
イラク ツワイサ かつてのイラク原子力施設 今やウラニウム汚染地帯
| 劣化ウラン研究会 山崎久隆 |
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これは劣化ウランならぬ「天然ウラン(イエローケーキ)」汚染事件です。 背筋の凍り付くニュースがイラクから送られてきました。 このニュースはフジテレビの深夜ニュースでも取り上げられ、数分ですが映像も流れました。米軍兵士が手に持ったガイガーカウンター(ガンマ線測定器)を持って、記者を案内していたようですが、手元の計器は「環境値の700倍に達した」とテロップが流れました。 何が起きたのか。 イラク最大の原子力施設のあるツワイサで、イエローケーキと呼ばれる天然ウランの入ったドラム缶が多数略奪にあい、大量のウラニウムが施設敷地内にぶちまけられ、あろうことか住宅地域にも汚染が拡大しているというのです。 しかも、略奪者はウラニウムを盗みたかったのではなく、それを入れていたドラム缶が欲しかったというのです。 従って中に入っていたイエローケーキは単なる邪魔者としてあたり中に投げ捨てられたようです。 イエローケーキとは、鉱山から掘り出されたウラン鉱石を製錬したもので、含まれる放射性物質は天然ウランだけではなく、ラジウム、トリウム、ラドンと、ウラニウムの崩壊系列上に存在する核種のいわば複合体です。中でもラドンはガス状の物質ですので、長い間イエローケーキを貯蔵していた倉庫内部は、相当高濃度のラドンガスが充満しているだろうと想像できます。 そこに略奪者は入り込んだようですから、相当の被曝を受けたでしょう。 空気呼吸器もなくそういう施設に接近するのは極めて危険なのですが、報道関係者を案内していたと思われる米軍兵士もフジテレビの記者も防護服を着るどころか、マスクさえない無防備状態で、ツワイサの核施設に接近し、イエローケーキが貯蔵されていたと思われる倉庫の入り口付近に接近しています。画面上では立ち入ってはいないようでした。 ここでテレビに映し出されたのは、わずかにすき間の空いた倉庫入り口にうずたかく山になっているイエローケーキでした。 この状態にあるにもかかわらず、米軍は何の手も打っている様子はありません。 場面は移り、施設近郊の町、イエローケーキを詰めていたと見られるドラム缶を家の庭先に置いて、水を入れていたという家族に取材をしています。もうドラム缶はそこにはないのですが、10歳にもならないと見られる子どもたちの全身に発疹が起き始めています。おそらくウランの金属毒性に伴うものであろうと思われますが、子どもだけでなく大人にも発疹が広がっているのだそうです。極めて危険な状態であることは明らかです。 ツワイサの核施設には、既に腐食して穴が開き屋外に放置されているドラム缶がありました。いくつあるのか見当もつかない量ですが、おそらく以前から管理されている様子もないので、放射性廃棄物を詰めているのではないかと思われます。そうであれば、このまま放置したら土壌を汚染し、地下水にまで達します。 このテレビ報道や朝日、共同のニュースを見ると、イラク軍が管理していた段階まではこういった汚染事故は起きていないようです。しかし米軍の接近でイラク軍が逃亡し、誰も警備しなくなったところに略奪が起きたという流れに見えます。しかしこれは不自然です。 記事には「およそ千人の核関連技術者が居た」はずです。小規模な略奪が発生したとしても、これほど壊滅的な事態にはなりません。つまり、米軍が最初にこの施設に突入したとき、警備システムや施錠や壁や扉など、一般的に略奪から防護できる最低限の設備を壊して最初に略奪したのであろうと想像できます。その後、何の管理もせずに放置したため、武装した住民が殺到しても手の打ちようがなかったと思われます。これもまた米軍の犯罪の一端なのです。 この事件を別の見方をすると、こういうことも言えます。 ツワイサというのは、私も最初に知ったイラクの核開発施設中枢地域です。1981年にイスラエルの爆撃により破壊された原子炉だけでなく、その原子炉を動かすために必要な各種の施設があり、核爆弾を作るとしたらこの施設群は中核地域になる場所です。そんな「大量破壊兵器に一番近い場所」を米軍は「放置した」のです。彼らにとって大量破壊兵器の捜索など国際世論の批判をかわすためのポーズでしかないことは、この一事をとってもあまりに明白ではないでしょうか。 イエローケーキは核爆弾の原料です。もちろん濃縮プラントがなければ意味をなしませんが、それでも核兵器関連物質として厳重に管理されなければならない物質であることは間違いありません。それを略奪され放題に放置していた米軍の姿勢は、到底説明できるものではないはずです。そして、放射線被曝防止の観点からも、この施設を無管理状態に放置した責任は重大なのです。 最後に最も重大な問題を指摘します。 イエローケーキも劣化ウランも同様に危険な物質です。米軍は「劣化ウランに危険はない」といったでたらめな公式見解を表明したことが、現場でもこういったでたらめな対応につながった可能性があります。 劣化ウランをばらまいた米軍は、それが安全であると主張している手前、イエローケーキ(天然ウラン)の危険性を末端の部隊にまで徹底できない(徹底しない)対策も取れない(取らない)という結果になったのであろうと思われます。 結局起きたことは、ダグラス・ロッキー氏が語ったと同じ現象が住民の間に広がることになります。すなわち、皮膚に発疹が多く発生しているのです。今後予想されることは肝臓や腎臓などの多臓器不全、末梢神経麻痺、ぜんそく、呼吸困難などの全身症状や呼吸器症状が発生することと、長期的にはガンの多発が懸念されます。 すぐにすべきことは、施設内外に散乱しているイエローケーキや持ち出されたドラムなど汚染されたものを直ちに回収し、汚染土壌を除去し、汚染のひどい場所に住む人々は住居を移転し、健康診断を実施し、症状が出ている人々に適切な医療を施すことです。これらはすべて占領軍が行う義務があります。資金的な援助も必要です。現地の人々は、避難しようにもここしか生活基盤がありません。 劣化ウランだけでなく、こういう形で核の汚染が広まっていることを、わずかな報道で私たちは知ることができましたが、現地の人々のほうが何も知らされないまま放置されています。許されることではありません。 この文章は、劣化ウラン研究会 山崎久隆のご了解を得て転載したものです。事態の重大性を考え、内容を変更しない限り転載・転送は自由です。 「天然ウラン(イエローケーキ)」汚染事件とは‥ 朝日新聞などの報道によると、イラク中部ツワイサにあるイラク原子力エネルギー委員会の原子力関連施設で、2003年4月上旬、「イエローケーキ」と呼ばれる精錬ウランを貯蔵したドラム缶を、その中身を知らない近隣住民が持ち出し、精錬ウランを貯蔵庫の床や外部の地面にまいたり、川や池に流したりした他、水道施設がないため貯水用に用いていた。 施設は従来でイラク軍が厳重に警備していたが、4月5日に米海兵隊が制圧後、米軍は貯蔵施設を特別に警備せず、略奪を許していた。 |