
金融ビッグバンが、企業経営に与える影響に関して、その制度改正の概要と、それに対応するための企業会計システムの課題、システム構築方法を論述する。

金融ビッグバンという言葉を、新聞紙上など目にしない日はないくらいに、話題が沸騰している。しかし、その話題にされている内容は、ディスカウントストアの店頭で、外貨両替をはじめたとか、ハンバーグ・レストランでドルで支払いができるようになったとか、表面的なものばかりであり、その本質が忘れられているように感じる。
金融ビッグバンとは、日本の金融市場を自由・公平・国際的な金融市場に変えていこうという制度改正である。これにより、グローバル・スタンダードな金融市場を日本に構築し、海外投資家の支持がえられるようにしようというものである。

では、金融ビッグバンにおいて、どのような制度改正がおこなわれ、それぞれが企業経営に対して、どのような影響を与えていくのかを見ていくことにする。

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外為法の改正1998年4月に、改正外為法が施行された。
@海外預金口座保有の自由化:
(例)日本に住んでいる人がアメリカに預金口座を持つことが自由にできる。
A
居住者間の外為決済の自由化:(例)日本にある企業間でドル立てで決済することが自由にできる。
B
外為業務の自由化C
両替業務の自由化D
対外決済の自由化E
証券取引の自由化これにより、企業経営にどのような影響を与えるのだろうか。
最も大きな影響は、海外取引先、海外子会社との取引を集中化し、債権債務の相殺をおこない、最終残高において決済することで、外為手数料の削減、為替リスクの低減をはかることができることだろう。直接、コスト削減に結びつくため、大手メーカー、商社を中心に、採用が検討され、今年度の早い時期には本稼動していくだろう。

2)
連結財務諸表制度の見直し1997年6月に、「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」が出され、従来の個別企業中心の財務諸表の公開から、連結を中心とした財務諸表の公開に変えることが求められている。これにより、いままで日本の企業でおこなわれていた親会社の財務内容をよく見せるために、そのツケを子会社にもっていくというようなテクニックは使えなくなってしまう。子会社を含めた連結財務諸表をベースに企業は評価され、資本家の投資を受けることになる。
個別企業主体の日本的経営から、連結重視のグローバル・スタンダードな経営に変革することを、求められている。
実施時期は、1999年3月度から一部導入、2000年3月度から本格導入ということがすでに決定している。

(3)持株会社制度の導入
1998年1月に、改正独占禁止法の施行され、事業をおこなわない純粋持株会社が解禁された。これにより、純粋持株会社を親会社とし、子会社としてさまざまな事業を営む企業をもつ企業グループが構成できるようになった。M&Aなど活用した新規事業へのスピーディな展開や、不採算部門の速やか撤退、リストラクチャリングが可能なダイナミックな経営が展開できる。
しかし、現在のところ、連結納税制度が認められていないなど、納税面で不利な点があるため、純粋持株会社を設立したところはほとんどないが、今後、納税面での改正がおこなわれれば、金融機関やオーナー会社などを中心に、純粋持株会社を活用した経営を展開する企業が多く出てくると思われる。

(4)
国際会計基準採用の方向性国際会計基準の採用に関しては、まだ、決定した訳ではないが、1997年7月に大蔵省と法務省が「商法と企業会計の調整に関する研究会」を共同設置し、検討を進めている。この研究会からの報告をもとに、企業会計審議会、法制審議会で細目を検討するものと思われる。
国際会計基準採用における大きなポイントは、従来の取得原価主義会計を、時価会計に変えていこうという点である。特に、有価証券を常に時価評価することにより、含み資産に頼った経営や、持ち合い株による経営が難しくなり、日本的経営に大きなインパクトを与えるものになると思われる。
また、企業年金会計の導入も、ポイントは年金資産を時価評価するという点にある。
とかく、日本の経営はわかりにくと言われる。その原因は、オフバランス情報の多さにある。今後は、含み資産などオフバランス情報を、オンバランス化していくグローバルスタンダードな経営が求められている。

