【SS】復讐の女神 前編


    
《1.アスカ彷徨》

 ここは、とある酒場だ。ほとんど吹き飛んでしまった第3新東京市でもこういう
場所は比較的早く復活するようだ。
 わたしはカウンターに座って、水割りをなめていた。
「ヒィック、マスターもう無くなっちゃった。もう一杯作ってぇ……」
「お客さん、もう止めた方がいいんじゃないですか」
「いーから、いーから。お金ならちゃんと払うわよぉ」
 はじめ、マスターはわたしにお酒を出すのには難色を示した。20才だと言った
けど、なかなか信じてくれず、財布の中身を見せてやっとお酒を出してくれた。エ
ヴァのパイロットってのは、けっこう給料がいいのだ。
「そういうことを言ってるんじゃないんですけどね。あと一杯だけですよ」
「わぁ〜い。マスター好きよぉ」
 マスターが水割りを作ってわたしの前に置いたとき、わたしに話しかけてきたも
のがあった。
「彼女、かわいいねぇ。一杯おごらせてよ」
「………………」
「えっ、なんて言ったの?」
「うっとおしいわね。とっとと消えなさいよ!」
 男の馴れ馴れしい態度に我慢できなくて、わたしは水割りを男の顔にぶっかけて
しまった。ああ、最後の一杯だったのに……
「なにしやがる!」
 ずぶ濡れになった男は真っ赤な顔で立ち上がり、わたしを殴ろうと右手を振り上
げる。
 バキィっ
 立ち上がりながらのアッパーカットは見事、男のあごに突き刺さり、男はふっと
んで目を回した。
 ふん、ネルフで戦闘訓練を受けてきたわたしにあんたみたいなのが勝てるワケな
いじゃない、バーカ。
 ふと気付くと周囲の注目が集まっている。あ〜あ、仕方ないなぁ。もう、この店
には来れないかな。
「マスターお勘定ぉ」
「………円です。また、いらしてくださいね。お嬢さん」
 けっこう、安かった。それにマスターが感じのいい人だ。また来よう。

 涼しい風が火照った頬に当たっていい気持ち。嫌なことが忘れられるのはこうし
ている時だけ。ちょっとぶらぶらしてから帰ろう。帰ったらシンジの陰気くさい顔
を見なくちゃならないし。
 ふん、馬鹿シンジってばさ。心配そうな顔で、このわたしに説教するんだから。
ホントはどう思ってるかなんて分かりゃしない。きっと、シンジもわたしのシンク
ロ率がどんどん落ちていってるのを喜んでるに決まってる。ネルフのエースパイロ
ット、無敵のシンジ様ぁってか。バッカみたい。
 ……でも一番バカなのはわたし。シンジはきっと本気でわたしの事を心配してる
んだろう。あいつにとってエヴァに乗ることに、さほどの意味はない。それは分か
ってた。だからこそあいつには負けられなかった。ママのいないわたしにはエヴァ
しか無かったから。
 しかし、わたしはあいつに負けてしまった。あいつは誰もが認めるエース。わた
しにはあいつのようにエヴァを動かすことはできない。
 悔しかった。……でも、いまはもう何も感じない。エヴァにも。あいつにも。


《2.シンジ混乱》

 もう、12時過ぎてしまった。アスカはまだ帰らない。最近アスカは学校にも行
かず、夜遊びをするようになった。それになんだか避けられてるような気がする。
いったい、アスカはどうしちゃったんだろう。
「ただいまぁ」
 ようやく、帰ってきた。ボクは玄関に迎えにでる。
「遅かったじゃないか、アスカ。心配してたんだよ」
「ふーんだ。こんなわたしごときを気にかけてくださってどうもありがとうござい
 ます、シンジ様ぁ」
「何、言ってんのさ。うっ、お酒くさい。アスカ、やっぱりまた飲んできたね」
「酒無くて、なんで浮き世が楽しかろ。シンジ、ミサトのビール出してきてぇ。あ
 んたもそんな辛気臭い顔してないで一緒に飲みましょうよぉ」
 ミサトさんみたいなことを言い続けるアスカに肩を貸して、部屋に連れていく。

