【SS】ジェットコースター 前編


 日曜日、たまの休みをもらった伊吹マヤは、街へ買い物に出ることにした。
そこでバス停に向かったマヤは途中の公園に知っている顔を見つけた。
「あら、シンジくんじゃない。なにしてるのかな?」
 ひゅうぅぅぅ〜〜〜〜
 ぶらんこに座ったシンジの背中には哀愁がただよっているように見えた。
「どうしたの、シンジくん」
「あっマヤさん。別に・・座っているだけですよ」
「ほんとにぃ」
 じぃぃっと見つめるマヤに根負けしたシンジは足元を見ながら言った。
「女の子って何を考えてるんでしょう?」
「なぁに、またアスカになんか言われたの?」
「うん・・・べつに怒らせるようなことしたわけじゃないのに。どうして、
 あんなにおこりんぼなんだろう」
「アスカはあなたが気になってしょうがないのよ。あなたを嫌いなわけじゃ
 ないわ。むしろ好きなんじゃないかな。ただ、プライドが高い娘だから。
 まだシンジくんには分からないかしらね。うん!今日は時間あるかしら?」
「今日はミサトさんの当番だから・・・(余計に帰りたくないや)」
「それならこれから、デートしましょ!」
「デ、デート?」
「女の子のこと教えてあげる」
 うむを言わさず、連れていかれるシンジだった。

「じゃあ、まずお洋服買うの付き合ってもらおうかな」
「ボク、女の人の服なんて分からないですよぉ」
「そんなことじゃ駄目よ。加持さんのようになれとは言わないけどちょっと
 は覚えなきゃね」
 シンジはマヤといっしょにあるブティックに入った。
「どう、この服」
 白いワンピースを着て、試着室からでてくるマヤ。はっきり言って少女趣
味の服であったが、普段、ネルフの制服姿しか見ていないシンジにはとても
ステキに見えた。
「とっても、ステキですよ、マヤさん」
「そう?ありがとシンジくん。今度はこっちの服を着てみるからちょっと待
 ってね」
「はい、分かりました」
 マヤはその後30着くらい試着して、最初のワンピースに決めた。
「シンジくんが一番気に入ってくれたみたいだからね」
 単に、シンジの乏しいボキャブラリーは始めの5着くらいで尽き、また最
後の方は服を選ぶ際の女性のパワーに燃えつきていただけだったが、マヤが
嬉しそうなので、何も言わないシンジだった。

「次はどこに行こうか」
「つっ次ですか(まだ、どっか行くのか)」
「うん、今度はシンジくんに合わせるわ。どこに行きたい?」
「ええと、映画とか」
「駄目よ、そんなの。ぜんぜんお話しできないじゃない。お酒飲むわけには
 いかないわよね・・・そうね、遊園地に行こうか」
 またもシンジはうむを言わさず連れていかれるのだった。

 コーヒーカップなどデートには欠かせない乗り物をこなし、次はいよいよ、
ジェットコースターである。
「やっぱり、遊園地にきたらジェットコースターよね」
「そっそうですか」
 なぜか、汗をかいているシンジ。
「そぉよぉ。デートときたら、ジェットコースターのうえで抱き合う2人。
 やっぱり、これよね(シンジくんに抱きついちゃお)」
 ジェットコースターは動きだし、次第に頂上へ登っていく。頂点を越え、
いよいよジェットコースターは滑り出した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 マヤが抱きつくより、シンジがマヤに抱きつく方が早く、あまりのことに
硬直してしまうマヤであった。
 ベンチの上で横になっているシンジ。
「ごめんね。ジェットコースターがこんなに嫌いだなんて思わなくて」
「いいんです。言わなかったボクが悪いんですから。それにもう大丈夫です」
 シンジは起き上がると観覧車を指さして言った。
「今度はあれに乗りませんか」
「いいわ。いきましょ、シンジくん」
 高く登っていく観覧車からは、第3新東京市の全景が見えた。
「いい街ですよね」
「そうね。前居たところはどうだったの」
「田舎でしたよ。星とかもここより見えたかなぁ。畑もあって小さな子が虫
 取りとかしてたなぁ」
「ここより、そっちの方がいいんじゃない?」
「でも、1人でしたから・・・いまはみんながいるし」
 さびしげに笑った顔に胸がキュンとくるマヤ。
「(え?なんで胸がドキドキするの?もしかしてわたし“ショタ”?)」
 1人あせるマヤだが、その時お腹がグゥゥと鳴った。
「おなかすきましたね」
「そ、そうね」
 真っ赤になって言うマヤさん。
「(なんだ。お腹がすいただけか。そうよね“ショタ”のはずないもんね)」
「そろそろ、帰りましょうか」
「うん、今日はありがとね」
「ボクのほうこそ今日はありがとうございました。とっても楽しかったです」

 シンジと別れ、自分の部屋に戻ったマヤが、袋からワンピースを取り出す
と、袋の奥に小さな紙包みが一つ入っていた。
「あれ、なにこれ」
 紙包みには、白い花の形をした髪止めとメッセージカードが一枚が入って
いて、カードに書かれていたのは・・・
「これ、ワンピースに合うと思います。付けてみてください。シンジ」
「意外とやるじゃない」
 さっそく、白のワンピースを着て白い花の髪止めを頭につけ、鏡の前で一
回りするマヤだった。
 こうして、マヤの休日は終わった。その後、マヤの定期入れにシンジの写
真が入ったかはさだかではない。

ところで一方、シンジは・・・・・
「ただいまぁ」
「おそかったわねぇ。けんかして出てっちゃったから心配したわよ。なんか、
 元気になったみたいね」
「あれ、アスカは」
「あの娘もまだ帰ってないのよ」
「ただいまぁ」
「ああ、帰ってきた」
「おかえり、おそかったわね」
「うん、今日はヒカリや変態コンビと遊園地に行ってたの」
「!!!」
「そこでおもしろいもの見ちゃってさぁ。ねぇシンジィ。なにかわかるぅ」
 声もでないシンジを見ながら、イヂワルそうにアスカは言った。
「いまごろ電話で、変態コンビが学校中にふれまわってるんじゃないかなぁ。
 良かったわねぇ。おとなの仲間入りできてさぁ」
 どたどたどた、部屋から飛び出すシンジ。
「こんな街きらいだぁぁ」(公園のシーンに戻る)
 やっぱり、シンジは不幸が似合うヒーローだった。

 
                         <後編につづく
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