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近視、乱視、遠視を手術で直すという屈折矯正手術(LASIK, PRK)がいよいよ日本でも軌道にのってきました。眼科の専門医がとりくむ屈折矯正手術、つまり美容整形医が看板を書きかえたのではない、本気の屈折矯正手術が日本のいろんな場所でスタートしています。1999年夏の時点で、屈折矯正手術の機械を備えた、という病院は日本に数10ヶ所もありますし、実際に手術をすすめている病院も東日本、西日本とも数ヶ所になりました。ある施設ではもう1000眼(約500人少々です)以上の実績を上げているとききます。 一方、「近視を手術で直すなどけしからん!」という声もあります。「LASIKの治療効果は不十分だ」「不完全なインフォームドコンセントで手術をするのは犯罪だ」「完璧な角膜の検査をしないでLASIK、PRKを施行するのは無謀だ」「近視はそもそもメスを入れてはいけない」「原因不明の合併症はどうするのか」「アメリカでもいつも新しい合併症報告が出ているというのに」「近視のメカニズムは角膜以外にも原因があるのになぜ角膜だけ削るのか」「どこそこ眼科のLASIK手術は消毒が不完全だ」「あの団体は金儲けに走っている!」...などなど。眼科の医師からいろんな意見が出されていますし、筆者の耳にも毎月いろんな噂が入ります。 私はこういった批判の中に、どことなく名声、お金もうけ、成功に対する嫉妬や反発の感情を感じています。医者どうしの批判というのは、えてして表向きは理論的な批判、中身はただの感情論、というのが多いものです。また、表向きに学会で「屈折矯正手術は危険だ」と批判はしないのに、陰でこういった批判をしている、という表裏のバランスも気になります。また一部の大学病院の「うちの大学がまだやってないのに開業医が先にやるとはけしからん、こら!」という姿勢も話題になっています。一度反対論を唱えた人もまた翌年には賛成論を唱えることもあるのですから(それはそれで理屈がとおればいいでしょう)。だいたい人の意見は半分疑う方がよいみたいです。「めだまカフェ」の文章も含めて。 かつては白内障手術の眼内レンズなどにも、こういう批判がたくさんあったようです。古い本を読むと眼内レンズを入れることや縫合しない手術に対して「非倫理的」とか「危険きわまりない」といった批判もあったようです。その頃も開業医が進歩的な手術にチャレンジし、一方で大半の大学病院は保守的だったようです。でも今は白内障手術を無縫合で行い眼内レンズを入れるのは世界の多数派になっています。 屈折矯正手術(LASIK, PRK)には確かに問題点もいくつかあります。術後の数ヶ月、軽い近視にもどることや、軽い遠視に傾く人が少々いること。術後の数週間、角膜ににごりが出る場合もあること。手術後の裸眼視力1.0の見え方は、術前のコンタクトをつけた時の視力1.0の見え方よりも「見え方の質」が落ちることがあるということ。まだ遠視の矯正には充分データがそろっていないこと。などなど。もちろん人間はだれしも老眼がやってきますし、近視をなおすことで老眼の自覚は少し強くなります。なお、RKという術式はすたれてきましたし、今後あまり発展はしないかもしれません。 では100%安全が保証された手術、100%の満足が得られる治療というものがあるでしょうか?そんなものは眼科にも、外科にも耳鼻科にもありません。手術の成功率というものを話題にするなら、すでに広く認められた緑内障手術でもずいぶん低い成功率(目標の眼圧を達成しないことや数年で追加手術が必要になる率など)でしょう。それでも手術が行われるのは、医師と患者の間に「術後の利点も欠点も理解しました」という同意の上で手術が行われるからです。 私は1996年ごろから屈折矯正手術に賛成の立場で、今も屈折矯正手術には積極的な立場にいます。しかし「誰にでも、すぐに屈折矯正手術をすすめます」という事は決して言っていません。現在の近視の強さ、生活のしかた、眼鏡、コンタクトでの見え方、そういったものを判断材料にして、「これならあなたは手術をうけたほうがいいよ」とアドバイスできるかもしれません。屈折矯正手術への反対論にも耳を傾けていますし、合併症の報告も読むようにはしています。しかし私はこの手術が5年で消滅してしまったり他の手術方法でおきかわってしまうとは思えません。