観劇体験。


 天才脚本家

ワタシを見事なまでの演劇貧乏に叩き落した一本。
『天才脚本家』
観劇日:2001年12月15日 観劇場所:シアタードラマシティ 

  
…☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆あらすじ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━☆…
日本にとって不利益なニュースを世間から抹消する「イレイサー」。そうして日本の発展を裏側から支えてきた。ある日、全国で「男子集団失踪事件」が起こる。この失踪事件、実は国家政策に関わる絶対オモテ沙汰にしちゃいけないモノ。「本当のことを国民が知ったらカンカンだあ!(「メル」風で読むとより臨場感倍増)」新人イレイサー・メル(山内圭哉)と伝説のイレイサー・ワイルダー(後藤ひろひと)の再来といわれるローズ(関秀人)が、この事件をイレイスにかかる。一方、ヤラセ番組を作り続けるテレビプロデューサーの春木(三上市朗)。ひょんなことから「イレイサー=国が雇った天才脚本家」の事実を知ることとなり…。(カッコ内は役者名・敬称略)
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●ストーリー読んで、一体どこの誰がコメディ含んでると思うよ?もともとこんなアヤシゲな話(ここではイレイサーというワードがそれにあたる)が好きで、観に行った。笑いに行く気は露ほどもなく。
しかし!とにかく笑った。舞台で涙出るまで笑ったのは初めて。
先が読めそうになると向こうもちゃんとそれを考え、話をケムにまくキャラとか出てくる。結局オチらしいオチが読めず、秀逸のストーリー展開だった。でもきっとオチがわかってても笑ってた。自信あるな。およそ2時間半(休憩なし)辛さはまったく感じず、ゲラゲラドキドキしっぱなし。
関西小劇団の有名ドコロが、それはもうわんさか出演。基本的にはそれぞれの劇団の主役級を揃えた布陣なので、それ観るだけでも(わかる人には。当時のワタシはそのスゴさを知らず)おもしろかったんと違うかなあ。ものすごいパワーあったもん。ここからいろんな舞台観るようになったので、それを思えばこの舞台が果たした役割は本当に大きいと言えます。


●一世を風靡した事件、そしていつのまにか消えていた事件。それらがこの舞台の大きなキーワードとなる。それは台詞の端々にも多く登場。
「ルーシー・ブラックマン事件はどおなった!?」
「最近狂牛病のニュースやらないよな。そうか、もう解決したんだな」など。
ワタシは単純に「ハッ!ほんまや!!」って思った。「本当にいるんやないの?天才脚本家」って、実は今もちょっと信じてる。人間の記憶ほど頼りにならないものはない。だったらそれを逆手に取って、操作する人がいたって不思議じゃない。日本ならやりかねなさそうだ。そう思ったらすごくすごーく恐くなった。
この舞台で「事件があってもずっと忘れないようにしよう」という感慨は浮かばなかった。そういうことを言いたいのかなあという疑問みたいなのもあったし。現在の自分が「あれ?忘れてるやん」という事実。それは噛みしめた(と思う)。


●この舞台を観て知った役者がほとんどで、出演者12人全員、キャラ立ちすぎ。メル役の山内圭哉にすっかり魅せられ、この後の山内フィーバーが始まり(フィーバーぶりは周知のところ)、特筆すべきは滑川役の腹筋善之助と伊藤役の久保田浩のお互いの肉体を駆使して繰り広げられるパワーバトル。合い言葉は「サスカッチ」(意味わかる?)、キーワードは「大商大」。今観るとどってことないけど、生で観た時は引くほどの衝撃を受けた(苦笑)。でも観に来てる人たちは大爆笑。「舞台ってそうなんだ…」と、なにがしかの洗礼を受けた気がした。

ローズ役の関秀人は、ハードボイルドでかーなりかっこいい。マジでええ役。こういう人なんだと勝手に解釈してたら、本当はオカシイ人だと聞いて驚いた。想像つかない…。

いぶし銀の三上市朗(春木役)も、ええおっさんを好演。他にもイヌガマ、コロリン星人など、おもしろワキキャラ大放出。ワキが人間とは限らないところがかなりおもろい。後藤ひろひとの脚本らしいなあと。ステキな12人を見せてもらった。ビデオ買ったし。



