先週は箱根に行った。
  期限切れが迫ったクーポンがモッタイナイということが第一の理由だったので、ユミコちゃんと二人で高級旅館に泊まって温泉を楽しんだ。翌日は暇つぶしに旧街道を歩いて芦ノ湖へ行き、行きがけのついでと箱根神社から大湧谷から強羅へと足を伸ばした。
九頭竜神社では結婚願望の若い女性の集団に取り囲まれ、小学校の修学旅行以来四十数年ぶりの記憶の中にだけ残っている大湧谷の硫黄の匂いを新たに記憶に納めた。更についでということで強羅までを山越え行く。
 ほんの散歩気分だったが、全行程徒歩だったせいか「ぜんぜん大丈夫」って強がっていたユミコちゃんが強羅駅に着いたとたんに、「もう一泊して汗を流さないと帰れない気分」というので、その場を取り繕うため年明けの旅行の約束だけを口先でかわしてルンルンと帰路についた。なにはともあれ楽しい一時が過ごせてたのだ。これで今年は良い年だったとユミコちゃんの頭に残れば安く済んだ良い旅行だ。
 おっと、まだ年越しまでは二週間はある。まだまだ山遊びに行くぞ

 最近弱気になったらしくバスに乗っていく機会が増えた。帰路を自由に選択できるという自転車とは違う利点も感じているが、ちょっと寂しい気分もある。気力さえあれば何でも出来るなんてのは若い人には許されても、年をとってからの根性論は事故のきっかけにはなっても、安全確保に対しては害あって益無しだと考えている。その論に従うよりしょうがない年になってしまったのだ。ただ、実際に普段の行動が、その通りに行っているかと問えば、「明日に向かって」の二人のような反抗的な目をしている青年も時に頭の中にいて、なかなか一様に収まりがついていない。
 この先、一体どうなることやら、情けないことに「60をめの前にして」いまだ惑うマシラがいる。
 「60にして耳に順う」という言葉を正しく行動できるのは一体いつのことになるんだろうか。
 ああ、山の話しのつもりが、何を書いているんだろうか。心の中がハチャメチャ、どうしたら良いのか分からない。そんなときは元の話題に戻すに限る。

 光福寺で野球練習の高校生が降り、それからは煤ヶ谷、坂尻、土山峠と数人ずつが降りて、仏果山でもバスが止まった。そして三叉路入口で全員が降り、空のバスが終点に向かった。
 札掛けに向かう車道の水溜まりの水はすっかり凍っている。朝日が当たる湖面からは霧が立ち、日陰の剥き出しの土の斜面は一面に霜が降り、反面日のあたる土の上はポカポカと湯気が立ちこめてあったかそうだ。寒さが判る気がする。
 そんな中を、朝日を浴びて歩くのは気分がしゃっきりとしてすがすがしい。ワカサギ釣りの人の影がチラチラするが、魚籠を覗き込んでも何れも全く釣果なしの状況で、みんな竿を欄干に駆けっぱなしにして暇をもてあましているようだ。ワカサギは周遊するので釣れるときは忙しいが、そうでないときは全くつれないらしい。
 ヘアピンカーブ前の広場にはモータライダー達が集まり、なにやらセレモニー中だった。広場にあったちっぽけな慰霊台はとうに撤去されたが、先のヘアピンの事故って亡くなった仲間へのローカルな追悼でも催しているんだろうか。その一角だけが寒々しい。
写真削除
仏果山に朝の斜光が刺す
 ヘアピン先で中津川にかかる橋を渡ると、橋の袂から滝の沢・および左岸尾根へ取り付くための仕事道に入る。
 この道は滝ノ沢までの急斜面に鉄パイプを刺して固定した鉄板道施工で、5〜6年前に作られた比較的新しい仕事道である。旧来の道は中津川から沢沿いにあったのだが、ダムが作られ、湖面が上がって、F1は全く水の中に沈み、当然道は没したため代替として設置されたらしい。湖が出来てから道が造られるまでは5年ほどの間隔が空いたので、その間に滝ノ沢に行くには、道無き急斜面を必死の思いでトラバースするか、渇水期に水が無くなったのを見定めて川を横断するよりなかった。そんなだったので、だれでも滝ノ沢に入るなんてことは許されなかったのだ。そのせっかくの新道なのに、不安定な地質にセットされためだろうか、つけられて何年も経っていないというのに、途中何カ所か既に土砂に押し流されて壊れている。そんなでも、この道が無かったと考えたら形が残っているだけでも大助かりである。
 鉄板梯子を降りて沢に着いたら、仕事道はそのまま沢を横切って向かいの斜面に入る。30mも進むと湖側に斜行すると右岸の仕事道がはっきりする。


