現状分析はコンサルタントのスキルを測る試金石

井上 実

 ITコンサルタントの主たる業務は、情報化企画の立案だ。立案された企画に基づき新システム開発・導入が進められる。したがって、新システムの全体図、概要設計図を描くのが情報化企画であるとも言える。

 情報化企画作業全体は、下図に示したような作業に分けられるが、この中で最も重要であり、かつコンサルタントの高いスキルを必要とするのが現状分析だ。

  

 現状分析では、企業の経営方針、経営戦略に基づき現状の業務処理や情報システムがどのように乖離しているか、どのような問題点を抱えているかを分析し、原因を追求したうえで解決策を導き出す。解決策の中には、組織改革や人事戦略に関わるものが含まれる可能性もあるが、その中から、業務処理や情報システムに関する解決策を、より具体的に企画するのが、システム化方針策定やシステム開発方針策定という情報化企画の後半の部分になる。

 現状分析で正しい解決策を導き出さないと、システム化方針策定でシステム導入の目的・目標・範囲を適切に設定することができず、システム導入自体が的外れのものになってしまう危険がある。そのため、現状分析の結果は、情報化企画だけではなく、システム開発・導入にも大きな影響をおよぼす。

 この重要な役割を持つ現状分析を担当するコンサルタントには、ITに関する知識だけではなく、経営戦略・業務処理に対する関する広い知識と分析力が求められる。経営方針・経営戦略を理解せずに現状分析はできない。コンサルタントには、経営とITの両方の知識が不可欠である。

 また、現状分析では経営者や現場部門担当者に対するインタビューが中心となる。現場部門の抱える顕在化した問題点の収集だけではなく、経営者の文書化できない経営に対する想いを理解や、潜在化した問題点の追究もインタビュー中で実施する必要がある。そのため、コンサルタントには、高いコミュニケーション能力や問題抽出力が求められる。インタビューの中で問題点に対する共通認識を作り出すことも必要であるため、コンセンサス形成能力も求められる。

 そして、原因の追求のためには分析力が、解決策を導き出すにはビジネスプロセス創造力が求められる。当然、システム化企画書をまとめるための文章力、顧客企業の役員幹部へ報告する際のプレゼン力も必要である。

 このようにコンサルタントとして必要なスキルを総動員し、真剣に取り組まない限り、現状分析はできない。決して、手抜きや人任せにできる作業ではない。まさに、現状分析はコンサルタントのスキルを測る試金石であると言える。

 筆者も現状分析にアシスタントとして、若いコンサルタントを使うことはあっても、人任せにしたことはない。未熟なコンサルタントを大量に投入してできる作業では決してないはずなのだが。