マイクロフォン
![]() |
我輩はハンドル・ネームを“マイク”って言うくらいのもんだから、昔からマイクが好きだ。(笑) マイクロフォンは通常、マイクと略されるが、日本語では“送話器”、中国語では”話筒”と言うらしい。ちなみに、英語ではマイク(送話器)のことを "transmitter" とも言う。と言うことで、拙者手持のトランスミッターを中心にゴタゴタ書いてもみようと思う。ゴタゴタ書いてたら、いつの間にかバカみたいに長くなってしまった。^^; | ![]() |
![]()
![]() 放送用(?)カーボン・マイク カーボン・マイクに関しては全く知識がないが 1920年代の WE 社のダブル・ボタン式だろう。
電話用ハンドセットを利用した 自作 50MHz ハンディ無線機 |
まず最初はカーボン・マイクだ。世界で最初に発明されたマイクロフォンが、このカーボン・マイクらしい。確か、1877年にエジソン
(Thomas Alva Edison: 1847-1931) が発明したはずだ。1877年と言えば明治10年で、ちょうど日本で西南戦争が勃発した年。 エミール・ベルリナー (Emil Berliner: 1851-1929) が1877年4月にカーボン・マイクの特許申請したとか、1876年アメリカのべルが電話の送話器用として電磁型(マグネチック型)を開発したとか、マイクロフォンの発明&命名は1878年で、イギリスのデビッド・ヒューズだって説もあり、なんだかよく判らない。 でも、マイクロフォンの発明は 1876年から1878年の間だってことは間違いなさそうだ。 細かく見るとカーボン・マイクにもいくつかの種類があるらしいが、大まかに言って、カーボン(炭素)の粉末を電極で挟み、音圧により表面の電極が振動して中のカーボンの抵抗値が変化するのを取り出す仕組みになってる。振動板に炭素の粉末が密着してるって構造だから、カーボン・マイクの振動系のコンプライアンスは極めて低いはずだ。 抵抗の変化を電圧(あるいは電流)変化として取り出すので、電極には電圧が掛けられる。掛ける電圧にもよるけど、結構感度が高い。無指向性以外のカーボン・マイクは知らない。公衆電話用にノイズ・キャンセル型のがあるが、あれは指向性マイクの一種かな? カーボン・マイクは過去の遺物みたいに思われるかも知れないけど、今でも現役と言って差し支えない。旧電電公社の600型電話機には素晴らしいカーボン・マイクが使われてる。また、航空機のコックピットで使われる Telex 社のヘッド・セット(PH-81 & PH85)のマイクはカーボン型と聞く。 特徴は出力が高いことだ。電話は特別の増幅器を使わなくても、かなりの距離、伝送できるのを考えてみても、カーボン・マイクが感度の面でいかに優秀かが判る。 残念ながら、カーボン・マイクの音質が優秀だと言う話は聞かない。しかし、4号電話機から600型になって音質が良くなったし、電話線解放後電電公社以外から供給された安物のマイクを使った電話機の音質にはガッカリさせられたもんだ。だから、真面目に作られたカーボン・マイクは音声帯域の伝送には充分な特性を持ってると思う。しかし、最大の欠点は雑音が多いってことだな。 カーボン・マイクは、かつてはラジオ放送にも使われたし、PAや有線・無線通信の花形マイクロフォンだった。このマイクは堅牢なので、吹こうが叩こうが、けろっとしてる。それどころか、中のカーボンが固まって感度が悪くなったり、ノイズが増えたりしたら、叩いてカーボンをほぐしてやるのが常識だったくらいのもんだ。(笑) 良質のカーボンマイクなら、現代のSSB 送信機用にも充分使い物になるだろう。昭和30年代には自作の移動用無線機にジャンク(中古)の電話機用ハンドセットがよく流用された。 カーボン・マイクは感度が高く(出力レベルが大きく)増幅段を一段省略できるメリットも大きかった。 しかし、今の時代、わざわざ工夫してまでメーカ製の市販無線機に繋ぐメリットはないだろうな。 そうそう、昔、あるカーボン・マイクをバラしてみたら、振動板にマイカ(雲母)が使われてた。「ふ〜ん、絶縁体か…」と思った覚えがある。すべてのカーボン・マイクの振動板がマイカかどうか知らないけど。 |
|||||
![]() 東芝B形ベロシティー・マイク OB-1161(1957) リボンマイクとしてはやや固めの音。 我輩は今でもこのマイクを時々使う。
RCA 77DX 腰の強い明快な音。 “ザ・マイクロホン” って、感じがする (笑)
