演劇の舞台音響
= 2005年 演技教室発表会3 仕込み→ゲネ→本番 =

タイトルはなんか本格的だけど、中身は地方小劇団の音響担当者の独り言に近いものです(笑)

 本番の前日、2005年 9月16日は仕込みだ。昼の12時頃に会場に着くと、舞台は組上がってて明かりの吊り込みの真っ最中。
 この世界では、音響の仕込みは照明が終わってからってのがルールになってる。もっとも音響機材は午後2時過ぎに到着予定なので、仕込みをやりたくてもやれない状態だ。

 3時頃、照明の吊り込みが終わったようなので、許可を得て音響卓周辺からセットを始めた。長机の上にミキサー、サンプラー、などのセットだ。ヘッドフォンでモニターしたら音は来てる。
 さて、スピーカのセットに掛かるか、と思ったら「客電落としまぁす」との声で客席の明かりが消えた。またまた手待ち状態だ。^^;

 ま、色々あったが一応、セット完了。照明さんの休憩時間を利用して音出しをしてみたら、鳴ってる。当ったり前かあ。(笑)

 さて、今回は AKAI Z4 サンプラーで音出しだ。バックアップはノート・パソコンのソフト・サンプラーにした。理由は下記の通り。
  • 前2回の公演でトラブルがなかった
  • パソコンがあったら音の編集が楽に出来る
  • Z4サンプラー内のサンプル&プログラムの編集が出来る
  • CDドライブから、CDのストリーミング再生が出来る
  • 場合によっては、画面が手元明かりにもなる (笑)
 連れて行くとなると、やっぱりつきあいが古く気心の知れた、頼りになる仕事の出来るヤツ、と言うことになる。
 パソコンはやや虚弱体質で神経質だが、やっぱり拙者のトモダチだ。パソコンが隣にいてくれるとなんとなく安心する。・・って、こんな我輩はやっぱしビョーキかな?(^^;)

 さてさて、今回は机の右の部分を照明さんがお使いになるので、本番中に操作する必要のないサンプラー本体は椅子の上に置いた。その上には一度しか操作しないサブ・ミキサーだ。
 稽古期間中、拳銃の音を出すパワード・スピーカは直接サンプラーに繋いでたんだけど、本番ではサブ・ミキサーを介することにした。

会場はいつもの神戸・風月堂ホールだ



足元のサブ・スピーカからは拳銃の音を出す
サブ・ミキサーはサブ・スピーカの音量調節用
パソコンがあったらCDデッキは不要だ
今回も客入れ音楽などの送り出しにはパソコンを使った

仕込みの日、繋ぎ込み&テスト直後に撮ったんで
まだコード類の整理が出来てなく、ゴチャゴチャ
 本番の前日になって「ヘッダ・ガブラー」で音の追加&変更があった。予想通りと言えば予想通りなんだけど、泡食ったわい。(笑)

 実は最終稽古このとき、「ここの音楽はドアをノックする音で急速にフェードアウトして下さい」って注文が出た。てっきり役者が何かを叩いてノックの音を出し、その音で音楽を落とすんだと思ってたら、「お前作れ」って話だ。きーてないよぉぉぁ〜!

 台本を見るとかなり荒れて入ってくることになってる。慌ててゲネ→本番の前夜に作ったのがこの音だ。急ごしらえの音なんで、満足の行く音じゃない。
 何度か録ったけど、荒々しい感じが出ないんで、ごまかしのためディストーションを掛けてある。そいで S/N 比の悪さが目立ってしまったんだ。
 あと、やっぱり「ヘッダ・ガブラー」でラストの音楽の変更。音を入れるタイミングの変更があり。やれやれ…。

 昨日の仕込みの日はがちゃがちゃしてたんで、スピーカ位置の微調整やレベルのチェックは役者やスタッフの集合時間より1時間ほど早く入ってやった。心配したサブのエキストラ・スピーカからの拳銃の音量・音質も充分だ。

 ところが新人の役者さんは不安だからか、予定よりかなり早く来て、舞台の上でセリフや動きの練習をするんだね。
 音チェックやってるのにお構いなしにやられるとかなりイライラする。人が耳を澄まして真剣にチェックしてるのに…。お願いしてもちょっと小声になるだけ。
 オマケに舞台の上でぶつぶつセリフさらってた女優さんから「あのぉ、あたしのモノローグのとこの音楽でますぅ?」って頼まれる始末。…美人だから断れなかったぞ。^^;;;;

 ともかく、我輩が耐えてると照明さんが「ちょっと!静にしてあげてよ」って注意して下すった。同じ裏方としてこっちの気持ちが判るんだね。嬉しかったな。

 そんなこんなで、ゲネ→本番初日を迎えたんだけど、今回は舞台監督が経験の浅い人なんで、別の苦労もかなりあったぞ。^^;

 まあ、色々あったがそれほど不格好なことにならずに初日は終了。ゲネが終わってからの音変更がなかっただけラッキーだったと思わなければならない。


パソコンのディスプレーには黒布を掛けてやった
音楽が WinAmp から出てるのを見られたら
なんとなくこっぱずかしいからだ^^;

