演劇の舞台音響
= 2005年 4月外部公演 本番 =

タイトルはなんか本格的だけど、中身は地方小劇団の音響担当者の独り言に近いものです(笑)

 我が愛弟子が他流試合に挑んだ。2005年10月頃だったかなぁ、黒塚&道成寺でのオペの腕前を見込まれて、他の劇団の音響を頼まれたのだ。

 「行って来い」と声を掛けて拙者は極力口出ししないことにした。選曲や効果音選びもすべて彼女に任せた。
 けど、やっぱり心配なので最終の総稽古から顔を出した。稽古場に入ると、なんとCDラジカセで音出しだ。演出や舞監などからは「フェードアウトが早すぎる」などの注文が出るが、デジタル・ボリュームじゃちゃんとしたコントロールは出来ないよな。

 それは置いといて、彼女、自分で焼いた CD-R を取っ替え引っ替えラジカセに突っ込んでる。

 「おい、本番の一週間前だぜ」。本番ではMDを使うとのことだが、この段階では本番通りに割り付けたMDが出来てなきゃいけない。稽古ではCDしか使えないとしても同じイメージの CD-R でやるべきだ。この段階では音ファイルの整理が出来てなくちゃならない
 もちろん、ゲネ・プロを終えた段階、あるいは初日の幕が開いたあとにも変更が有り得るんだけどね。

 果たして本番前日、ゲネ・プロ前に音チェックをやってると音が一つ足りないっ!
 MDにその音を追加しようとしたらパソコンのオリジナル・ファイルのフォルダにも入ってない。整理が悪いからこういうことが起こる。

 オリジナルは自宅に置いてきたという。「取ってこい!」と怒鳴りつけてやっとこさゲネに間に合った。お陰でメイン・スピーカの音質の追い込みが出来なかったぞ。

 何があるか判らないから、スペアのMDや素材の音は現場に持ってくるのが基本だ。本番用以外にバックアップ用ディスクを用意することは言うまでもない。

 実は我輩が加工した終演アナウンスの音も作り直す必要があった。^^; 我輩はオリジナル・ファイルの入ったレコーダを持ってきてたのですぐの作り直した。

 MDはデッキを使ってファイル(曲)の入れ替えや追加が出来るが、かなり危険だ。新しいMD、あるいはフォーマットし直したMDに新たに入れ直すようにしたい。


 さて、ここのホールは機材はすべてホール(ハウス)の備品を使うことになってる。機材を持ち込んだら持ち込み料を取られる。まるで結婚式場や宴会場みたいだが、ちょくちょくこうしたホールがあると聞いてる。

 で、今回借りたのはミキサー(音響卓)が英国製の Soundtracs MEGAS 2 STAGE。スピーカは型番は確かめなかったが、すべて APOGEE SOUND のもの。APOGEE の業務用スピーカには詳しくないが、たぶんAEシリーズだと思う。

 MD&CDデッキは TASCAM の業務用。上手(かみて)にあるアンプ・ラックには HYFAX のアンプが何台か収まってた。

 オペ君はもちろん、我輩にしてもほとんど初めて見る機材ばかりだ。彼女、かなり緊張したと思う。


 スピーカの配置は一番下の図のようにした。SP L と SP R がメイン・スピーカでサブ・ウーハーと2段重ね。チャンネル・ディバイダで高音と低音とが分けられてる。

 TVと表記したのは舞台上、舞台下手(しもて)にあるTVの音を担当。

 Gtは上手のソデで弾くギターの音を担当。TV、Gtともに舞台上の黒幕の後ろに配置した。

 2Fとあるのは2階の部屋で鳴らすレコード(ステレオ・セット)の音を出すスピーカで舞台奧のバルコニーにセットした。

 メイン以外のスピーカはすべてステージ・モニタ(転がし)用のものを使用。
 TV及びGtのスピーカは置かず、メインのスピーカをPANで振っても良いのだが、今回はミキサーのグループの使い方の練習もあるのでこういう配置を勧めた。


 オペ君、インプットの立ち上げ(割り付け)を1番からやり始めた。したら、コンソール(音響卓)がデカいのでデッキ類に手が届かない。(笑) もちろん、インプットを右にズラして解決。
 拙者は、操作がやりやすいようにデッキ類は斜めに、自分側に振って置くのだが、客席からの美観を気にしたのか、彼女は真っ直ぐに置いた。

 アウトプットの割り付けはホールの人(小屋付きの音響さん)がやってくれたが、なんとメイン出力までグループ・アウトに…。
 たいていの人はメイン・スピーカへの出力はメイン・アウトとかステレオ・アウトとか、マスター出力とかから出すんだけどね。
 ま、結果は同じだから別にそれでもいいけどね。^^;

 ゲネ・プロ前に音量チェックに入ったんだが、安定しないんだ。4回出てくる電話のベルの音量が意味なく毎回違う。
 ふと見ると、入力フェーダーとグループ・アウトのフェーダーの両方を触ってる。ぉぃ! で、グループ・フェーダーを固定させた。
 具体的には、グループ・フェーダーの横に細く切ったビニテを貼り、基準位置にマークを入れさせた。

