グループ・サウンズをやり始めた頃の話からしようか..........
萩原 俺はやることがなかったからさ、やることがなかったという言い方はねえけど、真面目にやりたかったんだよ、サラリーマンにでもなろうかなと、あんまり成績がよくなかったしで、こういう道に入っちゃったんだけどさ、後悔してるよ、やっぱり。
桃井 ホント、後悔してるの? そんな風に全然みえない人ね、後悔してるってのは、カッコつけて言ってるんでしょう。
萩原 そうじゃないよ、やっぱり、つらいじゃないか。たとえば、俺らの青春って、一体いつだったんだろってフッと考えるよ。今もそうだけどさ、やっぱり最高の青春というのはグループ・サウンズの頃なんだな。
桃井 困るな、私全然グループ・サウンズの頃知らないからさ、今頃聞いて面白いけど。
萩原 一番楽しいことしなきゃいけない時期に仕事やってたってのは、あんまりイカさないな。
桃井 仕事だけじゃなかったんでしょ、だけど。
萩原 誰が?
桃井 特殊でしょ、あの頃の遊び方というの。
萩原 そうみたいな。もうなんか変だったよ。ちょっと立ち直る迄、おかしかったよ、俺。ちょっと僕はあんまり賛成しないな、ああいうみんな一七、八でさ、人気者になっちゃうっていうのさ、まあ、今、俺の年でもちょっとね、そういうのあんまり感心しねえな。まあ、俺はこれでメシ食っていかなければいけねえからやってんだけどさ。
桃井 あれなんじゃない、他のちょっと遊んでる男の子よりもっとさ、ハードに一時期圧縮してやっちゃってるじゃない、すごい遊びを極端に。ホントすれてるという感じがあるじゃない。だからショーケンなんて今何となくすっきりしてるじゃない、この年でさ。やっぱりスッキリしてるって感じするもんね。仕事のことに関していえば、かなりしつこいしさ、面倒くさいわよね。
萩原 俺?
桃井 うん、いや、私はやりいいよ、すごく。私はすごくやりいいけどさ。
萩原 何か俺はハリウッドじゃ通用しないらしいからさ(笑い)、あんまりハリウッドじゃ通用しないらしいから、日本のハリウッドでちゃんと頑張らなくちゃな。
桃井 グループ・サウンズの頃ってのは、どうだった訳?
萩原 どうだったってさ、のびのびしなきゃいけない時期にさ、何つうんだろう、隔離されちゃうじゃない。隔離されちゃうという言い方は変だけど、たとえばこう女の子ともうんと遊びたい時期なのにさ、要するに会社の命令ということだけど。俺は非常にずるかったよな、ずるいというより、まあガキのくせして、そういう何というのかな、人の目をみるというのがうまかったみたいだな、俺は。一七、八の時。でもやっぱりそれは良くないよな。どうも足が地についてないような感じだったな。今のフォークの人の歌を聞くと、やっぱりかなり本気だよな、要するに吉田拓郎さんにしたって井上陽水さんにしたってさ、俺はあんまり歌は聞かないけどさ、ああいう人達の歌は聞かないけども、やっぱり自信があるでしょう。ああいう人達の生き方って。でもグループ・サウンズの場合は世の中が変わったかも知れないね。だけど本当には変わらなかったんじゃないかな。そういう風に言うとさ、俺の友達である仲のいい沢田研二のことをけなしてるみたいにとられるとちょっと困るんだけどね、そうではなくて、アイツはやっぱし俺より本物だったからさ、歌で残っていけてさ。俺は、やっぱり二、三度にらみつけられたことあったよ、アイツに。真面目にやってくれって。
桃井 今芝居やってるみたいな、ああいう熱中度じゃないの? 成り上がりたいというような感じ?
萩原 ちがう。もうさ、誰でもあると思うんだよね、誰でもあると思うんだけどさ、俺なんかがカッコイイなと思ったり、人に憧れを持つんだったら、小学校二、三年、二年頃かな。
桃井 そういうの、すごいあるわね。あのさ、かおり達ってカッコイイとかっていうのって、あんまりないじゃない。カッコイイとか、ああいうのになりたいとかってないじゃない、あんまり。そういうのがすごいはっきりあるわね、あの"もの"にはっきり値段ついてるみたいなとこあるわね。
萩原 非常に無責任な言い方するとね、ずい分女もやらしてもらったけどさ。
桃井 いやね。おかしいのよ、ショーケン達の話聞いてるでしょ、するとさ、向うのグラビアの女の写真あるじゃない、ヌードの。あれをみてるといくらだと思うって?b値段ついてるのよね、女に。それがびっくりしたの、私。
萩原 要するにさ、今まで恥ずかしくて言わなかったんだけど、かおりの対談なら言うけどさ、要するにグループ・サウンズの頃はさ、俺はもうガキもいるし、女房もいるから言っちゃうけどさ、もうあれしちゃったからね。買う方が多かったな、特に好きな女ができる前はね。好きな女がいたけどさ、ある雑談でダスティン・ホフマンがさ、かわいい子ではいたけどさ、セクシーな子にはなりきれなかったという、そのへんのうやむやがあってさ。だからあの当時俺は年上の女に憧れてたな、ずいぶん。何かやっぱしね、わかるだろ、という感じがあったよ、年上の女とやると、やったぜという感じになるんだよね、(笑い)若い子とやるよりさ。何かこう、エエカッコできるんじゃねえかみたいなさ。ことのつまりは一つ上の女房と結婚したけどさ、七つ位上の女ってつきあったことあるよ、いい女だったよ、今はもう思い出さないけどさ。
桃井 うーん、何おっしゃってんの。(笑い)
役者ってのはやっぱり出会いが大切なんだろうな
桃井 何かさ、自分より値段の高いものという言い方おかしいけどさ、そういうの好きでしょ?
萩原 俺?
