忘れられた一票 2009
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司法脱線ブログ「法治国家つまみぐい」

現役最高裁判事プロフィール

(最終更新:2005年9月6日)

中川了滋裁判長の最新判断をアップしました。
( 9月2日 第二小法廷決定 )
【 警察署 取り調べ室内での発砲事件 】

 

 

〜 忘れられた一票 〜

 

 いやぁ、熱いですねぇ。 来る9月11日に行われることになった、衆議院議員総選挙の前哨戦。 これだけ熱けりゃ、水不足にもなります。

 近年まれに見るほど、自らの公約を死守しようとする小泉総裁ひきいる自民党勢力に対抗し、立て続けに発足する新党。 そんな流れの中で、民主党をはじめとする既存野党は、どこまで存在感を示せるのか。 そして、列島を震撼させた「政界新規参入」騒動。まぁ、ホリエモン候補は、少なくとも選挙費用に困ることはないでしょうけど。

 ただ、みなさんが衆院選で投票に行きますよね。 意中の候補者と政党に1票ずつ投じ終わって、「よし、帰って昼寝しようか」と思っていると、さらにもう1枚の投票用紙を渡されるはずです。 なんだ? このゴチャゴチャ書いてある紙切れは。

 日本には、世界的にもほとんど類例のない、ユニークな直接民主制的制度があります。 その名は「最高裁判所裁判官 国民審査」
 実態を知らない外国人が見たら、いかに日本人は裁判に強い関心を寄せているかと誤解されてしまいそうなものです。 実際は最高裁判所長官のお顔やご芳名すら、一般にはまったく浸透していないのに。

 国民審査は、日本国憲法施行から2年後、1949年に始まり、今回が第20回の記念大会です。 しかし、過去19回の審査で、最高裁の裁判官が実際に辞めさせられた例はございません。 もちろん誰かを辞めさせりゃいいってもんじゃありませんが、この民主的な審査によって、最高裁判事の地位が積極的に支持されているとも言いがたいのです。
 普通の有権者にとっては、初めて見る名前ばかりを並べられているわけで、それで「さぁ、是か非か?」と即答を求められてもムチャな話ですからね。 あまりにも実効性に乏しいので、この先、憲法が改正されるとしたら、まっさきに廃止候補となる制度でしょう。私は寂しいです。

 「でも、せっかくの記念大会だから、しっかり最高裁の裁判官について知ったうえで一票を投じてみようか」と、心を入れ替えてくださったあなた。 ありがとうございます。 そんなあなたのために、私は以下のコンテンツを作成しました。

 このページは、どなたか特定の裁判官を辞めさせるように働きかける市民運動の類とは、一切関係ございません。 とにかく、訪問者の皆さんが個々の考えで自由に審査できるよう、判断材料をわかりやすく加工してご提供することに徹しました。
 とくに、語録/発言集の作成は悩ましかったです。 客観性を保つ努力はしておりますが、どの発言をチョイスして採り上げるかで、その裁判官の印象はいくらでも変わってしまいますから。 なので、あくまで“参考”や“オマケ”という扱いとしてください。
 メインの判断資料として注目していただきたいのは、司法のトップとして出された判決や決定の中身についてです。

 国民審査という貴重な機会をきっかけに、ひとりでも多くの皆さんが、少しでも裁判や司法制度に目を向けて頂ければ幸いです。 そうして、それぞれの最高裁判事には、国民の存在をリアルに意識していただきながら、毎日の任務に邁進していただくことを望みます。 もちろん、その時々の国民感情を意識しすぎて、法解釈から離れた判断をされちゃあ論外ですけど。

 あ、そうそう。 国民審査のついでに、衆院選の投票もお忘れなく!

 

 


国 民 審 査 の 基 本 ル ー ル



 最高裁判所裁判官の国民審査は、「この中に辞めさせるべき裁判官はいるか?」を問う、ある種とてもネガティブな投票です。

 有効投票数のうち、辞めさせるべきという票が占める割合は、毎回だいたい10%前後なのですが、もし、辞めさせるべきとした票が過半数に達した裁判官がいた場合、その裁判官は罷免されます(※30日間の異議申し立て期間あり[審査無効の訴え])

 しかし、国民審査制度の意義は、「最高裁判所裁判官の罷免」という法的効果のみにとどまらないものと考えます。 たとえば、平均値を大きく超えた、20%や30%近くの「罷免票」を突き付けられるだけでも、その裁判官が受ける精神的衝撃、あるいは自省を迫られるプレッシャーは、相当なものとなるはずです。

 この国民審査によって罷免された裁判官は、その後5年間は、最高裁判事になることができません。 裏を返すと、5年待って定年(満70歳)に達していなければ、内閣の任命によってまた復帰できる可能性も残るということですが。
 しかし、日本国民の多数意思によって「免職」を言い渡された、という事実は重大であり、決して拭いきれません。


■ 審査権

 衆議院議員の選挙権を持っている人には、すべて与えられています。 選挙管理委員会から封書が届いたなら、指定された投票所で国民審査もできると思っていただいて結構でしょう。


■ いつ、どこでやってますか?

 衆議院議員総選挙と並行して行われます。 9月11日(日)、最寄りの投票所で、その投票所が開いている間(PM8時まで?)ですね。

 国民審査の期日前投票・不在者投票は、9月4日(日)からの1週間に限られるそうです(※衆院選の期日前投票は、8月31日(水)以降)


■ 審査のしかた

 選管の職員さんから手渡された用紙に記されている中で、もし、あなたが罷免させるべきと思う裁判官がいたら、その氏名の上にある欄に×印を付けてください。

 罷免させる必要のない裁判官には、何も書かないでください



(((( こんなことをすれば無効票になります! ご注意! ))))

  •  ×印以外の記号を使う。
     
    (大好きな裁判官に◎印を付けたり、大嫌いな裁判官にドクロマークを書いたりするなど)

  •  欄外に×を付ける。
      (大嫌いな裁判官の名前に、直接大きくバッテンするなど。 お嫌いなのはわかりますが落ち着いてください)

  •  ×印を自筆で書かない。
      (木彫りで自作した
    ×印のハンコを持ち込んで押すなど。 エネルギーをそそぐべき方向性を、いまいちど考えなおしてみましょう)

  •  所定の審査用紙を使わず、勝手に持ち込んだ紙に書く。
      (どうぞ手ぶらでお越しください)



  •  ひとり1票、無記名で投票し、投票の秘密が保障されているのは、衆院選と同じです。

     

    ↓ こんな感じで載っています ↓

    HTMLでの表示上の限界もありますので、
    表の形が実物とは微妙に違います。
    実物では、氏名とフリガナは
    同一の欄に入るはずですので、ご了承ください。

     
     
               
     
             
















































     

     

     

    ↓ 罷免させたい裁判官を見つけたら ↓

    ×  







     

     

    日本司法の逆説 ― 最高裁事務総局の「裁判しない裁判官」たち
    4772704299 西川 伸一 (明治大学 政治経済学部 教授)
    五月書房 2005-05

    Amazonで詳しく見る by G-Tools

     裁判官の人数が絶対的に足りない日本の司法権に、なぜ、無視できない数の「裁判しない裁判官」たちが存在しうるのか。

     そして、「裁判官の独立」というタテマエをぼやかす、最高裁からの人事的圧力。 さらに、日本全国の裁判官の判断内容を、最高裁がトップダウン方式で統制しているとウワサされる、「長官所長会同」という名の集い。 これらも司法権の正義なのか? それとも必要悪なのか?

