あの部屋だけは・・・
いままでに、私はたくさんの霊を見てきましたが、そのなかでもいちばん怖かった出来事をこれからお話しましょう。
七年前のことです。
東京都内で独り暮しをしている私は、たまたま殺風景なアパートを抜け出してのんびりしたいと思い、都内の繁華街にあるシティホテルに泊まることにしました。。ときどきこんなふうにして気分転換をしていたのです。
まさか、あんなことが起こるとは思ってもみませんでしたから・・・・・・。
そのホテルは、駅前にある何の変哲もない普通のホテルです。それまでにも、私は何度かそのホテルを利用したことがありましたが、その部屋に入るのは初めてのことでした。
外で簡単に夕食をすませ、その夜読もうと思っている本だけを持って、その部屋に入ったとき、何といったらいいのかわかりませんが、いままでに感じたこともないようないやな感じがしたのです。
身体じゅうがザワザワするような、冷たい汗がにじみでてくるような感じです。
そのころ、少し疲れていましたので、私はそのせいだと自分にいいきかせて、部屋に落ち着きました。
部屋は七階にあります。外を見ると、ネオンが瞬いて、通りには会社帰りのサラリーマンやOLがせわしなく歩いているようすが見えます。
私はカーテンを閉めると、シャワーを浴び、ゆったりとくつろいで本を開きました。
ところが、なぜか気分が落ち着きません。
何かが気になるのです。
そこで、部屋の中を見まわすと、クリーム色のカーテンが揺れていたのですが、そのうち、なびくような揺れ方に変わっていきました。
「窓が開いているのか・・・・・・」
独り言をいいながら、カーテンを開け、窓を見ましたが、窓は開いているどころか、鍵まできっちり閉まっています。ホテルの窓ですから、隙間風が入るなどということは考えられません。
「おかしいな・・・・・・」
そう呟いてはみたものの、そのくらいのことで部屋を替えてくれとフロントに行くのも面倒なので、私はベッドに横になって、本を開きました。
どのくらい経ったでしょうか。
気にしないでおこうと思うのに、どうしてもカーテンが気にかかります。さっきのように揺れたりはしないのですが、どうしても目がそちらのほうにいってしまうのです。
私は起き上がると、カーテンを開け、ループのtころに縛りつけておくことにしました。
そして、早々に眠ってしまうことにしたのです。
ルームライトを消しても、カーテンを開けたために部屋のなかは薄明るく、快適な条件とはいえませんでしたが、眠れないというほどでもありません。
私は眠気がやってくるのを待ちながら、ぼんやりと部屋のなかをみていました。
すると、さっきと何かが違うのです。
なんだとろうと考えました。
カーテンです。カーテンの色がクリーム色から赤っぽく変わってきているのです。
初め、外のネオンの色が反射しているのかと思いました。
でも、違うのです。
それは、まるでトマトジュースをこぼしたかのようにジワジワと赤く染まってきました。
「・・・・・・血?」
そう思った瞬間、私の背中に鋭い痛みが走りました。
何かが尖ったものでプスリと刺されたような痛みです。
驚いて飛び起きると、部屋のなかには何やら生臭いにおいが充満していました。
そして、ベッドのシーツをはがしてみると、白いシーツがまっかに染まっているではありませんか。それは、側面の壁にまで広がり、赤い色は壁を這い登るように増えていくのです。
「うわっ!」
その場から逃げようと、ドアのほうに走りかけたとたん、私は足を滑らせて転倒していました。足元までがヌルヌルとした血液で染まっていたのです。
這うようにドアに近づき、ノブに手をかけながら後ろを振り向いた私は、窓のガラスに血みどろの女の人が浮かび上がってじいっとこちらを見ていることに気がつきました。
もう、生きた心地もしません。
エレベーターを待つのももdかしく、フロントに駆け込んだ私は、従業員に、
「なんだ!あの部屋は!」
と叫んだのですが、従業員はキョトンとするばかりで話しになりません。
私は必死になって、血だらけの部屋の話しをしたのですが・・・・・・、そのときになって、血の海に転んだはずの自分の身体のどこにも血などついていないことに気がつきました。
「お客様、夢でも・・・・・・」
といわれても、しかたがありません。
しかし、私は実際に見たのです。
私は従業員の腕をつかみました。
「夢かどうか、一緒に来てあの部屋を見てください」
すると、彼は急に青ざめ、
「あ、あの部屋だけは・・・・・・勘弁してください・・・・・・」
といったのです。