# # # # 人 形 劇 探 訪 # # # #

(H13年4月14日更新)

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下恩方の婆

(平成13年4月)

3

よしこ班の姥

(平成13年3月)

2

「岸壁の婆」

(平成12年7月)

1

「イタコの婆」

(平成11年9月)

 

 

 

 

 

 

 

   

人形芝居めんとれい団の「人形劇探訪」は、主に劇評が中心のページです。

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その四「下恩方の婆」

平成13年4月7日車人形稽古場

 二年ぶりに会った人達は、年老いていた。
 幕引き金ちゃんが「70歳を過ぎた人と、70歳にもうすぐなる人が、あいつとめます」と前口上した。変な予感が頭をよぎった。

 いつ頃観たテレビだったか忘れてしまったが、大分県でしたか、北原(きたばる)人形を復活させようと故川尻さんが寝たきりの老人を訪ねるドキュメント番組。北原人形芝居の操作方法は、乱暴な言い方で表現すると、八王子車人形を台車に座ってでなく立ったまま操る、人形の足を人間のつま先で操る(違ったかな?)。テレビで放映されたということは、その老人は舞台に立つと、まるで別人となり---、後は説明するまでもないが。

 最近、歌舞伎の高齢な役者が亡くなった、歌右衛門さん。晩年は円熟味を増した演技で多くのファンを魅了した。

 さて、桜舞う下恩方に戻ります。
 動きの速い殺陣が評価されている「重太郎」ですが、本当はスピードの速さではなく、剣を切る前の静止した人形の立ち姿、そして剣を交え体を入れ替えた時の剣を構える姿勢、つまり動いている時ではなく止まったときの姿勢が、見せ場である筈です。
 しかし、この日はそれも観ることもできなかった。そして、目線以前に頭(かしら)があっちを向いていた。
 歳をとることへの反発から、速い動きに固執した結果、無残な舞台になってしまったのだろうか。

 全盛期の西畑(さいばた)人形芝居は、文楽のような伝統人形芝居と違い、形(かた)のない自由奔放な芝居が特徴であるといわれてきた。でも私は、技術的芸の裏付けには、それぞれの操作に、動から静に移った時の人形の姿勢、ひとつひとつの決めの動き、つまり形(かた)があると思っている。スピードではなく形を大事にした西畑人形芝居を続けて欲しい。

 芸に身を投じた人の多くは、円熟味という勲章を無意識のうちに身につけている。重太郎・弥藤次演者夫妻には、これからも現役を続けていってもらいたいので、その言葉を再考していただけないでしょうか。
 前夜に四国を車で発ち八王子に午前10時着そして午後1時の公演に臨む、これが良いことなのか。
 公演に備えた準備は今まで以上にやらないと、伝統としての芸人から遠ざかってしまう。人形の頭(かしら)製作と同様に、他のことにも時間をかけて頂きたい。

 この夫妻と同様に、重太郎ファンも初見から30年経ってしまいました。

H13.4.7人形劇場たけのこ「石見重太郎」

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その三「よし子班の姥」

平成13年3月25日戸塚区地区センター

 戸塚区内の学童保育閉鎖記念公演で子供達のサークル「きどりっこ」と一緒に、村上よし子班が前座とトリをつとめた。
 テレビ放映作品とチラシに書いてあり全く期待していなかったのですが、さにあらず、「よし子さん」の本領発揮でした。

 「うりこひめ」では、単純な緩急をつけた動き、そして台詞のない時の巧みな動き、例えば、袋をかぶされた後のうりこ姫の絶妙な動き(実は袋だけの操作なのですが)。
 本当に、まいりました。簡単な動きの大切さを改めて痛感しました。

 「牛方」では、入団3、4年目の男優が、けこみの前に出て両手遣いを見せる、それがかっこいい。きれいに肩が入っていて、最近ではあんな見事な両手遣いを見たことがない(須田さんによると、まだまだとのことでしたが)。
 この芝居の真髄は、面白いストーリー展開や動きの激しい舞台ではなく、姿を見せないまま釜の中で言う台詞の妙だと思う。当然姿は見えないのですが、前半の台詞が伏線となり、釜の中で寝る山んばの台詞が生きてくる。
 眠りかけた時に言う、「私は野菊が好き、塩鯖が食いたい」。そして、釜が熱くなってから言う、「私は野菊が好き、塩鯖が食いたい」。観た人にしか判らないが、これが、面白い。