<追記・解説>
記念すべき第1回メルマガ。当時40名に送信。
本文中に「ビデオ買った」とありますが、その後DVDが発売。購入後、ビデオはヤフオクで売りました。
いやあ、懐かしい。メルマガなんて書いたことないから、手探りの感じがありありで恥ずかしい。
この3年でかなりの量の舞台を観ましたが、もう1度観たい舞台BEST1は、いまだにコレ。



 十字架

長塚圭史ワールドで毒気抜かれる。
『十字架』 (阿佐ヶ谷スパイダース)   
観劇日:2002年3月24日 観劇場所:近鉄小劇場 


…☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆あらすじ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━☆…
薬局でアルバイトをして生計を立てる加藤令子(千葉雅子)は敬虔なキリスト教信者。高校生でマイナス思考の娘・真澄(真木よう子)、真澄とは義理の父にあたり、ED(性機能不全。要するに勃起障害)のために毎日自殺を繰り返し、まったく働かない夫・諭吉(中山祐一朗)と暮らしている。諭吉がいつものように自殺しようとしたある日、ヤクザの宇野(三上市朗)たちと出会い「コレを飲めば死ねる」と怪しげな薬をもらう。そして娘には好きな男(伊達暁)ができるが、こいつがまたとんでもないチンピラ。日課のように殴る蹴るのケンカをしている母と娘だったが、そんな中、娘がはずみで母に大ケガを負わせてしまい…。(カッコ内役者名・敬称略)
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●毎日生きている中で、できるだけ見ないようにしている部分というか、人のダークな部分を「普通にそこにあるもの」として淡々と進む舞台。
キリスト教という「宗教」(宗教を引き合いに出す時って大体キリスト教やね。そういえば)と「ヤクザ」っていう、パッと見には相反するものを並べてるところや、人間的に何かが欠けてると感じられる(役がね)人たちが大勢集まって、舞台が進行してる感じがすごくおもしろかった。
イヤなものとかを見るときって、見たくないから手で顔を覆うけど、指のすきまから見たりする怖いモノ見たさな感じ。まあ悲劇と言えば悲劇なんだけど、悲しくなったりとかそんなことにはならない。哀しく楽しく観れたって言うのが、正直な感想かも。


●劇中によく出てくる言葉は「神」。令子は本気で神を信じてて、家を出た娘が帰ってくるように毎日祈るだけのような女。何でそこまでと思えることも、後に理由が明かされるんだけど。長塚圭史は令子役の千葉雅子が先にあってこの話を考えたらしい。それも令子が神(に見えた人間。ここでは殺し屋・犬井)に向かってオトシマエをつけさせようとする迫力のラストを観れば、膝を叩いて納得できる。


●諭吉が、ソープで働くことになってしまった真澄に「EDだから死にたいって思ってたんじゃない。好きな女がそばにいるのに抱けないのがツラかったから、死にたかったんだ」って台詞が、深いけどすごくシンプルで好きだなあ。ワタシは男ではないからその病気になる気持ちはわからないけど、ツライ気持ちになってちょっと泣いてしまった。


●「ヤバイヤバイヤバイ、これはハマるな」って思いながら観てた。「阿佐ヶ谷スパイダース」主宰で作・演出・役者までこなす長塚圭史が創った世界に。
ソープに通う殺し屋・犬井としてこの人が舞台に出た瞬間、目が離せなくなった。(会社の人に「ズキューン」って感じやったんです。と言ったら笑われた)
ただ立ってるだけのシーンで他の役者さんが台詞言ってんのに、長塚圭史ばかりを観てしまう。こんなことってなかなかないこと。ものすごい存在感だった。一言で言うならば「粋」(あああ出ちゃったよ。このコトバ。 笑)でしょうか。


●最近男の趣味にやたら自覚が出てきたことに気付いたけど、長塚圭史はもうドンズバストライク。ってそうか?ほんとにそうか??いや、好みであることには間違いない。(苦笑)
阿佐ヶ谷スパイダースはなかなか関西に来ないけど、とにかくこれから絶対観るマスト劇団に決定した舞台なのであった。