滝ノ沢F1(仕事道から一段下がって見学だ))
 でも。今日は尾根ではなく沢である。
 
 沢はと言えば
 石がゴロゴロする間をしばらく行くと、直ぐに岩床になる。左側から押しかかる大岩の下に瀞に小滝がある。もともと小さい瀞なのだが、大半は砂に埋まって極小状態というのが心なしか寂しい。少しだけ間を開けて、先ほどのと同じような大岩と瀞が再び。こちらの方が若干大きいが、右側から簡単にパスできる。更にV字状の谷間に小滝が何カ所かかかる。その場所は岩床、もしくは数m上がった傾斜地の岩の感触を楽しむような簡単な歩きが続く。難しいところは全くない。
写真削除
小さな瀞 右手を簡単にパス可能
 そして二俣へ
 左俣にはナメがかかる。右俣の入り口は小滝。
 中央は、急な傾斜の小尾根が、左右の流れをわけ、その最下端の根元には炭焼窯の跡が残る。少し前まで、このあたりでは炭焼が盛んだったという。ただし地味が痩せている鍋嵐は炭に取れる椎楢などの樹勢が弱く、請ける入札価格に比較して儲けが出にくく、鍋釜などの財産を失うことが多かったからナベ・アラシとなり、更に鍋嵐と転化してきたとのと称されたと聞いたことがある。岩がむき出した山肌を見ると、そんなことも実感できるような地形である。

 さて二俣では右に入る。小滝を左から巻き、岩床の流れの中を進む。
 今日履いてきた靴は通勤用である。少々くたびれ、底が摩耗して薄くなり、ひびが入り、雨の日に歩くと水が染みこんでくる。もう捨てても良いと思っているのだが、ところがどっこい一つだけすごく良いことがある靴なのだ。靴底はスポンジ状のように柔らかく薄めでフリクションはすこぶる良いのだ。そんなだからゴツゴツの少ない平ったい岩床を歩くのに最高に適した靴と言える。
 滝ノ沢は岩床が山稜まで続く。二俣から先の傾斜したスラブの岩を快適に進むには絶対フリクションが必要だ。それが判っているから履いてきたのだった。
写真削除
下部は緩く上部は少しだけ急なナメ滝
 そして8mの滝、傾斜は緩いが逆層なのでフリクションが欲しい。巻くことも出来るが、それじゃモッタイナイ。
 中央を登り、中段まで上ったところで流れの左側に移り、水際をフリクションで上る。快適快適!
 岩床の流れを進むと右手に小沢が別れる。10m程の滝がかかっている。この滝 登ったことあるような気がするが、今日はパスして本流を進む。両岸が徐々に狭まってきて左右も下も全てが一枚の岩で構成されている谷間をヒタヒタと歩く。
写真削除
岩床の上のスラブの6m滝 フリクション頼りのぼりとなる
 その歩みの続きは6mのナメスラブ滝である。傾斜度60〜70°程度。
 この滝は靴が良くないと登りにくい。今日はそのために靴を選んできたのだ。ちゃんと登らなければ、せっかく用意してきた靴の備えが無に帰す。
 フリクションは予想通りにばっちりだった。小さな手がかりを起点にスタンスを決める。水に磨かれた岩の感触も良い。絶対にスリップしないという感覚が足裏に伝わってくる。
 こんな気分の時、岩の登りは快適に尽きる。ただし、手がかりが剥離することもあるので用心は怠ってはならない。と言っても、滑って落ちても、下に待ち受けているのは一枚岩の表面に凹凸無く掘られた1mの水釜だから、擦り傷以上の怪我を負いようがない。
 岩床は5m程の下のえぐれた滝まで続く。その滝は右側から巻く。この沢で唯一巻く滝だった。

