演劇の舞台音響
= 2007年 9月 「石山寺 秋月祭」 =
| 2007年
9月24、25日両日、拙者の関係する劇団は滋賀県大津市の石山寺「秋月祭」のイベントに参加した。 石山寺は紫式部ゆかりの寺で、今年は源氏物語千年紀の前年に当たる。つまり、今回の秋月祭は千年紀のプレ・イベントって訳だ。 イベントはなんと、国宝である本堂の中で行うという。本堂の舞台(?)上で、ご本尊である如意輪観音さまに背を向けての公演だ。 事前に下見には行ったけど「やりにくそう」という以外はよく掴めなかった。 劇団が用意した演目は24日が田辺聖子氏の「私本・源氏物語」から「六条のオバハンの巻」を前田伊都子氏が脚色された朗読劇。25日はは、やはり田辺聖子氏の「新源氏物語」の一節。 「六条のオバハンの巻」は喜劇だ。これは過去2度上演しており、手慣れたもの。しかも朗読劇なので、セリフを覚える必要もない。けど、手を抜くわけにはゆかないので、秋月祭公演に向けてかなりの稽古を積んだ。 音の方はまったく手直しすることなく、前回&前々回のものをそのまま使うことにした。 「秋月祭」最終日25日は劇団のベテラン女優さん一人での朗読だ。田辺聖子氏の「新源氏物語」から「明石」の部分。こちらは喜劇ではなく、明石の君の子別れの部分もある、やや悲しげな物語。 今月17日まで「夜の向日葵」などの公演があった関係上、我輩が台本を貰ったのは、なんと21日(金)の夜だ。台本を見ながら素読みを聞かせていただきイメージを掴んで、翌22日中に音を作り上げた。 しかし、22日の夜は上記「六条のオバハンの巻」の最終稽古。我輩は狂言回しの伴男って役なので、半分ほどが拙者のセリフだ。稽古を抜けるわけにゆかぬ。んで、実質半日ほどで音ファイルを作り上げた。 そんなわけで「新源氏物語」は石山寺への公演の前日である23日の昼に読み手と音を合わせて、演出のOKを貰った。 |
![]() ![]() 石山寺・本堂 ![]() 本堂の内部 |
![]() 25日の朗読のための音響席 場所は、下手(しもて)側のサイドだ 音響卓は Allen & Heath の GL2400 シリーズだか 音響設備はすべての地元の音響会社殿のもの ヤマハの小型ミキサー MG82CX を持って行ったが エフェクタも dbx のものがラックに組まれてたしするので 当方の機材はサンプラーの Roland SP-404 及び REXER のワイアレス・マイク・システムのみとした サンプラー用のデータCFは、もちろんバックアップも用意した
当方はワイアレス1台とサンプラー1台だけなので フェーダー3つだけを使わせていただく Allen & Heath ってばDJ用の XONE が有名だが PA用ミキサーGLシリーズも定評がある GL2400 シリーズはもちろん 100mm フェーダー ![]() REXER RZT-80m トランスミッターと、マイクは DPA 4061FM 石山寺の現場で音が出ないというトラブルがあった 帰ってから調べると、マイクロ・コネクタ部で断線していた と言うより、マイクロドット・コネクタががケーブルからほとんど取れてた マイク・ケーブルが引っぱられるような力が加わったのだろう トランスミッター部は音響担当者の手元を離れるので こういうデリケートな部分は あらかじめビニテなどで補強しておいた方がいいかも知れない ![]() 新源氏物語の朗読 (音響席から撮影) 上記 DPA 4061FM が故障したので、やむなく黒の AKG C417 にした ヘッドセットよりは目立たないかな? リハの時はマイクはもう少し後ろにセットしたが ハウリング・マージンが充分に取れないので 本番では口元近くにした ピン・マイクを使う場合、役者や読み手がハケたら(舞台から消えたら) すぐにマイクを切ること マイクは医療用のサージカル・テープで顔に貼り付けたが 貼ろうとしたら、テープの切れ目が見つからず 別のテープ(透明絆創膏)を引っ張り出すハメになった (^^;) いつもは、切れ目が見つかるように三角に折って切るんだけど こういうときに限って… ![]() 下手側のスピーカ&アンプ群 音楽イベントと共用なので、当然の事ながら 音響会社殿の所有物 |
本堂でのイベントの音響は地元の音響会社殿が統括される。音楽関係のイベントは音響会社殿がすべて担当されるが、当劇団の音響はオペレートをこっちで行い、音響会社殿の設備に送り込むって形になる。 「六条のオバハンの巻」は我輩はほとんど出ずっぱりなので、「夜の向日葵」もお願いしたオペ氏に、こちらもお願いした。 しかし、お願いしたのが直前だったので、演出意図も充分に伝わってないし、事前チェック&リハも我々のあとに出演される音楽関係が優先ということで、本番までにゲネはもちろん、音合わせすらできぬままだった。 その上、オペ席がシモテ側のスピーカに非常に近く、セリフ・バックの音量調整が不可能に近い。自分の耳に届く音が大きいもので、ついつい音量を下げすぎてしまう。 オープニングやブリッジならある程度の見積で音を出せるが、役者のセリフは生き物なので、この状態で音量を合わせるのは極めて困難だ。 また、拙者は出演者としての打ち合わせに忙殺されてしまい、お願いしたオペ氏を放りっぱなし状態にしてしまった。