<追記・解説>
第2回メルマガ。34名に送信。
ワタシが「結婚したい」とまで言うほどハマった、長塚圭史が初登場。
この頃はまだ関西で「阿佐ヶ谷スパイダース」の認知度は低く、近鉄小劇場でガラガラだった。
「阿佐スパ」の中で、イチバン好きな作品です。



 2CHEAT

顔も芝居も濃い二人にヤラれた。
『2CHEAT』 (wat mayhem vol.1)  
観劇日:2002年3月2日 観劇場所:よしもとrise-1シアター 


…☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆あらすじ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━☆…
とあるマンションの一室。一人の男(福田転球)がソファに座って煙草を吸っている。そばには大きなスーツケース。その男はヤクザで、組の金を使い込み、逃げる算段をしているところだった。そこへ弟分(山内圭哉)が男を連れ戻しに現れる。「30分だけ時間が欲しい」という男に、弟分は哀れみを覚え待つことに。そしてどちらからともなく、二人が初めて出会った小学校時代の思い出話が始まるが…。(カッコ内役者名・敬称略)
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●事前にチラシは手に入れていたものの、福田転球と山内圭哉の「二人芝居」ということ以外に、まあったく情報が入って来なかった。『ぴあ』とかに載ってても、あえて見ずに気持ちを純粋培養。山内圭哉を楽しみにあの頃は生活してた(遠い目)。
そして巷でウワサの「福田転球」の舞台を初めて観るのにもドキドキ。名前だけは知っていた彼の人についての予備知識は、会社の先輩が「天六で赤い顔して飲んでるん見たで」というただひとつ。
これで人となりがわかるはずもなく、でもそれがかえって良かったようで、もうめちゃくちゃおかしかった!


●セットはまったく変わらない、変わると言えば二人の衣装。スーツに始まり、学ラン、ジャージ(当然2本線)。しかも客の目の前で着替える彼ら(笑)。
二人のきったないトランクス姿も、ファンが見れば垂涎モノでしょう(いや、ワタシは出してないから。名誉のために言っておく)。
ブラスバンド部で出会った二人の小学校時代、バンドを組んだ青春時代など、ほとんど思い出話を再現する形で話は進むけど、これがとにかくおかしい!なかでも最高に笑ったのは、弟分(山内)が老人介護のバイトをする回想シーン。
まったく介護初心者の弟分に執拗にからむベテラン指導員(女・推定年齢40代・未婚)の福田転球。この指導員がほんまにめちゃめちゃムカつく。人の神経を逆なでするしゃべり方といい、動きといい。
「どうしてあなたはそう思うのかな?(書いてて口調思い出したよ 笑)」
山内圭哉も最後にはキレて、頭はたくわ、蹴りかますわで、どこまでが演技なのかがわからない行動に出て、これもまたおもしろかった。

●福田転球は「何でこの人はこんなに汗をかくのだ」というほど汗かきまくり。で、ワタシが言うのも何だが、動きとか発想とかそういうものがちょっと変わってる。そのズレた感じがこの人の味なんだろうな。そこがおもしろくて笑ってしまう。
そのやんちゃな兄貴(実際に年齢も上だし)のボケを促し、意味不明な行動を暖かく見守りつつ、時にはツッコミも厳しい山内圭哉。福田転球の動きがよっぽどおかしいのか、舞台上で思わず笑う場面もあった。


●実は悲しいラストシーンの前に、舞台上に置かれたXーツケースの中の服におもむろに着替え始めた二人。山内圭哉はセーラー服(ズラ付き)、福田転球はナース服。山内圭哉の女装を見るのは二度目。あああ本当にキレイだ。すかさずオペラグラスを構えるワタシ。そしてそんなワタシにちょっと引き気味な隣席の人(笑)。足とかワタシ好みで(スネ毛あるけど)クギづけでした。
アンコールとかがひじょーに苦手な二人らしいですが、おまけで「転ちゃん・圭ちゃん」のコンビとして漫才までやってくれて、本当に楽しく過ごせたなあ。