緩い岩床だが徐々に角度を増してくる
 このように、この沢では滝の部分は難しくない。
 ただし、山稜に上り詰める後半部分は、全体が滝ともスラブ岩とも区別出来ない40〜50°程度の急傾斜が続く。その部分部分に短く急な棚状も混じる。もしも、そのどこかでスリップしたとしたら、どこであっても数十mの転落は免れないような傾斜地がずっと続くのである。そんなところを快適に安全に登るにはフリクションが良い靴が必要なのだ。沢靴でも良いし、クライミングシューズでも良いだろう。フリクションさえ良ければ鼻歌交じりに登行を続けられるが、そうではない場合は、何時転がり落ちるかの心配をしなくちゃならない地形が数百mは続く。
写真削除
奥の二俣あたり 岩床の角度がぐんと増す
 そんな傾斜地の登りを続け、岩床のどん詰まりまで上がり、そこから20m程トラバースして、左岸尾根に乗って沢歩きは終わる。
 尾根には歩道がしっかり着いている。50m程で810mのピーク(鍋嵐の北側250mの位置のピーク)に着く。木々の間からは青く光る宮ヶ瀬湖が見える。
写真削除
急なルンゼ状となった岩床を登る 転がらないよう慎重に
 一反降って軽く登り返すと鍋嵐の山頂 こちらは雑木に遮られ、見通しが悪い。
 でも、日が燦々と当たっている。
 風は南から吹き、暖かい。

 さてと登ったら
 下降しなくちゃならない。今日はP710mに向かうことになっている。
 ところが、山頂はさっきも言ったように見通しが悪い。
 P710mってどっちだっけ。直進方向は中津川に降りる道だっけような? おっとっと 左手方向にも尾根らしき膨らみがあるじゃん。
 さてどちら。地図があれば、おそらく迷いは無かったんだろうけど
 数回降ったことがあるんだけど、さっぱり思い出せない。健忘度合いが強まったような気がするんだけど、大丈夫かなと実は最近少し心配している。
 多分四方とも歩いたことのある方向なのだが、いったい、どっちだったっけ????

 こんな時は経験的には適当に少しくだって当たりをつけることになるのだ。
 山頂から左手方向に降り出す。(自宅で確認したところ、これは南南東尾根で途中で丸淵付近で合流する沢に降りることになる一回は歩いたことのある尾根だった)
 でも道に順って境界杭があったはずなのに、らしきものが見あたらない。違うかもね。それに、茨が多く歩きにくい。踏み跡らしいのもあるけど、どうもこれじゃない。として山頂に戻る。

 素直に直進の尾根を進む。すぐに
 「これだこれだ」と思い出す。ふ〜、思わず気がゆるむマシラ。しかし、安心はまだまだなのだよ。
 なだらかに降り、僅かに登り返した小ピークで右手に唐沢キャンプ場への下降路が別れる。進行方向に間違いないことを確信する。
 さてなだらかな山道にスキップ気分で下降していたら、また先行きが怪しくなった。(先ほどの尾根とは別だが、そのまま直進すると下降して沢に降り立つ地点は先ほどの尾根と同じ小尾根だった)
写真削除
P710m 山頂付近 間伐作業がつい先頃終わった
 右手前方を見れば、別の尾根があり、先にはP710mのピークがある。間違ったのだ。降りだして200m程だというのに既に二回目の間違いってことさ。
 先ほどの唐沢キャンプ場分岐点付近まで戻り、木立に巻かれたテープ標識に導かれて右手の急斜面を降る。こちらの方が足場悪く尾根は細く、地形図でもって方向を確認しないと確かに間違う分岐だと思う。感性のままに歩くと間違うってことだね。
 その急傾斜を降ると、照葉樹は杉の林に代わり、傾斜も緩い下りに登りに変わる。P710mピーク付近の林は、つい最近に間伐作業が行われたらしく、桧脂の匂いが当たりにぷんぷんと漂う。この匂いは嫌いじゃない。

 ところで、この間伐作業の仕事道はどこにあるんだろうか???
 P710mから暫くは仕事道不明瞭だった。でも、なだらかな杉の林の中である。歩くに困ることは全くない。
 傾斜が降りに入ると仕事道の痕跡が判るようになり、すぐにしっかりとした山道に代わり、大きな葛折の坂が物見川に向かって降っていく。緩やかで歩きやすい道。思わずスキップしたくなる。さあ、

