toC ECのマーケティング・ミックス分析

 

井上 実(アーク・シンク・タンク)

minoru-inoue@nifty.ne.jp

 

はじめに

 2001年1月31日に、電子商取引推進協議会とアクセンチュアから発表された「平成12年電子商取引に関する市場規模実態調査」によると、2000年のBtoC市場は8,240億円、2005年には約13.3兆円に拡大すると予測されている。

 しかし、BtoC EC企業の大半は赤字体質から脱却できていない。その根本的原因は、BtoC ECのマーケティング的特質を十分に分析せずに、従来のマーケティング戦略、戦術を展開したところにある。ここで、BtoC ECをマーケティング・ミックスにより分析し、その特性を洗い出すことにより、根本的な原因の追求と解決の方向性を検討してみることにする。

 

1.toC ECのマーケティング・ミックス分析の基軸

 BtoC ECのマーケティング・ミックス分析に関する先行研究は、現象面から整理したものであり、所謂『EC成功のポイント』的内容に留まっているものが多い。そのため、分析の基軸がはっきりと見えてこない。そこで、ここでは、分析の基軸、シナリオとして、次のものを設定し、分析を実施する。

(1)マーケティング・ミックスとして、顧客志向の4Cを採用する。

(2)インターネットの特徴を明確化する。

(3)明確化されたインターネットの特徴が、マーケティング・ミックスのそれぞれに対し及ぼす影響をできる限り2軸分析により分析し、ECのポジショニングを明確化、現状の問題点の原因追求、解決の方向性を検討する。

 

1.1.4Cマーケティング・ミックスの採用

 マーケティング・ミックスとして、従来の4P(Product, Price, Place, Promotion)ではなく、4C(Customer value, Cost to Customer, Convenience, Communication)を採用する(Lautenborn、1990)。4Pと4Cとの対応は図表1の通りである。

 

図表1 4Pと4Cの対応

4P  Product         Price             Place       Promotion   

4C  Customer value  Cost to Customer  Convenience Communication

 

4Cは、売り手の視点によるマーケティング・ミックスである4Pを、買い手の視点から見直し、製品よりも顧客(買い手)の視点を重視するものである(Kotler、2000)。需要を上回る供給がなされ、作れば売れる時代から売れるものが見つからない時代へ大きく変化した現代において、顧客志向のマーケティングの重要性は議論の余地がなく、顧客の視点からのマーケティング・ミックスである4Cを採用すべきと考える。

 

1.2.インターネットの特徴

 ECを分析する為には、まず、その基盤であるインターネットの特徴を理解する必要がある。インターネットは、次の特徴を持ったネットワーク・インフラである。

(1)ローコスト・ネットワーク、(2)グローバル・ネットワーク、(3)リアルタイム・ネットワーク、(4)双方向ネットワーク、(5)不特定多数との接続性。(4)と(5)を兼ね備えていることが、図表2で示すように他のメディアと比較し大きな特徴である。

 

図表2 インターネットの特徴

 


 


2.BtoC ECのマーケティング・ミックス分析

 

2.1.Convenience

 インターネットの空間的自由度と時間的自由度の高さは、いままでのリアル事業にはない便益を顧客にもたらしている。24時間365日利用可能であり、地球の裏側のお店や企業にもアクセスすることができる。いつでもどこでも、どの店にでも入り、自分好みの商品を捜しまわることが簡単にできるようになり、リアル世界のコンビエンスストア以上の便益を顧客に提供している。(図表3参照)

 

図表3 空間的自由度と時間的自由度

 


 また、商圏の狭かった個人商店にとっても、世界中の顧客に対して商品を販売することが可能となり、商圏を一気に拡大することができるようになった。インターネットのローコスト性からネットワーク接続コストは低くく、また、カタログを印刷せずに商品を通信販売することも可能である。そのため、従来の通信販売よりも参入障壁が低くく、多くの個人事業者がバーチャル・ショップを開設している。

 しかし、インターネットの持つリアルタイム性により、顧客は情報だけではなく、発注した商品もリアルタイムに近いスピードで手に入るものと感じ、納品までの時間短縮を望むようになる。そのため、バーチャル・ショップは納期を短縮するために無在庫運営をあきらめ、自社在庫を持つようになる。在庫負担に苦しみ利益を圧迫するという現象面での問題を生み出している。

