演劇の舞台音響
= 「2005年朗読教室発表会」 =

タイトルはなんか本格的だけど、中身は地方小劇団の音響担当者の独り言に近いものです(笑)

 2005年6月25・26日の「ホテル・ボルティモア」の公演が終わったら7月10日には「源氏物語MIX」と称する「朗読教室発表会」だ。会場は「パレス神戸」2F。要するにホテルの宴会場での公演だ。

 プログラムは前半は朗読教室の生徒さんの出演で源氏物語の原文と現代文の朗読。もちろん、時間の制約などから、ほんの一部分だけどね。
 そして、後半は朗読劇だ。田辺聖子さんの「私本・源氏物語」より「六条のオバハンの巻」を前田伊都子さんが脚色された。こちらはベテランの劇団員+スペシャル・ゲスト。…ま、中途半端なこの我輩も狂言回しで出てるんだけど…。^^;

 今回も、「ホテル・ボルティモア」同様、音響効果の送り出し(ポン出し)にはパソコンとサンプラーとを使うことにした。
 ただし、1部・2部両方の音を同時に SE Pro のパッドに割り付けることが出来ないので、割付は1部と2部別々に設定した。そして、休憩時間中に SE Pro の設定ファイルを読み込み直す。


 朗読教室のレッスンは原則として月に1回だ。だから、かなり前から音の準備をした。「ホテル・ボルティモア」の役者としての稽古&音響プラニングをやりながら、「源氏」の音もパラに進めた。音を入れる箇所は演出から指示があって、原文のバックが主だ。

 源氏ってば、琴とか雅楽…、なんてことはやりたくなかったんで、ピアノを中心としたムーディーな曲を中心に使うことにした。もちろん、要所要所は物々しい音楽を使って締めてるけどね。

 音を入れての稽古を始めたんだけど、結構面倒だ。音を入れたときの反応がまちまちなんだね。
  1. 音に関係なくマイペースで読む人 (このタイプが一番やりやすい)
  2. 音が入るとハイテンションになってノル人
  3. 音に流されてしまう人
  4. 音につられまくって自分のペースを失う人

源氏物語原文の朗読
(2005年 7月10日のゲネ・プロ)
 比較的芸歴の長い役者でも3までのタイプはある。でも、演出が注意すると2や3のタイプの人でもなんとかうまく行く。
 しかしながら、経験の浅い朗読教室の生徒さんとなるとそうは行かないんだね。しかたなく2〜4のタイプの人のバックは、無難な音に置き換えた。

 この前半の出演者は女性ばっかりなんで、拙者は出ない。だから本番のオペも我輩がやるつもりでいた。で、練習中のオペも我輩がやって来た。

 けど、思い切って、最終稽古の時に「桜の園」と「ホテル・ボルティモア」のオペをやってくれた女の子君に任せてみると、ををっ!やるじゃないっ。だったらってことで、本番のオペも彼女に任せることにした。

 問題は後半の「六条のオバハンの巻」だ。稽古回数が少ないんだね。たった3回。それで当日午前中のゲネメシ食って午後からの本番って具合だ。演出の大御所先生から「こちらの音もお前に任せる」と言われてしまった。

 台本をもらったのは確か5月の下旬だった。こっちの方は特に演出の先生からの音・音楽の指示はなく、丸投げ状態。「ホテル・ボルティモア」の追い込み中、前半の朗読の音楽&SEを詰めながらだから、「六条のオバハンの巻」にまで気が回るわけがない。
 それでも、台本にある“牛車が転倒する音”とか“怪鳥ましとどの声”、“朝を告げるニワトリの声”、“加持祈祷の声”なんてのは作っておいた。


「六条のオバハンの巻」のカーテン・コール
 “牛車…”の音はバスドラムのキックや牛の鳴き声、女性の悲鳴や笑い声、犬の鳴き声、それにガヤなんかを加えてある。編集にはシェアウェアの wavior が大活躍。

 “ましとど”は元々シンセの女声だ。ピッチを上げて奇妙な感じを出した。この“ましとど”は同時に出して重ね合わせることも考慮して、ピッチを変えるなどして何種類か用意した。

 “加持祈祷”なんだけど、本当はもっと激しいものにしたかった。けど、手持ちに適当な音がなかったんで、やむなく昔に録音した“声明”に火が燃えさかる音を加えた。それだけじゃ単調なんで音楽を掛けてある。

 いよいよ音楽だ。7月1日の第一回目の稽古で雰囲気をつかんで、翌日は仮の音を入れての稽古。前回「ホテル・ボルティモア」は音楽著作権料がかさんだんで、今回は安く上げるために著作権の切れたタンゴのスタンダード・ナンバーを中心に使うことにした。CDとかじゃなくアマチュア音楽家にボランティアでシンセで弾いてもらったら払わなくて済むもんね。オープニングは軽快に これ だ。

「六条のオバハンの巻」のSE&MEの SE Pro パッドへの割付
パッドに余裕があるのでSEはサンプラーとダブらせてこちらにも登録した

 7月2日の稽古で確認して、翌3日に最終決定だ。あと本番前のゲネ・プロで音を入れるタイミングの変更なんかがあったが、オペの女の子君もよく頑張ってくれた。それにしても彼女、腕を上げたもんだわい。


