演劇の舞台音響
= 2006年 9月Papa I Love U 「パパ、I Love You」 - 本番 - =
| 「パパ、I
LOVE YOU」の音響システムは右図のように組んだ 機器は
結果はオーライ。客入れなどのBGMなら超小型シリコン・オーディオ機器などで充分だ。 他にスペアとして FLYING MOLE のモノラル・パワー・アンプ DAD-M300pro x 2、ミキサーの YAMAHA MG10 を、それに、マイクは SM58 を1本用意。また、ソフト・サンプラー SE Producer pro でも音出しが出来るようにした。 さて、ステージは右のように組まれてた。またまたスピーカの置き場所がない。^^; あれほどお願いしといたのにぃ〜 今回は車椅子や大きなストレッチャーの出入りがあったりするのもあって舞台装置がいっぱいに組まれてて装置の前にスピーカを置くことは出来ない。 困り果てた末、CSP12(赤丸)と CSP6(赤四角)を右図のように置いた。 右の写真で言うと下手(しもて)のドアの後ろと上手側プライベート・バーの右手奧だ。 ドアは厚手半透明のビニール、バーの右手は黒布だ。つまり、スピーカを遮蔽する材質が異なるし、スピーカ回りの音響条件も異なる。 また、舞台奧から聞こえてくる音を担当する CSP6 との距離がほとんど取れないので立体感があまり期待できない。 で、まず舞台奧の音用の CSP6 は床に転がし後ろを向けた。これは正解だった。 下手側だが、これはグラフィック・イコライザで補正した。前頁にグライコは持って行かないつもりと書いたが、やっぱり持って行ったんだ。 グライコの調整は闇雲にやってらまとまりがつかなくなる。今回グライコを使う第一の目的は左右のスピーカの音質の均質化だ。 まず、黒布の後ろにある上手(R)側スピーカを基準にすることにした。 そのためにモノラル録音された場内アナウンスを流し、左右に PAN を振りながら音質を比較し、下手(L)側をグライコで補正してやる。 今までの経験から 2KHz 以上が落ちてるだろうと粗っぽく補正してやるとほぼOK。1.6KHz から上がり始め 12.5KHz で +6dB の補正をしてやった。10KHz 以上では補正不足だろうがこれで手を打った。 そのあとステレオ・ソースで試聴したが左右の音質を合わせるとずいぶんスッキリとした音になる。 これでまだ音質に不満があれば更にグライコで追い込めばいい。書き落としたが、「黒塚&道成寺」で ON にして効果のあった P2500S の<YSProcessing>スイッチは今回は OFF にした。 今回は特殊な音響効果があった。前頁、前々頁にも書いてるが、小電力トランシーバの使用だ。トランシーバで助けを求める声が(あり得ないことだが)舞台となっている病院中に響き渡る。 舞台上で俳優さんがトランシーバを操作して送信し、その電波を音響席で受けるのだ。まあ成功だったかな? ただ俳優さんが年配の方で、しかもトランシーバを扱い慣れなく、PTT(送信)ボタンを確実に押してくれないのだ。もちろん、トランシーバは稽古段階から使ってるのだが…。 俳優さんの PTT 操作が不安定なので、公演途中から VOX(喋ると自動的に送信するモード)も併用したが、やはりどうしても頭切れの問題は避けられなかった。 しかし、公演も終わり近くになると俳優さんも慣れてこられ演出家&音響担当の意図した効果は得られた。 また、危惧してた外来電波混入(混信)の問題も起こった。FM電波(受信機)は、強い信号が弱い信号を押さえ込んでしまう(弱肉強食特性がある)ので、送信中は混信はあまり問題にならない。 しかし、俳優さんが喋ってない無信号時に外来の微弱電波でスケルチ(無信号時に無音にする回路)が開いてしまい、会場にザザザザッ!って雑音が流れた。 会場は地下2階だが、やはり外来電波の混入は避けられない。 オペ君が早目にフェーダーを上げたから起きたトラブルだ。「雑音が混入するおそれがあるからあまり早くからフェーダーを上げるな」と言ってあったんだが、無線通信の知識のない彼女は軽く考えていたようだ。 通信用トランシーバは常時電波の出てるイベント用ワイアレス・マイクとは違うんだ。 ついでに書いておくと、ハウリングはなにもグライコがなければ軽減できないってものでもない。 