     少し値が張ってしまう本なのが玉にキズですが、司法権という聖職組織が抱えるドロドロした現実を少しでものぞいてみたい方には、ぜひお勧めしたい一冊です。

     



    ◆  審 査 対 象 裁 判 官   全 6 名 
    (任命順) ◆

     

     あまりお時間が無い方は、さらに簡潔にまとめております現役最高裁判事プロフィールだけでもご覧になって、後悔のない一票を投じてください。

     記載内容の「正確さ」と「読まれやすさ」の両立には慎重を期しておりますが、誤りや説明不十分、あるいは「こんな書き方では誤解を与えかねない」といった記述箇所については、遠慮なくご指摘ください。

     以下の表は、国民審査の判断資料についてまとめている、ネット上でもほぼ唯一のコンテンツとなっているのが現状です。 それにもかかわらず、不正確な記載を放置したままだということになると、あまりにも問題が大きいため、忌憚のないご意見を広く募集しております。 ブログのコメントとして指摘していただけると、対応しやすくて助かります。

     内容の間違いが自由に採り上げられ、速やかに修正されるという前提があって、はじめてその内容の正確性や客観性が担保されるものと考えます。 皆さまのご協力をよろしくお願い申し上げます。

     

     

     

    倒れかけの企業に息を吹き込みつづけた、タフな交渉人

    才 口 千 晴(67)

    前職:弁護士 長野県出身 中央大学法学部卒

    ■ 1998/07/07 朝日新聞インタビュー

     「弁護士として数々の倒産事件を担当したが、日本の企業は情報を公開しない。上場企業でもギリギリまで内情を隠しがちだ。手形を乱発して信用を膨らませ、いざ倒産してみると会社はボロボロなのが現実だ。倒産しても再建を図るのなら、経営者の意識改革も欠かせない」

     「金融機関は監督官庁の指導によって、超法規的な処理がなされることも多いが、法治国家である以上は法律に基づいた処理をするべきだ。一部の行政機関の判断で不透明な処理を容認すると、公正も何もない。住専処理から同じことが繰り返されている」

    ■ 2001/07 「自由と正義」誌  “法学教育”雑考

     「(法学部)学生の人気は、検察官が圧倒的に高く、特に女子学生の権力志向は例年変わることはない。授業においてツーショットの記念撮影を求められるのは、検察官に限られる。裁判官には常連客的人気があり、証拠に基づき判決をくだすクールな職業に憧れと期待を寄せる学生も多い。ところが、弁護士の収入やアフターファイブ等には興味津々であるが、靴を減らして東奔西走するタイトな弁護士生活には、驚きと敬遠の気持ちを隠さない。現代っ子気質の一端がうかがえて面白い」

    ■ 2004/01/06 最高裁判事就任のあいさつ

     「裁判官は国民の喜びや悲しみ、物の道理が分かっていることが大事。弁護士としての40年の実務感覚と経験を生かしたい」 「最高裁は国民の権利救済の最後のとりでというイメージだが、実態はどうか。権威主義的で不親切といった批判の払しょくを迫られている」「これからは裁判官として司法の国民化のために努力したい」

    ■ 2004/01/07 毎日新聞インタビュー

     「(弁護士時代は)可能性がある限り、再生の道を探ってきた」「国民に一番近い法曹として、人々の喜びや悲しみが分からないようではダメだ、と自分に言い聞かせてきた」
     「裁判所は孤高にならず、虚心坦懐に様々な意見に耳を傾けていかないと」

     「(週末は長野県に借りた畑でキャベツや枝豆をつくっているが)手間をかければ、必ずいいものができる」

    ■ 2004/04/04 中央大学法科大学院の入学式 来賓あいさつ

     「小さく固まらず、タフな法曹を目指して欲しい」

    ◆ 2005/01/26大法廷判決
      
    (※地方公務員[保健職]である在日外国人は、地方自治体の管理職に昇進できるか)



     地方公務員の管理職ともなれば、公権力を行使する立場となる。

      

     わが国以外の国家に属する者が、公権力を行使することは本来、わが法体系の想定するものではない。

      

     管理職試験の受験資格として、日本国籍を要求して、試験を受けさせなかったとしても、憲法の定める『法の下の平等』には反しない。

      

     慰謝料は認められない。(以上の法廷意見に同調)


     ※ 本件をテーマに、過去にブログの記事としても書きましたが、
    こちらこちらは、あくまで個人的意見としてお読みください。

    ◆ 主任裁判官(小法廷の裁判長)として出した、おもな判決
       (勝った側は、
    【赤太文字】

    ● 2004/06/10 「ウソつき常習男」名誉毀損

      【原告】鈴木宗男 氏(衆院議員) ※請求額:1000万円
      【被告】新潮社(週刊新潮)

      ◆上告棄却(名誉毀損にあたらない)◆

      → 記事の真実性を認め、「自由な論評による批判は許される」とした東京高裁判決を支持。


    ● 2004/07/15 遺跡ねつ造疑惑報道に、抗議の自殺(名誉毀損裁判)

      【原告】別府大学名誉教授(故人)の遺族 ※請求額:3300万円
      【被告】文芸春秋社(週刊文春)

      ◆920万円の慰謝料・謝罪広告掲載命令(名誉毀損にあたる)◆

      → 被告のずさんな取材手法を指摘し、記事の真実性を否定した福岡高裁判決を支持。


    ● 2004/10/14 非嫡出子(婚外子)の法定相続分を、嫡出子の半分としている民法の規定は、法の下の平等に反しないか? ★反対意見を表明

      ◆反しない(※ただし、5名中2名が反対)

      法廷意見  → 「法律婚主義の建て前からは合理的な区別」とする従来からの判例を踏襲。

      才口裁判官の反対意見  → 非嫡出子であることは、自分の意思ではどうにもならない出生により取得する社会的身分である。嫡出子と非嫡出子とを区別し、非嫡出子であることを理由にその相続分を嫡出子のそれの2分の1とすることは、その立法目的が、法律婚の尊重、保護という、それ自体正当なものであるとしても、その目的を実現するための手段として、上記の区別を設けること及び上記数値による区別の大きさについては、十分な合理的根拠が存するものとはいい難い。したがって,本件規定は、人を出生によって取得する社会的身分により、合理的な理由もないのに、経済的又は社会的関係において差別するものといわざるを得ず、憲法14条1項に違反するものというべきである。

     また、多数意見が引用する大法廷決定後、既に9年以上が経過し、その間、男女の結婚観等も大きく変わり、非嫡出子が増加傾向にあるなど、立法当時に存した本件規定による相続差別を正当化する理由となった社会事情や国民感情などは、大きく変動しており、現時点では、もはや失われたのではないかとすら思われる状況に至っている。

     このような状況に照らすと、非嫡出子が被る個人の尊厳や法の下の平等にかかわる不利益は、憲法の基本原理に則り、できる限り早い時期に法律の改正によって救済すべきであるが、それを待つまでもなく、司法においても救済する必要がある。


    ● 2004/11/25 NHK番組が、離婚した夫婦の夫側の言い分だけを一方的に報道(名誉毀損裁判)

      【原告】埼玉県の女性
      【被告】日本放送協会

      ◆130万円の慰謝料を認容(名誉毀損にあたる)◆ ただし、訂正放送の請求は認めず

      → 放送法4条は、放送事業者に対し、自主的に訂正放送を行うことを国民に対する義務として定めたもの。その趣旨からみて、個人や団体の請求権は付与していないと解される。


    ● 2005/01/27 茨城・2人殺害事件で、死刑確定

       【被告人】建設業手伝いの男(37歳)