RCA 44BX 77DX より ふくよかな音。 昔はスピーチ用マイクの定番で 44BX の前身の 44A が東芝Aベロの 44B がBベロの原形となったらしい。 1957(S32)年のフランク永井氏のヒット曲 「有楽町で逢いましょう」は この 44BX で収音されたのではないかと 勝手に想像している。 ![]() BBC STC 4038 (1954) ラジオ放送用リボン・マイク。 日本ではあまりポピュラーじゃないけど 欧米では放送スタジオでよく使われた実用的名品。 ![]() RCA BK-5B(1960) テレビ放送用マイク(単一指向性) 置きマイク&ブーム用マイクとして 前身の BK-5A(1957) からTV放送によく使われた。 音はやや固めで明快。 リボンはボディーの長さ方向に対して 直角に張られてて 指向性の軸はマイクの長さ方向になる。 ![]() ダブル・リボンのマイク Beyer M160N(C) は現在も入手可能。 リボン・マイクにしては現代的でシャープな音。 ![]() S34(1959)年のアマチュア無線局 JA3AEB 右端がアイワ VM-12 |
さて、次はカーボン・マイク同様、メジャーの位置から滑り落ちてしまったベロシティー型マイクだ。このタイプのマイクは現在ではほとんど作られていない。リボンマイク、ベロシティーマイクロフォン ベロシティー・マイクはその構造からリボン・マイクとも呼ばれる。マイクの分類方法は複数あるが、圧力型・速度型と分類する場合、リボン・マイクは唯一の速度型に分類される。もっと正確にいえば、拙者はリボン型以外の速度型マイクを知らない だだ、RCA 77DX に代表される指向性切り換え型のリボン・マイクは速度動作と圧力動作を組み合わせたもので、特に無指向性にすると完全に圧力動作になる。従ってベロシティー・マイクと呼ぶより、リボン・マイクと呼ぶ方がいいだろうな。
振動系の質量は、たぶん全てのマイクの中で一番小さくコンプライアンスが高い。しかし、アルミ箔の振動から誘起される電気はかなり微弱なので、強力な(=大きな)永久磁石とインピーダンス整合用のトランスが必要となる。また、カーボン・マイクと違って、増幅器がないと実用にならない。 なお、このリボン・マイクの“磁界の中を導体が動くと電力が誘起される”と言う仕組みは後に挙げるムービングコイル・マイク(ダイナミック・マイク)と原理的に同じだ。けど、通常はリボンを使ったマイクはダイナミック・マイクとは呼ばれない。少なくとも“音の現場”では明確に区別される。 このタイプのマイクが初めてドイツの弱電メーカ、ジーメンス・ハルスケ(Siemens-Halske)社で作られたのは1923年だそうだ。しかし、ムービングコイル・マイクと共に広く普及し始めたのはヒトラーが首相になったり日本で5・15事件、2・26事件が起きた1930年代に入ってから。 1931年に有名な音響学者オルソン博士 (Harry F. Olson Ph.D.: 1901-1982) により世に送り出された RCA の 44A 及び、同時期に作られたマルコーニ社(Marconi's Wireless Telegraph Company)のものなどが評判が良かったためだ。 この頃、アメリカでは禁酒法が廃止されたり、エンパイヤ・ステート・ビルなどの超高層ビルが建設されたりした。
また、若き ビング・クロスビー(Bing Crosby: 1901-1977) が 44B(X) を前にしてる1939年の写真も見たことがある。映画 East Side of Heaven, [Denny Martin], Universal, 1939 の1シーンだったはずだ。44A か 44B/44BX かは、年代で判断した。44B は1936年 44BX が出来たのは1938年のはず。 また RCA Victor の専属だったエルビス・プレスリー(Elvis Presley: 1935-1977)が 44BX を前にして歌ってる写真もある。 この 44A/44B の改良型 44BX は1955年頃に生産が終了したが、1960年代になってからも盛んに使われた。アメリカの AEA 社から R44CNE って名前で 44BX の完全復刻版が出てるらしい。
リボン・マイクは本来、マイクの正面と背面の両方に“8の字”指向性を持つ双指向性(両指向性)なので、対談には実に具合がいい。しかし、工夫をして単一指向性や無指向性に切り換えられるものもたくさんある。むしろ、音楽収音や舞台などでは、ほとんど単一指向性で使われた。
若き美空ひばりと一緒に写ってるマイクはたいてい、RCA の 77DX (あるいは 77D) って言う、超有名なリボン・マイクだ。このマイクは一部でまだ現役。 リボン型は空間に薄いアルミのリボンがぶらさがってるって構造上、極めて風に弱い。生まれて初めてリボン・マイク(RCA 44BX)を前にした時、エンジニアから「くしゃみ厳禁」をキツく言い渡された。^^; アナウンサーは原稿をめくるのではなく、横にずらしながら喋るが、これは紙のノイズを押さえる意味もあるけど、リボン・マイクの時代には、めくるときの風でマイクが「ごぼっ」というのを防ぐのが主目的だった。 また、(特に昔のものは)特殊な構造のものを除いて、よほどの工夫をしないと屋外では使えないし、低音の大振幅にも弱い。
