ここはメテオとティオの冒険記録である

冒険は始まる  冒険の準備 自信に満ちた笑顔!? 自信に満ちた笑顔の謎 自信に満ちた笑顔の謎2

大きいけれど小さく見える? 夢じゃないの? 空飛ぶ少女 転がる少年 不機嫌な少年


冒険は始まる

 メテオは自分の部屋の窓から身を乗り出し、遠くにそびえ立つ山を目を輝かせながら眺めている。

 心の中ではいよいよ冒険が始められるという気持ちでいっぱいなのである。

「あんた何考えてるのよ」

 期待に胸ふくらませているメテオの後ろで、ティオが口をとがらせ不機嫌そうにメテオに言った。

 それもそのはずである。メテオは冒険を始めると言ってはいるものの、何をするかはまだ決まっていない。

 ただただ、冒険に憧れているだけの少年なのである。

「うるさいなぁ、僕だってこれでもいろいろ考えてるんだぞ」

 口ではこういっているが、実際は何も考えていないのがメテオである。考えるよりも先に行動をしてしまう性格なのである。

 それをしっているからこそ、ティオはついついメテオのやることにあれやこれやと口を出してしまうのだ。

「だいたい冒険を始めるって言っても、冒険に必要な装備も道具もないじゃないの。それで冒険に行くつもりでいるの?」

 メテオはティオの方を振り向きぽんと手をたたき、そうだそうだというように頷いている。

 それをみてティオは呆れるばかりであった。 

 


冒険の準備

 そんなティオにお構いなしとばかりに、メテオは外へと飛び出だした。その後をティオも急いでついて行くのであった。

 メテオは家から飛び出すとすぐ隣にある店へと駆け込んで行き、店内の物を物色しはじめたのである。

 その後を追いかけてきたティオは相変わらず不機嫌そうにメテオを見ている。

 しかし、相変わらずメテオはティオには目もくれず必要だと思われる物を抱えてさっさと外へと飛び出していってしまった。

 その様子を見ていたティオの顔は少し引きつっていた。

「おじさんとおばさんも大変ですね」

 ティオは先ほどの引きつりの余韻を少し残した顔ででカウンターにいる二人に話しかけた。

「いやいや、いつも悪いね、うちのバカ息子をよろしく頼むよ。ティオちゃんだけが頼りなんだよ」

 カウンターにいるメテオをの父親はそういい終わるとカウンターに両手をつき、うなだれるような格好で軽い溜息をついた。

 その様子を見てティオは苦笑をしている。

 そんな父親とは対照的にに母親の方はニコニコと楽しそうにしていた。

「ほんといつもティオちゃんにはお世話になっちゃって悪いわね」

「いえ、私が好きでやってることなので気にしないで下さい」

「ほんとうにあの子は何も考えずに行動しちゃうからね。ティオちゃんみたいにしっかりした子が一緒にいてくれるとおばさん助かるわ」

 ティオはそういわれるとすこし照れたように笑い、そんなことはないですよと言うような身振りをして見せた。

「あ、それじゃ私もいきますね。それから、おじさんもそんなに溜息ばっかりついちゃだめですよ。もっとおばさんみたいに元気にしてくださいね。ため息ばかりついてると気分がどんどん沈んじゃいますよ」

 と、ティオは両手を肩ぐらい高さまで上げてから、ギュッと拳を作りながら言った。

 そして、ニコリとかわいらしい笑顔を見せた後に、ペコリと頭を下げてから、小走りに店を出ていった。

「いい子だな。うちのメテオも、もう少しティオちゃんみたいにしっかりしてたら気が楽なんだがな……」

 ティオが出ていったドアを見ながら、誰に言うというわけでもなく父親は一人つぶやいた。

 そんな事にお構いなしに、母親は今の状態を楽しんでいるようである。相変わらずニコニコしながら父親を眺めている。

「でも、メテオはメテオでいいところあると私は思うわよ。そんなに心配ばかりしていないで、少しは応援してあげたら?」

 両方の手のひらを胸の前で合わせ、首を少し傾げながら父親の顔をじっと見つめながら母親は言った。

 そんな母親の様子を見て、父親は顔を赤らめながら大きな溜息をついてしまうのであった。


自信に満ちた笑顔!?

