・・この胸に・・


 静かに、誰もいないことを確かめて、啓介が兄の部屋に忍び込む。
 辺りを見回し、手にしていたものをそっと、入口のドアを潜った場所に置く。
 つれない態度の涼介に、この胸に飛び込んで来て貰いたい…。
 そんな細やかな願いを込め、床に置いたものに目をそそぐ。
 バナナの皮。
 涼介がそれに足を取られ、転ぶ寸前にカッコよく飛び出し、無事この胸で抱き留めるのだ!
 そんなことを、啓介は至極真面目に、真剣な面持ちで画策していた。
 涼介が自室に戻るのを、息を顰めてじっと待つ。
 程なくして、階段を上がる足音が耳に届いた。
 目の前で足音が止まり、ドアが、開く…。
「……」
 一歩踏み入れようとした足が、静かに戻される。
(……)
 息を殺し、バクバクと破裂しそうな鼓動を抑えて、啓介がその様子を凝視する。
「………」
 涼介は徐に腰を下ろすと、啓介の張った罠を拾い上げた。
「人の部屋にゴミを捨てるなよ…全くあいつは………」
 溜め息混じりに零しながら、ふと横に視線を流す。
 潜んでいた啓介と、目があった。
「……啓介…」
「………」
「ゴミはゴミ箱へ。オレの部屋までゴミ溜め(啓介の部屋)にする気か…?」
「………ごめんなさい…」

 かくして、啓介の『オレの胸に飛び込んでおいで作戦』は、失敗に終わった。


― END ―




しようもない話ですみません…。
今週号のYMを読んで思いついたのですが、
これまたパロじゃないだろ…ということで
こちらの小説部屋へのUPとなりました。
(対戦相手が自分達が撒いたオイルの残りに足を取られて拓海に抜かされる…という場面から思いついたんですが…
全然パロじゃないですもんね…)

啓介…バカです…。
バナナの皮ってあんた……。
ううう情けない話で………(よろろ)
あああ、少しでもくすり…と笑みを零して貰えるようなものになってくれていたら、とってもとっても嬉しいのですが…(汗)



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