     1989年(昭和63年)8月9日未明、同級生(当時21歳)を出刃包丁で殺害。さらに同年9月13日早朝、別の同級生を絞殺した。
     また、被告人は自分の車に放火し、車両保険金490万円をだまし取ったうえ、「(自分が殺害した2人に)車を燃やされた」として、被害者2人の家族から金を脅し取ろうとした。殺害の動機はいずれも、被害者を放火犯に仕立て上げ、保険金詐欺や恐喝を成功させるためだった。

      ◆上告棄却(死刑)◆

      → 悪質、非道な計画に沿った犯行。動機も金銭欲だけで酌量の余地がなく、殺害方法も甚だ残忍、冷酷である。謝罪文を送り慰謝に努めていることなどを考慮しても死刑を是認せざるを得ない。


    ● 2005/01/27 千葉・鎌ヶ谷市長の受託収賄 実刑確定

        【被告人】鎌ヶ谷市長(52歳)

     被告人は、同市などでつくる環境衛生組合の管理者だった1999年7月―11月、同組合発注のレクリエーション施設工事について、元参院議長の元政策秘書(※贈賄罪で有罪確定)らから、大手ゼネコン「熊谷組」に受注させるよう依頼されて了承。見返りとして翌年、計1000万円を受け取った。

      ◆上告棄却(懲役2年、追徴金1000万円)◆


    ● 2005/03/10 大分県職員が、議員野球大会の応援に公費で出張(住民訴訟)

       【原告】おおいた市民オンブズマン  ※請求:旅費約10万円を県に返還せよ
       【被告】県職員2名、大分県知事

      ◆原審破棄(この税金の使い方は許容範囲内)◆

      → 野球応援は県の公務に当たるとはいえず、総務部長の職務に当たる「県大阪事務所での訓示」も出張目的の一つだったことも考慮しても、県知事の旅行命令には裁量権を逸脱・乱用した違法がある。 しかし、具体的に損害賠償責任を負わせなければならないほどの著しい違法性はない。


    ● 2005/04/07 日本に帰化した外国出身者が、「外国人お断り」として、民間温泉での入浴を拒否された事件

       【原告】大学助教授の男性(アメリカ出身の日本人)
       【被告】小樽市(北海道)

      ◆上告棄却(地元の自治体には責任なし)◆ ※なお、温泉側に命じられた約300万円の損害賠償は、すでに原審で確定

      → 人種差別撤廃条約は、それぞれの自治体に具体的な条例制定を義務付けているとまではいえない。被告は入浴拒否をやめるよう、各入浴施設に指導もしていた。


    ● 2005/04/18 公道を走っていたが、窓は閉じられていたクルマの中で発砲するのも、銃刀法違反というべきか?

       【被告人】暴力団幹部の男

      ◆上告棄却(無期懲役)◆

      → 民家などが立ち並ぶ国道を走行中の車内で発射した。不特定、多数の者の用に供される場所であることが明らかな道路上で行われており、銃刀法に定める発射罪に該当する。


    ● 2005/06/16 「いかほどの金に染まって医師の心を売り飛ばしたか」名誉毀損

       【原告】安部英 刑事被告(帝京大副学長) ※請求額:1000万円
       【被告】櫻井よしこ氏(ジャーナリスト)

      ◆原審破棄(名誉毀損にあたらないとの逆転判決)◆

      → 取材結果を真実と信じる相当の理由があり、著書での記述に違法性はない。

      ちなみに私は、口頭弁論を傍聴してきました。


    ● 2005/06/23 高さ制限を超えるマンション建設に対して、是正を求めない東京都は怠慢?

       【原告】マンション周辺住民
       【被告】東京都

      ◆上告棄却(訴えの不適法却下)◆

      → 建物の高さを規制する条例が施行された時点では、当該マンションの建設工事はすでに始まっていた。したがって、その条例は適用されない。


    ● 2005/07/14 リスクの大きすぎる金融商品を投資家に勧めるのは不法行為か? ★補足意見を付与

       【原告】水産会社(広島市)
       【被告】野村証券

      ◆原審差し戻し(不法行為では無いようだが、もっとじっくり審理してみろ)◆

      法廷意見 → 相手の経験程度に著しく適合しない勧誘は不法行為にあたる。しかし、被告による勧誘がただちに「適合性の原則」に著しく逸脱しているとみることはできず、不法行為だとはいえない。
     その他の原告の主張について、さらに審理を尽くすべく、原審に差し戻す。

      才口裁判官の補足意見(全文) → 私は、法廷意見に賛成するものであるが、本件事案の特殊性にかんがみ、差戻審の審理について、次のとおり補足して意見を述べておくこととしたい。

     オプション取引は、抽象的な権利の売買であって、その仕組みを理解することは容易ではなく、特にオプションの売り取引は、利益がオプション価格の範囲に限定される一方、損失が無限あるいは莫大になる危険性をはらむものであり、各種の証券取引の中で、最もリスクの高い取引の一つであるということができる。証券会社が顧客に対してこのようなオプションの売り取引を勧誘してこれを継続させるに当たっては、格別の配慮を要することは当然である。証券会社に求められる適合性の原則の要求水準も相当に高いものと解さなければならないが、本件においては、被上告人(※原告)が一般投資家の通常行う程度の取引とは比較にならないほどの回数及び金額の証券取引を経験し、その経験に裏付けられた知識を蓄えていたことから、結論的に適合性の原則の違反は否定されるべきものである。しかしながら、本件取引の適合性が認められる被上告人についても、証券会社がオプションの売り取引を勧誘してこれを継続させるに当たっては格別の配慮が必要であるという基本的な原則が妥当することはいうまでもない。

     このような観点から、本件においては、証券会社の指導助言義務について改めて検討する必要がある。すなわち、被上告人のような経験を積んだ投資家であっても、オプションの売り取引のリスクを的確にコントロールすることは困難であるから、これを勧誘して取引し、手数料を取得することを業とする証券会社は、顧客の取引内容が極端にオプションの売り取引に偏り、リスクをコントロールすることができなくなるおそれが認められる場合には、これを改善、是正させるため積極的な指導、助言を行うなどの信義則上の義務を負うものと解するのが相当であるからである。

     本件においては、被上告人が主張する「顧客にできる限り損失を被らせることのないようにすべき義務違反」の趣旨は必ずしも明確でなく、この点についての主張、立証も尽くされているとはいえないが、本件の異常ともいうべきほどオプションの売り取引に偏った取引状況を見ると、A(※野村証券)がこのような義務を果たしていたといえるか疑問の余地があり、差戻審においては、このような点についても十分な検討がなされるべきである。


    ● 2005/07/14 大分県(土木建築部)が、食糧費を支出した飲食をともなう懇談会の参加者名を非開示とした事件

       【原告】おおいた市民オンブズマン
       【被告】大分県

       ◆上告棄却(情報を公開せよ)◆

       → 懇談会に参加した県職員の職名や職員番号だけでなく、氏名まで開示すべきとした原審判決を支持。


    ● 2005/07/24 パチスロ機の特許(行政訴訟ルート)

       【原告】大手パチスロ機メーカー「アルゼ」(東京都江東区) ※請求:特許無効審決の取り消し
       【被告】特許庁 ※別のメーカー「サミー」(東京都豊島区)の特許申請を認めた。

       ◆上告棄却(サミー社に特許を認める)◆

       → 原告の特許無効が確定。 それにともない、別の民事訴訟で「サミー」社と「ネット」社(大阪)に対し、約84億円の賠償を命じていた地裁判決も取り消しへ。

    才口千晴

     

     

     

     

    時の政権を裏から支えた、法解釈アドバイザー

    津 野   修(66)