誠に心苦しく、オペ氏にはまったく申し訳ないと思ってる。 音とはあまり関係ないが、今回のイベントは演劇のための照明はナシだ。音響さんはいらっしゃるが、照明さんはいらっしゃらないのだ。 で、明かりの ON/OFF のためのスイッチやスライダックは用意して貰ったものの、照明オペはいらっしゃらないので、劇団側で連れて行かなければならない。 かと言って、劇団には照明用スタッフはいない…。しかたなく、ズブシロの新人女優や出演者が手分けして上下(かみしも)の照明を操作することになってしまった。 つまり、ここでの演劇的公演は非常に難しい。 音に戻って…、朗読劇は六条御息所(ろくじょうのみやす(ん)どころ)の怨霊の声にエフェクトを掛けたいんで、ワイアレス・マイクを使う。 実は、六条御息所役の女優さんは翌25日の朗読イベントでもマイクを使うことになっている。ご本人の希望で DPA 4061FM というベージュ色の超小型マイクを使うことにした。 女優さんに仮セットしてトランスミッターのスイッチを入れても、オペ氏は「電波は来てるけど音が出ない」と言う。 慌ててマイクをスペアの AKG C417 に変更するとOK。コネクタの接触不良といった単純なトラブルではないみたいな気がする。(;;) この劇団以外のイベントで拙者が直接ワイアレスを担当することなんて今まではなかったが、ワイアレスのトラブルは度々経験している。ボディー・パック、マイクともにスペアは必ず持って行くこと。 ついでに、もう一つの大きなトラブルというか、ドジは SP-404 の電源を稽古場に忘れてきたことだ。最終チェックを終え、雑談しながら SP-404 をバッグに入れてたので、こんなポカをやらかした。 幸いなことに SP-404 はスペック上は電池駆動で6時間使えることになってる。拙者の SP-404 は25日に最大2時間程度しか使わないので、余裕で乗りきることはできたが…。また、アルカリ単三は、ワイアレス・トランスミッタの分も含めて、たっぷり(20本)買い込んであった。 24日の「六条のオバハンの巻」は爆笑のうちに無事終了。オペ氏も無難に音を入れてくださった。 しかし、事前打ち合わせがもっとできてれば更に良くなったろう。けど、これはオペ氏ではなく、劇団側の責任だ。 その次の日は「新源氏物語」の朗読だ。オペは我輩。 昼間にかなりの大雨が降ったが、夕方からは晴れだした。蒸発した雨で木漏れ日が美しく清々しい気分だ。 前日と同じく音楽イベントのリハが長引き、こっちのサウンド・チェックの時間がわずかしかなかった。直前に作った急ごしらえの音なので不安だらけ。 オープニングの音のレベル・チェックと一部のキッカケ合わせくらいしかできない。音楽はもっと軽い音にしたかったんだが、とてもそんな時間はない。ま、朗読者の声は音響会社の担当者殿が少し追い込んでくださったが…。 リハ中、読み手から「音楽が聞こえへん」と声が上がった。実は、イベントの音響担当の方から「返しはいりますか?」と聞かれたんだけど、「あの方は役者で、通常モニタなしで音を聞いてますんでいらないと思います」と答えてしまってた。 で、急遽、足元に「転がし」を置いて貰って、読み手も快適になった。本堂は3方に壁がないので、普通の会場よりステージへの間接音の跳ね返りが少ないんだね。こういう場所ではやはりモニタは欲しい。 さて、朗読の本番だ。 読み手が椅子に座り落ち着いたので、オープニングの音楽を入れる。小野尊由氏作曲&演奏の王朝風音楽が流れ出したが、なんとも鈍重だ。ブラームスじゃないんだよ! しかし、今さらイコライザを触る余裕なんてないので、そのまんま突っ走った。また、読み手の声も透明感も欠ける…。やはりサウン・ドチェックの時間は充分に欲しい。 音響席は下手(しもて)のPA用スピーカのすぐ前なので、音量の決め方が難しいんだね。ま、読み手の声と音楽共にスピーカから出てるんで、そのバランスは取りやすいんだけど、トータルの音量が決めにくいんだよ。 リハの時に客席中央当たりで聞いてみたんで、サバ読みで少し大きいな、と思うくらいで出してみた。 エンディングだ。最後で盛り上げようと思ったんだけど、音量不充分。フェーダーをいっぱいに上げてもまだ足りないんで、SP-404 の出力ボリュームを上げるって反則技に出た。結果は、ハム・ノイズが増えただけ。(^^;) 最初っから、ファイルを作る段階で音量を上げておかなければダメなんだ。時間がないときは「いいや、あとは現場で…」なんて思ってしまうが、それは間違いだ。 最終日のオペは拙者だったんだが、昨日お願いしたオペ氏が本番開始直前に顔を見せられた。「撤収のお手伝いに来ました」ってことだ。感激というより驚いてしまった。嬉しかったけど、恐縮してしまう。フツーそんな人いないぜ! ついでに、と言うのもなんだが、左上のオペ中の拙者の写真も前日のオペ氏の撮影。 本当に彼にオペをお願いしてよかったと、改めて思った。 今回は、いくつかのドジやったり、トラブルに遭遇したが、なんとか乗りきることができた。自分のマヌケさ加減はたぶん修復のしようがないが、改めてバックアップ機器(スペア)を持ってくることと、事前チェックの重要さを思い知った。 知らない場所での公演はこれが初めてじゃないけど、今回もまた勉強になりました。 |