桃井 あのさ、かおりなんかはね、ちょっと高そうなものよりも、自分よりも安いものと仲良くしてようという感じあるじゃない、芸能界では別だけどさ、そういうとこあるじゃない。
萩原 俺、高いものとか安いものということよりね、会った瞬間あがらない人は嫌いなんだよ。こと仕事に関しては、「お早う」と言った瞬間こうあるじゃない、ハッとするような人さ、「ああお早うございます」という、何かそういう人間な。だからそれが役者の値段が高い、低いで決まんないと思うしさ、いくら大スターでも、俺何人か大スターに会ったことあるけど、あがらない人もいるよね、全然、こんなもんかと、俺もまあそんな風に思われてるかもしれないけどね。かおりなんかだと、やっぱりあがるんだよ、俺は。
桃井 一番最初会った時さ、一番最初でもないか、あの仕事で、映画で会った時さ、すごいあがっちゃったの、私。ひどかったよね、話できなくてね。
萩原 そうかい。
桃井 そうよ。
萩原 いや、しっかりとやってたよ。
桃井 いや、何がよ、失礼ね。すごいあがってたじゃない、顔見れなくてさ。とにかくびっくりしちゃった。疲れちゃってさ。記者会見で会って、その後神代さんか何かの映画見に行ったのよね。その後靴買いに行くっていってたの、衣装の。そいでつき合ったのよね、そしたらすごいのよ、プラモデルみたいな車に乗ってるじゃない。何だっけ、ギンバエ?車だけでも目立つ訳よ、銀座なんか、銀座じゃなくても練馬でも目立つという車だけどさ。それなのに顔出しちゃって、「ハイ、ショーケン」みたいなさ、わかる?何だかすごい全部華やかなの、ねえ、ネオンがついてるみたいだったね。
萩原 そうか?
桃井 そうよ、私あんな人、びっくりしたよ、全部売りに出しちゃってるみたいなんだもんね。
萩原 俺はだけど、テメエで「はい、ショーケン」なんて言ってねえぜ。
桃井 でもそういうね、
萩原 イメージがあると、
桃井 そう、そう。
萩原 それはわかるよ、そのへんははっきりしとかないと。
桃井 私ホント、ゲラゲラゲラゲラ一日中ものすごい楽しかったけどさ、大社交会って気分であと疲れたもん、すごい人に会っちゃったと、あとでみんなに言っちゃった。
萩原 そうだろ、俺も正直言って、お前と会うと疲れるよ、すごい疲れるよ。
桃井 そう、何で?
萩原 お前と会って疲れないという奴はいねえんじゃないか。
桃井 どういう風に疲れるの?
萩原 どういう風にって、いい言い方すりゃ、非常にナイーブなんだけどさ、悪い言い方すりゃ非常に勝手な奴なんだよな、俺に言わせれば。俺もそういうとこ似てるからさ、あれだけどさ、まあ、かおりはそういう人間だと思ってるし、でも仕事やる時は楽しいよ、毎回毎回違う顔するから。
桃井 そう?ふだん疲れないでしょ、やさしくしてあげてるじゃない!
萩原 何が!あげてるなんて、週刊誌じゃないからいいけどさ。(笑い)
桃井 疲れるかしらね、いっぱい話さなきゃいけないからかしら。
萩原 言葉を探すよ、お前と話す時は俺は、どういったらいいかと。何しろわかるかい?普通の人と話す時は非常に俺はスムーズに話が進むな。普通の人と話すと三十分で済むかも知れないよな、だけどお前の場合はさ、短いか長いかなんだよ、どっちかなんだよ。何かこうさ、人の表現とか、そういうことを使う時に、俺はお前との会話の中で必ずさ、何とかの感じというような、何故か何故か、その・・・・松屋のデパートに吉田拓郎のふんどしが花開いてる感じ、(笑い)そうすると、お前は一時間かけなくてもその一言で全部わかっちゃうようなところがあるしさ、何言っても通じねえみたいな時もあるし、本当に疲れるな、でも俺はそういう人のことを感覚人間だとは思ってないんだな。
桃井 私、初めて。疲れるなんて今まで一度も言われなかったわよ、私もすごい疲れるけどね。
萩原 じゃ疲れる同士な、二度と一緒に仕事するのやめるか?
桃井 だけど仕事の時はさ・・・
萩原 お前の仕事はさ・・・
桃井 私に言わせてちょうだい!
萩原 お前の仕事に関して俺に言わせれば、何つうんだい・・・
桃井 何なんだい!
萩原 仕事という踏切があるとしたらさ、踏切の前でさ、イジイジイジと言いながら、何か踏切を渡らされちゃうみたいなさ、非常に危険な女だな、本当に。「わかるでしょう」なんていいながらよ、わかってねえみたいな時もあるけどね、俺は。「うん、わかるわかる」って、面倒くさいからそういう風に言っちゃう時もあるけどね。
桃井 手玉に取られてんのね。
萩原 いや、でも合うよね。
桃井 仕事やってる時、最高よ、かおりはね。だからわかったふりしてんのかも知れないけどさ、さしあたり通じて、さしあたりやってみれるから、何か仕事してると欲求不満にならないね、、何か便秘って感じじゃなく帰って来れるね、仕事やってると。
萩原 俺は便秘って感じで帰って来る時もあるよ。
桃井 あっ、そう?
萩原 かなり傷ついて帰って来る時あるよ俺、お前と仕事やってて。お前さ、一切合切クソたらしちゃったみたいな感じでさ、俺は何かケツふいてもらってねえみたいな、非常にイヤな感じで帰って来る時あるよ。
桃井 かおりとやってて、かおりのせいで?
萩原 いや、せいでじゃないだろうな、お前は消化しちゃって、俺は消化しないでのり遅れちゃって、だからのり遅れそうだなと思ったら、「私こうしようか」「あっそういいね」という感じで、お前自分ができちゃったら後知らねえという感じで、そういうところあるだろう、しっかりしたさ。
桃井 だってね、のれるまで、その一瞬逃したら後ないって感じのところあるじゃない、ショーケンと仕事してる場合は、特に。考えたって何したってダメなんだもん、ね、出たとこ勝負さ、行って帰ってくる迄が大変なんだもん。
萩原 そんなこというとお前、俺と共演者がいなくなっちまうよ。
桃井 そんなことはいいよ。
萩原 でも本当は楽しいよな、かおりと仕事してると。いい女だよ、やっぱり、プロっぽくないから俺好きなんだよ。そういうのいるじゃないかよ、プロっぽいの、何でも合わしちゃうみたいな小器用なのさ、ちょっとそういうのダメだな、俺は合わねえな。
桃井 いや、ちょっとイヤらしいけどさ、ほめ合うみたいでさ、だけどやりいいよね、ちゃんと本気でやってられるから。
萩原 お前、じゃあ、気ぬいてんの?