●この舞台、山内圭哉が立ち上げた「wat mayhem」の第1回プロデュース公演。山内氏がHPで言ってましたが、3日間で動員1000人。
「2CHEATご来場下さった皆さん、有難う。愛してる。」(本文ママ)
の一文に倒れそうになって、何回も見返したよ(アイタタタ…)。出演はたった二人だけというのに、観客をまったく厭きさせないパワーと舞台構成。「もう一回観てもいい」と思った舞台です。



<追記・解説>
第3回、35名に送信。
やたらと「(笑)」を多用した、テンション高めのメルマガ。読み返すと恥ずかしい。
この舞台は、友だちのツテで「関係者席」で観ることができた。良席やったなあ。
本文中の「引き気味の隣席の人」は、転球さんのお知り合いの整体師さん。かなり親しいご様子でした。これも関係者席のなせるワザ。



 ダブリンの鐘つきカビ人間

一粒で何度でもおいしい舞台。
『ダブリンの鐘つきカビ人間』 (G2プロデュース)
観劇日:2002年4月28日 観劇場所:シアタードラマシティ 


…☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆あらすじ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━☆…
鬱蒼とした森の中に建つ館。そこに迷い込んだ聡(長塚圭史)と真奈美(遠藤久美子)は、館の主(池田成志)から、昔ここが栄えた街であった話を聞かされる。
時は中世。街では人によって症状がまったく違う不思議な病が流行っていた。「背中に羽根が生える病」の男(及川健)、「イバれない病」の王様(後藤ひろひと)…。そして性悪な内面と絶世の外見が入れ替わり、ピュアな心にカビだらけのカラダになった「カビ人間」(大倉孝二)は、街中の人から嫌われていた。
この奇妙な病を治すには、伝説の剣「ポーグマホーン」を探さねばならない。しかしその剣が眠るという森には怪獣がいるというウワサ。誰が探しに行くのかを相談する街の人たち。そのとき、館の主によってこの世界に導かれた、真奈美と聡が名乗りをあげる。
鐘で街の人たちに時間を知らせることが仕事のカビ人間は、ある日クローバーを探しに来た「思ったことと反対のコトバを話す病」のおさえ(水野真紀)と出会い…。(カッコ内役者名・敬称略)
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●いや、ほんまにね、楽しみにしてたんですよ、この舞台。「これ観るまでは絶対に死ねない」って思ってたし(大げさではなく本気で)。池田成志や大倉孝二、及川健など1度観てみたい人もいたから。でも今回のお目当ては何より山内圭哉と長塚圭史。
好きな人が二人も共演してるなんてー!しかも後藤ひろひとの脚本だなんてー!
楽しくておかしいけれど、実はすごく切なく、そしてゾクっとする、そんなお話。


●カビ人間が初めておさえに会ったときは、おさえの病気を知らないから

「今すぐ私の側に来て!」(おさえの心の中は「絶対、来ないで!」となる)

と言われて思わず近寄ってしまう。街中の人間に嫌われているのに、この子だけは自分を嫌わないという嬉しさで。おさえがどんな病気なのかを知った後も、カビ人間はこれ以上ない純粋な心でおさえを想う。ほんとに切ない。泣きました、ワタシ。
ここまで「純粋すぎる想い」を見るとツラくなる。最初怖がっていたおさえもカビ人間の優しさに惹かれ始める。ここだけはありがちな話だけど、これが結果的に哀しい最後に繋がっていく。


●中世の街に入り込んだことを「夢」として捉え「何でも望むモノになれる」と考える強気の真奈美。彼女が望んだのは「街を救う旅人」。
それに対しあくまで「普通の感覚」を無くさない聡は、怪獣いっぱいな森なんかに行くのも嫌々で(当たり前だ)、さらに今イチ状況を飲み込めていない。
そんな彼に真奈美は言う。

「望むままの強くてかっこいい人になれるのよ。だって夢なんだから」

そして聡は「見ためだけ エルヴィス・プレスリー」に。
なんで「強くてかっこいい」のがプレスリーなのかはさておき、白のつなぎに星のスパンコール、袖はフリンジ。長塚圭史がこの格好で出た瞬間、あの観客の中でたぶんワタシが一番大喜びしたはず(笑)。
スタイルいいだけに異常に似合ってる。自分のとこでは絶対にやらないであろう役で「長塚圭史ってこんなんもできるんや…」と新たな発見をしたなあ。


