演劇の舞台音響
= 2006年11月 学校公演 「若紫の巻」 -1- =
| ・現場を下見 2006年 11月 8日に神戸の某学園での公演が予定されてる。場所は神戸市中央区なのだが、山の上。 下見の日、会場となる講堂に入ると、おぉクラシック! なんでもこの講堂を含む校舎は大正15(1926)年に建てられたとか。 エレベータなしの3階だ! 今回から音響担当は我輩一人なので、荷物は出来るだけ軽くするつもり。 いわゆる“業者さん”だと搬入・搬出に人手を確保でき、その分の費用を請求することが出来るが、小劇団の内部の人間として音響を担当する場合、何から何まで自分でやる覚悟が必要だ。人手が足りなくて他のみんなも忙しいんだよ。 ここの劇団の場合、照明さん&大道具さんは業者さんだ 講堂には600席分ほどの椅子がずらりと並べられていた。しかし中高生全員が入っても満席になることはないが8割ほど埋まるそうだ。てーことは、約500人。 舞台に立って手を叩いたり声を出したりしてみたが、セリフをSRする必要はなさそうだ。 さて、スピーカだ。見るとプロセニアムに RAMSA のスピーカ(8" or 10"?)が2本、それに小型のウォール・スピーカ1対ある。下手(しもて)奧にはアンプ・ラックも。けど、「最近ノイズが出たりして音が良くないんです」とのこと。 やっぱりステージにスタンドを使って12インチの CPS12 を2本立てるしかない。 問題はオペ席だ。学祭などでは下手(しもて)のソデでオペレートしてるってこのなので、そこにしようかと思ったが、舞台全体が見渡せないし、ソデからってのは音量が決めにくいんだよね。んで、照明さんと共に客席最後列でオペレートすることにした。 しかし、舞台のハナから最後列までは直線距離で20mほどだ。手持ちの30mのスピーカ・コードじゃ足りそうもないぞ。それにロー・インピーダンスのスピーカ・ケーブルを30m以上も引き回す気になれない。 だったらアンプを舞台上かソデに置いてミキサーの出力を引っぱるしかない。余裕を見て35mから40mほど欲しい。 なら40mのライブ用のマルチ・ケーブルか? 16チャンネルのマルチ・ケーブルなら用意できるが重いんだよね。それに2本のケーブルのためには大袈裟すぎる。 で、30mの XLR コードに5mか10m継ぎ足す予定だ。コードの継ぎ足しって気が進まないが、マルチ・ケーブルを使ったってどうせ途中にコネクタ・ボックスが入るんだから同じこった。 ただ、踏んづけられてコネクタが壊れないかって心配はある。 メイン・アンプは軽量の FLAYING MOLE DAD-M300pro を使う予定だ。問題は DAC-M300pro の入力がピン(RCA)だってこと。不平衡(非平衡)なんだね。 コードかアダプタで XLR→ピンの変換をやっても良いのだが、不平衡で40mも引き回すのは精神衛生上よくない。(笑) そこで、音質劣化を承知でミキサーの YAMAHA MG10/2 か Behringer EURORACK UB802 を平衡/不平衡変換器(ライン・コンバータ)として使うつもり。素直にいつもの YAMAHA P2500S を使えばいいんだけど、出来る限り機材を軽量化したいんだ。 ミキサーは YAMAHA MG16/6FX の予定。あまり複雑なことをする予定はないんで、Behringer PMH1000 でもいいんだけど、PMH1000 はメイン・アウトが不平衡なので却下。可能なら更に軽量な YAMAHA MG10/2 を使うことも考えに入れてる。
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![]() 講堂は校舎の3階 観客席最後部から舞台をのぞむ ![]() 舞台の下から客席をのぞむ 画面右奧に音響オペ席を置く予定 ![]() 下手のソデから 最初はこの位置からオペレートしようかと思ったけど チト見晴らしがよくないし音量も決めにくい ![]() 今回使用予定の FLAYING MOLE DAD-M300pro x 2 ラック・ケースに入れても重量は 7Kg 程度 会場が3階だし、今までのように愛弟子君のヘルプが得られないので 機材は出来るだけ軽くしたい |