    前職:内閣法制局長官(司法試験にも大学在学中に合格)
    愛媛県出身 京都大学法学部卒

    ■ 1996/04/03 読売新聞インタビュー(内閣法制局 法制次長時代)

     (当時の大蔵省からの転身だが)

     「この仕事に誇りを持っています。予算は単年度限りだが、法律はずっと続くものだから」

    ■ 1997/07/16 産経新聞インタビュー

     (内閣提出法案を審査するプロセスが記載された資料が部外秘扱いだったことについて) 

    「法案として世に出たものだけがすべてであり、その過程をオープンにすることがいいことなのかどうか」

    ■ 1997/08/15 読売新聞インタビュー

     「政府が政策として国際貢献を積極的にやろうとする時、法制局も当然前向きに対応する。ただ、憲法や法律の規定、確立した解釈の範囲内で考えるのは当然だ」

    ■ 2001/10/15 衆院テロ対策特別委員会 (法制局長官としての政府見解)

    --------- 横須賀を母港としておりますミサイル駆逐艦オブライエン、これからもトマホークが発射されているということなんですけれども、トマホークを発射しているような艦船自体も、戦闘行為が行われている地域に入らないのですか。

     (前略) この法案(※テロ特措法案)にあります定義の、第2条でございますけれども、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。」ということが「行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域」と言っておりますから、全くできないわけではないと思いますので、例えば、現に発射していない、何も発射していない時間帯も十分ありますから、そういった現に戦闘行為が行われていない期間というのは、仮にこれが該当するとしても、十分いろいろなことをすることができる、基本的には、この法案の定義しております戦闘行為、これ自身には直接は該当しないであろうというふうに思います。

    ■ 2001/11/05 朝日新聞インタビュー

     やっぱり戦闘行為だよね。素直に認めれば良かった。

     なんとなく防衛庁長官の答弁をフォローしてしまった。「しまった」と思ったけど、戦闘行為じゃないという方がおかしい。非常に反省し、悩みもした。翌日、答弁を修正できたので、なんとか息を付いた。あれは本当にまずかった。

    ■ 2004/02/26 最高裁判事就任のあいさつ

     「身の引き締まる思い」「裁判に求められるのは、公平公正に尽きる。労を惜しまず誠心誠意、職務を遂行したい」

     「現実の裁判とは少し違うが、法律の仕事をしてきた。行政の実情もある程度分かっているので、これらの経験を最高裁判事の仕事に生かしていきたい」「(司法改革について)裁判所が国民にとって使いやすくなる必要がある」

    -------- 行政官出身ということで、行政の意向をくみとりやすくなるのではないか。

     「いや。むしろ、(行政側には)厳しくなるかもしれない」

    ◆ 2005/01/26大法廷判決
      
    (※地方公務員[保健職]である在日外国人は、地方自治体の管理職に昇進できるか)



     地方公務員の管理職ともなれば、公権力を行使する立場となる。

      

     わが国以外の国家に属する者が、公権力を行使することは本来、わが法体系の想定するものではない。

      

     管理職試験の受験資格として、日本国籍を要求して、試験を受けさせなかったとしても、憲法の定める『法の下の平等』には反しない。

      

     慰謝料は認められない。(以上の法廷意見に同調)


     ※ 本件をテーマに、過去にブログの記事としても書きましたが、
    こちらこちらは、あくまで個人的意見としてお読みください。

    ◆ 主任裁判官(小法廷の裁判長)として出した、おもな判決
       (勝った側は、
    【赤太文字】

    ● 2004/04/26 新潟・強盗殺人事件

       【被告人】暴力団組員2人

     両被告は02年1月、一方の被告と同居していた男性から、現金約2万8000円とキャッシュカードを奪ったうえで、男性の首を絞めて窒息死させた。さらにカードで銀行口座から現金80万円を引き出すなどした。

       ◆上告棄却(無期懲役)◆

       → 両被告は量刑不当などを主張するだけで、上告理由に当たらない。


    ● 2004/09/10 福井県職員の「カラ出張」問題(内部調査文書開示)

       【原告】市民オンブズマン福井のメンバー
       【被告】福井県

       ◆原審破棄(情報を公開するようにとの逆転判決)◆

       → 県の各部局が旅費をめぐる不適切な支出を整理、集計した取りまとめ文書については、県の調査委が作成し、決裁終了後に公表された報告書の基礎になったものである。決裁対象である報告書と同視すべきであり、公開の対象となる文書に当たる。(なお、原告側が開示を求めていた帳簿、ノート類、預金通帳については、理由を記載した書面が提出されていないとして上告を却下)


    ● 2004/11/08 「バブル崩壊」という経済状況の変化を理由にした、ビル賃料の減額請求権

        【原告】不動産会社「長谷工」
        【被告】地主(兵庫県)

     原告は1992年、被告にビル2棟を建設させ、その後に建物ごと借り上げる「サブリース契約」を、被告と締結。ただ、被告が「2年ごとに賃料を5%増額する」との特約を付していた。
     原告側が支払う賃料は当初月額927万円余で、その後、特約通り値上がりしたが、ビルにはすでに空室が目立つようになっていた。

       ◆原審破棄・差し戻し(原告の逆転勝訴。このケースでも減額請求権が認められることを前提に、審理をやりなおせ)◆

       → たとえ、賃料の増額特約があっても、原告側には、借地借家法が定めた減額請求権がある。


    ● 2004/11/19 日本最高齢での死刑確定(保険金殺人)

       【被告人】スナック経営者の女(77歳)

     被告人は、妹やその夫と共謀し、1987年1月、自宅で夫(当時54歳)を酔わせたうえ、鼻や口をふさいで窒息死させ、「就寝中に死亡した」などと偽って、生命保険金約5000万円をだまし取った。
     さらに、92年8月には別の知人男性と共謀し、同居人の無職女性(当時60歳)を石で殴って殺害、遺体を道路に放置して交通事故を装い、生命保険金3500万円をだまし取ろうとした。

       ◆上告棄却(死刑)◆

       → 被害者を巧みに懐柔して保険金をかけ、周到な計画に基づく冷酷、残忍な犯行を主導した。保険金目的という動機に酌量の余地はない。態様も冷酷、残忍で、死刑判決を是認せざるを得ない。


    ● 2004/11/29 元「従軍慰安婦」の戦後補償裁判

        【原告】「太平洋戦争犠牲者遺族会」の韓国人メンバー35人 ※請求額:7億円
        【被告】

       ◆上告棄却◆

       → 戦争や敗戦による損失に対する補償を、憲法は予想していない。


    ● 2004/12/10 強盗か? それとも、窃盗+脅迫か?

        【被告人】無職の男(69歳)

     被告は2003年1月、埼玉県越谷市の民家から財布などを盗んだ。約1キロ離れた公園で中身を調べたところ約3万円しか入っておらず、30分後に再び盗みに入ろうとしたが、この家の主婦に見つかり、ナイフを振り回して脅した。

       ◆原審(懲役5年)を破棄・差し戻し(本件は強盗罪ではなく、窃盗+脅迫の事例ではないのか。その線でやりなおせ)◆

       → 誰からも発見、追跡されずに犯行現場を離れ、ある程度の時間を過ごしている。その時点で、窃盗の実行行為はいったん途切れており、事後強盗罪(窃盗の機会の継続中に、暴行や脅迫があったことが必要)の成立を否定。

       
    ……なお、法定の処断刑(※事件発生当時の刑法による)は、強盗罪ですと『5年以上15年以下の懲役』となりますが、窃盗罪と脅迫罪との併合罪ですと『1ヶ月以上12年以下の懲役』または『1ヶ月以上10年以下の懲役と、1万円以上30万円以下の罰金とを両方科される(併科)』となります。したがいまして、「窃盗+脅迫」だと認定するほうが刑が軽くなりえます。


    ● 2005/05/13 航空手荷物の延着は、1日遅れならセーフだが、5日遅れたらアウト

        【原告】弁護士(1日遅れで受け取り)、大学研究員(5日遅れで受け取り)
        【被告】オランダ航空

       ◆上告棄却◆ ※大学研究員のほうの賠償請求のみ一部認容


    ● 2005/06/13 山形・幼児虐待死事件

        【被告人】被害者男児の母親と同居していた男(31歳)

     被告人は同居女性と共謀し、2003年に自宅アパートで男児への暴行を繰り返すなどして外傷性ショックで死亡させ、遺体を同市の山中に埋めた。

        ◆上告棄却(懲役13年)◆

        → 主導的役割を担っており、刑事責任は同居女性(母親)より重大。


    ● 2005/07/04 署名入り控訴申し立て書のコピーを提出しても、控訴として有効か?