 この問題は、インターネットと同等のスピードを持った商品流通媒体を利用しない限り根本的には解決しない。モノを商品の中心としている限り、物流スピードには限界がある。インターネットを商品流通媒体とするデジタル商品、情報商品をBtoC ECの主力商品とすることが、この問題の根本的な解決策である。

 モノを商品とする場合には、強固なロジスティックシステムを持つリアル企業との提携や、リアル企業自体のBtoC ECへの進出により、最適在庫の確保と物流の高速化を実現していくのも一つの解決策である。

 

2.2.Communication

(1) 一方的コミュニケーション

 インターネットは、双方向ネットワークという特徴を持つが、この特徴を使用せず、従来のマス広告と同様に企業から顧客への一方的情報発信機能として、インターネットを使用しているものがある。

 

@ホームページの広告としての活用

 インターネットは、世界中の不特定多数に対し、ローコストで情報を発信できる媒体であるという特性から、マス広告媒体としての利用が考えられ、ホームページの活用が広がった。しかし、企業のホームページに顧客が来訪するためには、顧客が自発的に企業のURLを入力しなければならない。これは、従来のテレビやラジオのようなマスコミ広告とは異なる。従来のマスコミ広告は、顧客は自ら広告を見ようとしているのではなく、強制的に見せられている。テレビでスポーツ番組の中継を見ているのに、途中で一方的に中断しコマーシャルを見せられる。顧客はスポーツ番組を見たいのであって、自発的にコマーシャルを見たいとは思っていない。顧客が自発的に広告を見るのか、強制的に見せられているのかという面で、ホームページ広告とマスコミ広告は大きく異なる。

 その為、ホームページを作れば、マスコミ広告と同様の効果が得られると考えるのは誤りである。また、顧客が自発的に自社のホームページを見に来ているということは、その顧客は、少なくとも自社に興味を持っているということである。従って、そこに掲載すべき情報は通常の広告よりも詳細な情報を掲載し、顧客の自社への関心や理解をより深めるものでなければならない。

 

Aバナー広告

 ポータルサイトなどの来訪者の多いサイトに、自社の広告を載せ、顧客がその広告をクリックすると自社のサイトに呼びこむことができるバナー広告は、顧客に強制的に広告を見せており、マスコミ広告と同様の性質のものである。

 従って、従来のマスコミ広告の効果が、掲載媒体の利用者数や掲載媒体のもつ顧客層と自社ターゲット顧客層との一致に依存したのと同様に、バナー広告の効果は、掲載するサイトの来訪者数、掲載するサイトの持つ顧客層と自社ターゲット顧客層との一致に依存することになる。バナー広告を掲載するサイトの選定には十分な注意が必要である。

 

Bメール広告

 電子メールを活用したメールマガジンなどの広告は、顧客が自発的に情報の提供を求めてメールアドレスを企業に通知している場合には、ホームページ広告と同様に、より深い内容のものでなければならない。

 しかし、最近、メールアドレスリストを他社から購入し、顧客の同意なしに電子メール広告を送ってくる企業もあり、その場合には、強制的広告である為、バナー広告と同様の注意が必要となる。

 本来、メール広告は顧客が自発的にメールアドレスを企業に伝えた人にだけ送信するべきもので、同意のないメール広告はメールボックスを不要なメールで一杯にされかねない顧客にとって迷惑なものである。情報の入手を望んでいる顧客に、新鮮な情報を詳細に提供する手段として活用すべきである。

 

(2)双方向コミュニケーション

 インターネットの特徴である双方向ネットワーク及び不特定多数との接続性を活用することにより、従来のメディアにはない不特定多数とのワン・トゥ・ワン・コミュニケーションが可能となる。また、企業側から電話をかけ、強制的にコミュニケーションを取ろうとするテレマーケティングとは異なり、顧客が自発的にコミュニケーションに参加するという特徴がある。

 コミュニケーションは、顧客と企業間だけではなく、顧客と顧客との間でも行われ、商品の売れ行きや顧客満足に影響を与える顧客間インタラクション(国領、1999)を発生させる。顧客間インタラクションは、クチコミ、相互扶助、開発参加などの形態を取ることが知られており、コミュニティを形成する。

 コミュニティを自社のビジネスモデルに組みこんだBtoC ECが多く見られる。イーベイなどのオークション・サイトは、サイト自体がコミュニティである。顧客が売りたいものを掲示し、顧客が入札。高額入札者が落札し、出品した顧客と落札した顧客は直接、物品、金銭のやり取りを行う。オークション・サイトは、あくまでコミュニティを提供しているだけである。

