安心できる場所である。前方を眺めると、右岸2m先の岩からは消防車の放水口から出るような勢いで水がはじき出ている。それも二箇所である。伏流水が言われているように本当だとすると、まさにこここそ唐沢川の放流口に当たるのだと感じる二段目の凹状滝への小テラスであった。
 深い凹状溝は、左右を支えにして右のリッジのホールドを使って乗り越える。下の4mよりはいくらか易しかったと思う。そして三段目は易しい。三段合わせて12m程だった。すぐに四段目の小滝が続くが、これはもう問題ない。
 この滝場が、この沢を楽しくさせてくれるが、いつでも退却できように、出来たらロープは持って行くべしと思う。
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水がほとばしり出る(唐沢川伏水?)
 そこからはゴーロである。昔の記憶では、もう一つ二つ登りがいのある棚があったと思うのだが、それらしきものは無く、埋まった滝の跡もなく、キッと昔の記述が間違っているのだろうと思えるほどだった。

 ボチボチ稜線が見えてくる頃の高さになると傾斜は急になり、岩場の中の溝を登ることになる。しかし浮き石でも掴まない限り、転がるような心配はない登りである。

 今日の歩みは遅い、自分でも「調子悪い」と感じるくらいに遅い。予定では7時は沢に入り、8時には沢を抜け、9時にはバス停に着いていて10時には自宅のテーブルでお茶を飲んでいるという目論見だった。それが9時になるというのに石に足を取られ、傾斜面の泥に足を流され、10歩歩けば心臓はばくばくして一休みを繰り返して、まだ沢の中にいる。予定より二時間は遅れている。

三段12mを抜けて 下の井戸状を振りかえり見る
 やっぱり疲れているのかな。
 仕事に体力とられてしまったのだろうか。ただ席に座っているだけなのにね。それでも疲れるんだよな。
 そうそう、週末にはとうとう堪忍袋の緒が切れて、上司に「そんな無責任でいいのか」と怒鳴ってしまった。一時間後には業者さんを呼びつけて「ふざけるんじゃ無い」とまたまた怒鳴りつけ、彼等とて一生懸命やっているのは知っていて、僕の応援団だとも認識していたのに、些細なことに腹を立てて。
 上司に向かって怒鳴ったのは後悔していないが、弱い立場の人を怒鳴りつけるなんて「あ〜あぁ 俺ってだめ」
 後悔、先に立たず。何事も イライラするときこそ ゆっくりゆっくりだな
 今日はその時の灰汁を吐き出せたかな

 大山から不動尻至る唐沢峠直前の鎖場付近の稜線に出る。

 大山方面に5分ほど進み、広沢寺への道に入る。大沢分岐で日向薬師方向に行き、一つ目の支尾根の分岐では左手方向に進み(明確な仕事道は付いていないが境界杭はあり)、水辺の広場より少し先で弁天の森キャンプ場への道に下る。こうして広沢寺に下ることが出来る道一つ新しく覚えた。このルートは辺りでは最短で下ることの出来る道である。

 大沢(弁天岩の前の流れをそう言うらしい)ではヤマメが走りまくる、大釜弁財天では80人ほどの人でごった返していた。弁天岩(最近はナメリ岩と旧名で呼ぶのがはやっているようだ)NHK横浜の兄ちゃんたちが「すてき旅」の撮影準備に余念がない。撮影されるモデルさんは、どこかで見たことがあるご夫婦である。マシラは見ないし映像に出もしないが、もしも皆さん、11月4日放映予定だというから暇があれば朝八時を楽しみにして下さいな。

 歩道には日が射してきて、のどかに暖かい。鐘ヶ岳入り口で鷹の爪を選んで今日の土産に一袋買う。
 ゆったり歩いたこともあったのか、バスの時間が合わなかったので農協玉川支所まで歩き、産直販売の野菜の山を見物してからバスに乗る。バック持参あるいは自転車なら、この直売場の野菜は山と積まれ、品数豊富、新鮮でかつ安く、お勧めだ。たくさんの人がたくさんの野菜を山と買っていく。さあ、明日からまたがんばろう。今週は癇癪無しを心に決めてさ!

前回の記録  左俣不動尻の無名沢  今回行けなかった右俣不動尻の無名沢


写真集です お時間あればどうぞ

尚、本沢の名称を左俣→中俣に変更します(名称自体が仮称です) 2007/04/08



自宅5:20〜本厚木5:50神奈中バス〜馬場リハビリ6:10〜広沢寺6:30〜山神隧道6:55〜不動尻7:10〜不動の滝7:20〜不動の沢(仮称)〜左俣(正確には中俣にあたるのかも)8m滝下7:50〜14m滝8:05〜井戸状の滝12m滝の上8:35〜稜線(登山道)9:05〜広沢寺への分岐9:07〜大沢分岐9:25〜日向薬師方向に向かう〜一つ目の支尾根を広沢寺方向に下る〜弁天の森 水辺の広場9:40〜弁天の森キャンプ場の管理棟は撤去されていた〜大釜弁財天〜弁天岩(ちょっと撮影現場を見学)10:05_15〜広沢寺入り口10:30〜農協玉川支所まで歩く10:56バス乗車〜厚高前11:15〜自宅11:30 朝方曇りぽつぽつもあり、帰宅時には青空がだいぶ広がっていて、暖かく過ごしやすかった。20061029

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