        【被告人】アメリカ海兵隊少佐(強制わいせつ未遂容疑で係争中)

        ◆特別抗告棄却(懲役1年 執行猶予3年)◆ 控訴は無効となり、1審判決が確定

        → 申し立て書には被告人の肉筆署名が必要で、署名の複写があっても無効である。


    ● 2005/07/15 三重・連続強盗射殺事件

        【被告人】無職の男(45歳) ※共犯者の会社役員には1,2審で死刑判決。上告中。

        ◆上告棄却(無期懲役)◆

        → 計画、実行両面で重要な役割を果たしており、死刑の選択を十分考慮しなければならないが、進んで詳細な自供をするなど酌むべき事情もある。


    ● 2005/07/22 警察の捜査令状は、民事訴訟での「文書提出命令」の対象になりうるか?

        ◆「法律関係文書」にあたるとして、提出命令を認める決定◆

        → 令状は既に容疑者側に示されており、プライバシーを侵害する記載もないので、開示に支障はない。

        → ただし、警察が裁判所に令状を請求したときの書類については、本人に示されておらず、個人情報や捜査の秘密が書かれているので、開示できない。

    津野 修

     

     

     

    次期 長官候補

    今 井   功(65)

    前職:民事裁判官 兵庫県出身 京都大学法学部卒

    ■ 1984/10 「法学セミナー」誌 増刊 『現代の裁判』座談会(東京地裁判事時代)

     「これは裁判官に限らず、若い世代一般の傾向ではないかと思うのですが、非常に過保護に育てられてきていますね」「たとえば新任の裁判官が来ますと、非常に素直だが、あまり自分の意見を言わないという面があるのかもしれません。ただ、具体的事件に直面しますと、記録を十分読み、それを通じて自分の見解というものを確立することを迫られるわけです。そのような経験を積み重ねることによって、裁判官としてだんだんと成長するわけでして、そう心配したほどではないかと思いますけども」

    ■ 2004/12/26 最高裁判事就任のあいさつ

     「とりわけ最高裁は最終審であり、影響が大きいので、非常に緊張しています。 もとより力は微力ですが、この責務を果たすべく、全力を傾注したいと思っています」

     「国際化や規制緩和の中で、社会は事前調整型から事後救済型に変わり、司法の役割も変わっている。(行政事件訴訟法の改正を踏まえ)国民の権利救済をさらに実効性あるようにすることが必要だ」

    ■ 2005/01/21 法律新聞インタビュー

     私は小さいころから、力が強いとか、お金があるという人が争いを解決していくのはおかしい、という気持ちを持ってきました。 やはり、道理があって、それをもって世の中はおさまり、争いは解決していくべきじゃないか、と。
     幼い考えではありましたが、そこから法律はひとつの道理と考え、大学へ行って勉強するようになり、法律実務家を志すようになりました。
     自分は性格として行動的積極的ではないほうなので、裁判という判断をする側が向いているように思い、この道に進みました。 40年やってきましたが、自分には向いていたと思いますね。

    ◆ 主任裁判官(小法廷の裁判長)として出した、おもな判決
       (勝った側は、
    【赤太文字】

    ● 2005/02/24 元「従軍慰安婦」国家賠償訴訟

       【原告】台湾人女性9人(うち2人死亡) ※請求:約7000万円+謝罪
       【被告】

       ◆上告棄却◆

       → 「個人は加害国に直接賠償請求する資格を持たない」とした原審(東京地裁・東京高裁)の判断を支持


    ● 2005/04/19 千葉・木更津 韓国人女性殺害・死体遺棄事件

       【被告人】韓国籍の無職男(35歳)

     2002年2月、木更津市の交際相手の姉(当時36歳)のアパートで、交際を反対されて口論になり、口をふさいで窒息死させるなどした。その被害者の遺体は、市内の資材置き場でスーツケースに入れられた状態で発見された。
     事件後、被告人は韓国に帰国したが、同年4月締結の「日韓犯罪人引き渡し条約」を初適用され、同国から県警に引き渡された。

       ◆上告棄却(懲役14年)◆


    ● 2005/04/25 奈良・同和地区向け市営住宅の、公営住宅法改正にともなう家賃値上げ

       【原告】橿原市
       【被告】市営住宅の住民59人 (※値上げには応じていないが、旧家賃は法務局へ供託)

       ◆上告棄却(約1億8000万円の滞納賃料支払い命令)◆


    ● 2005/06/17 企業にライセンスを与えた後の特許権者は、特許をどこまで主張できるか?

       【原告】「医薬分子設計研究所」社長(同研究所に、ある薬品開発特許の「専用実施権」を与えた)
       【被告】住商エレクトロニクス

       ◆上告棄却(特許侵害行為の差し止め請求を認めた)◆

       → 売り上げに応じて特許権者に収入がある場合や、専用実施権者が特許権侵害を放置している場合、また、専用実施権者の死亡などで実施権が消滅した場合は、もとの特許権者から侵害の差し止めを求める現実的な利益がある。


    ● 2005/07/08 「世界初の司法判断」 投票用紙を使わずに行われた地方選挙の無効が確定

       【原告】電子投票で実施された市議選で落選した候補者ら15人
       【被告】岐阜県選挙管理委員会

     2003年7月20日投開票の岐阜県可児市議選(定数24に29人が立候補)では、29カ所の投票所で投票サーバー58台、投票端末機189台を使い、電子投票を実施した。午前7時から投票が開始されたが、午前8時半ごろから午前9時半ごろにかけ、各投票所の投票機に投票記録の失敗や記録の遅延という異常が発生した。
     異常の発生は、投票サーバーの放熱ファンの位置を変更したことなどにより、サーバー内部の放熱が不十分となって温度が規定値より上昇したため。電源を切って再起動したり、第二サーバーに切り替えたり、本体の扉を開けてうちわであおぐなどの対応が取られたが、異常が3回発生した投票所や、回復が午前11時以降になった投票所があり、異常が最も長くなった投票所では1時間23分に達し、全29投票所の合計は15時間33分だった。

     (1)最後まで投票できなかった投票カードが13枚。
     (2)投票の記録の失敗が97件。
     (3)一時的とはいえ、記録媒体に記録された516個の記録を削除。
     (4)投票の記録ができたのに端末が情報を受信できず不良カードとして処理したカードが25枚。
     (5)操作端末に挿入した後で、排出されないなどで正常に使用できなかったカードが26枚。
     (6)少なくとも9人が二重投票になったと確認。
     (7)広見第二投票所(※広見公民館ゆとりピア)では、投票機を提供した会社の従業員が、画面のタッチ感度を調整中、操作を誤り「終了」ボタンに触れた。(※有権者以外の者が投票の棄権を確定させかねない行為)
     (8)塩河投票所から開票所に送られた記録媒体には封印がなかった。他2投票所で、記録媒体の扱いに誤りがあった。