「よっと」
 どさっ、アスカの体をベッドに横たえる。アスカは体に力が入らないようで、く
らげみたいにフニャフニャになっている。
「シンジぃ、お水ぅ」
「分かった。ちょっと待ってて」
 キッチンへ戻ってコップに水を汲み、アスカの部屋へ戻ってくると部屋の電気が
消えていた。
「あれ?アスカ寝ちゃったの?」
「シンジ、お水ここまで持ってきて」
「あ、うん」
 アスカの枕もとに水を持っていく。すると、アスカはゆっくりとふとんから身を
起こした。
 ボクは驚きで声を出なかった。窓から入ってくる月明かりに照らされたアスカは
何も身につけていなかった。形のいい胸がボクの目に突き刺さる。アスカの碧い目
がボクを射ぬく。まるで女神みたいだと思った。
 そして、ボクは……自分がアスカを求めていたことを知った。
「シンジ、わたしが欲しくない?」
「…………欲しいよ」
 喉がひりつくように渇く。
「シンジの好きなようにしていいよ」
 ボクは獣のようにアスカを抱きしめ、強引に唇を奪った。長いこと、そうしてい
たように思う。そして、閉じていた目を開くと至近距離でアスカと目が合う。
 ………そこにはなんの感情もなかった。
 ボクはアスカを突き飛ばすと逃げるように自分の部屋に戻り、ベッドにもぐりこ
んだ。そして朝まで眠れぬ一夜を過ごした。


《3.アスカ憂鬱》

「うーん、頭いたーい」
 昼過ぎになって、ようやく目が覚めた。当然、ミサトもシンジもいない。すっか
り二日酔いになっている。昨日は結局、水割りを何杯飲んだか覚えていない。
 でも、頭が痛いのは二日酔いのせいだけじゃない。頭にこぶができているようだ。
シンジの奴、思い切り突き飛ばしてくれちゃって。
 でも、これはわたしへの罰だ。なんであんなことしちゃったんだろう。わたしは
シンジになにをして欲しかったのか……自分でも分からない。
 どうして、あいつはわたしを抱かなかったのだろう。自分で言うのもなんだが、
こんな美少女の誘いをはねつけるなんて。あいつはやっぱりバカだ。
 悲しそうな顔してたな…………ま、いいか。シンジがウジウジしてるのはいつも
のことよ。

 頭痛はしているが吐き気はない。お腹がすいた。悩んでいても体は正直だ。キッ
チンへ食べ物を探しに行く。
 テーブルの上に昼ご飯ができていた。レンジで温めるだけになっている。シンジ
が作っておいてくれたんだ。他には手紙が一つ。

『アスカへ
 ご飯は作っておきました。レンジで温めて食べてください。
 できたら、学校へ来た方がいいよ。委員長やトウジたちも会いたがってる。
 今日はお酒なんか飲みに行かないで、いっしょに夕飯を食べよう。
 いろいろ話したいことがあるんだ。それでは。  シンジ

                          P.S.昨夜はごめん』

 バカみたい。なんでシンジが謝るのよ。シンジの手紙をクシャクシャに丸めて、
ごみ箱へポイっ。それから、ご飯の準備をした。
 シンジのご飯を口に入れた。おいしい。お腹からあったかいものが全身に広がる。
あっという間にお皿は空っぽになってしまった。わたしこんなに食いしんぼだった
かしら。
 食べおわって、キッチンを出る。でもその前にごみ箱から、さっきの手紙を取り
出し、もう一度読む。やっぱりバカよね、シンジ。
 手紙をまた捨てようとしたけど、どうしても捨てられない。手紙のしわを丁寧に
伸ばし、きれいにたたんでポケットに入れる。未練たらしいったらないわ。