桃井 ちがう、そうじゃないってば、だから女だからさ、かおりだって女だから、すぐ合わせちゃうっていう質があるわけよ。
萩原 俺はだけど正直いってね、一緒に仕事やってる時は女だってこと忘れるぜ。
桃井 だけどさ、本質的に女だ、性格的にそんなにのあるじゃない、従っちゃうってのがあるのよ、かおりにも。合わせちゃうとかね。それはこう、質的なものだよ。
萩原 それはあんた、NHKの場合でしょ?
桃井 バカ、バカってば。そうするとさ、相手が本気で仕事してないと、やっぱりこっちも本気じゃなくなっちゃうのよ、移っちゃうのよ、それが。だからショーケンの場合は本気だから、できないとね、いつまでも言われるでしょ。
萩原 いや、僕も手ぬくよ、すごく。
桃井 早いからさ、差つけられるの。
萩原 やっぱり調子悪いときは調子悪いよ、最近やっぱり良くないな、ごまかすのを覚えてきた、本気になってるんだけどね。
桃井 器用なとこと不器用なところが極端ね。
萩原 俺だろ、うん。
桃井 すごい器用だけどね。
萩原 そうかい?
桃井 すごい器用よ、ああいうのやっぱり器用というのよ、だけども不器用ね。
萩原 でも世の中に対して僕は器用にやってないから、
桃井 ハハ、ハハハハハーン
萩原 何だよ、そりゃそうだよ、テメエに対して器用はいいじゃないか、世の中に対して器用じゃなきゃ。
桃井 私、一番見てて思うのは、疲れないかなと思うよ。ショーケンて、全部売りに出してるという感じがするもんね。
萩原 そりゃそうだ。
桃井 その、イヤな言い方じゃなくてよ。
萩原 お前が言うと、すごくイヤな言い方に聞こえるんだよ。(笑い)
桃井 そうね、すごいいけないね、全面的にほめ言葉なんだけどさ、そういうのってわかる?よその役者はみんな本気じゃないって感じするけどさ、だけどね、ショーケンみたいに全部・・・・
萩原 じゃお前いなくなるぞ、共演者。
桃井 ハハ、やってくれないかしら?いいの私、顔がよければ。(笑い)いいんだよね、共演者なんてね、役者関係、共演者関係ってのはそんなにめったにできるもんじゃないもん。
萩原 だけど俺、出会いだと思うな、俺いい出会いしないとダメ、やっぱりそういうところはかおりに言われてるの、確かにわかるね。うん、ダメなんだよ。でも見ぬくけどね、偽者は。あ、嘘ついてるなってのは、そういう人に対しては必ず俺もあっ嘘言ってるなというのはバレてる筈だと思うんだ。何かさ、本音はいてねえなとバレてる、そういう人と二回位ケンカしたことあるもん。
桃井 でもいいとか悪いとかさ、決断は早いわね、すごく。普通の人みたいにあんまり迷わないわね、当たってるけどさ、それすごく。
萩原 そうかい。
桃井 あれ、イカしてるとかさ、シビレちゃうなんてのは当たってるけどね、全部信じちゃうけど、かおり。
萩原 そうかい、それ程影響ないだろ、お前。
桃井 影響されてるわよ、かおり。最近すっかり芸能界という感じになったと思わない?かおり・・・・
萩原 お前?最初から、会った時から芸能界という感じじゃないか。
桃井 パーティで会って、アタマきたことあったの、いいじゃない、でも。
共演者の枠を離れた男と女という感じで話してみると?
萩原 俺とかおりってのは、まあ決して一緒になるっていうことはないだろうな。もし俺がかおりみたいな女と一緒になるとしたら、あれだろうな、やめてるなこの世界。できないよやっぱり、両立はな、女優と男優というのは。そういう人もいるけれどね、すごくそういうのはうまくいってるのかもしれないけど、俺の場合は何かあかんみたいだな。
桃井 それ、かおりなんかものすごいある。役者ってさ、あんまり男と女という感じじゃないじゃない、だからすごい嫉妬しちゃうのよね、仕事に。
萩原 うん、それはあるかも知れないね。
桃井 それにウィーク・ポイントなんてバッチリわかってるじゃない、役者の。だからそのいじめ方なんかも鈍感でかわいくない訳よ、全然、バッチリそこという感じでいじめちゃうという、いじわるのし方するだろうね。そういう感じしない?だからよくコマーシャルに出ている役者同士の夫婦っているじゃない、ああいうの、何かとっても嘘っぽいもんね、看板に偽りがあるから一緒にいられるって感じしない?ねえ。
萩原 まあ、俺もあんまり感心はしないけど、みんなうまくやってるよな。ま、俺とかおりの場合は結婚しないな、絶対な、俺が離婚して、子供に棄てられて、女房に棄てられてもさ、もう俺イヤだな多分。女と一緒に住むってのはイヤだな、やっぱり俺にはできないことだろうな。ずいぶん俺、真剣になって考えたけど、それは別れたいということじゃなくてね、一緒にいたいよ、女房も愛してるし、子供も愛してるしさ、ただどっちかかたわになってくるね、僕なんか、必ず。
桃井 私たちって普通の人よりすごい忙しいわね、何かじっとしてられないのね。
萩原 俺ダメなんだ。
桃井 私、びっくりしちゃった、ずっとこの仕事入る前に休みがあったじゃない、じっとしてられないのね。
萩原 俺ダメなんだよ、シラけちゃって、何かする迄、シラけちゃったり、動いちゃったりさ、だからつらいな。仕事やってる時が一番俺、あれみたい、何かしつこいらしいんだな俺は、だからあんまり良くないんじゃないかと言われたからね、ある人に。
桃井 でも疲れるわね、普通人間というのはもう少し休むもんだと思わない。ペンキ塗るとか、絵かくとか、あるもんよ、何かそんな風に休憩みたいに、してるといっても休憩みたいにしてるってことがさ。
萩原 俺ね、(仕事のことが)片時も離れないね。今、役者の他に何やるといったら、出てこないな。それ位やっぱしさ、俺さっきはさ何て言ったっけ、言ってたじゃない、あまり感心する商売じゃないって。そうだね、僕がそうだから余計にそう思うな。絶対ダメなんだ俺、見るのと試すのが大好きだから、俺、何かこうどっかで嘘ついちゃってるんじゃねえかと、「お前考えすぎだよ」とよく言われるんだよ。だけどね、本当に俺の長所であり欠点であるのは考えすぎということかも知れないね、でもテメエで言うのも何だけど、俺素直だよな。
桃井 素直よ、保証もんよ、保証しちゃう。でもさ、かおりなんかがふだんつき合ってるショーケンとさ本当のショーケンはちょっと違うんでしょ?