     可児市選管が発表した選挙結果は、投票総数4万6594票で、有効 4万6526票、無効68票。投票機の操作を途中で終了したのは262票だった。最下位当選者の得票は1361票、次点は1326票。 岐阜県選管が選挙後に調査した結果、投票者数と投票数の差は計24票で、カード発券数は投票者数より34枚多いことが判明した。              

    (※以上、四国新聞「電子投票訴訟の判決要旨」より)

       ◆上告棄却(市議は全員失職 8月21日に再選挙)◆

       → 異常を及ぼす恐れがあると認められる票は、二重投票や投票の失敗などで計27票である。最下位当選者と次点の得票差は35票で、受付前に待機しながら投票しないで帰った者の票が8票以上あれば結果が変わることになる。

       → 投票機の異常は午前中にほぼ解消し、午後からは支障なく投票できる状態にあり、投票時間も午後8時まで確保され、選管が同報無線で復旧状況を知らせていた。しかし、投票を済ませずに帰った選挙人の数は多数に上り、無視できない多数の有権者が、仕事や余暇の都合で再度投票所を訪れることができず、投票をしなかったということも推認できる。

       → 投票機が法の条件を一時的に備えていない状態で、選管の過誤により最下位と次点の得票が逆転する恐れがあり、選挙結果に変動をもたらす恐れがあると認められる。選挙は無効である。

     ……とした、以上の原審判決(東京高裁 青山邦夫裁判長)を支持。

     被告の上告[※原審の憲法解釈の誤りや憲法違反の主張]につき、「違憲を主張するが、その実質は事実誤認か単なる法令違反を主張するもので、民事訴訟法で定める上告理由に当たらない」と述べた。 同時に県選管の上告受理の申し立て[※原審の判例違反・法令違反の主張]も退けた。


    ● 2005/07/15 新しい病院開設の申請に対して県知事が回答した「中止勧告」も、行政取り消し訴訟の対象となるか?

       【原告】特定医療法人「徳洲会」系病院の理事長
       【被告】富山県

     原告が、富山県高岡市に進出するため、被告に病院の新設を申請した。しかし、病床数の上限を定める「地域医療計画」に基づき、県内の必要ベッド数は現状で足りているとして、被告は病院開設の中止を勧告した。
     1審(富山地裁)と、2審(名古屋高裁金沢支部)は、「中止勧告が行政指導で直接、原告に不利益を与えたわけではない」ことを理由に、中止勧告の取り消しが行政訴訟の対象ではないとしていた。

        ◆原審破棄・差し戻し(なにを門前払いしとるか。これは行政訴訟だ。1審からやりなおせ)◆

        → 保険医療機関の指定を受けられなければ、事実上、開設を断念せざるを得ない。 形式的には行政指導であっても、国民への何らかの不利益につながるものであれば、その勧告は行政訴訟の対象となる公権力の行使といえ、訴訟で争う余地がある。


    ● 2005/07/15 土地開発公社が抱える「塩漬け土地」の建物が、もともといくらで買い上げられたかは、地主のプライバシー事項(情報公開請求)

       【原告】名古屋市民オンブズマン ※請求:文書一部非開示処分の取り消し
       【被告】名古屋市長

     同オンブズマンは1999年9月、公社が取得しながら事業化の見通しが立たない土地の実態を調べようと、先行取得したまま放置されている土地の取得価格や、取得に伴う建物への補償金額などの一覧表について公開を請求。しかし、これら金額部分の欄を黒塗りにした公開だった。

       ◆原審一部破棄(一部の情報を非公開とした行政処分を逆転認容)◆

       → 土地価格は、公示価格を基準にした客観的なもので保護の必要はない。

       → しかし、個人がどのような価値の建物を持っているかは、必ずしも外部の者に明らかではないから、補償金額を公開すれば元の所有者のプライバシーを侵害する。個人の建物、立木などに対する補償金は他人に知られたくない情報といえる。


    ● 2005/07/22 入管当局が強制退去を命じた外国人について、日本政府が外国政府に犯罪歴を照会した外交文書(口上書)は、公開法廷で証拠として利用できるか? ★補足意見を付与

       ◆原審破棄差し戻し(文書提出を命じた東京高裁よ、もう1回審理をやりなおせ)◆

       法廷意見 → 内容によっては、公開されれば国の情報収集活動に著しい支障を生じるおそれがあると認める余地がある。そのため、口上書が民事裁判の証拠として開示されることが、他国との信頼関係に与える影響をあらためて検討する必要がある。(中川裁判長)

       補足意見(抜粋) →  私は、原決定のうち、文書の提出を命じた部分を破棄すべきものとする多数意見に賛成するものであるが、民事訴訟において公文書が証拠として果たす役割の重要性にかんがみ、公務員の職務上の秘密に関する文書について民訴法220条4号を理由とする文書提出命令の申立て(※たしかに公務員の職務上の秘密に関する文書かもしれないが、その提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれは無いので、命令を出してくれ)があったときに監督官庁が同法223条3項に基づいて述べる意見(※いや、その文書が一般の目にさらされると公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあり、提出命令は困る、という理由の陳述)について、若干の考えを述べておきたい。

     ここでいう「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれ」というのは、将来にかかわることであるから必然的に用いられた用語であり、抽象的にその可能性があれば足りるというものではない。したがって、監督官庁は、その意見を述べるに当たっては、単にその可能性があることを抽象的に述べるにとどまらず、その文書の内容に即して具体的に公共の利益を害したり公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれのあることについてその理由を述べることが求められているものと解すべきである。

     民事訴訟において証拠として用いられるべき必要性が大きいと考えられる公文書が少なくない現状に照らし、監督官庁は、裁判所が民訴法の定めるところにより求めた意見の提出に当たっては、真実発見のために必要な証拠が可及的に多く提出されることが単に当事者にとってだけでなく司法制度に対して抱く国民の信頼を維持するためにも重要であるとの理解に立って、裁判所が的確な判断をなし得るよう当該文書に即してその理由を具体的に付して意見を述べるべきものであると考える。(以上、滝井裁判官の補足意見に同調)

    今井 功

     

     

     

    繊細かつ大胆な、民事調停のエキスパート

    中 川 了 滋(65)

    前職:弁護士 石川県出身 金沢大学法文学部卒

    ■ 1998/03 「自由と正義」誌 座談会(第一東京弁護士会 副会長時代)

    ------- 『研修弁護士制度(裁判官や検察官志望者も含めて、司法修習後に一定の権限の制約のもとで弁護士業務を経験させ、プログラムにしたがった研修を行う計画。現在でも実現には至っていない)』について、もっと弁護士会が世論をリードするような局面をつくれなかったのか?

     「そのなかで弁護士会が主体的に関与する問題について、会内でどういう議論があったかというと、『本当に弁護士会でできるのですか』『あなた方は執行部として本当にやれるのですか』という議論が一番重い議論でして、言うことは簡単であるけれども、どうできるかということについては、やはり付け焼き刃ではできないという議論のほうが、非常に重い議論として私たちの耳に入ってきています」

    ■ 2005/01/19 最高裁判事就任のあいさつ

     激職で責任も大変重い。重責を全うできるか心もとない思いもあるが、おくすることなく毅然と邁進したい。
     (裁判所を)人的、物的に充実させる規模の拡大を、何としてもやらなければならない。それは最高裁が全責任を負うことになる。

    ■ 2005/05/01 北陸中日新聞インタビュー

     人の一生を左右すると思うと、心の震えを覚える。 人的整備もしないのに、訴訟は早くやれというのは無理。しまいに無理な事件まで和解にもっていくことになる。

     秘書官から、午後5時以降は何をしてもいいと言われた。 仕事は家に持ち帰らず、休日は楽しむ。 僕は、裁判官である前に市民であるべき、という米独法流の解釈なんだ。

    ◆ 主任裁判官(小法廷の裁判長)として出した、おもな判決
       (勝った側は、
    【赤太文字】

    ● 2005/04/21 「これ以上の在留はダメ」という通知を、まだ受け取っていない段階でも、不法残留罪になるか?