 メテオは自分の部屋に戻ると、荷物をバックへと詰め込んでいる。とにかく、なんでもかんでもつめこんでいるという感じである。

 少し遅れてティオもメテオの部屋に入ってきた。

 そしてメテオの行動を見て、あきらめたかのように軽くため息をついている。

 そんなことは構いなしに、メテオはティオに背をむけ黙々と作業を進めている。

「ほんとに冒険に行く気なのね、とりあえずどこにいくとかはもう決めてるの?」

 ティオは何気なく、背を向け作業を続けるメテオに聞いてみた。

 するとメテオの動きが止まり、ゆっくりと振り向き、ニコッと笑顔を返してきた。これでもかというぐらいに、自信のこもった満面の笑みである。

 しかし、そんなメテオの笑顔をみたティオは、ふと体中の力が抜け床に崩れ落ちそうになった。

 メテオが瞳をキラキラときらめかせ、自信に満ちた笑顔をしたときはろくなことが起きていないのである。


自信に満ちた笑顔の謎

 それは、メテオが7歳の誕生日を迎えた日に起きた出来事である。

 この当時から、冒険というものに憧れていたメテオは、ティオと一緒によく街を抜け出しては、近くの山や森といったところで、『冒険ごっこ』をしていた。

 この、『冒険ごっこ』の最中にメテオ達は、谷にかかっている、見るからに危険そうな橋を見つけてしまった。

 二人は橋に近づき、少し身を乗り出して、谷の下がどうなっているのかを見ている。

 橋の下には川が流てれおり、流れは速くないものの、橋からの高さはかなりのものである。

 谷からは、たまに強い風が吹き上げ、ティオの髪の毛が舞い上がり、それと同時に橋はゆっくりと揺れ、古さを物語るような音をたてている。

「この橋は危ないから近づかない方がいいよね」

 ティオは少し不安そうな顔をして、メテオに話しかけている。

 しかし、そんなティオにはお構いなしに、メテオは少し後ろに下がり、その場にちょこんと座りこみ、橋をじっと見つめている。

 ティオも後ろに下がると、立ち上がり服に付いた土を手でポンポンとはたいている。

「だめだよ、こんな危ないところ近づいたら怒られるんだよ」

 ティオは手に付いている土を落とすために、両手を軽く合わせながら言った。

 だが、ティオがなにを言ってもメテオは反応をせずに橋をじっと見ているだけだった。

「ねぇ、もうそろそろ帰ろうよ、みんな心配してるよ」

 ティオはとうとう目をウルウルさせて、少し涙声になりつつメテオを説得している。

 そんなティオの様子に、さすがにメテオも参ったらしく、自分の髪の毛をなでている。

「わかったよ、そろそろ帰らないと怒られちゃうもんな」

 なでていた髪の毛を、今度は親指と人差し指ではさみ、引っ張るようにしながらメテオは言った。 

「うん、そうだよ、それじゃ早く帰ろう、私おなか減っちゃったよ」

 ティオは両手でお腹を押さえながら、さっきまでの不安そうな表情から想像できない笑顔で言った。

「オイラも腹ぺこだよ、早く帰りたいよな?」

 メテオは橋を見つめつつ、ティオと同じように両手でお腹を押さえつつ言った。

「……!?」

 ティオは首を傾げ、メテオを見ている。

「よし、じゃ、早く帰るためにこの橋を渡ろう!!」

 相変わらずメテオは橋を見つめたままである。

 そんなメテオを見つめているティオの顔からは、みるみる血の気が引いていくのだった。


自信に満ちた笑顔の謎2

「今なんていったの?私よく聞こえなかったみたい」

 ティオは血の気の引いた顔で、引きつった笑顔を作りながら言った。

 すると、メテオはゆっくりと振り向き、ティオの顔を見てニコリと笑ったのである。

「早く帰りたいからこの橋渡ろうよ」

 メテオは自信に満ちた笑顔で言った。

 ティオはメテオの自信に満ちた笑顔を見ながら、その場に固まってしまった。

 たしかに、ここまで来た道を戻るよりも、この橋を渡った方が街までの距離が短くなることはティオにもわからないわけではない。

 しかし、あきらかにこの橋は危険であることが、見ただけでわかるのである。

 橋に使ってるあるロープや、足場の板などは、長い間雨風にさらされたせいか、明らかに弱々しい。

 さらに、谷の幅はかなり広く、いざ橋の中央あたりで何かあった場合のことを考えると、かなりの覚悟も必要になってくる。

 ティオとしては、早く帰りたいとか、お腹が減ったということも嘘ではないが、実のところ、この橋だけは渡りたくないと言うのが一番の本音なのである。

