「想い出の涙」


 僕が住んでる旭川から富良野までの道程80kmを、これほど心配に思った事はない。

 普段は何百キロと走るツーリングでも、
自分のバイクを信頼しいているから不安や心配などした事はなかったが、
「あの時」だけは違った・・・。 

まだ旧車について知識の薄かった頃、
ある骨董屋の片隅に黒くて何故か僕を見つめているバイクがあったので、
近づいてエンブレムを見ると「LILAC」と書いてあった。 

絶対に欲しい!と思った。
何故か僕を待っていたように思えてならない。
あるだけのお金を揃えて、足りない分は信用で分割にしてもらった。

 それは夏の事だったので秋に開催されるバイクのミーティングに僕はどうしてもこの「ライラック号」に乗って行きたかった。

 しかし走れるのだろうか?

 翌日から毎日仕事が終わるとすぐ車庫に入り整備をして、
とりあえずエンジンは掛かった。
そして毎晩町内を走り回って様子をみたのだが、
あっと言う間にそのミーティングの日が来てしまった・・・

 不安を抱きながら出発、そして最初の峠、何とか越えて一つ安心。

 しかし次の峠はすこし長い、もちろん現行車ならトップギアでも登れる峠だが、
こんなに心配した事は初めてだった。

何だか苦しそうにスピードが落ちてくる。ガンバレ!頑張れと心の中で叫ぶ、
ここさえ過ぎればあとは平地だと言い聞かせて何とか峠を越えたその時、僕はヘッドライトを撫でていた。

 なんでそんな事をしたのだろう・・・。
あとで考えると馬に感謝している気持ちと全く同じなんだと思った。
そしてあの時、僕はゴーグルの中で涙ぐんでいた事も想い出した。

 大人気ないのであまり人には話せなかった・・.

しかしそんな気持ちがまだ自分には残っていたのかと思うと忘れかけていた大切なものを取り戻したような気がするのだった。

 旧車達よ、頑張れ!そして有難う・・・