 こんな道、絶対に道を踏み外すなんてことはない。なんて思っていたら、またまた道が不鮮明になってしまった。あまりに良い道に、気分も調子を合わせてしまったらしく、きっと道のどこかの屈曲点で方向を誤ったんだろうと思う。だが、下からは既に水音も聞こえてるとなれば、戻るのも面倒だと斜面を強引に降る。降って地点は物見川と小唐沢が別れる地点だった。本来の仕事道より80m程上流側に降ってしまったのだ。間違ったって、結果下れれば全て良し。何回も方向や道を間違っても全く反省の無いマシラ。。。きっと仕事でも家庭でも同じなんだろうなって考えているアナタ・・・ドンピシャリさ 言いわけ無し。
 
丸淵下の瀞 (砂で大半埋まっていて膝下での通行が可能)
 それからは物見川沿いの旧登山道を進む。
 登山道でなくなり、公的な整備がされなくなって川瀬に近い部分の道は不鮮明だが、道があろうが無かろうが進むに困るようなことはない。適当に歩けばいいのだ。
 丸淵下から始まるゴルジュ帯では、登山道を外れてゴルジュ帯の中を直進する。以前は腰の上までと深かった瀞を砂が大半を埋め、膝程度の水深を歩くことが出来るから簡単だ。冬でも水の寒さに凍える必要もないから砂の堆積は助かる。ただし砂の踏ん張りは弱く、長く立ち止まるとぐんぐんと足が沈むからさっさと歩く。土砂の流れない大雨が一発降ってさえくれれば、これらの土砂は片付くに違いないが、それは何時のことになるんだろうか。
 そして丸淵へ 
 丸々と豊かな釜はどこに隠れてしまったのだろう。丸淵のプールも今は踝くらいの深さで、あまりの貧弱さに目を背けて通過したくなる程だった。
写真削除
丸淵はますます砂に埋まってしまった
 そこからの旧登山道ははっきりしている。でも、かかる丸太桟橋は大半が傾き、道から外れ、不安定で、おまけに腐ってヌルヌルと危なっかしい。怪我をしないためにはポケットに突っ込んだ手を外に出す程度の注意が必要だろう。

 物見隧道手前で林道に上がり、トンネル手前から物見峠に登る。その付近は登山道整備中と表示されている。
 その整備に関して
 遊歩道のような幅広の登山道って三峰の山頂部の険しさに比べてふさわしくないと思う。導入部を歩きやすくすると沢山の人が入ってきて、険しい部分での不注意事故を誘発するなんていうのは心配のしすぎだろうか。導入部は、もっと狭く細い道にした方がハイカーの事故防止になるだろうに なまじの山道整備反対////
写真削除
山稜伝いに降れば寺家のお寺の裏庭に降ったのだ。
 P436mの道に入り、P436mからは忠実に尾根どうしに山道を伝い、小さなピーク(P350m)の山頂では、右の道にするか左にするか迷ったあげくに右の道にする。(左にとれば辺室川−坂尻だと思う)
 やがて寺家谷戸のお寺山の裏に降りて、そのまま進めば お寺の山門を出て登山道に合した。そして山歩きは終えたのだが、 あいにくバス時間への折合わせが悪く、奥飯山まで歩くことになった。
写真集


自宅6:40〜千頭橋7:10今日はバス〜三叉路7:40〜中津川にかかる橋を渡る(滝ノ沢への導入路入り口)8:10〜滝ノ沢8:20〜二俣8:45〜6mスラブ滝9:10〜奥の二俣9:30〜山稜へ出る9:55〜P810m10:00〜鍋嵐10:10〜P710m10:35〜黒岩付近へ下降10:50〜丸淵11:15〜物見隧道11:40〜物見峠11:45〜P436m12:10〜お寺12:20〜煤ヶ谷〜奥飯山13:13バスに乗る〜千頭橋13:25〜自宅13:50 2008/12/21 快晴 冬と言うには日中は暖かすぎるくらいポカポカな一日だった。
頁トップへ  マシラのHP