ホテル側ではスタンド・マイク3本しか用意出来ないとのことなので
MCの手持ちマイクはこちらで用意したコードつきのを使った
コードさばきは我輩を含む役者たちが手分けしてやった
 さて、本番当日の朝から仕込みだ。音響セットは基本的に「ボルティモア」の時と同じだ。ただし、両サイドのスピーカは省略。マイクが1本あるがこれに関しては後述。

 会場は違うが、やはりスピーカは舞台奧のセットの影に、オペは下手(しもて)の後ろにがんばった。照明さんは音響の左側…。

 これが誤算。(笑) 実は、源氏物語の朗読者用のマイク3本からの音は、諸々の都合から、会場のPA設備から流すことになった。

 つまり、朗読者の声は宴会場の天井から、音楽と効果音、それに当日のMCの声は舞台奧のスピーカから出る。ところが、会場のPA卓が照明さんの左側にある。だから、気の毒なことに我が音響オペちゃんはこの間を走り回って音量調節をすることになってしまった。^^; 事前の確認不足、チェック不足から来る不手際だね。ひとえに音響チーフの拙者の責任だ。

 現場での音響のセッティングって、大道具さんの組み立て、照明さんの吊り込み作業なんかが終わってからなんだよね。拙者と女の子君とがセッティングを始めたとき、既に照明さんがそこに陣取っておられた。んで、仕方なく…。
 けど、事前にホールのPA卓の位置を確認しておいて、照明さんに場所を譲ってもらうべきだった。

 それでも、朗読教室の生徒さんによる源氏物語の原文及び現代文の朗読は無事終了した。20分間の休憩のあと、拙者も出演する朗読劇「六条のオバハンの巻」である。
 ここでパソコンの SE Producer Pro の設定ファイルを入れ換えて、朗読者用のマイクを撤去しなければならない。手がないのでマイクの片づけは拙者も手伝った。

 「六条…」の出演者は声のデカい役者ばかりなので、生の声で演じる。しかし、「(六条の御息所は)姿が見えず、声だけがエコーがかかって不気味に響き渡る」 とか、「六条(の御息所)の声は、この世のものとも思えぬように響き渡り…」 とある。要するに、マイクを使い、それにエフェクトを掛けなければならない。

 ホテル側との事前の打ち合わせでは、「マイクと拡声設備はこちらでご用意出来ます」ってことだった。で、六条の御息所のこの声はカラオケのエコーを強めにして出してやろうかと思った。

 けど、ホテルの担当者にエフェクタの有無やカラオケ設備に関して訊いても曖昧な返事しか得られない。んで、こっち側でマイクを用意して、パワード・ミキサーの PMH1000 内蔵のエフェクタで "Reverb & Echo" ってのを掛けることにした。かなり安手の安易なエフェクトだが、その安っぽさが場面にピッタリなのでこのエフェクトにしたんだ。(笑)

 トータル・エコーだから加持祈祷の声にまでエフェクトが掛かってしまうが、なぁに、構うもんか、と強引突っ走る。(笑) オペ君、ゲネ・プロではハウらしたが、本番では綺麗にエフェクトを掛けてくれた。

 朗読劇「六条のオバハンの巻」は爆笑のウチに終わった。実は、オペの女の子君、笑い声の起こるイベントの音響は初めてだったらしい。それがとっても嬉しかったとか。…こういう魅力に取り付かれるとあとが恐いんだけどね。(爆)


SHURE SM58
 最後に当日使ったマイクだが、「源氏物語」の朗読ではホテルの音響設備を使った。マイクは3本。センターがコード付きでサイドの2本はワイアレスだ。好んでこうしたわけではなく、ホテルの手持ち機材の関係でこうなってしまった。マイクの種類なんかは確かめなかったが、それほどヒドい音とは思わなかった。(笑)

 持ち込みマイクは定番のゴッパーこと SM58 だ。これをMC用と「六条のオバハンの巻」の六条御息所のエフェクトの掛かった声に使った。
 MC用にはホテルのワイアレスを使いたかったんだが、子機が2台しかないってことで諦めて持ち込みのにしたんだ。お陰でコード捌きなんてよけいな仕事が増えてしまったぞ。

 「『六条のオバハン…』は台本を持って突っ立っての朗読劇だからセリフは覚えなくていい」ってことだったのに、稽古にはいると“動き”をつけられ、おまけにゲネんなると前からの明かりで台本はほとんど見えない。
 朗読の生徒さんたちの時は台本が見えないからと前からの照明はなしだったのに、「六条…」では容赦なく前からの明かりが来る。特に狂言回しの我輩は真っ暗な中でピンを当てられ…。お陰でゲネはめためた。^^; 大慌てで本番までにセリフを覚えてやっとこさ乗り切った。

 音をやるから芝居はどうでもよいとか、舞台に上がるから音は適当でいい、なんてことは口が裂けても言えない。出来ないんだったら最初から引き受けるなってことだ。

July, 2005



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