       【被告人】パキスタン国籍の男性(47歳)

       ◆上告棄却(執行猶予付き有罪が確定)◆

       → 被告人は、6回目の更新申請中だった97年4月以降、入国管理局との連絡を絶っている。この経緯から見て、期間を過ぎて残留した以上、不許可に先立ち既に不法残留罪が成立している。通知が到達したかどうかや、不許可になったことへの認識の有無は、罪の成立を左右しない。


    ● 2005/07/01 勤務する信用金庫の不正を疑い、融資情報を外部持ち出し

        【原告】宮崎信用金庫の労働組合幹部職員 ※請求:解雇無効・賃金支払い
        【被告】宮崎信用金庫(宮崎市)

        ◆上告棄却(職員らを懲戒解雇した会社の行為は不当。賃金も過去にさかのぼって支払え)◆

        → 「懲戒解雇に相当するほどの違法性はなく、解雇は不当」とした、2審の福岡高裁宮崎支部判決を支持。


    ● 2005/07/04 これも「定説」? 不作為の殺人罪を、最高裁が初めて正面から認定

        【被告人】自己啓発セミナー団体「ライフスペース」代表・高橋弘二(66歳)

     1999年7月、兵庫県伊丹市の病院に入院中の男性(当時66歳)を、その長男=保護責任者遺棄致死罪で有罪確定=らと共謀して成田市のホテルに運び、医療行為など生存に必要な措置を何らしないまま放置して窒息死させた。

        ◆上告棄却(懲役7年)◆

        → 「点滴治療は危険である。明日中に連れてくるように」などと長男らに指示して、患者男性を病院から運び出させ、生命に具体的な危険を生じさせた。

        → 患者男性の容体を見て、そのままでは死亡する危険があることを認識したが、独自の治療法を信奉する患者の親族らに、指示の誤りが露呈することを避ける必要などから、必要な医療措置を受けさせなかった。

        → 患者自らが救命できるとする根拠はなかったのだから、被告人は直ちに患者の生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていた。したがって、その『作為義務』に違反し、死なせても構わないとの『未必の殺意』をもって放置して死亡させた点で、不作為による殺人罪が成立する。


    ● 2005/07/11 「ヴァレンティノ」類似商標裁判   理由を示さずに、とりあえず根拠条文だけを示して商標無効を申し立てることは許されるか?

      【原告】服飾販売の有限会社(神奈川県鎌倉市) ※「RUDOLPH VALENTINO」を91年に登録
      【被告】婦人衣料ブランドの商標管理会社(オランダ) ※日本で「VALENTINO」を70年代に登録

      (原告の主張)
      ・ 3か月後に審判請求書を修正して再提出しており、その間に除斥期間(5年)が経過している。
      ・ 無声映画俳優のルドルフ・ヴァレンティノをイメージした商品。
      ・ ヴァレンティノはイタリアではありふれた姓で、独占使用は不当。

      ◆上告棄却(原告の商標「ルドルフ・ヴァレンティノ」の無効が確定)◆

      → 誤認、混同を招くような商標の権利者を保護すべき強い要請はなく、申請書には違反の事実が記されていればよい。


    ● 2005/07/22 入管当局が強制退去を命じた外国人について、日本政府が外国政府に犯罪歴を照会した外交文書(口上書)は、公開法廷で証拠として利用できるか?

       ◆原審破棄・差し戻し(文書提出を命じた東京高裁よ、審理をやりなおせ)◆

       → 内容によっては、公開されれば国の情報収集活動に著しい支障を生じるおそれがあると認める余地がある。そのため、口上書が民事裁判の証拠として開示されることが、他国との信頼関係に与える影響をあらためて検討する必要がある。

       なお、滝井裁判官と今井裁判官が補足意見


    ● 2005/09/02 警察官の誤射か? 被疑者の自殺か? 取り調べ室内での発砲死亡事件

      【原告】被疑者(故人・当時55歳)の遺族  ※請求額:約920万円
      【被告】神奈川県

     男性は1997年11月、銃刀法違反容疑での取り調べを受けている際に、取調官だった神奈川県警戸部署の巡査部長から、証拠品の拳銃と、ビニール袋に入った実弾を提示された。その直後、拳銃から発射された弾が左胸を貫通し、被疑者の男性は即死した。発射の際に取調室にいたのは男性と巡査部長だけだった。

       ◆上告棄却(被疑者の自殺であったと認定。慰謝料等の請求を退けた)◆

       → 「男性には冷静に銃を構える余裕がなかったから、貫通の角度は不自然とは言えない。短時間で、弾を袋から抜き取ることも可能だった」とした、東京高裁の判断を支持。(読売新聞)

    中川了滋

     

     

     

    司法改革時代に司法行政のトップに就いた、最高裁事務総長

    堀 籠 幸 男(65)

    前職:刑事裁判官 東京都出身 東京大学法学部卒

    ■ 1999/12/14 国会 法務委員会 (最高裁事務総局 総務局長時代)

     弁護士任官につきましては、日本弁護士連合会にお願いして、任官の促進を図るべく、いろいろ協議し、お願いいたしましたが、結果的に見て、毎年数人程度の任官しかないという実情でありまして、これは私どもといたしましても残念なことであるというふうに考えているところでございます。

    ------- では、最高裁としては、今日なぜ弁護士から裁判官への任官が進まないのか、その根本的原因あるいは背景、それがどんなところにあるんだと認識しておられるのでしょうか。

     弁護士任官が促進しない理由としては、私どもは、必ずしもはっきり申し上げられませんが、大きく分けて二つあるのではないかと思います。
     一つは、我が国の弁護士制度が個人の信頼関係で成り立っていて、そういう弁護士の業態からして、すべての顧問先、信頼関係を絶って裁判官になるというのは非常に難しいという我が国の特徴があることが第一点ではないかと思います。
     それからもう一つは、裁判官の職務と弁護士の職務の違いでありまして、弁護士の経験さえあればだれでも裁判官になって立派に裁判官の仕事をできるというわけでは必ずしもないのではないか、裁判官の仕事というのは、訴訟を指揮し、かなり精密な判決書を書くという職務の関係からいって、それに慣れるまで、あるいはそれに適するまでというのはかなり問題もある場合もあるのではないか、そういうようなことが弁護士任官を促進させない理由になっているようにも思われるところでございます。

    ------ では、逆に受け入れる側の裁判所、最高裁を頂点とする裁判所の側に、今弁護士の方で任官してもよろしい、あるいは任官して裁判官としてきっちりやりたいという希望者の受け入れがなかなか進まない、そういう裁判所側の要因、それはないのかあるのか。どういう認識ですか、最高裁は。

     裁判所といたしましては、裁判官にふさわしい弁護士の方が任官してくれることがありがたいという基本的な方針をとっておりますが、裁判所の方として弁護士任官が困難になるような大きな理由というものはないのではないかというふうに考えているところでございます。