《4.再びアスカ彷徨》

 やっぱり、また出てきてしまった。とてもシラフじゃシンジには会えないし。な
んか足元がフラフラしてる。調子に乗って、カクテルを飲みすぎたな。
 突然、横合いから手が伸び、わたしの口を塞ぐと路地に引きずりこんだ。男が3
人。その内の1人は昨日わたしがKOした男だ。やばい。今日は飲み過ぎてる。
「昨日はよくも恥をかかせてくれたな。今日はあんたが恥をかく番だぜ」
 男たちの目がこれからわたしに何をするつもりか語っている。冗談じゃない。
 むちゃくちゃに暴れているつもりだが、地面に押さえつけられた体は動かない。
相手はなんとも思っていないようだ。悔しい。こんなに無力だなんて。あっ、嫌。
嫌だ。誰か、助けてよ。助けて。助けて。助けて、シンジ。シンジ。シンジぃ。

 わたしにのしかかっている男の1人が突然、宙に浮いた。そいつの襟首をつかみ
つりあげているのはゴリラみたいな大男だ。その陰からきれいな顔をした少年が顔
をのぞかせて言った。
「いけませんね。こんなことをしては。ちょっとお仕置きしてあげなさい」
 その少年が言った途端、大男はつりあげていた男を地面にたたきつけた。
 ぼごぉっ。
 嫌な音をたて、動かなくなる。残った2人がおろおろしているところに大男は突
っ込み、2人を壁とでサンドイッチにした。あっという間に3人とも意識不明だ。

 とりあえず危機は脱したけれど、まだまだ気は抜けそうにない。わたしは2人の
怪人をにらみつけながら言った。
「そこまですることないんじゃないの」
「おや、僕たちはきみを助けてあげたんだけど……感謝されこそすれ、怒られる覚
 えはないけどなぁ」
 何も言わない大男を立たせたまま、少年はわたしに近づいてきた。
「わたしに近づかないでよ」
「ちょっと僕の話を聞いてもらえないかな。きみを探してたんだ」
「あんたと話なんかしたくないわ。わたしはもう帰るんだから」
「まぁまぁ。僕はきみにいいアルバイトを紹介しようと思って来たんだよ」
「あんたなんかに仕事を世話してもらうほどおちぶれてはいないわ」
「まぁ、話くらいは聞いてください。これは世界中でもあなただけにしかできない
 ことなんだから、惣流・アスカ・ラングレーさん」
「わたしのこと知ってるのね。それにわたしにしかできないこと?まぁ、いいわ。
 話だけは聞いてあげる。借りもあるしね。でも言ったら消えてよね」
「約束するよ。では、そこのお店にでも入ろうか」


《5.シンジ必死》

 どこへ行ってしまったんだ、アスカ。アスカが消えてから、もう一週間もたつ。
 消える前、アスカはどこか変だった。まるで抜け殻のようで。でもボクはそんな
アスカを拒絶してしまった。あの時、きっとアスカは全身でボクに助けを求めてい
たに違いないのに。それなのにボクは逃げたんだ、アスカから。
「ただいま、ミサトさん。アスカは戻ってきた?」
「まだよ、シンジくん」
「そう、それじゃもう一度探しに行ってきます」
「待ちなさい、シンジくん。あなた、この一週間、まともに寝ていないじゃない。
 零号機を失い、またアスカのいない今、使徒が出たら、あなたしか戦うものはい
 ないのよ。あなたにはちゃんとした睡眠を取る義務があるわ」
「ミサトさん、アスカがいなくなったのに、そんなことしか言えないの?ミサトさ
 んはアスカのことはどうでもいいわけ?」
「シンジくん!」
「止めても無駄だよ。行ってきます」
「………シンジくん」
 この時、ボクは知らなかった。アスカをガードしていた保安部員がその日、大怪
我をして病院に運ばれていたことを。それゆえアスカの失踪は家出ではないと判断
されていたことを。ミサトさんはネルフに危機が迫っていたことを知っていたんだ。



