観劇体験。


 夜叉ヶ池

飢えと乾きの純愛サバイバル。
『夜叉ヶ池』(婦人マガジン)
観劇日:2005年1月22日 観劇場所:芸術創造館


…☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆あらすじ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━☆…
夜叉ヶ池とそのほとりの村には日に三度、鐘の音が鳴り響く。はるか昔、この鐘は村人と夜叉ヶ池に棲む龍神との間に交わされた平和の約束だった。もし破れば川は氾濫し、人は滅亡する。今もその約束を守り、鐘を突き続けるのは萩原晃(赤星マサノリ)と百合(田所草子)夫婦。そして夏。村では日照りが続き、村人たちは雨乞いを繰り返すが、雨が降る気配は一向にない。いよいよ切羽詰まった村人たちの間から、百合を龍神の生け贄にしようとの声が上がる…(カッコ内役者名・敬称略)
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●劇団「芝居屋坂道ストア」が「たった1度だけ」と立ち上げた「婦人マガジン」。
女子いっぱいの中に演出の角ひろみが厳選した殿方2名、というハーレムの様相を呈しております。選ばれたのは関西小劇場界の中でも男前寄り(ただし胡散臭い by角ひろみ)の赤星マサノリと山浦徹。
原作の泉鏡花作品は『外科室』しか知らないけど、はかない恋とか幻想的な雰囲気が泉鏡花の持ち味なのかもしれない。


●晃はもともと村の人間ではない。美しいもの、不思議なものをこの目で見たいと放浪するうちに「美しい夜叉ヶ池」の話を聞きつけ、訪ねてきただけの旅人。しかし夜叉ヶ池に伝わる鐘の伝説と、それを守り続ける先代の鐘突きの死に際にたまたま居合わせたことで、代わりに鐘を突き続けようと決心する。何よりもここに住もうと決めた最大の理由は、村の娘・百合。この2人が良く言えばラブラブ=A悪く言えば寒い≠ュらいの仲の良さ。そこにこれまた放浪の旅を続けていた晃の旧友・学円(山浦徹)がやってくる。


●今回の舞台、とにかくセリフ廻しが難しい。
百合は「〜ござんすよ」とかずっと花魁みたいな感じだし、晃はそうでもなかったけど、 学円のセリフも途中で何を話しているのかわかんなくなるくらい難解。「よく噛まずに話せるなー」と変に感心してしまって、最初の方は気もそぞろ。ワタシは本でもドラマでも感情移入して見てしまうので(その方がおもしろい)不安が頭をよぎる。


●夜叉ヶ池をめざしてやってきた学円が晃の旧友とは知らず、お茶と梨を出してもてなす百合。その梨をナイフでむく学円の手になぜか色気を感じてしまってやたらドキドキした。山浦徹の芝居を観たのは2度目やけど、男前寄り(しつこい)ってのを置いてもすごく雰囲気のある役者さんだなと思った。


●晃と百合の恋ともう一つ描かれるのが、夜叉ヶ池に棲む龍神・白雪姫(浅田百合子)の恋。これがかなり切なかった。相手は剣ヶ峰に棲んでいて、ひとっ飛びで逢えるはずなのに(龍神だし)晃の突く鐘のせいでそれが叶わない。この鐘は昔、龍神と村人の間で決められた約束。もし姫が約束を守らず、夜叉ヶ池から動いてしまうと洪水が起こって周辺の集落8千人の命が失われる。それでも涙ながらに「逢いたい」気持ちを訴える姫に、姫付きの婆と家来たちが必死でなだめすかす。


「命のために恋は捨てない」


姫は言い切ってしまうから。カッコいいって思ってしまった。
それでも結局、姫は「約束を守ること」を選ぶ。泣かしてくれます。


●「夜叉ヶ池が見たい」という学円を晃が案内している間に、村人たちが晃と百合の住まいへやってくる。日照りが続く村に雨を降らせるため、百合を生け贄にしようとして。村人たちが百合に言い立てる理由がもうワケわかんなくて、人間のエゴはここまで汚いかと思ってしまう。そこに虫の知らせを感じた晃と学円が戻ってきてから繰り広げられる、百合をめぐる攻防。「なんで!?」と思ってしまう結末。


晃がぽつりと言う。


「学円、オレはもう鐘を突かない」


…哀しすぎ。でも百合を全力で守る晃はすごくカッコよかった。
ここまで愛されるってのはどんな感じなんだろう。


こんな人間たちのために、鐘なんか突いてやる必要はない。

村人に対してすごい怒りがこみ上げてきて、いつのまにかセリフの難解さも気にならなくなるほど真剣に芝居を観ている自分に気付いたのもおもしろかった。


●和服をアレンジしたような衣装で、特に龍神チームのはかわいかった。
白雪姫役の浅田百合子はいつもミョーなテンションの役が多いのであまり好きではなかったけど、こんなのもできるんやと改めて感心。
赤星マサノリは言うに及ばず、山浦徹は今年ワタシの中でブレイクの予感必至です。



<追記・解説>
第31回、25名送信。
2005年1発目。2004年からブレイク継続中の赤星サン。
ちっちゃくて細いのに、百合役の田所さんを抱き上げた時点でもうメロメロでした。
しかし芸術創造館は遠い…なんとかならんもんか。