アナウンス・ブースではたいていマイクは口より高め・遠めにセットされるてるのであまり心配はないが、問題は音響関係が不完全でマイクに近づく必要がある場合のステージだ。 今はステージでは司会も持ちマイクが主流だが、その昔、司会用マイクは舞台下手(しもて)のスタンド・マイクで、必ず吹かれの起こりやすい口より低い位置にたいていリボン・マイクがセットされた。奈落からせり上がって来るエレベーター・マイクが下手にもあった そういう場合、我輩は“ぱ行音”や“ふ”音を発するときは、一瞬、顔を少し斜めに向けることで防ぐが、中には“ぱ”や“ふ”を口をゆがめて発音する奇人もいた。(笑) こうした動作は慣れればごく自然に反射的にできるようになるものだ。 このマイク特有のトラブル(経年変化)に“リボンの伸び”がある。リボンが伸びると周波数特性にうねりが出て、低音がぼよぼよになったりする。また、リボンが磁石に触れてしまう“リボン・タッチ”が起こると、逆に低音がすこすこに抜けてしまう。 大きい、重い、構造上風に弱くデリケート、音源からの距離が遠いと音がボケるって面もあって、1970年代に入るとだんだん使われなくなり、漫才やのど自慢のマイクまで、いつの間にかコンデンサ型に取って代わられてしまった。 RCA が 77DX の生産をやめたのは1973年だと聞いてる。77D が出来たのが1941年だから32年間かぁ…。なお、RCA のマイクロフォン部門は 77DX の生産をやめた3年後の 1976年になくなった。 けど、我輩は人間の声を近距離でとるには、リボン・マイクが最高だと思うぞ。その周波数特性からリップノイズや歯擦音、それにブレス音が目立たないんだね。下手にコンデンサーマイクを使った時にような、耳元で喋られてるような不快感がなく、ごく自然な遠近感・雰囲気が得られる。 実はこの自然さはリボン・マイクの過度特性の悪さからも来てる。衝撃音が押さえられる傾向がありピーク・リミッタ的効果が期待出来る。だから、今でも目的によっては、ナレーションの録音にこのリボン型を使うことがある。 実は、デジタル録音とは意外と相性がいいんだ。(笑) ただ、SE(=効果音)やバックの音楽がコンデンサ・マイクで収音されてる場合、下手したらナレーションが食われてしまう。 サンプルの mp3 ファイルを作ってみた。マイクは1970年代に購入した東芝のBベロ(OB-1161)だ。こんな音だ。それほど“古くさい”って感じはしないと思うけど、どうだろ?。 古いマイクのマグネットは自己減磁してるだろう。従ってリボンに異状がなくても、新品時と特性が変わってる可能性が大いにある。 比較のために3種類のコンデンサ・マイクの音を準備した。こちらが Neumann U87Ai (1997) の音(芥川龍之介:「芋粥」より)、こちらは audio-technica AT4050/CM5 (1999)。最後は AUDIX CX-111 (2002) だ。もちろん、同じ場所での録音で朗読者も同一人物。テキストが同一でないのが申し訳ないが、ありものを使ったので… ついでながら、このタイプはデリケートなので、絶対に吹いたり叩いたりしてはならない。そんなことをしたらエンジニアに怒鳴りつけられること請け合いだ。下手したらリボンが切れてしまうもんね。 エンジニアはリボン・マイクを持ち裸で運ぶ(移動する)とき、リボンに風圧が掛からないように充分気をつけるんだ。また、構造上、必ず立てた状態で保管する。そうしないとリボンが伸びてしまうんだ。 この重くてデカく、しかも取り扱いが面倒なリボン・マイクを1960年頃、アマチュア無線に使ったこともある。(笑) アイワの VM-12 と言う安価なものだ。VM-12 は出力レベルが低く、おまけにハイ落ちの特性で使いこなしにかなり苦労した。 リボン・マイクをアマチュア無線用に使うメリットは、こけおどし以外何もないと思うぞ。ジャマなだけだ。(笑) |
|||||
![]() Astatic D-104 with UG8 stand 通信用マイク D-104 のデビューはなんと 1933(昭和8)年だそうだから、 すごいロングセラーだ。 |
クリスタル・マイク(圧電式)は戦前からアマチュア無線で盛んに使われた。今でも一部の
