
まったく、どこに大量破壊兵器があるのか?
Just where are those weapons? (原文=英字の見出し)
|
バルチモア・サン 2003年5月20日 |
|
by スティーヴ・チャップマン |
|
シカゴ/イラクに大量破壊兵器があるというブッシュ政府の主張は、本当の殺人犯を見つけ出そうとするO・Jの努力と同じ程度の説得力となって響きはじめた。サダム・フセインが大量破壊兵器を使ってわれわれへのテロ行為に及ぶ前に戦争を始めてから、すでに2ヶ月が過ぎ、われわれは一つとしてサダムの邪悪な兵器が装てんされた弾頭、砲弾、ミサイル、冷凍保存装置を発見していない。 アメリカ政府がなしえた最良のことは、軍の専門家が生物兵器を作るための移動式研究施設だと考えた一組のトレーラーの所在をつきとめたことだ。しかし先週末までに、ペンタゴン=米国防総省はその主張を断念した。大統領は一般教書演説のなかで、フセイン氏が天まで届くくらいに原料を保管しているような印象をふりまいた。われわれが時を移さずに行動した理由だった。 われわれが聞かされたことは、フセイン氏が2万5000リットルの炭素菌を保有しており、「数百人以上を殺すことのできる3万8000リットルのボツリヌス菌毒素を持っている可能性があるということだ。彼は500トンの毒ガスを製造したかもしれないと言われていた。 もしブッシュ大統領が報告した全ての兵器をサダムが持っていたなら、スティービー・ワンダーはそれを発見することができるはずだ。もしイラクの兵器について政府がおこなってきた主張が正直でなかったか、政府が無能力であるかのどちらかだとするなら、その主張は戦争のためにこそ最高の口実であった。 侵攻が始まる前に、情報の相当部分が虚偽のものだと暴露された。それでも、われわれが一旦イラクに攻め入れば、動かぬ証拠がたっぷりあると想定されていた。しかし、われわれは何も発見できず、二つのもっともらしい説明がなされた。そのどちらもドナルド・ラムズフェルド(米国防長官)と仲間を喜ばせなかった。 最初に指摘された可能性は、われわれが到着するころには、イラクは禁じられた兵器の重要な隠し場所を持ってなかったというものだ。多分、初めから多くなかったか、発見されないように国連兵器査察団が到着する前に破壊してしまったのだろう。このことは戦争に訴える理由を成り立たせなくするのだと、誰も気づかなかったのか? もしフセイン氏が持っていたのがとるに足りないものばかりだとすると、彼はそれをわれわれに対して、あるいは他の誰に対しても使用する立場になかったわけだ。 もし彼が驚いて取り押さえられるよりはネズミの穴に全部を投げ入れたというのなら、われわれは明らかにイラクを恒常的に査察することによって、その脅威を取り除くことができたはずだ。 しかし、もっと都合の悪い可能性さえ存在する。フセイン氏は型にはまらない兵器を多数保有していて、それはこの2ヶ月の混乱のなかで消失してしまったかもしれない。アメリカ兵の犠牲を最小に抑えてすばやく勝利したという観点からは、ペンタゴンの戦争計画は素晴らしかった。しかし、疑わしい兵器関連施設を発見し確保する点で大きな手抜かりがあった。そしてこれはバグダッドに到着することよりもずっと優先されることでさえあったはずだ。 国防総省はその任務のために、わずか200人の人員を任命したと言う。この小規模のチームがもっとも悩ましい施設・設備の多くを掌握するのに、数週間かかった。それまでの期間に、大部分の施設が略奪を受け、少しでも役立つ証拠が破壊され、全体としてわれわれが発見できるものは何も残ってなかった。 大量破壊兵器を口実に使って、できそこないの十字軍を正当化するためにアメリカは故意に世界を誤らせた、という外国の批判を確認したことは一つの成果だった。これまで明らかになったことは、ミスター・フセインではなく、ミスター・ブッシュがイラクの兵器についてウソ言っているように見えた。しかし、そのことは我々の評判を傷つけるだけのようだ。本当の危険はわれわれの治安維持にかかっている。化学・生物兵器はまんまと略奪され、クリスマスの用紙に包んで敵に届けられたかもしれない。今までは炭そ菌またはサリン・ガスはアメリカへの激しい抵抗にむかうイラク人の掌中にあった。 ワシントンポスト紙はイラクの核関連施設7箇所が略奪を受けたと報道した。「ブッシュ政府は、技術文書、機密的な設備、そしておそらく放射性物質が散逸したと危惧している」と書かれている。[放射性物質を積載したコンテナの一部が見失われた」。なるほど、「汚い爆弾(ダーティ・ボム)」を作るのに使用する材料か、あるいは核兵器の原料さえも、楽に手に入れられたかもしれない。戦争の前には、フセイン氏の兵器庫は厳重な管理のもとに秘匿されて、彼はそれを敢えて使用することはなかった。 今日、彼が所有した最悪の原料がオサマ・ビン・ラディンと彼の共謀者の手に入ったかもしれず、彼らは手に入れれば使用することもあるだろう。 読者の皆さんは(今回の戦争によって)以前より安全になったと感じるだろうか? (スティーヴ・チャップマンはシカゴ・トリビューン紙のコラムニストである。 彼のコラムは『サン』の火曜日と金曜日に掲載される。) ※ 訳注: 核関連施設への略奪について、イラクの代表的な核関連施設があるツワイサの状況は下記URLに詳しい報告がある。 イラク ツワイサ: かつてのイラク原子力施設/今やウラニウム汚染地帯( 山崎 久隆/劣化ウラン研究会) ツワイサ 天然ウラン汚染事件 (山崎久隆) 当サイト内 ※本文は、資料紹介のための山本史郎さんによる日本語訳です。必要な場合は、下記のURLで原文を確認してください。 http://www.sunspot.net/news/opinion/bal-op.chapman20may20,0,600298.story?coll=bal%2Dpe%2Dopinion |