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e マーケットプレイス
アーク・シンク・タンク
シニアマネージャー 井 上 実
米国におけるe マーケットプレイスの波が、日本にも押し寄せている。自動車部品、鉄鋼、繊維、電子部品、電力など多くの産業で、e
マーケットプレイス設立の動きがあり、その数は50を越えている。また、世界第2 位のスーパー、仏カルフールなどが参加する「グローバル・ネット・エクスチェンジ(GNX)」の日本法人設立など、海外eマーケットプレイスの日本進出の動きもスピードを増しつつある。
米国調査会社フォレスター・リサーチ社は、2004年米国内企業間ECの53%はeマーケットプレイス上で行われ、取引金額は、1.4兆ドルに達すると予測している。一方、米国eマーケットプレイス企業の株価が下落し、インターネットバブルは、BtoCから、BtoBの世界に広がりつつあるのかと言われ始めている。
ここで、eマーケットプレイス全体を概観し、活用のポイントに関して考察してみる。
e マーケットプレイスとは?
従来の企業間ECやEDIが1対nの企業間で行われる電子商取引であったのに対し、eマーケットプレイスは、n対mの企業間電子商取引である。複数の買い手と、複数の売り手が一同に介して電子商取引を行うことにより、購買力の増強及び売り手間競争を激化させ、より低価格での購買を可能にするとともに、ワン・ストップ・ショッピングの便利さを提供するものである。
eマーケットプレイスにおける取引方法としては、次の4つの方法がある。
(1)エクスチェンジ
エクスチェンジは、複数の売り手の希望販売価格と、複数の買い手の希望販売価格とのマッチングを行い、条件が合致した場合、取引が成立する。
(2)オークション
売り手が提示する商品に関して、複数の買い手が購入希望価格を入札し、最高値をつけた買い手が落札し、取引が成立する。
(3)逆オークション
買い手が購入希望を提示し、売り手が販売価格を入札していき、買い手の条件に折り合った売り手と買い手との間で取引が成立する。
(4)カタログ
複数の売り手から集められたカタログの中から、買い手が購入希望商品を検索し、発注する。カタログに掲載されている固定価格で取引される。
eマーケットプレイスの種別と特性
eマーケットプレイスは、マーケット主催者、メンバーのオープン性により特性が異なる。参加する際には、参加するeマーケットプレイスの特性を事前に十分理解する必要がある。
(1)マーケット主催者
マーケット主催者としては、買い手、売り手、及び買い手や売り手いずれにも属さない中立業者がある。
@買い手
買い手主催のeマーケットプレイスの主たる目的は、低価格購入の追求にある。強力なバイイングパワーを持つ買い手が複数集まることにより、売り手に対し、強力な影響力を行使するものである。GM、フォード、ダイムラークライスラー等によって主催され、年間7500億ドルの自動車部品購入取引を見込んでいるCovisintや、英国最大のスーパー、テスコなど11社が設立したWorld Wide Retail
Exchange(WWRE)や、冒頭のGNXなどがこれにあたる。膨大な購買力による低価格要求の激しさを恐れ、売り手業者があまり積極的に参加してこないという問題が発生している。
A売り手
売り手主催のe マーケットプレイスの主たる目的は、買い手に対するワン・ストップ・ショッピングの提供にある。買い手の業種業態に特化した売り手集積や、買い手の業務に特化した売り手集積がみられる。最近活況であるオフィスサプライや設備の修理・保全用の道具など扱うMRO(Maintenance, Repair and Operations)市場が後者にあたる。
B中立業者
買い手にも売り手にも属さないe マーケットプレイスとしては、ベンチャー企業主催するもの、eマーケットプレイス用ソフトを持つソフトベンダーが主催するものなどがある。日本においては、従来、eマーケットプレイスの役割をリアルの世界で果たしていた商社が、バーチャルの世界でもその役割を果たすべくeマーケットプレイスの主催者に加わっているケースが多く、日本の鉄鋼eマーケットプレイスは、すべて商社が主催している。
(2)オープン/クローズド
eマーケットプレイスに参加するメンバーが限定されているかどうかによっても、eマーケットプレイスの特性が異なる。
@オープン
参加者を限定せず、だれでも簡単にメンバー登録でき、取引参加ができる。しかし、BtoC ECとは異なり、取引される金額が高額であるため、与信審査などの手続きが必要となる。
また、スポット取引が主体であり、売り手における余剰品の販売、買い手における緊急購買などに多く使用されている。
Aクローズド
参加者は資格審査などにより限定され、継続的取引を前提に価格が提示され、取引される。参加者間のコミュニケーションは密であり、共同開発、共同設計などに及ぶものもある。日本における系列間の取引と同等のものである。
eマーケットプレイス活用成功のポイント
eマーケットプレイスを活用し十分な効果を得るためには、次のポイントを押さえる必要がある。
(1)付随サービスの提供
eマーケットプレイスにおいて提供される付随サービスに注目する必要がある。与信、保険、品質保証、物流など取引にまつわるサービスは不可欠である。取引情報のマッチングだけでは、実際の取引は完了しない。商品の受け渡しが行われ、代金決済が完了しなければ取引の完了とは言えない。鋼材など重量物を運搬できる業者は限られており、BtoC ECのように物流は宅配業者に任せればよいというものではない。
(2)買い手間、売り手間コミュニケーションの促進
買い手間におけるコミュニケーションや、売り手間におけるコミュニケーションがないとすれば、eマーケットプレイスは、単に1対nの従来の企業間ECが集積したにすぎなくなる。買い手間コミュニケーションによる部品の共通化や標準化、売り手間コミュニケーションによる新商品開発などが行われてこそ、n対mの企業集積として意味がある。買い手間、売り手間コミュニケーションを促進するコミュニティ機能を提供するeマーケットプレイスを選択すべきである。(3)企業内基幹システムの整備
eマーケットプレイスを十分活用して、コスト削減効果を得るためには、利用する企業内基幹システムの整備は不可欠である。基幹システムとの連動なく受発注業務のみをeマーケットプレイスにより効率化しても、企業システム全体の効率化には結びつかない。
eマーケットプレイスが一時的なブームやバブルで終わることなく、日本の企業間取引の効率化に貢献することを期待したい。