コミュニティに製品開発を取り込んだ例としては、パナソニック・コンピュータ・カンパニーのサブノート・コンピュータ「レッツノート」(国領、1999)や、東洋水産の「インドメン」などが知られている。企業とは無関係に製品がコミュニティ上で開発された例としては、ヒューレット・パッカード社の携帯コンピュータ「200LX」用日本語ソフトや、パソコン用UNIXソフトLinuxなどが上げられる。顧客の知識を取り入れた製品開発を行う上で、インターネット上のコミュニティの活用は欠かすことができない。コミュティの活用こそが、BtoC ECにおけるコミュニケーションの最も重要な点であり、マーケティングに変革をもたらすものである。(図表4 参照)

 

図表4 自発的/強制的コミュニケーションとコミュニケーションの方向性


 


(3)情報量と情報の信頼性

 インターネットを介して、多くの情報を入手することができる。しかし、入手した情報の信頼性は、従来のメディアに比較して低い。なぜなら、従来のメディアでは情報の発信側が、情報内容に関して責任を持っており、信頼性の低い情報は発信しないように自制されていた。しかし、インターネット上では誰でも匿名により情報を発信することができ、情報の信頼性に関する責任を問われることがない。

 そのため、顧客は入手した情報の信頼性は、情報発信元のブランドに頼るしかなくなってしまう。Aaker(1997)の言うブランド・エクイティの中の知覚品質が、提供される情報の信頼性に対して大きく作用する 。ブランド価値の低いBtoC EC企業の発信する情報は、信頼を得ることができず、顧客とのコミュニケーションに支障をきたすことになる。これを解消するため、BtoC EC企業は、ブランド価値の向上を図る目的で、従来のマスメディを使用した広告宣伝を行うようになり、広告宣伝費を増加させるという問題を発生させてしまう。

多額の広告宣伝費を注ぎ込んで、高いブランド価値を確立するハイ・ブランド・エクイティ・バーチャル・ショップを目指す方法や、すでにブランド価値を持っているリアル企業と提携し、ブランド価値を向上させる方法がある。米国で、”Clicks & Mortarsと呼ばれるバーチャル・ショップとリアル・ショップの両方を持つ戦略が後者にあたる。(図表5 参照)

 

図表5 情報量と情報の信頼性


 


2.3.Cost to the Customer

(1)価格決定パワーの顧客シフト

 インターネットの不特定多数との接続性により、顧客は多くのBtoC EC企業から商品価格情報を入手することが可能となり、商品の市場価格動向、最低価格情報を容易に掴むことができる。価格決定パワーは大きく顧客側にシフトする。

 

(2)リアル・ショップとの競合による低価格の提示

 リアル・ショップで販売している商品と同一のものを販売する場合には、次の理由から、低価格を顧客から要求される。

 

@バーチャル・ショップでは、顧客のセルフサービスによる発注を前提としており、企業側のサービスコストや受注処理コストは、リアル・ショップに比較し低いと顧客が容易に推測できるため。

ABtoC ECと同種と見なされるカタログ販売やテレショッピングなど通信販売が低価格販売を前面に打ち出した広告・宣伝を行うため。

 

 しかし、リアル・ショップ以上にコストがかかる面がある。一つは、Communicationの面で記述したブランド確立のための広告宣伝費であり、もう一つはConvenience面で記述した納期短縮を実現するための在庫負担である。これらのコスト増加要因があるにもかかわらず、BtoC EC企業は価格決定パワーを強化した顧客から常に低価格を要求されることになり、赤字体質から抜け出すことができなくなる。

 また、既存企業がバーチャル・ショップを開設し、リアル・ショップと同一商品を並売する場合にも、同様の理由から低価格を顧客から要求され、リアル・ショップとの二重価格を顧客に提示することになる。これにより、リアルとバーチャルでのカニバレーションを引き起こし、収益を上げることが難しくなる。

 

(3)デジタル商品・サービスによる新価格体系の構築

 リアル・ショップと競合する商品を販売する限り、BtoC EC企業は低価格販売を行わざる得ない。しかし、無体物であるデジタル商品、情報商品を販売するのであれば、独自の価格体系を構築することが可能となる。音楽や写真をデジタル商品と販売しているサイトでは、1曲ごとや写真1枚ごとの少額の価格を提示している。コンピュータソフトをサービスとして提供するASP(Application Service Provider)は、基本料金と使用時間に基づく従量制の料金からなる価格体系を構築している。このように、デジタル商品や情報商品を販売の主体とすれば、リアル・ショップと競合せずに、異なる価格体系を構築することができる。