| ・台本を見ると 出し物は田辺聖子さんの「私本・源氏物語」より「若紫の巻」を前田伊都子さんが脚色されたもの。 “夕顔”の霊が現れることになってるんで、夕顔の声にエコー系のエフェクトを掛けることになる。 MG16/6FX なら内蔵エフェクタが使えるが、MG10/2 だと外部エフェクタが必要だ。 今回はいつもの風月堂ホールじゃなく会場の音響条件がよく分からないので、どうせグラフィック・イコライザ(グライコ)を持って行くんだが、我輩、グライコとエフェクタの YAMAHA SPX900 とを一緒に3Uのラックに入れてる。 だからわざわざエフェクタを持って行かなくてもラッキーなことにグライコと一緒に SPX900 がついてくる。(笑) ・ワイアレス・マイク で、“夕顔”用のマイクだが、今回は朗読劇ではなく芝居なのでコード付きのマイクでは具合が良くない。やっぱりワイアレスのピン・マイクだ。見かけの問題からヘッド・セットは使いたくない。 送信機には REXER の RZM-804/L を、受信機には同じ REXER の RZR-801 を使用する予定。 B帯、すなわち 806MHz〜810MHz(30波)を使用する、トーン・スケルチなし、電波形式 F3E、基準周波数偏移 ±5 kHz、出力 10mW の免許や資格それに手続き不要のワイアレス・マイクだ。最大周波数変位 ±40 kHz? しかし、RZM-804/L はマイクが単一指向性なので、首を動かしたりした場合の音量・音質変化が心配なので、無指向性(全指向性)の超小型ピン・マイク AKG の C417L を手配した。DPA 4061 のベージュあたりを使いたいところだが、そこまでの必要はなかろう
C417 はウィンド・スクリーン(W407)が外れやすい以外、なかなか優秀なマイクだ。ただし普通のサイズのコンデンサ・マイクに比べると S/N 比が 10dB から 20dB 以上悪く、ダイナミック・レンジも狭い ピン・マイクには超小型のコンデンサ・マイクが使われるが、単一指向性が良いか、無指向性が良いかは議論の分かれるところだ。 単一指向性はハウリングに強いが、マイクから口までの距離による音量&音質変化が大きいし、風雑音や摩擦雑音も多い。また、衣服や体にほとんど密着するから指向性は乱れる。 これに対して無指向性はハウリングが起きやすい。 あまり顔を動かさない司会・朗読などには単一指向性が、動きを伴う演繹には無指向性がふさわしいかな? 今回の“夕顔”の声は他の俳優のナマ声とのバランスから大音量にするつもりはないので、あまりハウリングの心配はしてない。従って、無指向性マイクの方がいいだろう。 受信機の REXER RZR-810 はデフォルトではアンテナが前面についてるのが気にくわない。オプションとして用意されてるラック・ケースに入れる都合だろうな。 アンテナ端子は自分で後ろ側に変更できるが、10本ほどのネジを外してケースを開けなきゃならないのが面倒だね。 オペ席の近くに設置しているとボディ・イフェクトで受信状態が変わったりするのだ。ワイアレス・マイクB帯(800MHz帯)の波長 (λ) は約 37cm なので、ケースの前後 約 25cm の差は 2/3λ ほどに相当するから、オペ(人体)からのボディ・イフェクは違うはずだ。 アンテナは人体や金属などの導電体から出来る限り(最小でも 1/4λ、出来れば 1λ 以上)離したい。 日本語で「空中線」って言うくらいだから空中(自由空間)に設置するのが本来の姿だ。 それはさて置き、ワイアレス・マイクの受信機はオペ席ではなく電界強度の強い舞台裏やソデに置く方がなにかと問題が少ない。 が、下手すると今度は受信機高周波回路の飽和や相互変調歪、混変調歪が発生したり、あるいはそれらがひどくなることがある。 相互変調に関しては右に詳しく説明してあるので、そちらを見て頂きたい。 (測定器の関係で)高周波ではなく、オーディオ信号で実際に相互変調歪を発生させてみた。これと同じような現象が高周波回路でも起こる。(発生する和差信号の強さは条件により異なる) ところで、ワイアレス・マイクは価格により