DXer の間では左の Astatic のマイクが評判がいいらしいし、日本のアマチュア無線周辺機器メーカらかも市販されてる。 我輩もご多分に漏れず、開局以来リオンの砲弾型やアイワのぺたんこのなども含めて、いくつかのクリスタル・マイクを使ったが、どうも拙者の好みには合わないんだ。 ロッシェル塩に圧力を加えると電圧が発生するって原理(ピエゾ効果)を利用したマイクだ。後年、ロッシェル塩は結晶(クリスタル)ではないチタン酸バリウムなどのセラミック素材に置き換わったんで、最近のものはセラミック・マイクと呼ばれる。出力インピーダンスはべらぼうに高い。 セラミック(クリスタル)・マイクは振動板の中央に取りつけられたアーマチュアを介して圧電素子に振動を伝えるって構造になってる。従って振動系のコンプライアンスはかなり低い。指向性は無指向性。指向性動作のクリスタル・マイクは見たことがない このマイクは低音がなく高音に偏った音質、ってのが一般的評価だけど、ちゃんと数MΩ以上で受けてやると、それなりに低音も出る。しかし、どうしても中高音域に堅さが残るし、超高音の延びに欠ける。 このため、音楽の収音や通常のラジオ放送には、まず使われることはないが、感度の高さや、明瞭度の高さ、取り扱いの容易さ、安価さから、無線通信や屋外でのPAに良く使われた。それと、盗聴用の壁に密着させるコンクリート・マイクもセラミック・マイクだ。これは今も現役。 おっと、現役と言えば、ハーモニカ(ブルース・ハープ)用のマイクにもセラミック・マイクがあったな。独特の特性がハーモニカの音や音域とマッチするんだろう。しかし、癖っぽい音の硬さから、普通の用途には次第に使われなくなった。あ、アンプが真空管からトランジスタになり、超ハイ・インピーダンスのこのタイプが使いにくくなったってのもあるだろうなあ。 このマイクは堅牢なほうだけど湿気に弱いので吹かない方がいいと思う。大事に保管するなら、湿気の多い日本では密閉して防湿剤を一緒に入れるのがいい。また、ロッシェル塩は砕けやすく、セラミックも割れやすいらしいからあまり手荒に扱わない方がいいだろう。 |
|||||
![]() SHURE SM58 ステージ用ボーカル・マイクの王様 "Rolling Stones" や "The Who" が 使い始めた。 開発されたのは1965年だから そろそろ40年になる。 ステージ用ワイアレス・マイクでも この SM58 のユニットを使ったものの評判がいい。 SHURE 55SHII 俗称「ガイコツ・マイク」 1950年代〜1960年代のものの リバイバル品。 昔のものより特性は改善されてるだろう。 これと同じようなスタイルので ELECTRO VOICE 731 "CARDYNE" ってのを知ってるけど、音は良くなかった。
SONY F-115 防滴型マイク(無指向性) 台風の実況中継などに使われる野戦用。 コードの先のコネクタは メスの XLR-3-11C なので要注意。
YAESU MH-31 通信用ハンディー・マイク ![]() Collins SM-3(1960) 通信用マイク
Collins SM-3 のマイク・エレメント ![]() "PHANTOM +48V" のスイッチをONにすると XLR コネクタの 1-2 端子間及び 1-3 端子間に電圧が掛かる。 従って、信号ラインの端子2と端子3は同電位。
ムービングコイル・マイクの内部結線は たいてい上のようになってるので ファンタム電源の電圧を掛けても 大丈夫な筈なんだけど…。 ![]() アマチュア無線固定機器用 マイク・コネクタ(DIN 8P) ![]() 3/16" の 110 プラグ(上)と 普通の 1/4" ステレオ・フォーン・プラグ(中) それに 1/8" ステレオ・ミニプラグ(下)。 110号プラグはスリーブ以外は ネジ止め配線するようになってる。 4Pのように見えるが3Pだ。 ![]() ![]() このタイプのコネクタは CANNON (ITT-CANNON) 社のが オリジナルだけど 各社から互換性のあるのが出てて 本来はタイプ名(型番)も違う。 ちなみに形状が "D" の文字に似た 「D-sub コネクタ」も ITT-CANNON 社が開発したコネクタだ。 D-subminiature Connector の略。 |
昔から、ずっと陽の当たる場所を歩いているのがムービングコイル・マイクだ。ダイナミック・マイクとも呼ばれる。…いや、リボン・マイクが姿を消したも同然の今ではダイナミック・マイクと呼ぶ方が普通だろう。しかし、このページではリボン型と明確に区別するためにムービングコイル・マイクと呼ぶことにする。 放送やレコーディング業界などでリボン・マイクが王様だった時代も、このムービングコイル・マイクも重宝されたし、今でもステージで使われる有線マイクは、堅牢なムービングコイル・マイクが主流だ。 ムービングコイル・マイクの原理は19世紀の終わり頃には知られてたそうだけど、実用的な製品が出来たのは1920年代前半頃だろう。 1925(大正14)年、NHK名古屋放送局 (JOCK) が放送をはじめるにあたって購入したマルコーニの出力 1KW の送信機に素晴らしい特性のムービングコイル・マイクがついて来たそうだ。