 ・入力フェーダーを上げて最大音量が問題なく出る
 ・フェード・イン/フェード・アウトが綺麗に行える

 このレベルをグループ・フェーダー(及びマスター・フェーダー)の基本位置にする。人によってはグループ・フェーダーのポジションをビニテで固定するとか。
 デジタル・ミキサーなんかグループ・フェーダー(バスアウトのレベル設定)は表に出てなくて、液晶画面設定するようになってるぞ。

 そう、グループ・フェーダーやマスター・フェーダーは本番中にめったやたら触るもんじゃないんだ。よほどの事がない限り、本番中に入力フェーダーと出力フェーダーの両方を操作するのはよそう。

 音ファイルを作る際はなるべくフェーダーの0(dB)付近で操作できるよう、あらかじめME/SEのレベルを調節をしておくのがよい。
 S/N比を稼ごうなどとセリフ・バックの音楽(ME)までピーク 0dB で入れてしまうと本番の時に苦労することになる。

 ただし、セリフ・バックなど小音量で出す音は -10dB なり -20dB あたりでちょうど良くなるようにした方が出すときに感覚にピッタリ来る。・・・我輩はね。


 本番までは色々あったが、回収したアンケートを見ると音響効果への評価が高く、我輩としてもホッとした。選曲もなかなか素晴らしかったぞ。彼女、もうすぐ我輩のもとを離れて独り立ちできそうだな。

パソコンを使って音造りをする場合
未編集のオリジナル・ファイルと
MDなど本番用のメディアをイメージしたフォルダとを
別にして整理しておくと良い
上の場合、“A”と“B”とがMDのイメージ



各ファイルの音の出だし(音あたま)はちゃんと揃えておきたい
このファイルは音が出るまで約 400mS (0.4秒) だが
デッキなどの発音遅れを含めると遅れが1秒近くになることがある
拙者は特に理由がない限り、約 20mS に統一してる



機材はすべてホールの設備を使用した
持ち込んだ機材は音加工用のパソコンとモニタ用ヘッドフォン程度

ミキサーは Soundtracs MEGAS 2 STAGE
入力数はこんなにたくさん要らないけど
アウトプット(グループ・アウト)の数からこのミキサーを借りることになった


TASCAM MD-801R 3台に CD-401 MkII
我輩だったら、MDなどは操作しやすいように斜めに置く

本番終了後、機材のツマミをすべて基本位置に戻すこと
これが礼儀だ

モニタ用の HEADPHONE レベルが最大に上がってるのを知らず
オペ君が飛び上がってた
前回使った人がヘッドフォン・レベルを戻さなかったのが原因だが
それを確認せずに使った我らがオペ君も問題だ



グライコはメイン用と2Fのギャラリー用とに2台借りたが
メイン・スピーカの音の追い込みをする時間がなかった
劇中のレコードの音を担当する2Fのスピーカは
壁に近く、低音が盛り上がるので 200Hz 以下を押さえた
上が KLARK TEKNIK DN300、下が YAMAHA Q2031A




● のところに電話機があり、電話の音を別スピーカに担当させたかったが
舞台装置の関係で電話の音はメインのスピーカから出した

本番終了後、ホールの音響さんがスピーカ(やアンプ)に
異常がないかのテストをされるので音出しを要求される





フェーダーの操作は一番長い中指でやるのがよい
初心者は腕を宙ぶらりんにせず、親指や掌をコンソールに置くと
微少レベル(例えばフェード・アウトの際の消えぎわ)が安定する

実は、腕全体を使う方がスムースなコントロールが出来るんだが
それには修行が必要
ともかく、指に力を入れず、肩の力を抜けっ!

なお、フェーダー操作のちょっとしたコツはこちらに書いてる


知り合いのギタリスト君が 8の字巻き のサンプルを作ってくれた
拙者よりマシだけど…

メス側から巻き始め、オスとメスとがちゃんと揃うように
巻き上げるのがルールらしい

正・逆・正・逆・正・逆…と巻いてゆくのだが、こういう風に巻かないと
線がよじれてしまってカール・コードみたいになってしまうからだ
LANケーブルなんか、中でよじってあるのがほどけてしまったりする

なお、この類の「線」は音響・PA関係では「ケーブル」とか「コード」と呼ぶが
ミュージシャンは「シールド」と言う

 さて、借りた機材はツマミを元に戻し、コード類は8の字巻きにして返却すること。また掃除も忘れずに。

 なお、ホールごとに流儀が違い、自分の今までの常識とは異なることを要求されることもあるが、素直に従うこと。「余所ではこうでしたよ」みたいなことを言っても始まらない。
 ついでながら、重い機材は出来る限り多人数で運ぼう。2人でOKと思っても4人でとか。
 粋がって力任せをやって、機材を落として壊したり腰を痛めたりしたらたいへんだ。現場では事故や怪我には臆病になろう。

 と、えらそうなことを書いてるけど、この拙者、仕込みや取っ払いは大の苦手だ。(笑) なぜなのかは我輩の経歴と関係してる。

 でも8の字巻きくらいはなんとか出来るぞ。けど、プロのPA屋さんなら 20mのコードを30秒以内に巻き上げるが我輩がやると…。^^;
 しかし、これから音響の世界に入る人は仕込みや取っ払いの常識も身に付けて貰いたい。

April, 2006



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