また将来、近視をなおすための別の方法が現れたとしても、今LASIK, PRKの手術を受けた人が激しく後悔するとはあまり思えません。 私の友人、知人で屈折矯正手術を受けた人は何人かいます。それぞれに近視の強さ、年齢、職業、などはいろいろでしたが、私はその体験談からは全体に「この人は手術を受けてよかったな」という印象をうけています。 屈折矯正手術は夢の手術ではないため、過大な期待を持つと「こんなはずではなかった」と落胆するかもしれません。それは結婚や就職とも似ているでしょう。人生にはいくつか「賭け」があるものです。 今手術を受けようかどうしようか考えている人は充分考えてください。医師に話をきいて、体験者に話をきいて、ウェブで体験談を読んで、「自分にとって、なぜ近視を手術でなおしたいのか」「近視をなおして、何がしたいのか」「手術にこれだけの時間と費用をかける価値が自分にとってあるだろうか」をちゃんと検討して、そして納得して手術をうけてください。自分で判断して自分で責任を持つ、というのが大人の手術の選び方です。 正しい理解をしたうえでこの手術が受けられたなら、きっとあなたは屈折矯正手術によって満足できる生活が得られることでしょう。 |
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●近視手術の機械承認 |
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●雑誌、週刊金曜日「近視手術体験記」の紹介 定期購読で読める雑誌 「週刊金曜日」 で近視手術体験記が不定期連載されていました。 第一回 No.308 2000/3/24 pp34-37、第二回 No.312 2000/4/21 pp34-37、 第三回 No.317 2000/6/2 pp26-29 山中登志子という記者が参宮橋アイクリニックでの両眼手術の体験を書き、近視手術の周辺の日本の社会事情や厚生省の対応などをとりあげています。ちょっと面白い記事ではあるんですが。 わるいところ: 「分厚いメガネをかけていたり、コンタクトをしている医師から近視手術を勧められても説得力がない(第二回記事)」と、先入観が強いのはいただけませんね。これはちょっと的はずれ。また、「私の選んだ方法はスーパーPRK。メス、カンナは使わず、医師の指一本触れない。(第二回記事)」と宣伝文句そのままを記事にしているあたりも批判不足かも。医師の指が触れないイコール優れた術式ということはないでしょう。ほかにも研究不足なところを少々感じました。 いいところ: 厚生省、マスコミ一般の対応、そして一部眼科医の近視手術への猛反対の動き(一時期)をとりあげていること。消費者問題という視点から記事をかいているところ。第三回からはちゃんと屈折度数を術前術後で記録しているところ。 全体に: 僕としてはいろんな体験記がマスコミやネットに出て来るのはいいことだとは思います。若干記者の思い込みが強い週刊金曜日記事だけど、今後の連載にはちょっと期待しています。(2000.6.4更新) |
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●RK手術のフョードロフ氏死去 2000年6月2日午後8時ごろ、スビャトスラフ・フョードロフFyodorov氏(近視矯正手術のRK (radial keratotomy)を1974年に普及させたロシアの眼科医)が、モスクワ近郊でヘリコプターの墜落事故で死亡しました。72歳でした。ヘリコプターはフョードロフさんが経営する病院の専用機でした。ご冥福をいのります(毎日新聞、朝日新聞など参考)。 なお近視の手術の歴史は 永田眼科 の「近視手術」 のページをご参考に。1939年の順天堂大学の佐藤医師の手術なども紹介されています。また参宮橋アイクリニック五反田でもフョードロフ氏死去の詳しい記事をのせています。 (00.06.03-00.06.21)
●タイガーウッズがグランドスラムを達成
●近視矯正RK手術で患者5人合計1億円の賠償 |
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「近視手術施設一覧表」のページも参考に。 [目次へ]1999.10.16作成、2003.10.29更新、平野直彦 |