カーボン・マイクしか持ってなかった JOAK や JOBK はさぞ羨ましかったろうな。(笑) それにしても、今じゃアマチュア無線のトランシーバだってマイクがオプションのがあるのに、当時は放送局の送信機もマイク付きだったんだぁ…。Hi 送信機と言っても、たぶんスタジオ設備込みの放送設備だったんだろうな。 全然関係ないけど、J0AK が買う予定だった送信機を、大阪の JOBK が先に買ってしまい、JOAK の仮放送開始が遅れたって逸話があるそうだ。^^; 遅れた理由は落成検査不合格。(^Q^) JOAK は急遽、どっかから送信機を借りて来てそれを放送用に改造したけど、放送機&スタジオ設備未完成ってことで落とされたらしい。 さて、ムービングコイル・マイクの動作原理だが、ダイアフラム(振動膜)に巻き枠が取り付けられ、そこにコイルが巻いてある。永久磁石の近くのコイルが動くと電力が誘起されるって仕組みだ。基本形のままでは、指向性は無指向性。ムービングコイル・マイクは磁石を背負ってる上、必要な低域出力を得るために低域補償用のバック・チャンバー(気室)が必要となるので、必要な感度&低域を確保しながらの小型化には限界がある。(ムービングコイル・マイクの出力の大きさは周波数に比例する。セラミック・マイクなどの圧電型も同じで、バック・チャンバーが必要) また、ダイアフラムにコイルと巻き枠とがぶら下がるので、振動系の質量が大きくなってしまい、どうしても繊細な高音は苦手だ。けど、その辺をうまく逃げて独特の音を得ているものもある。しかし、振動系の質量の小さいリボン・マイクやコンデンサ・マイクに比べると、高音の荒れが耳につく場合が多い。 大振幅(=大きな音)には極めて強く、コイルが磁界から飛び出さない限り大丈夫だ。しかし、内蔵トランスが貧弱だと飽和による非直線歪みや混変調歪みが起こるかも知れない。
また、ステージでのボーカルやナレーションでは、その取り扱いの容易さや押し出しのいい音質などから、ムービングコイル・マイクが主流だ。 現在市販されているものの指向性は無指向性、または単一指向性だ。単一指向性は、その逆ハート型のパターンからカーディオイドとも呼ばれる。(cardio- は心臓を意味する) なお、カラオケ用のマイクもほとんどが左の一番上の SM-58 と似たようなカタチのムービングコイル・マイクだ。なぜか、安価なものは必ずと言っていいほど ON/OFF スイッチがついてる。
実は、その写真の右上には、Western Electric (WE) 社の 618A って丸っこいムービングコイル・マイクが写ってるんだ。たぶん昭和8〜9(1933-34)年の写真だろう。 日本映画の収音ってば、全盛期でもべこべこに凹んだマイクとか、気の毒なくらい古ぼけた機材を使ってたが、トーキーの初期には最新鋭のマイクが導入されてたんだなぁ。もっとも、マイクも生まれたてと言ってもいい状態だったから、最新鋭のしかなかったのかも知れないけど…、などと感慨深かった。 1931年に素晴らしいリボン・マイクとムービングコイル・マイクとが生み出されているが、もしかしたら、このころ日本で強力なマグネットが開発されたのと関係あるかも知れない。 1931年ってば、日本の三島徳七らの開発により「MK鋼」が出来てる。これは現在のアルニコ磁石の元で、更にこのMK鋼に刺激された本多光太郎グループによる「NKS鋼」が発明されてる。(本多光太郎はそれ以前の1916(大正5)年に世界最強の磁石、KS磁石鋼を発明している) そして同じ頃、加藤与五郎・武井武両氏により開発にされた「OP磁石」は、今のフェライト磁石の基礎となったそうだ。 これらの発明は、我らの八木秀次博士と宇田新太郎博士との八木・宇田アンテナや、丹羽保次郎博士の写真電送装置の発明に匹敵するほどの大発明なのだ。 アマチュア無線の世界でも、エレクトレット・コンデンサ・マイクと並んでこのムービングコイル・マイクが主流だ。1950年代の安価な国産ムービングコイル・マイク、特にハイ・インピーダンスのものは誘導ハムを拾いやすかったので、当時はアマチュア無線にはクリスタル・マイクの方が使いやすかった。しかし、今はそんなことはなく、スタンド型からハンディー・マイクまで、広くこのダイナミック型が使われる。 ムービングコイル・マイクは堅牢なので、少々叩いてもめったに壊れないけど、正面から思いっきり吹くと振動膜が凹むことがあるそうだ。構造によっては気を付けた方がいいかも知れない。そうそう、鉄粉がマグネットにへばりつくと具合が悪いんで、工具箱には入れない方がいいぞ。(笑) いくら丈夫だと言っても「ん?生きてるかな?」とテスターで導通を計ったりしない方がいい。直流を通すと内蔵トランスのコアが磁化されて音質の劣化を招くそうだ。もしコアが磁化したら交流を加えるなりして消磁(デガウス)すれば良さそうに思うけど、今度は大振幅でダイアフラムかダンパーを痛めそうに思う。