MG16/6FX のモノラル・チャンネルのイコライザは MID のブースト&カットの中心周波数が 250Hz から 5KHz まで可変になってる。これを利用して調整してやれば、ハウリングはかなり押さえられる。 実際、今回もトランシーバの音質作りをするとともに、ハウリングも押さえ込んでやった。もちろんハウリングする周波数は一つじゃないんで、そこら辺、妥協が必要だけどね。 また、本格的なグライコに比べると減衰する帯域幅が広い(Qが低い)ので、下手すると音痩せしてしまう。 さて、サンプラーのZ4は今回はいつもの MIDI PAD ではなく、25鍵の MIDI キーボードを使った。使い心地はまあまあだったそうだ。 難点は今回使った EDIROL PCR-M1 がベロシティーを受け付けてしまう点だ。ゲネまではオペ君もかなり違和感を感じてた。 キーボードを使うなら、ぜひともベロシティーが OFF に出来るもの、あるいは固定ベロシティーの設定が出来るものを使いたい。 また、キーボードは二つのキーを同時に叩いてしまう危険性もある。しかし、MIDI PAD より多くの音がセットできる魅力は大きい。 なお、MIDI キーボードは USB でなく MIDI で接続する場合は外部電源が必要になる。 オペ君は鍵盤上に蓄光テープを貼り付け、それに番号を入れた。一幕と二幕とは [OCTAVE] キーを操作して繰り替えるのだが、頻繁に出てくる電話の呼出音は一幕・二幕ともに同じキーに来るようにして[電話]と書いた。 今回の音響効果の特徴は、ものがぶつかったり壊れたりする音、それにノックの音をすべて単音とし、芝居に合わせてオペ君の指先から出したことだろう。 ノックの音は役者が舞台裏で板などを叩いて出す方が良い、という意見もあろうが、今回はSEで成功だった。 理由は迫力ある音を出す板を製作するより、SEで作る方が簡単だってことだ。実際、現場でセットのベニヤ板を叩いた音と比較してみたが、SEの方がはるかにマッチした。 ドアのノックは、打鍵に感性が要求されるが、今回はオペ君の出す音にベテランの俳優さんがうまくセリフを合わせてくれた。 オペ君が俳優さんと一緒に芝居をしてるから、俳優さんも合わせやすいんだ。 そう、音も重要な登場(人物)なんだ。音もちゃんと芝居をしなくちゃなんない。 今まで演劇の公演には Behringer の PMH1000 を使ってきたが、今回使った YAMAHA MG16/6FX はフェーダーの操作感覚が違う。 -40dB からの落ち方が急激に感じるのだ。この MG16/6FX を使ってきたがオペ君、リハの段階では少し戸惑ってた。しかし、本番では慣れてしまったようだ。 今回はサージ&ノイズ吸収装置付き電源ケーブルを使ったからか、5日間・7回公演の間、電源に起因すると思われるトラブルは全くなかった。音響専用電源のない場所でのPAはやはり何らかの電源対策が必要だ。 当たり前の話ながら、公演の度に右のような機材リストは必ず作成して関係者に配布する。我輩の場合、機器間の接続コード(ケーブル)に至るまでリストアップしてる。 面倒くさいけど、一度リストを作ってしまうと、次の公演にも役立つ。 拙者は愛用のテキスト・エディタ、「秀丸」で作るが、普通は Excel などで作るだろうな。その方が見栄えがする。(笑) あ、もちろんこのサイトにアップしたような接続図なども事前に関係者に渡してある。 ☆
さて、「桜の園」以来、1年半ほどにわたる我が愛弟子とのコンビも彼女の健康上の理由で、当分の間、解消だ。残念だけど…。 |
![]() ![]() ![]() スピーカの向きはあとで細かく調整した この図は大体のところで向きはあまり正確でない 下手(L)側と上手(R)側のスピーカの設置条件が違うので グライコで補正した ![]() ミキサーのところにセットされた受信専用小電力トランシーバ ![]() MG16/6FX のモノラル チャンネル イコライザ ![]() 今回の音響オペ席 机上左からミキサー、キーボード、サンプラー SP-404 右端で黒布を被ってるのはパソコン 今回、パソコンは場内アナウンスを担当した 机の下にはサンプラーZ4やグライコなどを置いてる ![]() 客入れや休憩中の音楽はオペ君の iPod nano だ EDIROL PCR-M1 には蓄光テープを貼り、番号を入れた ![]() 今回の音響機材リスト(の一部) |