萩原 どういう風に?
桃井 あの、元気すぎるわよね、かおりなんかと会う時元気すぎるわよね。
萩原 そうか?
桃井 うん、何か熱があっても、何でも。
萩原 それはあるかも知れねえな。
テンプターズの頃の話に戻ってみようか
萩原 俺正直言って銭だと思ってるよ、お前と会ってる時も。
桃井 何、銭?
萩原 うん、金だと思ってる。こんなこと言うと何か鶴田浩二さんみたいでイヤだけどさ、あんな年取ってなくてさ、若いくせにこんなこと言うのイヤらしいと思うからあんまり人に言わんけど、銭に苦労してるもん、何度もだまされたよ、俺は、バカだから、本当に。
桃井 歌の時?
萩原 歌も何も、まあようだまされたよ、銭のことでは。それに金に関心がないよ、そん時はね。だってそうだろ、家がある程度のあれで、俺は決して意欲満々、やる気十分でさ、あれじゃないんだからさ。俺はもっといいかげんだったんだな。もう、俺の生い立ちを話せばさ、学校ができなかったしさ、すごく母親に、そんなこと言っちゃ失礼だけどさ、商売してたしさ、だからよく金盗んじゃどこかに遊びに行ったりさ、中学校の時からタバコ吸ったり、いろいろ悪いことやってきた訳だ。だけどいざ人は就職だ何だって、やっぱ高校一、二年になると目の色変えてくるよな、進学とか。その時期にさ、俺は何にもねえんだもん。だって俺んちのおふくろは俺のことを銀行員にしたかったらしいんだ。ずいぶん虫のいい話なんだ、俺んちのおふくろも。銀行員というのはね、その当時両親がいなきゃ入れなかったんだよ、本当に。
桃井 今だってそうじゃない。
萩原 俺のおふくろは一人で銀行員銀行員といってたけどおやじ探して来いっていう感じだったね、俺は。それ位醒めてたよ。小学校の頃からさ、役者になりてえなというんじゃなくてな、役者っていい車に乗って、いい女抱いて、いい酒飲んでるようにみえるじゃないかよ、知らない世界は。石原裕次郎さんなんてったらさ、その後光がさしてたよ。カッコイイ、あの人の着てるものとかガキのくせして真似したもんな。色とか、また今のように淡いベージュとか流行ってきてるじゃない。その頃ベージュのズボンなんて、家の金盗んで買いに行ったもん。それであげくの果てに難しい学校入れられちゃってさ。(笑い)
桃井 それかわいいわよね。
萩原 それで学校やめてさ、俺にとってテンプターズというのは銭の救いのタネだったな。でもそこで金を稼ごうとは思わなかったね俺は。何しろ、何ていうのかな、ひねくれた考えかもわからないけど、何かヤバイ感じがあったよ。同級生達が大学行ってるとか何とかいってる時にテメエは汚いディスコでさ、歌うたうことより先に女探してる方が早いからさ。ひどいんだぜ本当に、一日二千五百円なんだぜ、五人で。一人五百円だぜ。タクシー代がその時大宮から銀座まで二千五百円だったんだ。家の金盗んでバンドやってたようなもんだよ。だから最初二万七千円なんて給料貰った時、俺は本当に神棚に金あげたよ、一日、何かそうしなきゃいけねえんじゃないかみたいな、それ位だったぜ。俺音楽で金貰えると思わなかった、それはだまし易いよな、人間、な、そんなんだもん。
桃井 そうかな、でもそんなに・・・
萩原 だってさ、俺最近レコード出したけどさ、昔の方がずっと売れてんだぜ。それで今の方がちゃんと金貰えるというのはおかしな話じゃねえか、そう思わないか。何しろボロボロだったよ、グループ・サウンズの時は。
桃井 でも気持よかったでしょ、有名だから。
萩原 やっぱり意識したらダメになってきたな。
桃井 本当。(笑い)
萩原 これが・・・ホント不思議だな。大口ひろしという奴とビートルズを見に行ってさ、ビートルズみたいになりてえなと思ってさ、その後二年位かな、ビートルズが来て武道館でステージやってさ、それが最後だったんじゃないかな、テンプターズの、本当の意味で。
桃井 あの時出たの?
萩原 違う、武道館でビートルズがやったじゃないか、一万八千人位いて、それを見て俺らはいつかあのステージで歌えたらなと思ってた訳。ひろしがそういう風に言ったんだ、帰り道。かわいかったんだから。アイス・キャンディ食いながら、十円か小豆の、大丈夫だって俺はその時言ったんだ、俺は絶対ステージに立てる、直ぐステージに立てるって。初めてサインした時しびれたもんな、何かみんなに言いたくてさ。(笑い)向こうがサインしてくれなんて言わなくても、こっちから言いたくてうずうずしてたよ、言っちゃおか、言うまいか、本当に迷ったよ、俺は。
桃井 だからおかしいね、おかしいね、本当に。
萩原 本当に俺はそう思ったよ、本当にいいのかなって感じしたね。
桃井 一生懸命だったんだろうね。
萩原 一生懸命ってあんた、サインなんて毎日帰って練習しちゃったよ。(笑い)沢田が横文字だから、俺は日本男児だから日本語でやるなんて、(笑い)おかしいな。
桃井 ほら、かおり達は、やっぱりテレるじゃない。そういうのってさ、カッコイイんじゃなくてもテレるじゃない。ちょっとさ、大人になっちゃってからじゃない、この仕事始めたのがさ。ショーケンなんかはそうじゃないのね、一直線やって来ちゃったのね。
萩原 だって俺、ホントひどかったんだから、百姓で、まいったもん。昔さ、川添さんという人が生きていてさ、高そうな人なんだよ。その人が食ってるもんなんか同じ店で食っててもその人達の方が高そうにみえるんだよ、わかるか?同じもの食ってんのに向こうのテーブルの方が高そうにみえるんだよ、すごくうまそうに食うんだよ。俺なんて胃がびっくりしちゃうよ、そういう感じだったよ。「キャンティッシモ」なんて昔あってさ、わかるだろ、芸能人の売れてないのというか、とおの立った奴ばかり集って、かまやつひろしさんだとか、そういう人が来てたんだよ。今はかまやつさん、すごいけどさ、その当時何か長いんだか短いんだか、光ってるんだかわかんないような感じでさ、面白かったよ。かわいかったぜ、俺達。今でもかわいいけどさ。単純だったよ、ローリング・ストーンズがカッコイイというとさ、「何だ、そのローリング・ストーンズというのは?」わかんないでやってたんだから、まずカッコばっかり、カッコばっかりだったな。
桃井 でもおかしいわね、何かまずやってみるという感じなのよね、きっとね。人にカッコ悪いと言われたらやめちゃうとか、やめとくとか。
萩原 言われる前に気づいたね、最近気づかないのがヤバイけどね。最近カッコ悪いよと言われる前にさ、気づかないのがちょっとヤバイけどさ。昔は気づいたよ、やっぱり、囲りがちょっと違う顔してるし、どないなっとんのやという感じだったな。
桃井 今どうなのかね、外からみると高そうにみえるのかね、ショーケンなんか。
萩原 そんなことないだろ。
俺はファッションで芝居はしてないよ!