(笑) また、マイク・コード先端のコネクタが業務用に使われる XLR タイプの場合、コンデンサ・マイク用のファンタム(ファントム phantom)電源からの電圧を加えないように注意したい。 マイク内部の結線が左下の図のようになってたら問題なさそうに思うけど、48V なんて高圧が掛かることが想定されてなかったら、絶縁破壊が起こる可能性がある。 更に、もし完全にバランス動作とするため、マイク内蔵トランスの2次側に中点(センター・タップ)が出てて、それが直流的にも接地(XLR コネクタの1番端子に接続)されてたり、逆に内部的にアンバランス接続だったらファンタム電源が…。 まあ、48V のファンタム電源の場合、6.8KΩのブリーダー抵抗が入ってるから完全にショート状態にはならない。I = E/R から計算してみればすぐに判るけど、最大でも 7mA ほどしか流れないんだ。だからファンタム電源が飛ぶようなことは、まずないけどね。しかし、ムービングコイル・マイクに 7mA もの直流電流を流したら内蔵トランスのコアが磁化されるだろうな。 たとえ、マイクやファンタム電源が大丈夫でも、直流バイアスの掛かったムービングコイル・マイクなんて、音に影響がありそうで気持ち悪くない? ^^; 業務用コンパクト・ミキサーの中にも SENNHEISER MKH-816T などに対応するため、A-B 12V 電源を持つものがある。A-B 12V を供給してる時にムービングコイル・マイクを繋ぐと壊れるかも知れない。 ついでだから書いておくが、マイクのケーブルの先っぽについてるコネクタには何種類かある。 アマチュア無線機用マイク・コネクタは形状が同じでもケンウッド、ヤエス、アイコムなど、メーカが異なると結線が違ってて厄介なのは、アマチュア無線家ならご承知の通りだ。 アマチュア無線と言えば、コリンズのSラインや
KWM トランシーバなんかのマイクのコネクタには右のような 3/16" の 110(わんてん又はひゃくとう)と呼ばれる電話交換機用と同じ規格のプラグ・ジャックが使われてる。ジャックの型番は
239Aこのプラグは通常の 1/4" 3Pステレオ・フォーン・プラグ(TRS)と一見似ているが互換性はなく、よく見ると太さも形状も違う。こいつは音響用のパッチ盤(マトリックス・パネル、パッチベイ)や業務用インカムやモニタのヘッドセットのプラグにも使われてる。 パッチ盤にはもう一回り小型のバンタム・プラグってのが使われることもある。(bantam には“小柄な”とか“小型で取り扱いやすい”って意味もある)小さいのでコードを取りつけるには特殊な工具が必要だから、パッチ盤用としてコード付きにアセンブルしたのを買うのが普通だと聞いた。最近はほとんど見かけないし、これをマイクロフォン用に使ってるのも見たことない。最近はパッチ盤も電子化されて来てパッチ・コードもあまり見かけなくなった あと、カラオケ用とか電気(電子)楽器、アマチュア用の音響機器、簡易放送機器などには左下の写真の右の二つ、つまり 1/4" の 2P(TS) か 3P(TRS) のフォーン・プラグや 1/8" ミニ・プラグが使われる。 業務用機器では左から2番目の XLR とか CANNON とか呼ばれるコネクタが一般的だが、これがまた統一されてないんだな。
しかし、最近ではレコーディング・スタジオも2番端子がホットのヨーロッパ式に統一される方向みたいだ。こうして書くとPA業界と放送業界とでは統一されてて、レコーディング・スタジオでもそれに習ってって具合のように思えるが、とんでもない誤解だ。(笑) |
|||||
![]() Neumann U87Ai レコーディング用コンデンサ・マイク U87 は1967年から作りつづけられてる。 古くからある Neumann のマイクのコネクタは 本来 DIN だから要注意。 ただし、最後に i の付いてるモデルは 国際標準の XLR タイプ。 ![]() SONY ECM-22P '70年代のエレクトレット コンデンサー マイク。 ダイアフラムがエレクトレット処理されてるので オーソドックスなコンデンサ・マイクと比較すると 音質は落ちる。
SONY C-357 (1998) 民生用エレクトレット コンデンサ マイク。 背面電極(固定電極)がエレクトレット処理 されてるので音質が良い。 ![]() RØDE(RODE) NT2 (1997) 安価高性能なスタジオ用 コンデンサ・マイク ![]() AUDIX CX-111(1998) これも安価高性能なスタジオ用 コンデンサ・マイク。 写真のものは2002年秋以降のモデルで 従来のものとはホルダーが異なる。
ICOM SM20 アマチュア無線機用 単一指向性エレクトレット・コンデンサ・マイク ![]() 親友の名ナレーター Bob Nicholson |