パソコンの画面は意外に明るいんで
ド暗転の時に画面をおおう、雑黒(ざつぐろ)を用意した方がいい
我輩はイベントにパソコンを使う場合
いつも現場で雑黒を借りるんだけど、今回は自分で持ち込んだ




「ヘッダ・ガブラー」の一場面
音の追加・変更が多く、ほとんどぶっつけ本番状態だった ^^;
 実は、初日に音を2回トチった。たった17個、23回の音で2回もトチるんだから、誠に恥ずかしい。お粗末だよね、ったく…。

 なぜ、こんなトチりをやらかしたかを書いておこう。実は、ゲネが終わってから本番までかなりの時間があったので、パッドに音の名前を書いて貼り付けた。ついでにミキサーのフェーダーの下にもインプット名を書いた。

 その時、サブの音出しアイテムのパソコンを入力1と2とに割り当ててあったのを、「意味ないな。ステレオ・フェーダーに割り当てよう」と、7/8に変更した。サンプラーの標準出力を割り当ててる9/10の左隣だ。

 最初のトチりは、一番最後の「ヘッダ・ガブラー」の幕開きのすぐあとの心理的衝撃音が出なかったことだ。
 当然、入れるべきタイミングでパッドを押したんだけど出ない! 違うフェーダー、パソコンの出力を割り当てた7/8のフェーダーを上げてたからだ。^^;

 完全に気のゆるみだね。幕開きすぐなんで、手元明かりを点けてなく、薄明かりの中でよく確認せずにフェーダーを上げたからだ。
 「自分でセットしたステレオ・フェーダー群の一番左」と思いこんでたのさっ。
 インプットの変更をやらなかったら、たぶんこのミスは犯さなかったろう。もしかしたら、この音にどうしても愛着が持てなかった、ってのも原因の一つかも知れない

 で、楽日(2日目)はZ4の入力とくっつけないで、4/5に変更した。これだと薄明かりの中でも間違うことはないだろう。って、ちゃんと手元ライトを点けて確認したけどね。^^;
 ミキサーやパッドに貼り付けるテープは白のビニテを使ったが、蓄光テープ(蛍光テープ)を使ったら効果的だと気が付いた。その後、別のイベントで試したらイケる。けど、ちょっと高いな…。

 もう一つのミスは「ヘッダ・ガブラー」のカーテン・コールの音楽の出し遅れだ。ゲネと手順が違うんだね。明かりが違うんで「いいのかな?」と照明さんの手を見てた。その上、よそ見してたので一瞬違う音を出してしまった。すぐ気が付いて止めたんで 0.5秒ほどだったが、0.1秒でもミスはミス。
 しかし、これは拙者に変更を伝えてくれなかった舞台監督の責任でもある。けど、ミスったのは我輩だから言い訳は通用しないな。

 言っとくけど、写真を撮ってたからミスったんじゃないぞ。写真はすべてゲネの時に撮ったんだ。^^;

 それにしても今回はゲネの時、役者のハケに異様に時間が掛かった。もういいだろうと、照明さんが明かりを上げると、逃げ遅れた泥棒ネコみたいなカッコして、まだ役者がいるんだ。(^Q^)
 ま、そのへんもカーテンコールの音でモタついた一因でもある。

 舞台の進行と音とが合わなかった場合、原因がどうであれ、音の責任になる。^^;; もっとも、とちりコーヒーが掛かってるときはテッテテキに戦うけどね。((爆))

 さて、今回は予定通り、音の送り出しはアカイのZ4サンプラーを使った。で、客入れ&休憩中の音楽、それにオマケとして2日目最後のカーテンコールの音楽はパソコンから出した。
 今回はパソコン+ソフト・サンプラーの出番はほとんどなかったが、スタンバっててくれると安心感がある。

 パソコンのソフト・サンプラーでやるのとアカイZ4+MPD16 とでは、どちらが楽かと言えば、単純な音出しではパソコンだろう。しかし、柔軟性に富むのはZ4だ。

 Z4は音が出てることを目で確認出来ないのが不安だ。不用意にフェーダーを上げると、止め忘れた音が漏れ出たりする。

 また、MPD16 及びZ4本体には、出てるすべての音が止まるパニック・ボタンがついてないんだ。
 で、拙者は怪しいと思ったら、[PROGRAM] ボタンのすぐ右の [SAMPLE] ボタンを押して、またすぐに [PROGRAM] を押すことにしてる。
 同じサンプラーでも、SP-303/404 は音の再生中はパッド全体に明かりが点くから、こんなことをする必要はない。

 また、MPD16 はパッドと音との対応が判らないんだね。パッド割表を用意するか、パッドにテープを貼り付けて文字を書くしかない。

 しかし、サンプラーは体感上のレイテンシー(発音の遅れ)が全くないのが気持ちがいいし、信頼感がある。マウスのカーソルが行方不明なんてことも起こらない。
 また、拙者のZ4は複数の OUTPUT を持ってるので、一台でのクロス・フェードや別スピーカからの再生が出来る便利さも実感した。