桃井 かおりなんかはさ、最初出会った時、役者さんというと新劇の友達しかいなかったじゃない。マスコミいくとペコペコしちゃうんだけどさ、みんな。だからさ、お金持ってるのがちょっとテレたり、カッコイイ車に乗るなんていうのはカッコつけてるみたいに思われはしないかという風に、そういう風に考えてった方じゃない。だからさ、ショーケンなんか見た時、あでやかと思ったよ、かおり。何かネオンつけてるって気したもん。
萩原 そう、俺「汚ねえ子!」と思った、最初。
桃井 失礼ね。
萩原 高橋洋子と二人で、何をピイピイピイ騒いでるんだ、汚い子みたいな感じだったな、俺は。話してたらやっぱり色気を感じてきたよ。やっぱ当たったもん。最初会った時、ちょっと印象悪かったな、大体最初会って印象悪いのダメなんだよ、俺は、非常に正直に言うけど。
桃井 最初会ったの、パーティの時よね。
萩原 そう。
桃井 ね、あの時にミソクソ言っちゃった私。NHKに、ショーケンってたいしたことないわねって、あんまり無視されたから口惜しくて、あれももうダメじゃないって、クソミソに言ってやったの。その後コロッと変わっちゃって、「最高!」なんて。映画で口きいたら最高になっちゃった。
萩原 面白かったな、でもみんなそうじゃない。カッコイイものに憧れてさ、カッコよくなりたいと思って仕事してさ、とっても変ないい方だけどさ、それで元気づくんじゃない。それでダメになって、今度は本物になっていくんじゃない。そんな気するよ、俺。
桃井 かおり、特別じゃないでしょ。自分では普通の人だと思うんだけどさ。
萩原 いい人だよ。
桃井 そこまでやっぱし憧れないわよ、いろんな面で。
萩原 そうかな、俺はやっぱし百姓なんだよ、そうゆう点は。やっぱりね、どうしたって大宮のスラムがぬけないもんね、どっかでさ、エエカッコして、タキシード着てやね、無理していい車買ったってさ、どっか違うんだなやっぱり。
桃井 そこまで自己反省しちゃうと、やりにくいわね。ね、疲れるでしょう?
萩原 いや、最近疲れ感じないよ、俺。
桃井 疲れない?
萩原 うん、全然疲れない、仕事やってる時は疲れるけどね。
桃井 何かちょっと、最近違うもんね。
萩原 そうかい。
桃井 一番最初映画した時と全然違う。
萩原 いや、俺本当ね、これズッコケたら困ったんだ、本当に。
桃井 まあね、かおり達は失敗してもさ、逃げるとこあるって感じあるじゃない。そういうとこないもんね、こけないように、絶対こけないようにするもんね。
萩原 これがダメだったら、これがあるという考え方は俺できないんだよね。俺は、これがダメだったら全部ダメだという、そういう何というのかな、考え方だな。変な、だからとっても小さいしさ、細いしさ、せこいかもしれないけどね、でもそれがダメでも、認められなくてもね、ちゃんとやっときゃさ、後悔しねえじゃん。要するに、やっぱりあそこでやっときゃよかったなとかさ。
桃井 でももう一度でも落ち目になってるから、そんなに思い上がらないよね。
萩原 うん、恐くねえな、正直言って。
桃井 二度落ち目になって、だからどうってことないね。
萩原 まあ、そう世の中うまくいかねえなと思ったけどな。
桃井 あのさ、歌の人は知らないよ、ローテーション早いしさ、ジェット・コースターみたいだと思うけどさ、役者って、もう少し落ちついてても平気じゃない?そんな感じしない。
萩原 そうな、落ちついて平気だよ。
桃井 うん、前よりはずいぶん落ちついてきてるみただけどさ、それでも他の人が見たらすごい早いんじゃない。
萩原 そうかい?
