| 松尾育英会が目指すもの
第三代理事長 松尾日出子 財団法人松尾育英会は、創立者松尾國三・波儔江が、経済的理由によって進学を断念せざるをえない状況にある大学進学希望者を対象に経済的援助を行うとともに、全員入寮の学生寮での共同生活を通して人間形成に励んでもらいたいという願いをもって,1957年1月に設立されました。 松尾國三・波儔江は、幼いころの家庭の経済的事情から十分な学校教育を受けることができず、早くから実社会に出て血のにじむような努カと苦労を積み重ね、自らの道を拓いてまいりました。その個人的体験と、青少年層の教育の向上こそ世界人類の真の平和の礎となるという強い信念から、経済的理由で世に埋もれようとする有為の若者の育成に尽カしたいと、育英会の設立を決意したのであります。そこには、自分たちが今日あるのは個人の努力だけでなく、父母の恩、社会の恩、国家の恵みがあったからであり、 その恩恵に報いるため無償の育英事業を始めたいとの固い決意があり、その結果、学資金等育英生に提供した育英費用の卒業後の返還を一切求めず、自らの生き方を通じて社会に貢献することだけを求める稀有の育英事業が実現したのであります。 創立以来半世紀、松尾育英会は各界のご支持をいただいて、当初の念願通り育英事業を進めてくることができました。大学を卒業して社会に巣立った育英生はすでに240名余を 数え、官界、経済界、学界、教育界をはじめ、社会の各分野でそれぞれ立派に活躍しております。 振り返ってみますと、この間、山あり谷あリで厳しい時期もございましたが、継続にこそ意義があるものと心得て、つねに設立の趣旨に思いを馳せながら、間断なく育英事業を継続してまいりました。「継続は力なり」と申しますがこれまでの道のりを思うと感慨無量であリ、深い喜びが湧き上がってまいります。それとともに、創立者の二人が存命であったなら今日のこの日に沢山の「子どもたち」に囲まれてどんなに喜んだことであろうと胸が熱くなります。 この半世紀、日本の状況は経済水準の飛躍的な向上や高度情報化など著しく変動いたしました。また国際情勢の変化とともに、世界的規模の協調への歩みと、ポーダーレス化と共生への気運の高まりも感じられます。それとともに人々の考えや価値観にも多様な変化が生じておリます。それに伴い松尾育英会の育英事業にも国際性が求められ、また高度情報化社会に適応できる人材の育成に配慮する必要も出てまいリました。 このように時代の移り変わりはございますが、本会設立の趣旨と基本的理念は、今後も変わることなく大切に堅持したいと思います。それは人間を愛し内外のさまざまな分野で社会に頁献しうる人材を育成することを目的として、経済的苦境にあっても努カを惜しまない前途有為な若者の人間形成を経済的に支援することです。一見満ち足りているように見える日本の社会にも、依然として経済的に非常に苦しい状況にある家庭があリます。そういう経済状況にあっても、共同生活を営みながら勉学することを願う若者に、その希望を実現するチャンスを与え、できるだけ支援したいと思います。 創立者である、松尾國三初代理事長は、「若者よ大きく育ってほしい。大きな夢を抱いてほしい。狭い視野の利己的な人間になるのではなく、開かれた広い心の持ち主になって、社会の各々の分野で貢献する存在感のある人物になってほしい。」と常々願っておリました。21世紀を迎えた今日も、このような当初の願いと理念は、その意義をいささかも減ずることなく、大切にしてゆくべきものと考えております。 新たに育英生に採用され入寮される皆さんは、大きな希望と明確な目的と果敢なチャレンジ精神をもって、充実した真摯な学生生活を営むよう努力して下さい。学生の本分である学業生活に精励するとともに、学生寮での共同生活を糧としてお互いに切磋琢磨し、人間として自他を生かす度量を養い、技量を学んで欲しいと思います。寮生活は社会へ出るための第一歩であり、各自が自分の持ち味を生かし、留学生も含む個性豊かな朋友と親しく交流してその視野を広げ、これからの社会に大きく羽ばたいていただきたい、これが私どもの心からの願いです。 さらに、卒寮生の皆さんは、各自の思うところに従い、自ら選んだ社会のさまざまな分野で、生涯にわたって研鑽に励み、その個性をいっそう開花させて、周囲の人々から信頼され尊敬される人物になってほしいと思います。 また本会は、平和で健全な国際社会の形成のために、外国政府機関等の協カを得て、外国人留学生の援助も実施してまいりましたが、今後も継続して取り組んで行く所存でごさいます。 若者の豊かな可能性に将来を託そうとした創立者の熱い思いをもって産声を挙げ、半世紀を迎えた育英事業は、今後ますます多くの方々のご理解とご支持を得ることによって、さらに大きく実を結ぶものと確信いたしております。 |