 

2.4.Customer Value

 BtoC ECで顧客に提供されるものは、モノ(有体物)の購買機会と、デジタル商品や情報などの無体物の購買機会である。

 

(1)モノ(有体物)の購買機会

現在のほとんどのBtoC EC企業は、モノを販売している。販売形態は、ホームページを活用した無人販売である。しかし、バーチャル・ショップは、リアル・ショップに比較し販売者の顔や店構えが見ないため、顧客は購買に対する不安を抱えている。これを払拭するためには、リアル・ショップ以上の気配りと顧客サービスが必要となる。人間味のあるサービスを、できるだけ無人で行うことができるようなコンピュータシステム上の工夫が必要になる。(図表6 参照)

 

(2)無体物の購買機会

 BtoC ECで購入できる無体物には、デジタル商品と、情報商品がある。

 

@デジタル商品

 音楽ソフト、コンピュータソフト、書籍、写真などがデジタル化しやすいものである。デジタル商品の購入は、注文すると即座にインターネットを介して、商品を得られるという優れた便益がある。また、販売側は、在庫を持つ必要がなく、直接経費が非常に低いため、収穫逓増の法則が働きやすいビジネスである。

しかし、デジタル商品は容易に複製可能であり、海賊版を生みやすいという問題点がある。オンライン・スワッピング・ソフトウェアの開発・流通などデジタル商品の海賊版を生みやすい環境が進行している。この問題の解決策としては、デジタル商品を利用者側に残さないようにサービスとして提供するしかない。デジタル商品をサービスとして提供する例としては、コンピュータ業界のASPがある。ASPは、インターネット経由で利用者のパソコンとASPのコンピュータを接続し、ASPのコンピュータ内にあるソフトを利用させるサービス業者である。ASPの仕組みを他のデジタル商品に応用すれば、例えば、音楽ソフトなどもインターネット経由で、音楽ソフト会社に接続し、好きな音楽を聞き、聞いた時間に見合った料金を支払うということになる。聞き終わった後は、利用者側には音楽ソフトは残らず、コピー不可能である。デジタル商品の販売は、バーチャル・ショップではなく、バーチャル・サービス業が行う必要がある。

 

A情報商品

 情報自体が商品であるものには、市場提供サービス(マッチング・ビジネス)がある。

 イーベイに代表されるオークション市場、オートバイテルのような製品カテゴリー別や顧客セグメント別、ライフスタイル別に商品情報を集めたバーティカル・ポータル・サイトなどが上げられる。情報をネット上で仲介することをビジネスとする新しい形の中間業者であり、インフォミディアリ企業(加登&江見、1999)あるいはニューミドルマン(田坂、1999)とも言われている。

 この特徴は、情報自体をBtoC EC企業は作り出すのではなく、情報交換の場を提供することにある。インターネットの不特定多数間の双方向リアルタイム・デジタル・コミュニケーション機能を活用したEC専用商品とも言える。

 このビジネスモデル成功の鍵の一つは、どれだけ多くの情報提供者を集めることができるかである。ネットワーク参加者が少なければ交換される情報も少なく、提供された情報に価値を見出すネットワーク参加者が出現する確率も低くなる。第二の鍵は、提供された情報の信頼性の向上にある。提供された情報や情報提供者への評価を行い、情報の信頼性を保障するのがこのビジネスを司る企業の使命である。また、マーケットに対し、この企業に掲載されている情報は信頼できるという知覚品質を向上させられなければ参加者数を増加させることはできない。その為、コーポレート・ブランド価値向上が重要となる。

 

図表6 有体物/無体物と、有人/無人サービス


 


2.5.分析結果から得られるBtoC ECの今後の方向性

 BtoC ECをマーケティング・ミックスにより分析した結果、次の三つの方向性が見えてきた。

 

 (1)リアルとバーチャルの提携

 リアル企業と、バーチャル企業の提携は、次の理由から求められる。

 

@有体物(モノ)を販売するBtoC ECにおいて、顧客への納期短縮と在庫の適正化を図るため、強固なロジスティックシステムをすでに持つリアル企業との提携が、バーチャル企業にとって有効となる。(2.1.Convenienceの章で分析)

 

A企業が発信する情報の信頼性を向上するためのコーポレートブランド価値を向上させるため、すでにブランド価値を持つリアル企業との提携が、バーチャル企業にとって有効となる。(2.2.Communicationの章で分析)