桃井 うん。
萩原 そうかも知れねえな。
桃井 こう、かけ足って感じするよ、かおり。
萩原 モタモタしてんだけどな。
桃井 そう、そうかな。
萩原 だって僕の生き方があれだってことじゃなくてさ、真剣にやってねえんじゃねえか。ある人は真剣にやってて、ある人はこういう対談とかインタビューとか何とかという所で、エエカッコなこと言ってても、真剣にはやってないと思うな。俺は見てると、いるもん、そういうやつは。
桃井 だから本気じゃない人は全然別よ。
萩原 だからそういう野郎は嫌いだよ、俺は。口達者、芝居べたってのが多いだろ。だけど芝居へたでも、変な言い方だけど、本気でやってるやつはへたでもいいじゃないか。そういう役者多いよね。俺もさ、言われたもん。「無理して造り上げた二枚目よりも、元の三枚目の方がいいんじゃない?」なんて、ほんとそう思うよ・・・・・。べつに俺は無理して造り上げたわけじゃないよ、仕事が来たからやってるんでさ。
桃井 だけど、そうよね、べつに無理したわけじゃないけど、結果的にそうなっちゃったのよね。私、はっきり言いすぎてるかしら。
萩原 いや本当そうだよ。いや、だけど俺見りゃわかるじゃないか、いろんな二枚目スターと較べたら、俺なんか二枚目じゃないぜ・・・・どっちかというと。二枚目でやりたいけどさ。でも面は親がこう生んじゃったんだしさ・・・・
桃井 だけどさ、いい男に見えようとか、はやろうとか、悪い意味じゃなくてよ、いかしてるって言われるように、どういう風にやるかってこと、やっぱり一生懸命にやるわね。
萩原 そうだよ、だけど俺は正直言ってさ、ショーケンという名前に役を結びつけたことはないぞ。それが俺は世の中の勘違いだと思う。役は役でやってるんだから。
桃井 そうね。
萩原 俺はファッションで芝居してないから。
やっぱり仕事してちゃんと生きたいな
萩原 今はさ、世の中の人間見ててさ、俺思うけど芸能界にすごく入りやすくなってんじゃないか?日本の芸能界自体が良くないんじゃないか。やっぱり普通は認められないだろう。だって、訳分からないでローリング・ストーンズの歌唄ってる奴なんて、そんなの認めないだろう。それが万が一にも認めちゃった奴がいるということは、俺が今いる限りさ、もちろん一度そういう時はダメになったけどもね、随分俺と同じ事くり返している人いるよ。いい人はちゃんとやっぱり、視聴率がどうのこうの言わなくたって、生きてる奴はいっぱいいるしさ、客が入らなくたっていい人はいっぱいいるしさ、あんまりそういう事言うのおかしいんじゃないかな。ただ、芸人としてやっぱ頑張るのが俺は本当だと思うんだなぁ。やっぱしちゃんと生きたいな・・・ちゃんと仕事して生きたい。後悔しないでさ、誰でもそうだろうけどね、ちっと俺は壁につき当たり過ぎたからね、色んなところで。アッチ行きゃコチンと殴られるしさ、コッチ行きゃコチンと殴られるしさ。
桃井 仕事の方がさピークっていうことは、男の子だからかねぇ。気分的にピークっていうことはないけどね、かおりは。そっちの方が一番大事だとかさ。
萩原 俺、一番大事だな。
桃井 そうだろうね。今見てて、そうだと思うよ。
萩原 俺は、仕事今一番大事だよ。ホントに。ウン。
桃井 なんで?
萩原 それはだって、独身じゃないもんな。
桃井 お金がいるから?
萩原 お金が出るからって事じゃなくってさ、やっぱり、カタイって言われるかもしれないけど、キザに言えば人間としてさ、俺は、そういう方が好きなんだ。そういう人間が、仕事をちゃんとやる人間が好きなんだな、俺は。イージーにやってさ、似合う奴もいるよ。俺は、似合わねえもん。
桃井 ちゃんとやるんだけどさ、もちろん本気だしてさ、だけどやっぱし仕事よりも男の方が自分の中で、なんかこうパーセンテージあるっていうのは、ホントの事言っちゃうと、あるじゃない?アタシはね、あるけどね。
萩原 男の方へ行っちゃう?
桃井 ウン。
萩原 そうだろうな。
桃井 ほとんど、そうだね。
萩原 俺はだめだな。
桃井 そうね、男の子だからかしら。そういう質なのかしら。
萩原 ま、女の人でも、そういう人いるよな。
桃井 仕事の方がって人?
萩原 ウン。女といったってさ、俺はだめだ、疲れちゃって、正直言って。カオリなんかぐらいだよ。ホントに疲れないの。
桃井 疲れるって言ったじゃない、ねえ、さっき。(笑)
萩原 疲れるけどさ、そういう疲れ方じゃねえじゃねえか。
桃井 それはそうね、共演者関係だから。
萩原 だってさ、わかる?何つうの・・・
桃井 だけどもさ、普段もちゃんとお金をとりたいみたいな感じね、そんな感じしない。
萩原 俺、オウ、金くれるんだったらもらうよ。俺は、たださあ、すごいにがい経験あるんだよなあ、ガキの頃。百姓でさ、ブーツが買えなくて長靴はいてさあ、(笑)わかる?スーツ買えなくてさあ、ずーとトレンチコート着てさあ、ホンコンシャツにネクタイして女の子とデートしてて、脱げねえでさ、暑くても。金なんて、1500円くらいしかないんだから、1500円あったら三日帰ってこないみたいな感じなんだから。そん時「フライパン」で、銀座にあんだろ、「フライパン」て、そこでさ、無理してさ、250円のスパゲティ二人で食べるじゃないか。女の子に、「コーヒー飲みたいわ」なんて言われても、金が無くてさ、どうしようかみたいなさ、つらいじゃないかよ。俺、すごいいやだったんだよ。
桃井 だけど、そういうのはさ、ティーンエイジャーとしてってこともないけどさ、本当じゃないのよ。
萩原 そうか?
桃井 ごはんなくたって、まあね、少女小説みたいだけどさ、ただ一緒に居られたってことで・・・「ゴチソウサマ」って感じじゃない?
萩原 別におまえ、250円で。やっぱしさ、男としてさ、そうじゃない人もいるさ。でもやっぱしさ、テメエの好きな女とデートしてんだから、目一杯カッコよくしてえのが当たりメエじゃねえか。それはさあ、努力してさ、な、無理があるときは、デートなんてしなきゃいいんだけどさ。でも、そういうのってしてみたいときってあるじゃないかよ。
桃井 してみたいときはね、あるだろうけどさ、ずーとそうみたいじゃない。なんか、疲れちゃうってのがさ。一生懸命すぎてさ。
男と女の出会いっていうのも、何かこう不思議だよね
萩原 俺、女房だけは追っかけたな。
桃井 八年位でしょ?