で、このコンデンサ・マイクとは、静電容量の変化を利用して音圧を電気信号に変換するマイクだ。ムービングコイル・マイクとはLとCとの違い、カーボン・マイクとはRとCとの違いになる。(笑) コンデンサ・マイクも本来は無指向性。
使い慣れたマイクの場合、こっちも「このマイクならここにセットしてどうして…」とかノウハウの蓄積があるのも確かなんだけどね。 …しかし、良いマイクは細かな音色の変化やちょっとしたニュアンスの違いにも、うまく追随してくれるような気がする。 逆に言うと、ろくに自分の音や声をコントロール出来ない、一本調子の表現しか出来ないアーティストならそこそこのマイクで充分、下手くそに優秀なマイクは逆効果ってことかな?(爆) ちなみに優秀な音楽録音とは、芸術家の表現を余すことなく捉えることだと心得るが、下手くそは耳に心地よく聞こえるように録ってやりさえすれば満足する。(ただし、音楽録音でもコマーシャルや映画音楽など、音楽そのものが主体でない場合はこの限りにあらず。音楽録音に限ったことではないが、要は目的に合った音の捉え方が必要) |
上記以外に、磁歪を利用したものやマグネチック・マイクなんてのもあったし、超指向性マイク、水中マイク、ワイアレス・マイク、BLM (PZM)、コンタクト・マイク、それにピックアップの類もあるけど省略だ。また、指向性に単一指向性の親戚としてスーパー・カーディオイドとか超指向性なんてのもあるけど、面倒くさいから触れなかった。(笑)
ALTEC 639B、WESTERN RA-1142 などだ。この2つのマイクはどっちも Western Electric (WE) で製造されたもので、外見(ハウジング)は異なるが中味は同じもののようだ。 639 型マイクは最初 WE ブランドで発売されたが、1940年代中頃から ALTEC ブランドになったのだったと思う。 両マイクとも音は大変素直で、その筋では前述の RCA 77D(77DX) と共に持てはやされた。(ALTEC LANSING 社は、1941年に Western Electric 系の All Technical Service 社が、倒産寸前だった James B. Lansing の Lansing 社を買収&建て直しした会社) RA-1142 は1940年頃に WE が 639 を映画の撮影時、ブーム(日本では竹竿にも ^^;)に付けて振り回しての収音に具合がいいように、ハウジングを耐震構造のデカいものに変更したモデルだと聞いてる。また、内蔵のトランスが違うとか、中味は 639B の選別品とも聞いたけど、真偽のほどは不明。 両マイクとも、1940年代から60年代にかけて映画やボーカル、ナレーション、それに楽器の収音にも良く使われた。最初に日本の放送局や映画会社に入ったのは、RCA
77D と同じく戦後の昭和25(1950)年頃だろう。(太平洋戦争直前に日本に入ってた可能性もある)639B を愛用したブロッサム・ディアリー (Blossom Dearie: 1926-) って女性ボーカリストもいたし、あの(ってどの? ^^;) ルディ・ヴァン・ゲルダー (Rudy Van Gelder: 1924-) もジミー・スミス (Jimmy Smith: 1925-) をフィーチャーしたアルバム "BACK AT THE CHICKEN SHACK" - (1960) の録音時にドラマーのドナルド・ベイリー (Donald Bailey: 1934-) の右肩上に 639B をセットしたって記録もある。 また、1961年1月20日に就任した某アメリカ大統領の、同年5月25日の有名な演説( The Decision to Go to the Moon: 月着陸宣言 )のとき、RCA BK-1A “ice cream cone” , Electro-Voice 655 らしきのと並んで、ALTEC 639B もしっかり頑張ってた。…代わりに RA-1142 を置いたらひんしゅくだったろうな。(笑)
構造は右図の通り、リボン・エレメントとムービング・コイル・エレメントとが合体したような具合になってる。リボン用磁石はリボンの上下に馬蹄形のものが合計2つ横向けに配置され、ムービング・コイル(ダイナミック・マイク)部はリボンの下に置かれてる。 リボンはヒダが上下端にしかなく中央部は樋状なので、リボンを使ったマイクにしては丈夫な方だ。その下にあるムービング・コイル部はムービングコイル・マイクとして普通の構造。 このリボン部とムービング・コイル部との出力成分バランスを変えることにより、指向性を切り換える仕組みになってる。 出力を引っ張り出すコネクタは "442" って呼ばれる特殊なもので、なくしたら今ではもう手に入らないだろうな。 これらの構造は RA-1142 も全く同じだ。ただし、RA-1142 はデカい仮面を被ってるので、指向性切換スイッチはドライバーを奥に突っ込んで操作するようになってる。んで、その操作穴の上にはちゃんと確認用のガラス窓がついてたりするぞ。 同じようにリボンとムービング・コイルとを合体させたマイクは