 

Bリアル企業がECへ進出する際、リアル店舗との二重価格の問題による現在のブランド価値を損なうリスクを、バーチャル企業との提携により避けることができ、リアル企業にとって有効となる。(2.2.Communication及び2.3.Cost to the Customerの章で分析)

 

(2)市場提供サービス(マッチング・ビジネス)の拡大と寡占化

 2.1.Convenienceの章において、顧客の納期短縮要求と自社在庫負担の軽減というジレンマを解決する方策として、インターネットを流通媒体する商品である情報商品を提言し、2.3.Cost to the Customerの章では、リアル・ショップとの競合を避けられ、独自の価格体系が構築可能である情報商品の販売の有効性を記述した。また、2.4.Customer Valueの章において、情報商品をネット上で仲介することをビジネスとする新しい中間業者である市場提供サービス(マッチング・ビジネス)企業に関して論述した。

 すでに、オークション市場企業、逆オークション市場企業やバーティカル・ポータル・サイトなどの企業が台頭している。提供する情報や交換される情報のカテゴリーの切り方により、さまざまな市場提供サービスが考えられる。製品カテゴリー別、顧客セグメント別、ライフスタイル別にそれぞれ多くのバーティカル・ポータル・サイトやオークション市場を構築することが可能であり、市場規模が拡大すると思われる。

 また、一方、各カテゴリーごとには、複数のバーティカル・ポータル・サイトやオークション市場が生き残ることは難しく、寡占化されるものと思われる。

なぜなら、2.4.Customer Valueの章で論述したように、これらの企業の価値は、メトカーフの法則が当てはまり、企業が提供する市場に参加するものの数の二乗に比例するためである。田坂(1999)が言う「顧客が集まる企業が集まる情報が集まる顧客が集まる」という循環が加速し、各カテゴリーごとに一つの市場に顧客・企業・情報が集中するため、寡占化が急速に進むと思われる。

 

 (3)BtoC ECのサービス産業化

 2.1.Convenienceの章では、デジタル商品をBtoC ECの主力商品とすることにより、顧客の納期短縮要求と自社在庫負担の軽減というジレンマを解消することができることを述べ、2.3.Cost to the Customerの章では、デジタル商品は、独自の価格体系を構築できるというメリットに関して述べた。デジタル商品は、情報家電やネット家電の普及により、家庭内のすべての機器におよぶ可能性がある。しかし、2.4.Customer Valueの章で述べたように、デジタル商品はコピーが容易で海賊版を生みやすいため、デジタル商品はサービスとして提供されなければならない。

 デジタル商品や情報商品などの無体物を扱うBtoC ECはサービス産業として確立されるべきである。

 また、モノの販売において、BtoC ECは、自動販売機や通信販売のカタログではなく、顧客サービスの重要であることを、2.4.Customer Valueの章において述べた。モノ販売においても、サービス産業としての側面が重要である。

 これらから、モノの販売であれ、デジタル商品であれ、BtoC ECは、サービス産業であると言える。サービス産業であるとすると、そのマーケティングはサービス・マーケティングの属性を持つことになる。逆に、サービス・マーケティングがBtoC ECの影響を受けることにもなる。

 

おわりに

米国では、インターネットバブルがはじけ、EC企業のリストラが進みつつある。BtoC ECのマーケティング・ミックス分析により示した3つの方向性が、今後の新たなBtoC ECの発展に少しでも寄与することができれば幸いである。

また、今後もECに関する研究をさらに進めて行きたい。

 

参考文献

〔1〕  Robert Lautenborn著, ”New Marketing Litany: 4P’s Passe; C-Words

Take Over”, Advertising Age, October 1,1990, P26

〔2〕  Philip.Kotler著、木村達也訳、「コトラーの戦略的マーケティング」、ダイヤモンド社、2000年2月17日

〔3〕  国領二郎著、「オープン・アーキテクチャ戦略」、ダイヤモンド社、

1999年11月11日、P129,P140

〔4〕  David.A.Aaker著、陶山計介/小林哲/梅本春夫/石垣智徳訳、「ブラン

ド優位の戦略」、ダイヤモンド社、1997年7月17日、P21

〔5〕  加登吉邦&江見淳著、「超成長企業を生むインフォミディアリ戦略」、東洋経済新報社、1999年12月31日

〔6〕  田坂広志著、「これからの日本市場で何が起きるか」、東洋経済新報社、1999年12月23日,P138