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| 京都で「ゾッキン」、吉野で「ドッキン」 | 紀州弁の分布範囲 |
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これまで書いてきた [d] と [z] の発音の区別がない紀州弁が一体どの辺まで 分布しているのかということが、次に問題になります。筆者の勤務先の職員(約70名)は 和歌山県内で生まれ育った方が多く、出身地は橋本から紀ノ川を経て和歌山、海南、 下津、湯浅、御坊、日高郡一円を過ぎ田辺付近まで分布しています。 これらの方の多くは [d] と [z] の区別に関しては多かれ少なかれ問題があります。 また、新宮市出身で和歌山市内のH病院勤務の塩嵜さんは、現在勝浦に住んでいる ご両親が「ザ行」と「ダ行」の区別を全く出来ないといって嘆いています。 こうなると、紀州弁は和歌山県全体に分布していることはほとんど明らかですが、 これ以外に拡がっていないか興味があります。 筆者の妹は現在、和泉砂川に住んでいて、泉南の中学校で数学を教えていますが、 大学を卒業するまで和歌山を出たことがなかったので、紀州人の例に漏れず 「ザ行」と「ダ行」の区別がきちんとできません。数字の授業で”絶対値”を 教える段になって「デッタイチ」とやるものですから、 よく生徒に笑われて、今ではあだ名が『デッタイチ』になっています。 これから見ると、紀州弁は和泉山脈の向こうまでは分布していないと考えていいでしょう。 (註)
紀ノ川筋の延長はどうかといいますと、先日ちょうどいい目撃者が筆者の
勤務先に来られました。その方は大阪府茨木市出身の井藤さんといって、京都の大学を
出たあと、吉野にほど近い高市郡高取町にある
『奈良県林業試験場』(現
奈良県森林技術センター)に勤務しています。井藤さんが就職した頃、図書室で「木材」に関係する書類を探そうと思って、 図書カードで検索しても「モクザイ」の項がみつからないのです。林業試験場に 木材関係の本がないのはおかしいと思ってよくよく調べてみると、なんと木材関係の本は すべて「モクダイ」の項に分類されていたのです。 これは、地元出身の職員が以前に分類したのを、誰もおかしいとは思わず、 支障もなかったのに、他府県出身者がやってきたため、はじめて”間違い”に 気が付いたということです。 また、この試験場に初めてワープロが入ったときのこと、それを使っている職員が、 「このワープロは壊れている。」と言うのです。井藤さんが聞いてみると「材木」という 漢字が出てこないというのですが、その人は一生懸命「ダイモク」 と入力していたそうです。 その頃、新しく赴任してこられた他府県出身の場長さんが吉野郡下北山村にある 『歴史民俗資料館』の視察に行ったとき、いろんな展示品のなかに一人用の箱膳が陳列してありました。 これの表示板には「おでん」と書かれていたので、 これを見咎(とが)めた場長さんが「これはなんだ!」と言うと、そこの職員はそれが何であるのかを質問されたのだと思って、 涼しい顔で「オデンです。」と答えたのだそうです。 それから、井藤さんのお話では、京都では雑巾のことを「ゾッキン」と言うのに対して、 吉野地方では「ドッキン」と言うそうです。 いずれも「ザ行音」を「ダ行音」で発音する傾向がみられます。 筆者が名古屋に就職したとき、直属の上司に置田さんという奈良県宇陀郡大宇陀町出身の方が いました。置田さんは「身体」のことを「カダラ」と言うくせがありました。 これはダとラが同時に入れ替わった例ですが、筆者の勤務先にいる和歌山県日高郡中津村出身の 田蔦さんは、今でも 「”カダラ”と”カラダ”のどっちが正しいんかわからん。」 と言っています。 以上の例から、「ザ行・ダ行の混同」は和歌山県内に留まらず、吉野を中心とした 奈良県南部の地域にまで拡がっていることが推測できます。 |
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| (註) 先日、 大阪府立大学の工学部長と お話することがありました。この方は、大阪府泉南郡岬町深日(ふけ) のご出身ですが、泉南でも最南端に位置し、和歌山県と接している岬町の深日や 淡輪(たんのわ)では、「ザ行」と「ダ行」、「ラ行」の混同が 認められるそうです。 |
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