 うりこひめは単純な動きの妙、そして牛方は人形が見えない時の台詞の妙。18年の重みを感じました。

 ラスト近くのシーンで、熱くなった煮えたぎる釜から山んばが飛び出してくるのではないかと期待していたのですが、お時間となりました。

H13.3.25ひとみ座「うりこひめ と あまんじゃく」「牛方と山んば」

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その二「岸壁の婆」

平成12年7月9日戸塚区地区センター

 車は急には止れない、走っている人も急には止れない、
 トコトコ歩く糸操り人形も、急には止れない?
 あれ、急に止っているではないか!、みのむしさんの人形は!

 トコトコ歩いてきたおばあさんが、岸壁でオッと危ないとばかりに急に立ち止まった。頭や腕を微妙に動かしながら、海に落ちそうな演技をして、正に名人芸でした。

 勢いがついている糸操りの人形は、もともと、ぶらぶらしているものだから、急には動きを止めることはできない。しかし、みのみしさんの糸操りはピタッと止る。
 すごい腕だなあ、「天才飯室(イイムロ)」と呼ばれる由縁かな。

 名人は難しい技でも何気なくさらりとやってしまう、とよく言われるが、天才飯室は岸壁のシーンを三回も繰返してくれる、ここがみのむしさんの人気の秘密なのでしょう。
 観客はその繰返しのシーンの度に、「あっ、危ない」「きゃっー」と声を出す、私なぞ大声で笑ってしまう。
 本当に良いなあ。

 この岸壁のシーンは、現実とそれから始まる世界を区切る大事な場面であり(実はこのことは最後にやっと判るのですが)、三度も同じ動作(岸壁に落ちそうになること)を繰り返さないといけない理由が、ここにあった訳です。

 子どもが書いた、たった一行だけのアンケートが、印象的でした。
私の感想よりずっと優れている。
「たろうくんがゆめでよかった」と。

H12.7.9糸あやつり人形劇団みのむし
「太郎くんと まっすぐおばあさん」
  

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その一「イタコの婆」

平成11年9月新宿プーク人形劇場

 イタコにすっかり取りつかれてしまった。
 宇野さんの本「憑依する人形」の影響ではない。
 9月初旬、新宿でプークが人形芝居三題と銘打った公演をしたが、二題目の二人芝居「おこんじょうるり」に感動した話である。

 新宿のプーク人形劇場には、20才台の頃、アマフェスを通じてたくさんのことを学び、教えてもらった。そしてこの劇場で良い芝居に出会えた。
 ローゼル、西畑人形芝居、かんらん「25時の情事」、ポンポン船「長谷川君 きらいや」。
 そうなんです、プークの作品は一つもなかった。
 今回初めてプークの芝居に感動した。

「おこんじょうるり」は、人もすべての生き物も地べたに戻るがテーマにある。イタコが登城の際、汚いぼろの着物を新しいものへ着替えろと命令され、「イタコの神は地べたの神様、土や泥のついた着物は脱げない」ときっぱり突っ返す。
 骨太さを感じる。
 本(原作)の良さ、そして出遣いプークの特色を充分に活かした人形劇らしい舞台表現。
 大人しかいない客席から涙声。

 おそらく多くの人が同じ思いを共有したのではないでしょうか。

 しかし、それよりも、私はイタコの婆の役者に魅入られてしまったショックが大きい。
 脚本、そして一人で何役も担当したプークを代表する女優が、イタコに霞んでしまい、まるでこの婆のために道化を演じているように見える程であった。
 婆にぴったりの声、そして遣い手として体を完全に殺し、人形(婆)の影に自分の姿を消し去った出遣いのうまさ。
 これが演出ならば、このスタッフは尚更すごい。

「おこんじょうるり」を、70周年記念公演だけに終わらせないで、全国を巡って頂きたい。プークを代表する作品に育ててもらいたい。

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