21世紀における日本企業の戦略

1.21世紀の日本企業に求められるネットワーク経営

21世紀は、20世紀後半から見られたように、インターネットを中心としたIT革新により、膨大な情報が一瞬にして世界を駆け巡り、情報に基づいた環境適応が猛スピードで社会全体で行われる時代となる。激しく変化する企業環境に対し、『どれだけ早く対応することができるか』、あるいは『変化を先取りすることができるか』が、企業競争力の源泉の一つになり、企業は、次の方策を採用する必要がある。

@自前主義からの脱却

環境の変化に迅速に対応する為には、事業活動に関わるすべて業務を自社で賄うという従来の自前主義から脱却する必要がある。自社の抱えるすべての業務において、環境の変化を迅速に捉え高い品質で対応し続けるためには、すべての業務に関連したヒト、モノを高品質で保ち続ける必要がある。そのためには、多くのカネを必要とする。自前主義を維持するためには、多くの経営資源が必要となる。また、従業員のモチベーション維持という面でも、自社の企業活動に直接結びつかない業務を担当者に対する評価は相対的に低くなりがちであり、モチベーションを維持することは難しい。

Aコアコンピタンスへの集中

自社のコアコンピタンスに関わる業務に集中してヒト、モノ、カネを投資し、他の業務は、その業務をコアコンピタンスとする企業へアウトソーシングすることにより、環境の変化に対して迅速に高い品質で対応することが可能となる。自社のコアコンピンタンスに集中することにより、自社従業員は、全員、直接自社の事業活動に直接関わることになり、モチベーションを維持することも容易となる。

2.21世紀の日本企業のコアコンピタンス戦略

21世紀においては、日本企業は次のコアコンピタンスに絞った戦略を採用すべきであると考える。

@高品質戦略

日本文化の特徴は、Hofstedeが、1968年と1972年に世界53カ国、被験者116,000名に実施したアンケートによると不確実性回避行動度と男性度の高さにある(Hofsted,1980)[i]。不確実性回避行動度とは不確実なことを許容する割合を示す。米国が46であるのに対し、日本は92であり、調査国の中でも3番目に高い値を示している。不確実なことを許さない日本の消費者の気質が、日本の高品質な製品を生み出したと私は考える。

日本の消費者は、製品は仕様通り完璧に機能するものだと考える。そのため、日本企業は徹底した品質検査、テストを行った後にしか製品をリリースできず、結果として、高品質な製品を提供している。IT関連ソフトウェア製品において、米国企業と日本企業との差は歴然と現れている。米国企業は十分にテストが終了していない段階でα版、β版と称して、消費者に無償で提供し、消費者にバグ出しの一部を肩代わりさせ、開発のスピードを上げることを優先している。日本企業は不完全なものを消費者に提供することによる自社の製品に対する品質評価が低下するリスクを侵すことを避けるため、自社内テストに時間がかかり、製品リリースが遅くなる。

この不確実性を回避し、高品質を求める日本人の気質をさらに伸ばし、海外で開発された技術を高品質な製品にして行くことに日本企業は徹することにより、海外企業との住み分けも可能となり競合を避けることができると考える。

A専用品戦略

高品質を求める日本の消費者は、細部にこだわる傾向がある。服の裏地の縫い目がそろっているかなどという細部にこだわりを求める。これに対応する為、細部にこだわった製品開発が日本企業では多く行われる為、汎用のハードウェアの上でソフトウェアにより実現することが難しくなり、専用のハードウェアを開発し始める傾向が強い。日本において、ワープロ専用機がパソコンにより駆逐されるまでに長い期間が必要であったのは、このためである。米国においては、パソコン ワープロソフトの機能が低い段階でも表計算などのできるということから、非常に短期間でワープロ専用機は駆逐されている。

この専用品を開発することに特化することにより、汎用品の開発を得意とする米国などと住み分けが可能になり、競合を避けることができる。IC分野ではその傾向はすでに現れており、インテルを代表とする汎用品を中心とした開発をする米国企業に対し、日本企業はASICやカスタムLSIなどの専用品で勝負をしている。

大競争時代である21世紀は、グローバル世界市場の中で日本文化にあったポジションを確保することが重要であると私は考える。

<注記>



[i] Hofstede,G ,Cultures cosequences: International differences in work-related venues, Beverly Hills, CA ,1984,