
□日本の近代建築の歴史 著 村松貞次郎
2011/12/10

さすが大家の本である。分かりやすくそして簡潔に述べている。近代の建築史を単に、建物の歴史ではなく、生産史の側面を見つめている。明治時代では、お上の建築と民の建築とに分けて論じ、大正・昭和にかけては、建築材料の生産性についてきちんと語っている。また和風建築を支えていた、大工の技術についても言及している。
最後の章で、村野藤吾設計の日本生命日比谷ビルについて、「いわゆる”虚飾“を排してきていたのに対して、建築の内外とともに装飾的な要素を豊かに持ち込んだ最初期の建築だった。・・・私は片田舎のある小さな木造の小学校を調査した。それは明治の中期に建てられたいわゆる明治洋風建築だったが、学校の教員・児童はもちろん待ちの人びとあげての清掃・保守管理によって見事に美しく遺されていることに驚いた。荒廃した近代建築とそれを対比させて、愛される建物、長く遺される建物の秘密は何かと考え込んでいた。その矢先に日本生命日比谷ビルの批判が起こったのである。優れた装飾、それによって豊かな内容を持つ建築こそ、愛されそして、そして永い生命を持つものである、と私はつくづく思った。」
愛される建築こそ、建築の生命にかかわる大切な要素であると歴史家の感想であろう。私達は、過去を見ながら未来を切り開かねばと漠然と感じたしだいである。
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