●悪役は街の市長・池田成志と神父・山内圭哉。並ぶだけで濃い二人(笑)。こいつらがとにかくひっどい悪巧みをする。山内圭哉のどこが好きって、あの眼力。あれはほんまにスゴイ。舞台メイクでアイラインバッチリ(オペラグラス確認)。より凄味の増した眼力は、かっこよすぎて、またヤラれちまいました。
もともと悪そうな人だし(失礼)この役も絶対楽しんでやってた。彼の歌う「教会へ献金しろよの唄」がかなりツボ。


●今回何より驚いたのは大倉孝二の「背の高さ」。顔がちっちゃい人なので勝手に小さいと思い込んでたけど、目測180cmほど。細いから余計高く見える。いやあ、びっくり。カビ人間だけど「身長が伸びる病」なのかと思ったくらい。
そして「ちょっと狂った役」が似合いすぎの中山祐一朗。前半と後半でまったく違う人物へと変貌する侍従長役。ほんの少し歯車の狂った雰囲気はこの人ゆえ。何が怖いって「人」ほど怖いものはないとワタシは思う。ゾクゾクした。


●聡と真奈美は、付き合ってるのにお互いのことが大っ嫌い。でも、あの街で起こることを目の当たりにしながら、肝心のところで何もできない(だって違う世界の人間だ)。涙をぼろぼろとこぼす真奈美に、初めて優しい言葉をかけて寄り添う聡。ジーンと来た。周りも泣いてた。しかし。
心の中で「替われー!エンクミー!」ってちょびっと(ごめん、ウソ。かなり)思った。ええシーンやのにほんまに申し訳ない。そのとき「あ、ワタシほんまに長塚圭史、好きやわ」って確信するに至る。…笑いたければ笑え。


●後藤ひろひとの脚本は何度観ても飽きない。『天才脚本家』(第1回メルマガ)もそうやったけど、今回もひねりが効いてる。観客をおもしろおかしく巻き込んでしまうあの構成はマジ立派。ワケのわからない生物や戦士(橋本さとし)の乗る馬(?)など小道具も後藤独特の「遊び」がいっぱい、仕掛けもイカす。「この人、天才や」って思う。ワタシもこんな話書く頭になりたい。


●ワタシのポリシーは「一舞台・一公演」(本番は一度しか観ない)。だってお金ない&有り難みが薄れるから。でも今回はもう一度観たくて当日券を取るかどうか、ぎりぎりまで悩んだ。結局やめたけれど、それほどまでに観たかった。変わりにDVD買ったけどね(笑)。



<追記・解説>
第4回、35名送信。メモには「2002年上半期1位」と書いてある。
これも「もう1度観たい舞台」上位にランクイン中。
何よりキャストが豪華!!それに後藤ひろひとの書く世界が好きなんだろうな。
DVDも何度見たかわからないが、毎回必ずおんなじところで泣くのはいかがなものか。
この回のメルマガは、多くの方からおホメの言葉をいただき、自信のひとつにもなりました。



 JUDGE

アンドロイドって、そう先の話じゃないかもね。
『JUDGE』 (劇団必死組)   
観劇日:2002年5月10日 観劇場所:HEP HALL 


…☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆あらすじ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━☆…
アンドロイド「フォレス」(山本和也)を製造したサエト(濱谷晃年)の研究パートナー・ミサコ(長谷川千夏)は、自分の細胞から人工培養人間(クローン)「クルス」(中西将也)を誕生させることに成功。フォレスとともに社会に適合させるための訓練を開始する。遺伝子段階で記憶レコードに法学、社会学、経済学などなど、とにかくありとあらゆる知識をいっぱいに詰め込んだクルスだが、それを「自分の経験」として積み重ねて欲しいとサエトは願っていた。しかしある日、ミサコが「ロボット三原則」をクルスにインプットしていたことが発覚。これはロボットが人間に対して守らなければならない規則。それを知ったサエトは激怒し、クルスは「人間」か「研究対象物」かでミサコと意見が衝突する。そんな中、クルスには重大な欠陥があることが判明して…。(カッコ内役者名・敬称略)
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●観るかどうかずっと迷ってて、仕事がたまたま早く終わったために駆け込みで入った舞台。でも観て正解。とにかく泣いた。涙を拭うと泣いてることがバレるので、泣きっぱなしにするクセがあるのだけど(暗いから他の人にはわからないし)、今回は収拾がつかなくなり思わず拭ってしまった。不覚。しかしいい拾いもんをしたという感じです。
どんな方法や形で生まれようと「そこに生きて存在している」ことは変わらない。そのことをカラダを張って教えようとするフォレスが、本当にかわいくて悲しくて涙が止まらなかった。