「私はいやだよ、こんな恐い橋渡りたくないよ。すごく危なそうだもん。落ちちゃったらどうするの?」

 ティオはまたとても不安そうな顔でメテオに聞いた。

「大丈夫だよ!!」

 メテオは相変わらず自信に満ちた笑顔のままである。

 この自信がいったいどこから湧いてくるのか、ティオには不思議でしょうがなかった。

「なんで大丈夫だってわかるの?」

 力無くティオはメテオに問いかけている。

 「うーん、なんとなく」

 メテオはケラケラと笑いながらあっさりと答えてしまった。


大きいけれど、小さく見える? 

 そして、メテオは立ち上がり服に付いた、心配をするティオにはお構いなしに橋へと近づいて行く。

 ティオはそんなメテオをなんとか止めようとあれやこれやと思案をめぐらせるものの、良いアイディアは全く浮かばない。

「ねぇ、やっぱりやめようよ。落ちちゃったらどうするの。死んじゃうかもしれないんだよ。ここから家まで遠いし、落ちたら誰も助けに来てくれないんだよ。ねぇ、わかってるの?」

 ティオは必死に止めようとするものの、その甲斐もむなしくメテオは橋を渡りだしてしまった。

 メテオが歩くたびに、橋に使われているロープは『ギシギシ』とイヤな音を、足場の板は『ミシミシ』と何とも頼りない音を立てる。

 その音を聞くたびに、ティオは心配で心配でしょうがないらしい。今にも泣き出しそうな顔をしている。

 メテオは後ろを振り向き、心配そうにしているティオをを見て少し困ったような表情をした。

「ねぇねぇ、この橋おもしろいぞ。なんか歩くたびに変な音がするよ。普通の橋じゃこんな音しないよね」

 メテオとしてはティオを少しでも安心させようとして言った言葉なのだが、これは全くの逆効果である。ティオはなぜ今の状況を楽しめるかが不思議でしょうがない。

「あんたバカじゃないの…… なんでそんな状況を楽しめるのか私にはわからないわよ」

 ティオは血の気の引いた顔で、弱々しくメテオに言った。

 さすがにメテオもこれには反省をしたらしく苦笑いを浮かべつつ、メテオが何かを言おうとした瞬間……

 メテオは橋をから真っ逆さまに川へと向かっていた。

 足場の板が腐っていたらしく、音もなく足は板をぶち破り、バランスを崩したメテオは川へ向かって一直線に落ちていく。

 そんな状況でもメテオは笑っている、落ちながらもティオに向かってブイサインをしているのである。

 そのままメテオを激しい音を立て、大きな水しぶきを上げて川の中へと消えていった。 しかし、ティオから見れば、その大きな音と水しぶきも小さく見えてるのであった。


夢じゃないの?

 メテオが橋から落ちるところを目の当たりにしたティオは、今の自分の状態がよくわからない。

 これは現実なのだろうか、もしかしたら夢なのではないか? いや、夢であってほしい。 幼いながらに、ティオはそう思っていたに違いない。

 だがこれは夢ではなく、紛れもない現実であり、いくら夢であってほしいと思ったところで、夢になるものではない。

 ティオはもうなにがなんだかわからない状態である。

 今自分がなにをしたらいいのかわからないほどに動揺している。

 ティオはパニック状態の自分をなんとか落ち着かせ、大きく呼吸をし終わると、勢いよく立ち上がり、何を考える間もなく今まで歩いて来た道を走りだしたのである。

 走りながらもティオは、今の状況をなんとか整理しようと、懸命に努力をしている。

 メテオが落ちた川は流れが急ではあるが、下流では何本かに別れ、幅も広くなり、流れはそれほど急ではない。滝なども無くそれほど危険では無いとティオは判断をした。

 さらに、下流には自分たちの住む町があり、運が良ければそこに流されるかもしれない。 しかしそうもうまくことが運ぶはずがない、とティオは考えてしまう。

 そういう可能性もあるが、そうならない場合は、分岐をした川がどこに繋がっているかはまったく見当もつかない。

 それ以前に、落ちてしまったメテオは、どうなっているのかすらわからない。

 考えれば考えるほどに不安は高まり、自分がどこを走っているのかもわからなくなってくる、同時に地面を蹴る足の勢いが増していく。

 徐々にスピードは上がるものの、人間には体力の限界というものが存在してしまう。風を切る音を聞きながら走っていたティオだが、街に着く頃には息も絶え絶え、今にも倒れてしまうのではないかというほどに疲れ切っている。