《6.アスカ流転》

「これがエヴァ拾参号機……」
「そう、これがきみのエヴァだ」
 わたしにカインと名乗った少年は言った。それは鈴原の乗ったエヴァ参号機に似
たフォルムをしていた。

 カインにあったのは1週間前のことだ。彼とその相棒(実は彼も14才で、チル
ドレンの一人だそうだ。とても信じられない)は暴漢に襲われたわたしを助けてく
れた。その後に連れていかれた店で彼は驚くべきことをわたしに伝えた。
「きみは世界最強の力が欲しくないかい?」
「はぁ?なに言ってんの、あんた」
「僕らはきみに力を与えることができる。エヴァという力を」
「あんたもネルフの関係者なの?」
「僕らはゼーレさ。ネルフとは昨日の友、今日の敵といったところかな」
「そんなことわたしに言っていいの?ま、わたしにはそんなことどうでもいいけど。
 でも、なんでいまさら。わたしはすでに世界最強の力を持っているのよ」
「そうかな。きみにはどうしても勝てない相手がいるのではないの?」
 わたしの心が震える。
「…………いるわ」
「無理もないさ。所詮、弐号機は量産型。コストを度外視してつくられた初号機ほ
 どのパワーもスピードもない。初めから勝てるはずが無かったのさ」
「…………わたしが勝てないのは機体の性能の差だと言うの」
「そうとも。そうでもなければ、これまでなんの訓練も受けていなかったサードチ
 ルドレンにあれほどの活躍ができるはずがないじゃないか」
 彼の言葉がわたしの凍った心をゆさぶる。彼の微笑みがメフィストフェレスのそ
れに見えた。
「…………あんたはわたしに世界最強の力をくれると言ったわよね」
「ああ、きみが望むならば。今、最後の、そして最強のエヴァが完成したところだ。
 そして、そのパイロットはまだ決まっていない」
 一瞬の躊躇。でもそれだけだった。
「…………やるわ、わたし」
「しかし、それには代償が必要だよ」
「なんでもするわ。わたし、なんでもする……」
「ネルフを裏切ることになるよ」
「かまわないわ。あいつらはこのわたしをないがしろにしてきたのだから」
「そしてサードチルドレンもね。彼はゼーレにとって最大の障害だ。倒すべき敵だ」
 シンジ…………だめよ。シンジだけは譲れない。
「…………一つだけ条件があるわ」
「条件をつけられる立場じゃないだろう?まぁいい、言ってごらん」
「シンジを倒すのはこのわたしよ。シンジはわたしが一対一で倒す。あんたたちは
 手を出さないで」
 彼はあっけにとられたようにわたしを見た。初めて彼の素顔を見たようでわたし
は満足感を覚えた。
「…………どうやら、きみを甘くみてたみたいだな。分かった。その条件をのもう」
「ありがとう。うれしいわ」
 わたしはとびっきりの笑顔をカインに与えた。さようなら、シンジ。

 そして、今わたしはエヴァ拾参号機のエントリープラグの中にいる。起動できな
ければ、シンジを倒すどころじゃない。わたしは必死だった。
 フォォォォォっ
 エヴァが咆哮をあげる。
「起動成功だ。さすがだね。セカンドチルドレン。残念ながら僕たちのなかでこれ
 ほどのシンクロ率を出せるものはいないよ」
「当たり前よ。わたしは惣流・アスカ・ラングレーなんだから」

 テストは終了した。これでエヴァ拾参号機のパイロットとして合格したわけだ。
 でも、あまり嬉しさは感じない。ただ、あるのは不思議な焦燥感だけだ。
 更衣室で、プラグスーツのジッパーを下げると胸の間から何かが落ちた。シンジ
の手紙だ。こんなもの肌身離さず身につけているなんて。自己嫌悪。
 わたし何やってるんだろう。会いたいよシンジ。会っても何を話したらいいのか
分からないけど。いまさら会えるはずもないけど。だけど会いたいよぉ、シンジ。