V.制度改正に対応する会計システムの課題
金融ビッグバンにおいて、どのような制度改正がおこなわれ、それぞれが企業経営に対して、どのような影響を与えるかを述べてきた。
では、その影響に対応するためには、会計システムはどのような課題を解決していかなければならないのだろうか。個別に見ていくことにする。
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. 外為法の改正外為法の改正により、為替リスクの低減、外為手数料の削減をはかることができる。
これを実現するためには、海外子会社、海外取引先との債権債務の相殺をするシステムを構築する必要がある。そして、ここでのポイントは、どの範囲で相殺処理を実施するかである。事業部・本社という個別企業内なのか、子会社を含めたグループ企業内なのか、グループ企業の取引先をふくめた範囲なのか。その範囲を広げれば広げるほど、そのメリットは大きくなるが、構築しなければならないシステムの難易度は高くなる。
ここで、システムといっているのは、情報システムだけではない。ビジネスプロトコルや業務処理手順などを含めた広義のシステムである。

2.連結財務諸表制度の見直し
連結財務諸表制度の見直しに対応し、連結重視の経営を実現する必要がある。そのためには、従来、重視されていなかった連結財務諸表の内容を充実させる必要がある。いままで、主役であった個別の財務諸表は、脇役となり、いままで、脇役であった連結財務諸表が主役になる。投資家は連結財務諸表の内容を評価、判断し、投資対象を決める。従来の連結財務諸表では内容が不足していることは明らかである。連結財務諸表の内容の充実、刷新が必要である。
また、連結ベースでのオフバランス情報、リスク情報の開示が求められる。オフバランス情報のオンバランス化を連結ベースではかる必要がある。

3.持株会社制度の導入
持株会社制度を活用し、新規事業展開の促進、不採算部門などのリストラクチャリングの円滑化をはかるためには、グループ企業全体の資金を集中化する必要がある。不採算部門から資金をひきあげ、積極投資すべき部門に資金投下を効率的におこなうためには、グループ内資金を集中化しなければならない。
これは、財務部門の集中化をふくんだものとなるだろう。
また、資本投下の最適化をはかるためには、各セグメントの状況を常に把握する必要がある。これを実現するシステムも必要となる。

4.国際会計基準採用の方向性
時価会計の日本の企業経営におよぼす影響は多大である。もし、時価会計が採用されたとき、どのような影響が自社にあるのか、また、どのように移行していけばよいのかをいまから検討する必要があると私は思う。
現状、まだ時価評価の範囲など未定な部分が多いが、その影響の大きさを考えると、できるだけ早く取り組む必要があると思われる。

W.金融ビッグバンに対応した会計システム
では、以上のような課題を解決するためには、どのようにして、会計システムを構築したらよいのだろうか。
金融ビッグバンは、日本の金融市場をグローバル・スタンダードな金融市場にしようという制度改正である。その金融市場から資金・資本を調達する日本の企業は、グローバル・スタンダードなビジネスプロセスを構築することが求められる。少なくとも、会計システムにおいては、グローバル・スタンダードなビジネスプロセスを構築することが必要である。
そして、もう一つの問題は、実施時期の問題である。いままで述べてきたように、金融ビッグバンはすでに始まっている。早急に、システムを構築する必要がある。
早期に、グローバル・スタンダードなビジネスプロセスを提供する会計システムを構築するために、どうしたらよいのだろうか。
構築しなければならないのは、日本スタンダードなビジネスプロセス、日本の業界スタンダードなビジネスプロセス、自社独自のビジネスプロセスではない。グローバル・スタンダードなビジネスプロセスである。いままでのように、システムを手作りする必要はない。すでに、グローバル・スタンダードなビジネスプロセスをもったパッケージシステムが、ERPの世界では提供されている。
このパッケージシステムをコア・アプリケーションとし、その外側に企業競争力を担う味付けをしていくことが、最も、早期に効率的にシステムを構築する方法であると、私は思う。

X.金融ビッグバン対応システムを構築するためには
金融ビッグバンに対応したシステムを構築するうえでの留意点を一つあげてみる。
それは、すべての面において、いままでの延長線上の改善ではなく、改革であるということである。
構築しようとしているのは、グローバル・スタンダードなビジネスプロセスである。それは、日本独自のビジネスプロセスの延長線上にはない。いままでのやり方、いままでの考え方を大きく変革する必要がある。
特に、重要なのは、経営者・従業員の意識の改革である。人間のこころには、「慣性」が働き、従来のやり方、考え方を守ろうという意識が働く。これを打破していくことが最も重要なポイントになると、私は思う。なぜなら、システムを運用し、活用するのは人なのだから。