 今回はテストってこともあって、劇中はZ4だけを使ったが、あるいは短い音は BOSS SP-303/404 などに任せた方が良かったかも知れない。

 次回以降もこのZ4サンプラーを使うかどうか、問題だ。確かに音はいいし操作ミスさえなければ確実だ。あたりまえ^^;
 我輩がオペーレートした経験から言うと、パッドのバンク切り替えが意外と煩わしい。音数が多い場合はキーの数が多い MIDI キーボードを使う方がよさそうだ。

 で、目の前に迫ってるのが10月公演の「黒塚」&「道成寺」だ。
 「黒塚」は音が決まってて音数が31個だ。16パッド2バンクでギリギリ。音が増えることも覚悟しておかなければならない。
 49鍵のキーボードを使うと楽勝なんだが、49鍵だと幅が 80cm を超えてしまい、狭いオペレート席では実用的じゃない。31鍵ってのも中途半端な気がするし…。

 一部の音を SP-303/404 に任せて25鍵 MIDI キーボードでやるのがいいんじゃないかと思ってる。
 あるいはオペ君の慣れたソフト・サンプラー SE Procuser + SP303/404 にするか…。そのへん、オペ君の意見も聞いてみなければならない。

 ついでに書いとくが、なにも使いにくい機械を使いこなすのがいいんじゃない。もちろん、効果オペとしてどんな機械でも使いこなす訓練は必要だ。

 でもさ、お客は芝居を観に来てるんだよ。誰もあんたの名オペぶりや音のサーカスを鑑賞に来てるんじゃないんだってば。本番で操作しにくいオペレーションに挑戦すべきでない。
 本番では自分の使いやすい、楽にオペレート出来る、安全確実な機械&技術を使って感動的な舞台に仕上げるのが音効マン(or ウーマン)の任務さ。


 こうして、拙者の何十年ぶりかの芝居の音響効果オペは終わった。久しぶりに本番オペをやると、音響プランや稽古場でのオペをやっただけでは判らないことが見えたのが収穫だった。

 で、テレコ2〜3台を操ってやってた頃と比べてどうだった、ってことだけど、かなり余裕を持ってオペに当たれた。
それでもミスるんだからぁ… (^^;;;
 同じことをやるんなら、サンプラーやパソコンのソフト・サンプラーだと、テレコよりはるかに楽なんだ。こうしたデジタル機器を使うと、小劇団の舞台音響にもまだまだ色んな可能性が残ってる気がする。

 たぶん、芝居の公演の音出しをサンプラーだけで片づけた例って、それほど多くないだろう。それにしても、我輩の実験に知らずに付き合わされた役者さんや演出家の先生はちょっと気の毒だったかも知れない。(爆)

 ほんとんとこ言うと、この我輩、演劇とか音楽ってのは、本来デジタルとか自動化からかなり遠いところに位置するんじゃないかと思ってる。けど、音楽が自然にデジタルを取り入れたように、演劇だって時代と共に変化するはずだよな。




今回も Behringer の PMH1000 パワード・ミキサー
内蔵のメイン・アンプは 4Ωで片チャンネル 200W だから
8Ωのスピーカと組み合わせると 120W x 2 程度だろう





「三人姉妹」
我輩、音を入れるときは台本から目を離して、役者の目や動きを見てる
その方が音を入れるタイミングが取りやすい



「ヘッダ・ガブラー」
舞台は明るいが、オペレート席は薄暗い







スピーカは 6.5'(16cm)の Classic Pro CSP6 が上手と下手とに
一つずつってお粗末なものだったが、
このホールは音飛びがいいので、まずまずだった

セリフ・バックの音楽は 1KHz あたりを少し落としてやった
その方がセリフが引き立ち、音楽も死なない
少なくとも、このスピーカをこの会場で使う限りはそうだった

本当は、この公演にはもっと柔らかな音のスピーカが欲しかった
今回は大音量の必要が全く無かったので、
たぶん、家庭用の中型スピーカ+プリ・メイン型アンプを使った方が
良い結果が得られたろう




今回はオペレーター席の奥行きが狭かったんで
照明さんと並んで仕事をすることになった
前に黒幕があるとコード類の始末に気を使わなくていいので嬉しい




桜の園」の音響・照明席
音響卓のすぐ前まで観客席が来てて
しかも前方は仕切板もなにもなかった

 この我輩、芝居の世界では役者として評価されてきたように思う。舞台経験は 1,000ステージを超してるはずだし重要な役どころも何度か頂戴して来た。しかるに自信を持って舞台に立ったことは一度もないし、結果にも一度も満足したことがない。いつも終わると欲求不満が胃を直撃したりする。そう、役者をやって満足感を味わったことが一度もないんだ。
 今度こうして音響卓の前に座ると「ここが拙者の居場所だ!」って確信した。やってる最中もなんか充実感があるんだね。戦慄を覚えるほどの満足感が全身を覆った。なるほど初日にばかげたミスをやらかしたりもした。けど、終わってから不思議と爽快感があるんだ。やっぱり我輩は“裏”の人間なんだろう。


September, 2005



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