で、上記すべてが音質や使い勝手の差として現れる。またメーカの技術力・ノウハウの差もあるだろう。 そこら辺が定評ある高級品の方が安定で“音痩せ”が少ない理由だ。 ワイアレス・マイクって言うのは紛れもなく無線通信機器だ。従って電波伝播及び無線工学の基礎的な知識を勉強しておいた方が現場でトラブルが起こった場合の対処が早い。 |
![]() グライコの dbx231(上)と エフェクタ YAMAHA SPX900 ワイアレス ピン・マイク REXER RZM-804/L (音は RZR-810 の出力端子から録音) 某 元PAのプロから 「ふつ〜ゼンハかシュアじゃないの?あとソニーとかラムサとか…」 って言われた 金がないんだよぉぉぉ! この送信機の付属マイクは単一指向性だが 無指向性のマイクに取り替えて使う予定 もちろん、どちらが良いかはリハーサルやゲネの時にテストする ワイアレスはわりに故障が多いのでスペアを用意したいんだが 今回は予算の都合から^^; 送信機のスペアは用意できない だからマイクのスペアがあるだけでも… ついでに書いとくが、外国で購入したのや外タレ持ち込みのものは ほぼ確実に日本の電波法令に則ってない 日本の総務省認定品以外を国内で使うと違反になるぞ 逆に日本国内向けは外国では使えないはずだ ![]() 認定マークの一例 ![]() 受信機の REXER RZR-810 受信機(アンテナ)はオペレータや金属などから なるべく離れた場所に置きたい かと言って外部アンテナのフィーダーをやたら延長するのは賛成しかねる 受信機を舞台裏などに設置してライン出力を延長するのが良いだろう ただし、送信機の近くに置いたらといって デッドポイント(不感帯)の問題が解消されるとは限らない 受信機(受信アンテナ)は仕様の“到達距離”内であっても 送信機から見て、高周波的見通し範囲内に設置する なんたって 1GHz 近い超短波だぜ = 以下は想像を交えて書いてるのであまり信用しないで欲しい = このテのFMワイアレス・マイクは そのままでは充分なダイナミック・レンジ S/N 比が確保できない※ので 何らかの方法で、送信機で圧縮を、受信機で伸張をやってる (コンパンダを使ってる)ものがあるはずだ コンパンダの方式がメーカ/シリーズによって違えば 同一メーカの(同一シリーズの)組み合わせでなければ 本来の性能を発揮できない可能性がある トーン・スケルチの機能を持ったものはトーン周波数が合わなければ 信号が受信できても音が出ないのは当然の話だ (受信機側でトーン・スケルチを解除出来れば/すればOK) ※ 仮にFM残留ノイズを ±50Hz として計算してみると 最大周波数偏移 ±40KHz だとダイナミック・レンジは 58dB のはず で、例えば 100dB のダイナミック・レンジを得ようとすると ±5MHz なんて、とんでもない周波数偏移が必要となる (±500Hz で 20dB、5KHz で 40dB、50KHz で 60dB、500KHz で 80dB) いくら C417 がヤワだと言っても 80dB や 90dB のダイナミック・レンジはある = 上記は想像を交えて書いてるのであまり信用しないで欲しい = 今回は1波しか使用しないので問題ないが 3波以上を使用する場合はチャンネル・プランがやっかいだ 受信機がよほど優秀でない限り 3波・4波を隣接周波数に割り当てられない 受信機の高周波回路内の非直線性に起因する 高調波が発生しなければ、このトラブルは起こらない 直線性を改善するには負帰還が有効だが 高周波回路は低周波回路と違って 安定かつ効果的な負帰還を掛けることが非常に難しい 高調波は受信機内部にフィルタを装備すれば低減できるが 非直線による歪、不要信号が必ず発生すると思った方がいい ワイアレス・マイクのグループ分けはそのへんを考慮してあるので 同一場所では同じグループの6波のみを使うのが無難だ ![]() オーディオ信号 2KHz と 3KHz の2波 相互変調が起こらなければ綺麗なもんだ ![]() 上の信号を非直線回路を通すと和差信号が発生し、 その和差信号同士が混変調を起こし、更に和差信号が発生する |
右のリストを周波数順に並べ替えると上のようになる
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