●いくらクローンであろうと、人の細胞から生まれてきたクルスを「人間」として育てようとするサエトに対し「研究対象」としか見なさないミサコ。彼がここまでこだわるのには、自分自身の過去にも理由がある。「育てるのに都合がいいから」という身勝手な理由だけで「ロボット三原則」(説明は下参照)をクルスにインプットする。
自分の思い通りにならないと突然怒り出すところなんか、本当にイライラさせられる。子どもに完璧さを求めてヒステリーを起こしてる母の図っていうのは、こういうものなんだろうな。
どうしたらいいのかわからないクルスは、ただおろおろするばかり。そんな風に教えられてないのだから、しようがないのに。自分でも気付かないストレスを貯め続けたクルスは「母」に拒絶され続けることによってカラダに変調を来し、衝撃の事件を引き起こすことになる。


●サンドイッチを「おいしいなあ」と食べるクルスに勧められて、一口食べるフォレス。でも味がわからない。アンドロイドは食事をしないから味覚がないことを知らないクルスに、不思議そうに見つめられて「おいしいよ」と笑顔を見せるフォレス。
「知らない」ってことは無意識に人(この場合はアンドロイドだけど)を傷つけることもある。それをわかった上で返事するフォレスに、一気に感情移入してしまった。


●「アンドロイド」と「人間」が一緒に育つこと。自分自身とクルスの決定的な違いをきちんと理解しながらも、本当の弟ができたように喜ぶ無邪気なフォレスは、まっすぐで純粋。アンドロイドにしておくにはもったいないほど(笑)。ミサコに「人間であること」を否定されたクルスは、自分自身の存在意義を問い続ける。そしてフォレスは言う。

「オレ、アンドロイド。温度がない。でもクルス、お前は違う」

このシーンが、この舞台の中で一番泣いた。もう本当にダダ泣き。フォレスの一生懸命さが伝わってくるし、それをわからないなりにちゃんと理解しようとするクルスもいい子。思い出しても泣けてきた。このフォレス役の山本和也、見た目は普通のパッとしない子なのに、舞台が進むにつれてどんどん顔が変わってくる。喜んだり困ったり、楽しげなのに切なくなったりと表情豊かだなーと思った。


●完全に感情の抑制が効かなくなったクルスは、異常な量の電気をカラダから放電、行き場を求めて研究所内を暴れ回る。こういう事態になっても、目と耳を塞いで責任を回避しようとするミサコに、サエトは「研究者としては最高のパートナーだが、母としての適正を見極めなかったのは、僕の誤りだ」とついにマジギレ。これも難しい問題で、ミサコは最初から「人」を育てるという意識は持っていなかった。最初からお互いの意思疎通がはかれていたら、こんな事件を招くこともなかったのだけど。


●最初と最後に出てくる同じセリフ。観る前と後で受け止め方が変わる。

「今回の事件は、生んだ者、生まれた者、双方の責任である」

…深いなあ。



■□■おまけ■□■
※「ロボット三原則」はアメリカのSF作家アイザック・アシモフが考えだした、ロボットの思考原理。これは1950年に作られたものだそうですが、現在でも広く通用している原理だとか。

第一条:ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条:ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。
第三条:ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
(アイザック・アシモフ『われはロボット』小尾芙佐訳より。原題は IsaacAsimov『I, ROBOT』(1950))



<追記・解説>
第5回、36名送信。
この回より、初めて「おまけ」が登場。
「必死組」の舞台は、後にも先にもこれがイチバンだと思う。
あまりに泣きすぎて、帰り道、ものすごく困ったことを覚えている。