【SS】ユニゾン 第1話
第一回複座接続試験
被験者:惣流 アスカ ラングレー
碇 シンジ
弐号機のエントリープラグの中でアスカは不機嫌な顔をしていた。なぜなら、
アスカの後ろに作られた席にはシンジも座っているからだ。
「どーして、シンジなんかといっしょにエントリープラグに入らなきゃならない
のよ」
「仕方ないよ……実験なんだから」
「あんたバカぁ?そんなの分かってるわよ。ちょっとグチってみただけじゃない」
なお、言いつのろうとしたアスカをさえぎって、ミサトが回線を開いてきた。
「ほらほら、二人ともケンカしないの。これは大切な試験なんだからね。これが
うまくいけば、一人ではシンクロできないくらいの能力しか持たない人間でも、
エヴァを動かせるようになるんだから。そうすれば、あんたたちにももう少し
ラクさせてあげられるわ」
「ふん。そんな奴ら、役になんか立たないわよ。こんな試験やるだけムダなんじ
ゃないの」
「アスカ、そんなに嫌なの?それなら、レイと代わった方がいいかしらね。その
方がシンジくんにとってもいいでしょうし」
ミサトの言葉にアスカは慌てた。
「じょ、ジョーダンじゃないわ。わたしの弐号機にファーストなんか乗せらんな
いわよ。それに何よ。どうしてシンジがファーストの方がいいって言うのよ」
「だって、あんた、相手に自分を合わせようとしないじゃないの。いつも先ばし
ってヘマやって、シンジくんに後始末させてるのはだれ?」
「なに言ってるのよ。シンジには見せ場を作ってあげてるんじゃないの。それに
ユニゾンした時のこと忘れたの。シンジのノロマに合わせるなんて、この天才
パイロットには軽いもんよ」
「まぁいいわ。シンジくん、悪いけどアスカに合わせてあげてね。女の子っての
は好きな男の子にはワガママを言いたいもんだから」
「ミサトぉ。なにを言い出すのよぉ!」
「大丈夫だよ。そんなんじゃないって分かってるから、アスカ」
「…………鈍感」
「第一次接続開始、シンクロスタート」
「主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート」
「パターングリーン、各部問題なし」
「では複座接続試験セカンドステージへ」
「第二次接続開始、ハーモニクス全て正常位置」
「心理グラフ安定しています」
「なかなか調子いいじゃない」
「まだまだ、これからよ」
「A10神経接続開始します」
その時、アスカとシンジの中に流れ込んでくるものがあった。
「……なにこれ?これって………シンジ?」
「あああっ、ボクの中にアスカの心が流れ込んでくる!」
「いや!!シンジ、わたしの心を覗かないで!シンジに覗かれるのはイヤぁ!」
「アスカ、落ち着いて。アスカぁ!」
「イヤ、見ないで、シンジぃ。わたしの心を侵さないでェ!」
エントリープラグの中はパニックに陥った。
「回路と神経パルスに異常発生」
「精神汚染始まりました」
「弐号機制御不能」
ふおおおおおおっ、弐号機が拘束具を引きちぎって暴れだす。
「電源カット、急いで!」
「弐号機内部電源に切り替わりました」
「回路断線、搭乗者モニターできません」
「シンジくん!アスカぁ!!」
全てが終わった時にはエントリープラグ内にはただ一人の人間が気を失ってい
るだけだった……
ベッドの中で眠るシンジの横にミサト、リツコ、レイの三人が立っていた。
「アスカは弐号機の中に取り込まれちゃったか。原因はなに?」
「二人の心がエヴァを通して接続されたのよ。でも、アスカは心を人に覗かれる
のに耐えきれなかったのね」
「だれしも心の中の闇を他人に知られたくはないわ。アスカの場合、相手がシン
ジくんだったから余計かしらね」
「そうね」
「碇くんが目覚めるわ」
三人の前でゆっくりと上体を起こすシンジ。焦点が定まらない目で周囲を見回
す。
「大丈夫?」
「気分はどう?」
心配そうに聞く三人にシンジは青い顔をして答えた。
「気持ち悪い……」
「さっそくで悪いけど、何があったの?アスカが消えたこと分かってる?」
「アスカが……消えた?」
「ええ、そうよ」
シンジのボンヤリしていた目がキッとつりあがり、ミサトにくってかかった。
「だれが消えたってのよ。あんた達の前にいるのは誰だってーの?」
「あ、アスカ!?」
三人の前にいるのはアスカだった。一瞬のうちにシンジからアスカに変身した
のだ。
「む、胸がきつーい。な、なんでわたし、シンジのプラグスーツ着てんの?」
『……あれ?窓ガラスに映ってるのは……アスカ?なにこれ!?なんでボクがア
スカなんだ?』
「あれ、シンジの声がする?どこにいるの。あんた」
『ぼ、ボク、アスカの中に居るんだ……ど、どうやって表に出るんだろ。アスカ
はどうやったの?』
「どうやったのって何を?あんた一体どこにいんのよ?」
不思議そうに周りを見回すアスカ。
『そうか……気合かな。えーい!!』
今度はアスカが消え、シンジが出現した。
『…………ああっ?なにこれ、わたし、シンジになってるのぉ?』
「……どういうこと?」
「どうやら、アスカはシンジくんの中に居るみたいね」
「……どうしてこうなったの?」
「量子的に存在が重なってしまっているのね。こうなった理由は分からないけど」
「……直るの?」
「さぁ?」
「何を無責任なこと言ってるのよ。なんとかしてよ。リツコぉ!」
「あら、またアスカになった。交代は自由にできるみたいね」
「これじゃ、乙女のプライバシーが守れないじゃないのよぉ!」
「……ずるい、惣流さん」
「レイ?」
「なによ、あんた?なに恨めしそうに見てるのよ」
ぷいっ、スタスタスタ……
「あら、行っちゃった。どうしたのかしら」
部屋から出たところでレイはつぶやいた。
「……わたしも碇くんと一つになりたいのに」
<続く>
return