《7.シンジ決意》

 今日は起動実験だった。こんなことしてる場合じゃ無いのに……まだ、アスカは
行方不明のままなのに。正直、ミサトさんたちが憎らしく思える。
「レイ、弐号機の感触はどう?」
「ダメです。わたしを受け入れてはくれません。やはり、惣流さんでないと……」
「無理させて悪いけど、もう少し頑張って。初号機しか動かせないんじゃ困るのよ」
「はい、分かっています」
 弐号機はいまだに綾波を受け入れない。考えてみればエヴァは不思議な存在だ。
なぜ、パイロットを選ぶのだろう、この機械は。

「弐号機、再起動準備」
「了解」
「待ってください!これは?」
 ビーー!ビーー!ビーー!
 突然、ケージに警報が鳴り響いた。
「どうしたの!まさか、使徒?」
「未確認物体多数!ここ第3新東京市に接近してきます」
「映像でます。……こ、これはエヴァです。全部で七体が確認されました」
「馬鹿な!世界中で建造中だったエヴァがどうしてここに」
「ゼーレめ、われわれからアダムを取り戻すつもりか」
 父さんと冬月副司令の声がする。執務室から出てきたんだ。
「これだけの数のエヴァに対してこっちは初号機しかない。全く勝負にならないわ」
「エヴァの一体から通信が入っています」
「ええっ、まさか?……つないでちょうだい。早く!」

 ボクが司令室に飛び込んだ瞬間、モニターに映像が映った。それを見た瞬間、皆
は絶句した。
「お久しぶりね」
 そこには見たことのないプラグスーツを着たアスカがいた。
「……アスカ、いったいなにしてんの?」
 ようよう話しかけたボクをにらみつけてアスカは言った。
「これは復讐よ!」
「復讐?」
「そうよ、このわたしをないがしろにしたネルフと……そして、あんたにね。この
 エヴァは最新式よ。あんたのエヴァがいくら強くたってわたしはもう負けないわ。
 出てらっしゃい。他の奴らには手を出させないわ。一対一で正々堂々と勝負よ!」
「どうしてだよ、アスカぁ。なんでそんなことしなくちゃいけないのさ」
「うるさいわね。あんたが出てこないって言うんなら、こっちから行くわよ。ジオ
 フロントから引きずりだしてやるから覚悟することね」
 ブチンと映像が消える。あっけにとられたボクは立ちつくす。

 その時、父さんが立ち上がり、言った。
「現時刻をもって、弐号機パイロットの登録を抹消。エヴァ初号機は発進。敵性エ
 ヴァンゲリオンを殲滅せよ」
 その言葉にボクは目の前が真っ暗になった。
「父さん、なにを言うんだよ。あれにはアスカが乗ってるんだよ」
 ボクは父さんをにらみつける。そんなボクを横目に見て、ミサトさんは言った。
「司令、敵はエヴァ七号機から拾参号機まで7体もいるんですよ。初号機だけで全
 てを倒すのは無理です。弐号機はまだ動かせませんし」
「初号機は他のエヴァとは違う。特別な機体だ、心配ない。それに我々は、今アダ
 ムを失うわけにはいかん」
 父さんの勝手な言い様に反発してボクは言った。
「嫌だ。ボクはアスカと戦いたくない。父さんはボクに、また大切な仲間を殺させ
 ようというの」
 父さんは眼鏡を外し、ボクの目を見すえた。
「シンジ、あれはお前と戦い、お前を倒すために戻ってきたのだ。あの娘の心をそ
 こまで追い詰めた責任はお前にある」
 その言葉がボクを打ちのめした。震えだすボクを父さんは静かに見つめていた。
「そんな……父さんはボクが悪いって言うの?」
「だから、シンジ。お前があの娘を救ってやれ。お前があの娘を必要としているよ
 うに、あの娘もお前を必要としている。エヴァに乗ることだけが全てではないこ
 とを教えてやれ。それはお前の役目だ」
 父さんの目がいつもとは違っているように見えた。そう、綾波を見る、あの目の
ように……
「父さん……分かりました、エヴァ初号機発進します」
 ボクは戦う。アスカを取り戻すために。

                         <後編につづく
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