AMERICAN の DR-330 "FULL-VISION" って、もっと小型でスマートなのがあった。リボンとムービング・コイルとの合体マイクは何も
639B/RA-1142 だけじゃない。しかし、この DR-330 は音が悪い上に指向性の切り換えがショート・バー式で面倒だった。
けど、639B に真空管が内蔵されてないのは確かだし、我輩は寡聞にして真空管内蔵のリボン・マイク、ムービングコイル・マイクってのは知らない。 2000年頃に発売された ROYER Labs 社の R-122 って、リボン・マイクが本体に電子回路を内蔵してるけど真空管じゃない。FET って書いてある おそらく、それって Blossom Dearie の Verve 時代のレコードのジャケットだろう。写真のマイクが本当に 639B だとしたら、「真空管入り」ってコメントは間違いだ。たぶんそのマイクって、あのジョージ・マーティン (George Martin) 氏もお気に入りだったコンデンサ・マイク U47 だと思う。 U47 は Neumann の戦後初 (1949) のコンデンサマイクで、VF14M って オクタル・ベースのメタル管を内蔵していた。同じカプセル(マイク・エレメント)を使った M49 は楽器に、U47 は主にボーカルに、と使い分けられてたこともあった。蛇足ながら M49 は AC701 というサブミニチュア管(超小型の真空管)が使われてた。
世界で最初にコンデンサ・マイクのヘッド・アンプに FET を採用したのは 1965 年のソニー/NHK の C-38A (CU-2A) だ。このマイクは世界初の電池内蔵・外部電源不要のコンデンサ・マイクでもある。 ![]() ちなみに Georg Neumann (ゲオルク・ノイマン)のマイクは一時期 TELEFUNKEN のブランドでも出されてた。Neumann は1991年からは SENNHEISER の傘下
639B って言うくらいのもんだから、その前身の 639A (1939) ってモデルもあった。同じ顔をしてるけど、639B は指向性パターンの切り換えが6種類で、旧型の 639A は3種類だった思う。 さて、ものはついでだからマイクの“近接効果”について触れておこう。
けど、考えてみたらアスタティックのシルバー・イーグルにかじりついたり、電話のマイクを口に近づけても低音が盛り上がったりしない。
実は、この近接効果は指向性マイクだけに顕著に起こる。無指向性(=全指向性)のマイクでは、近接効果は(ほとんど)起こらないのだ。 表でのインタビューなんかに無指向性のムービングコイル・マイクが使われるのは、頑丈で扱いやすい、風雑音に強い、マイクを向ける方向による音質変化が少ない、ってのが主な理由だけど、近接効果が目立たないってのもあるだろう。 周囲の雑音の多い場所でかなり極端なオン・マイクでオペレートするアマチュア無線の場合、単一指向性のマイクを使うんなら、低域はある程度カットした方がいいと思うよ。
拙者はボーカルやナレーションをスタジオでオンマイク(10cm〜30cm)録りする時、無指向性に切り換えるってことをよくやる。これくらいの距離だと、マイクから口までの距離が数cm変化すると音質がガラッと違ってしまうが、無指向性だと顔(口)の位置の移動による周波数特性(音質)の変化がかなり避けられるからだ。我輩はヴォーカリストやナレーターの自由度を奪うポップガードによる口位置の固定や“ばみったり”(ビニール・テープによる立ち位置指定をすること)はなるべくやりたくない。音の表情は音量より周波数特性の変化の方に敏感なようだ。また、音量変化の補正は周波数特性の変化の補正より楽だ。
その代わり、無指向性は周囲の音響特性の影響や“かぶり”を受けやすくなるので“宅録”には不向きかも知れないし、PAでは(特殊な場合を除いて)使用しない方が無難だ。また、希に無指向性に切り換えると音質が悪化するマイクもあるから要注意。 しかし…、我輩はなぜか無指向性マイクの方が音が活き活きしているように感じるんだね。特性が優秀な指向性マイクの、優等生的だけど押さえつけられたような、あの感じが無指向性マイクにはない。拙者は無指向性マイクの開放感のある音が好きだ。
我輩はナレーション録りのとき、ナレーターが一人の場合でも双指向性を使うこともある。双指向性はダイポール・アンテナの指向性同様、水平方向だけではなく垂直方向にも双指向性なんで、原稿ノイズ(紙をめくる/ずらす音)を低減出来るって利点がある。 |