萩原 かなり追っかけたな、しつこくな。
桃井 それもわかるわね、大体ショーケンの性格、性格というか、感じからいって。
萩原 だって俺、井上尭之さんに言ったんだから、二人でメシ食ってる時ね、ある女とつき合っていてね、もう目一杯だって言ったんだよ。「あっそう」って言われてさ、目一杯だからやめるわと腹くくったんだよ、でもその前に女の方はくくってたんだからさ(笑い)、そん時俺は今の女房とね、結婚するって言ったんだから、会ったことないのに。
桃井 それも大胆ね、でも感じわかるわ。
萩原 「俺あいつと結婚するよ」って言ったら、「へえ、今度紹介してくれよ」と言うから、「俺まだ会ってねえんだ」「え?何、それ」って言ったよ、尭之さんは。
桃井 おかしいわね、そんな人いないわよ普通。
萩原 それで、そういうことを言って一年くらいして、今度井上尭之さんが別れたんだよな、女と。あの人も苦労したんだな、苦労して別れてさ、そいでつき合ってた女の方が結婚してさ、ちゃんと子供産んでやね、そしてちょうどその時、『約束』という映画があるんで、僕はロケいくんで、天下の大女優、岸恵子さんと待ち合わせをしてさ、人前でこう抱き合ってね、「見てくれ」ちうもんでさ、「週刊誌、週刊誌!」全然いないんだよ、そん時は。関係ない時ばっかり来やがって、こっちが頼む時は全然来ねえでよ、一番ダメな時だったもん、俺が。ダメな時って、「ショーケン、認めないよ」という時期だった。世の中にやっぱし五分の一位認めてくれてる人がいるんじゃねえかと思うんだ、五分の一はオーバーかも知れないけどな。そん時は何か、そういう奴を使うと、世の中の流行から遅れてるものだから、一つの時期が過ぎ去った者だから、もう今やその力はない---、レコードも売れないし、今使ったからって話題にならないよというところまでいっていたんだ、俺。そん時会ったんだよ。そしたら井上尭之さんと原田というのがさ、見送りに来てくれた訳。そしたら井上尭之さんがさ、「俺は結婚する」と言うんだよ、俺は別れた女と結婚するのかと思ったんだよ。「よかったね」と言ったんだんだよ。彼、「そういう風に思ってくれる?」と言うんだよ、「ところであれ?」と言ったらね、違うと言うんだよ。三日前に会った人と結婚したんだよ、すごくうまくいってるんだよ、後で。
桃井 良さそうね、あそこ。
萩原 ステキだよ、井上さん。
桃井 ステキね、あの人。
萩原 音楽もいいもんな。・・・・ところで、かおりは、いろんなこと言ってる割にはウブだな。
桃井 だってさ、私はそんなに芸能界じゃないしさ。親とずっと一緒に住んでるしさ。ズベコーだったわけじゃないしさ。だけどネ、あれなの、私はネ、一度も男と暮らしたことないの、それなのにネェ、ぜったいそう思わないネ、みんな。
萩原 オレはそう思ってるヨ。お前、それは考えすぎじゃないか?
桃井 そうかなあ?かおり病気になったじゃない。みんな御見舞にくるもんじゃない。それがサ、なかなか誰も御見舞に来てくれないの。「いいからおいでよ」って男の子に言うでしょう。そいでお見舞に来てさ「居ないの?今日、これ(親指をだしながら)」「だって私、ママといるのよ!」って言ったらサ、「親がいるの!?」って言った人いるもんネ。男と一緒にいないの、不思議がられちゃうの・・・そんなにセーケツじゃないけどサ、かおり、ハハハハ・・・・。そんなにネ、大胆になれないものヨ、普通の青少年ってものは。
萩原 そうだよナ!
桃井 それはそうと、結婚どうですか?
萩原 ・・・・・変わるネ。
桃井 私ネ、かおりは良くホレるでしょ?いろんな人にネ。一緒に暮らしたことはないけど、離れて部屋借りて暮らしたりネするけど、同棲でもそうなんだけど、一緒に生活するってところまでいかないのよネ。それが最高って気分にならないのよネ。なるったけ、一緒に生活するのは、避けたい、避けたいって思うわネ。
萩原 だけどオレの場合、もう変わりなくなったネ。たぶんそりゃ、女房の方が上だからだと思うんだけど、オレより一回り大きいからなんだと思うんだナ。オレたぶんだめだろうと思ってたんだヨ、一緒に生活したら。で、まあその前から同棲してたけどネ、オレは。でもネ、「ああ、いいもんだ」って思ったヨ。
桃井 どういう風に違うの?普通の人と違うんだと思うのよネ、ちょっと。
萩原 オレね、「不思議だなあーっ」て思うのはネ、毎日会っててサ、一緒にねてサ、朝起きて、オレは仕事へ行って、夜帰ってきてサ、・・・・オレの顔が違うらしいヨ、オレの顔のいい時と悪い時が。
桃井 外で?仕事のことなんか・・・・
萩原 できるだけ、家に仕事の話を持ち込むのやめようと思うんだ、俺は。だってそうだろう、あいつはやっぱり家庭を守る仕事があってさ、ましてや子供がいりゃその世話で大変だよ。でもね、そういうことだからあんまりしゃべんないようにするけどね。でも最近、夫婦って、恋人同士と違っていいなあと思ったのは・・・分かるんだよ・・・・。
桃井 何も言わなくても・・・・?
萩原 うん。俺の女房の素敵な所は、ノロケ話だけれど、ベタッとしてないんだよね、そういう事が分かってもさ、非常に、その、フーッとしているわけよ。分かってんだよね。
桃井 じゃ疲れないじゃない。
萩原 疲れない、と言うよりも入り込んでこないな、仕事の中に。
桃井 「仕事の中に」は良くわかるんだけどさ、ショーケンの中には入り込んでこないの?
