イルマーレ
時越愛(シウォレ)
| 2000年 | 韓国(サイダス、ウノ・フィルム) | |
| 製作 | : | チャ・スンジェ |
| 監督 | : | イ・ヒョンスン |
| 脚本 | : | ヨ・ジナ |
| ハン・ソンヒョン | : | イ・ジョンジェ |
| キム・ウンジュ | : | チョン・ジヒョン |
いきなり、映画全体の出来具合とは違うお話になるけれど、とにかく「ああいう結末」というか「理由」ってのは良くないと思う。せっかく映像に凝り、革新的なフィルム現像で得られた美しい映像で綴られた、本当にステキな「恋愛映画」なのに、「あれ」で終わるのはちょっと安直過ぎないか?な、と(笑)。ともかく、私は「ああいう事」を使って映画をドライブして欲しくない。
と、最初に文句を申しましたが(笑)、基本的にはとても「美しい映画」です。女性(ウンジュ)が適度に綺麗なのも、体形にリアリティを感じられるのもとても「美しい」と感じました。また男性(ソンヒョン)に漂う孤独感が、物語の核心を全身で表現していて、その「凛然」とした姿や自制ある態度に「別の結末」を私は勝手に予感したりしました。ともかく映画の中に「うそ」や「矛盾」を感じさせない映画だと思います。
たぶん、日本映画だったら大活躍しそうな脇役の人たちが、必要最低限の登場しかしないのが、また良いです。特に彼のお父さん。まともな台詞すら無いのに、映画の中盤で最も大きな存在感を持っていました。
「人は、親交と孤独を通して、自分自身と出会う」。。。実に深い言葉ですね。
そう、この映画のテーマは、このお父様の言葉です。この映画は、孤独に慣れて親交を育むのが下手な男と、親交に溺れ、孤独に耐えつつ自分を見つめることができない女の物語であるともいえるのです。
他にも彼の後輩の女性(私はこっちの女性のほうが好み(^^;)が登場するのですが、ともかく、その登場の無駄の無い事、少ない事。。。友人らしい青年も、たんに進行役に過ぎないのです。こういう、全体に抑制が効いている空気が、『イルマーレ』の最大の「美しさ」だと感じました。
観ていると、かなり早い時から、大きな「なぜ?」を感じます。
「なぜ、1999年12月28日に会わなかったのか?」。もちろん、2000年の春になるまでの交流が無ければ「ふたり」はただの他人です。ですから、孤独に慣れた彼にとって、彼女が自分との邂逅を望むようになってくれるまで待つのは、それほど難しくもないのかな?とか、いろんな「予感」を持ってしまいます。が、この映画ではそういう「予感」が実に絶妙に積もり、そして微妙に少しずつ明かされて往きます。特にペットの犬を媒体にして見えてくる「過去の未来」は、映画に実に不思議な「重み」と「静寂」を加えます。
『イルマーレ』には、ワインが熟すのを待つような雰囲気が、ですから、あります。未来の自分のためにワインを購入し、それが熟し最善の状態になるまで、途中で邪魔することなく、温度と湿度の管理を地道に続ける。「ワイン好が好きな人は、孤独が好き」という説は初耳だったのですが、この映画を観ているとなんとなく納得してしまいます(ただ、ワインほど、誰かと一緒に飲みたい酒も無いとも思いますけど)
それはさておき、彼女のためにワインを預託するなんてのは、私も一度してみたいですね。そもそも、この映画の時代背景そのものが、私には微妙に意味深長で、もしも「2000年の貴女のために、ワインを預けてあります」なんて3年越しの時限メールができたなら、どんなにか逡巡することでしょう(笑)
私は、そもそも「時間物」というか、時間を超えて物語が進むお話が好きなのですが、この『イルマーレ』での時間の扱い方には、少しだけ、物足りなさを感じました。例えば、彼が作業に従事していた建設中の大きな橋は、2000年の彼女の世界には登場しなかったように思います。それから、舞台となる「イルマーレ」の近くにあった雑貨屋の子どもの成長も見たかった(笑)。そもそも、二人の間にあるのはたった2年の時差なので、「いまはどっちの時代?」という判断をするまでに少し時間を要してしまいます。まあ、これは観ている人に時間を推察させて、物語を追わせるきっかけを狙ったのかもしれません。
ああ、もしかしたら、この映画では、「時間を変化させる事」をすると、「出来事」が発生するのかもしれません。取り戻したレコーダーをヘッドホンで聴きながら走っていたので「あんな事」になってしまったし、もっと大きな影響を与えようとしたら「ああ」なってしまった訳ですからね。
ただ、どうしても気がかりなことがあります。
手紙を握り締めた男に出会った女は、では、ポストを利用することがあるのでしょうか?
そも、システム手帳のいちページに走り書きした手紙をポストに入れた人に、救いは来るのでしょうか?
そして、やはり最初の疑問に戻ります。
「なぜ、1999年12月28日に会わなかったのか?」
だから、「時間物」はたまりません(^^)