 なんとか街には着いたものの、普通にたっているも辛いのか、ティオは膝から崩れるように地面に手をついて倒れた。


空飛ぶ少女

それを見た街の大人は、ただ事ではないと思い、ティオに走りより声をかけた。

 「レジッドさん、メテオが…」

 ティオは呼吸が乱れたままで、満足に声も出せない状況のため、その一言を言うだけで精一杯だった。     
 レジッドと呼ばれた男は、ティオの言葉を聞いて一瞬表情を曇らせ、すぐに目をそらしてしまった。

 その表情の意味を読み取ったのか、疲れ切っているはずのティオは、ゆっくりと立ち上がり、

うつむいた表情のままゆっくりと歩き出した。

その後ろ姿を見たレジットは、しまったと思い、すぐにティオを止めようとしたが、時すでに遅し、

ティオはすごい勢いでレジットの視界から消えてしまった。

 ティオはすごい勢いで走り、いくつかの角を曲がったところで止まった。目の前にはメテオの家がある。

 そのままゆっくりと家へと近づき、すさまじい勢いで扉を開く、そこでティオはうつむいたまま震えている。

 メテオの家の中には一人の少年がいた。

 「遅かったなぁ、なんか俺こんなに魚もらっちゃった。お前も食う??」

 しかし、ティオはそんな話は聞いていない、ゆっくりと顔を上げたかと思うと、

その顔にはいつものかわいらしい少女の表情は無かった。

その瞬間、少年の顔にはこれは見事というしかないほど、鮮やかな跳び蹴りが決まっていた 。



 転がる少年

「なんであんたがここにいるのよ」

 跳び蹴りをくらった少年が平気なはずもなく、すさまじい勢いで床の上を転がっている。 
その少年は紛れもないメテオ本人である。

 しばらく顔面を両手で覆いながら、転がりまくっていたメテオだが、
痛みも治まったのか、うつぶせ状態で床に転がっている

 そのまま涙目になりながら、恨めしそうにティオを見上げた。

 「いきなり何するんだよ。めちゃくちゃ痛いぞ」

 こんな状態でまともに質問に答えられるわけもないのだが、
そんなメテオを見てさらにティオは拳を握りしめ、表情も鬼のごとく変化していくのである。
 さすがにまずいと思ったのか、メテオの顔からは血の気が引いて行く。

 「遅かったかー、二人ともごめんね」

 そういって声をかけてきたのはレジットである。扉の前で頭を掻きながら、少し反省をしたような表情をしている。

 「メテオ君らしいと言えばらしんだけどね。普通にティオちゃんに話してもだめだと思って
 気を使ったのがだめだったかなぁ」
 
レジットがいることに気づいたティオは恥ずかしそうにうつむいてしまった。

 

 


不機嫌な少年

 「レジットさんは悪くないですよ。そんなに気を使わないでください」

 ティオは少しはにかみながら、少し照れた仕草をしている。

 そんなティオとは対照的に、メテオはさっきまでの表情が嘘のような不機嫌な顔をしている。

 「気を使っただって…最初からわかってたんじゃないのかなぁ」

 メテオをは不気味な笑いを浮かべながらそうつぶやいている。

 レジットは相変わらず、反省したような表情をしているが、

メテオがつぶやくと同時にすこし笑いをこらえているような表情にも見えるようになっていた。

 「いやだなー、そんなことあるわけないじゃないか、
僕だって本当にメテオ君のこと心配してたんだから…」

 「お前なんかに心配されたくないね」

 レジットが話し終わる前に、メテオは口を挟んできた。 

 そんな二人のやりとりをみているティオも少し心配そうな顔をしている。

 「そんなこと言って、レジットさんに失礼でしょ」

 ティオは少し怒ったような表情で、メテオに注意をしている。
 
しかし、メテオは少しも悪びれた様子もなく、ますます不機嫌な表情をしている。

 メテオは素早く立ち上がるとレジットに近づいていく。

 身長はレジットの方が高いために、メテオは上を見上げながら怒った表情をしている