萩原 すごいよくわかるらしいよ、ああ、この人ちょっと好きな人がいるのかしら?とかさ・・・・。そうすると洋服をさ、こう、男ってのは妙に選んだりするじゃない?そんな時、「そっちよりこっち着ていったら」って言われるよ。それドキーッとするよ。「なんで?」って言ったら「こっちの方が似合うから」なんて。で、ピシャッと言われるよ、「早いんでしょ、今日は」って。俺たいしたもんだなって思ったよ、女って。
桃井 へえーっ。その辺の女の生理ってどういう風にコントロールしてるんだろうね。私なんかバッチリ言っちゃう。バッチリ言ってダメにしちゃうって感じだけどね。そういうのガマンできないね。
俺は絶対役者で食っていこうと思っているよ
萩原 僕は26歳だけどネ、芸能界ってのは、16,7で入るとこじゃないな。人様の常識とか、そういうのが全くわからないヨ・・・俺は。だからかなりの欠陥人間なんじゃないか。人を観察する・・・たとえば人と食事してフッといいことされるとネ、俺自身がうけちゃったりするとネ、やっぱり伝えたくなるもん。だから、そういうの常識をはずれてるところだネ。普通の人間は人と話してる時にそういう見方はしないでしょ?まあ、する人もいるだろうけど。これはやっぱり良くないのかもしれないけど芝居にはプラスだナ。よく俺は恥も外聞もなく、名匠・巨匠といわれている監督さんたちにさ、「僕、こうやってやりたいんですけど」なんてさ、平気で言っちゃう性質なんだ。だから彼らの感覚のなかでダメだっていわれたらそれまでだナ・・・俺はそれぐらい演出家を尊敬している。
桃井 あたし、一つさショーケンとやってて覚えたのはサ、言い方がいいのよネ。「ここをこういう風にやりたい」なんて言ったら普通カチンとくるじゃない。でも言い方がいいのよネ。「一緒にやってるんだから!!」なんていうのが前提にあってネ、「お料理して!!」みたいな感じじゃない?(笑い)「もう全部あげちゃうから!!」って感じでしょう。初めて一緒に仕事した時、「かおり、さっきこんなやっちゃってんの」とかさ、もうすごく覚えてるわけ、それも、もう物マネ大行進みたいにサ、ぴったし、そっくりマネしてみせんの。だからもうネ、「お茶のんでても全部お仕事」って感じ。だから完全に共演者って気分がぬけないのよネ、普段でも、どっかウソっぽいのネ。
萩原 最近、男優さんも、女優さんもサ、なんかこう「インテリジェンス」がじゃましてるんじゃないの。僕は恥も外聞もないもんだと思うけどネ。「エエカッコしてえなあ」と思ったらエエカッコするような仕事にいきやいいんだ。すごいむずかしくて、すごい簡単な世界だと思うなこの世界は。
桃井 私、ショーケンのそばにいる時、何やっても平気よ、恥ずかしくない。一緒に仕事をしない人にはわかんないだろうけど、やった人はみんなまいってんじゃない。すっかりペースにまき込まれてしまった、それで「とってもごちそうさまでした」って感じよ、私は。
萩原 俺はある人とつき合って、何でもない普通の科白をえらい考えてるんだよ。これは何だと理屈つけるんだよ、難しくさ。何だっけな、何か変なコマーシャルの真似を一つするんだよ。その科白に書いてあるんだよ、何ということなく面白いんだよ。その人の生理に合わなかったと思うんだ、俺は。だから生理に合わなきゃ、本屋(脚本家)に自分で言ってね、かえて貰うなり、説明を聞くなりさ、それからやりゃいいじゃないかよ。俺は現場でゴネるの、ずるいと言ったんだよ、その前にリハーサル何度もやってるんだから。だろう?何か変な小理屈つけるんだよ。
桃井 だからさ、かおりはね、ショーケンの仕事のやり方というか、姿勢というかさ、それは正しいと思うよ。
萩原 俺は決して間違いとは思わない。だって本ができる段階までに何度も作家とか、演出家と話す時間があるんだもん、そう思わない?俺、それやっぱりテレビの影響だと思う。それは、僕はそういう風に感じるけどね、テレビの今迄のやり方がいけないんだと思う。それはやっぱりね、俺なんか本当、世界に行きたいね。ダスティン・ホフマンがロンドンでさ、『卒業』やった後ね、街を歩いてても、小男で目立たないものだから誰も見てくれないでね、ミセス・ロビンソンを歌ったというけど、俺わかるな。
桃井 あれはわかるよ。自分で気がつかないうちに歌ってて、奥さんに、あんたやめなさいよと言われたっていうのね、そういうのって、意地汚く聞こえるかも知れないけど、涙出そうにわかるわね。
萩原 わかるだろ、俺、好きだよ、そういうのって。だってすごいイイじゃないかよ、その為に芝居やってんだもん。生活がどうなってもいいや、エエフリこけなくてもいいやというような気持で誰一人やってないと思う。俺はやっぱり銭の為だと思う。そのくせ小理屈つけやがる。だったら最初からやるなって言うんだ。
桃井 でもさ、私は別にカッコつけるんじゃなくて、お金欲しいわよ、私だって欲しいけどさ、ショーケンみたいにそんなにはっきり欲しくないわね。かおり達からみれば莫大によ、やっぱ莫大よ、家のことにしろ何にしろさ、私は何を言ってるのかなと思っちゃったもんね、最初。それから車のことやなんかもね。いや、すごく羨ましいわよ、私だってさ。だけどさ、そこまではっきりね、欲情しないわよね、そういうことに。
萩原 俺ははっきりするよ。テンプターズでね、借金が300万円あった時にね、ひどかったよ、生活。俺はっきりしてるよ。俺、金がありゃね、小銭ためてスナックたてようなんて絶対思わない。俺は絶対そんなことはしない、俺は絶対役者で食っていこうと思ってるもん。もう今やこれしかないんだもん。
かおりは、女っぽくやっていきたいと思うよ
桃井 かおりは、結婚したら役者やめるよ、うん。
萩原 俺、本当にお前が結婚してやめたらね、「やりたいわ、仕事」なんて一言も言わなかったら、俺逆立ちして屁してやるよ。
桃井 そりゃ、やりたいわよ、そりゃやりたいと思うわよ。
萩原 いや、だからやんなかったら、お前が結婚してこの世界からピッタリ手を引いたら。
桃井 別れたら始めるわよ、私だって。
萩原 しっかりしてるじゃねえか、お前。
桃井 それは当たり前じゃないの。
萩原 そうだろ、お前そういう時ばっかり仕事を利用するだろ、だから俺はずるいと言うの。
桃井 何よ、仕事を利用するって?
萩原 別れたら、食うに困ってお前はやる訳だろ。
桃井 違うよ。食うに困ってじゃないわよ。男にそれだけ神経注がなくてすむようになったら、私は自分の一番、男の次にエクスタシー感じられるものに気分もっていくということじゃない。
萩原 俺できないと思うね。お前いい顔するもん。仕事が好きな奴っていい顔するよ。お前、吉田拓郎にちょっと似てるとこあるよ、非常にいい顔する時あるもん。結婚したら仕事やめようという奴にね、いい顔してる奴いねえよ。いい顔というより欲のあるツラしていねえよ。幸せ一杯胸一杯、そういう顔してるよ。お前、絶対やめられないよ。俺、お前がやめたら本当に俺もやめてやるよ。それ位だよ。お前好きだもん。仕事の時、「いいわね」とか「最高ね」って言ってるじゃない。
桃井 すぐそうやって暗示にかけちゃう。でも私もそれ位女っぽくやっていきたいという気はするけどね。
以上。1975年12月10日発行 /大和書房 「狩人よ、しなやかに跳べ」より