    ■ 2004/03/31 ルドルフ・ジュリアーニ氏(ニューヨーク市長)が来日 大阪公演

     NYを安全な都市に変えたジュリアーニ氏の発言には説得力がある。犯罪者を検挙し、刑罰を与えるだけではなく、さまざまな施策を講じることが必要と再認識した。

    ■ 2005/05/17 最高裁判事就任のあいさつ

     最高裁は司法の最終判断の場であり、刑事裁判官としての経験を生かして迅速に判断できるよう努力したい。
     職務の重大さに、身の引き締まる思いがする。最高裁まで争う当事者はそれぞれ独特の思いを抱えている。一件一件の訴訟を大切にして全力で判断したい。

    --------- 裁判の現場から離れていた期間が長かったことについて

     かえって、他の人が気付かない見方もできるのではないか。

    ◆ 主任裁判官(小法廷の裁判長)として出した判決

    ● 2005/07/22 麻薬特例法2条3項で没収すべき「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」には、その財産を得るために支出した費用も含まれる。

      ↓

     したがって、規制薬物の対価として得た財産は、すべて没収されるべき。

     ◆上告棄却(原審支持)◆


    ◆ 最高裁入りなさる前に、現場の裁判官として関与した代表的判決

    ● 1975/05/10 宮古島騒乱事件の首謀者らに無罪判決 (福岡高等裁判所 那覇支部時代)

       【被告人】反乱事件の首謀者ら ※騒擾罪(現・騒乱罪) 

     当時の琉球政府の勧告に従い、宮古島周辺に3社あった製糖会社が1社に合併することになった。 合併によって、同業会社の競合がなくなり、さとうきびが安く買いたたかれることを恐れた、さとうきび農家の住人約1000人が、1965年7月24日、株主総会会場となった映画館前に集結して座り込んだ。
     一部メンバーが、社長らを映画館内に一時監禁状態にするなどに発展したことから、その鎮圧のために73名の警官が現場に向かった。 しかし、投石で抵抗され、負傷する警官も出る。さらに、警官らは館内に約4時間半の間、閉じこめられることになった。
     その現場を撮影していた記者や一般人に対しても、暴行を加えたりカメラを取り上げるなどした。

     ◆破棄自判(逆転無罪)◆


       → 警察官に対する限りでは、相当激しい攻撃があったと認められる。

       → しかし、被告人である農業従事者と付近住民らが、互いに顔見知りであることもあって、騒動の付近住民らが、生命・身体・財産を害されるとの不安は抱いていなかった。現に不安があったと認定するに足りる証拠もない。

       → 被告人らの行為は、いまだ「一地方における公共の静謐」を害するに足りるものではない。

         ……なお、文献は見つけられませんでしたが、首謀者以外について、特に事件現場で警官に抵抗した人たちの中には、傷害罪や公務執行妨害罪等で起訴され処罰されたケースがあろうかと思われます。

    堀籠幸男

     

     

     

    時代に対応する刑事法を造りつづけた、法務省検事

    古 田 佑 紀(63)

    前職:検察官 北海道出身 東京大学法学部卒

    ■ 1991/09 「刑法雑誌」 捜査と弁護 --- 検察官の立場から

     (捜査を)進展させるためには、確定された情報、資料を根拠として演繹的に行うことが常にできるものではなく、しばしば、いくつかの仮定をおいて、その仮定に沿って捜査を進め、これに合致する証拠があるかどうかを吟味しつつ、これが正しいかどうかを検証するという帰納法的な方法をある程度採り入れざるを得ない。

     このことは、多かれ少なかれ、見込みに基づいて捜査を実施する必要に迫られることを意味している。しばしば、捜査の在り方に対する批判として、見込み捜査はなすべきではないとするものがあるが、見込みに基づく捜査を不当とすることは、およそ、捜査の現実を知らない批判というほかない。

     しかし、捜査がこのようなものであることから、捜査官にとって最も注意すべきことは、捜査がある程度仮定に基づいて行われている事実を忘れないようにすることである。

    ■ 1993初版 「刑法という法律」(国立印刷局 刊)

     日本の刑事司法は、その運用でも、世界のなかで最も謙抑的なものの一つであろう。このような制度、運用を支えてきた背景には、「免れて恥なし」を嫌い、かつ、罪を罪として潔く認めた者に対する「罪を憎んで人を憎まず」という価値観があったと思われる。つまり、このような社会の感覚が、これまでの刑事司法の制度、運用を支持し、これに対する協力を実現してきたもので、そのことが比較的低いコストによる効果的な刑事司法の実現に繋がっていたといえる。

     しかし、日本の社会が多様化し、大規模で複雑なものになってくると、謙抑の精神は引きつづき維持されなければならないものの、以前のような運用や制度は社会的な基盤を欠いていたように見受けられ、ある程度、その姿が変わらざるを得ないような状態になってきていると思われる。人間関係が希薄になり、活動の自由が増すにつれて、そのような方向に動くのはやむをえない面はある。しかし、基本的に大事なことは、家庭、学校、職場など、社会の基盤である部分がしっかりして、健全な規範意識が維持されることであろう。

    ■ 1999/08/13 産経新聞インタビュー (宇都宮地検 検事正時代)

     (みずから制定に携わり、国会で可決・成立した組織犯罪対策3法[通信傍受法他]について)

     「組織犯罪では電話がフルに使われるのに、切り込む手段がなかった。電話だけが聖域になっていた。(通信傍受法には)こっそり盗聴器を仕掛けるというイメージがあった。治安維持のための傍受と、犯罪捜査のための傍受とを混同している人も多くて苦労した」

     「世界で最も厳格な法律であり、乱用はありえない。さまざまな懸念を持つ人もおり、実績で信頼を得ることが大事」

    ■ 2001/03 「時の動き」誌 インタビュー (法務省 刑事局長時代)

    ------ 厳罰化をともなう今回の少年法改正によって、本当に少年の犯罪が減るのだろうかといった意見も聞かれますが、いかがでしょうか。

     (前略) 少年犯罪の一つの特徴として、集団型の犯罪が多いわけですね。仲間がやっているので、自分もついやってしまったというケースが非常に多い。そう考えますと、悪いことをすれば、社会からそれは悪いとはっきり言われる機会を作っておけば、自分が実際に行動に移すかどうか判断するときに、やめるべきことはやめるという気持ちを育てていくうえで役に立つだろう、少年の非行を減らす一つの方法になりうるのではないかということです。

     もっと端的に言いますと、昨今だんだん怖いもののない世の中になってしまっているわけですね。父親も学校の先生もあまり怖くなくなってしまっている。そういう世の中であればこそ、悪いことをすれば、それなりにきちっと対応されるんだと示すことが大事だという考え方です。

    ■ 2005/08/02 最高裁判事就任のあいさつ

     率直に申し上げて、大変重い責任を感じている。しかし、固定観念にとらわれず、自分の頭で考えていく姿勢で仕事に臨みたい。

    --------- 今春就任した同志社大法科大学院教授を早々と退くことになったが。

     やっと学生となじめるようになったところだったので、少し寂しい気持ちもある。

     
    古田佑紀

     

     

    重大刑事裁判での裁判員制度
    (2009年5月までに施行予定)
    に関する、各裁判官のコメント

    才口千晴  裁判所と国民の距離を縮める意味がある。 基本的にはステップ・バイ・ステップでいいのではないか。 早く実現することが必要で、問題は運用で改めていけばいい。 必要最小限度の制度としてスタートし、あそこが悪い、ここが悪いと直していく。 そして、その結果によって国民の司法参加の効果があがったのかどうかを検証すればいい。
     ただ、職業裁判官2人というのはどうか。 3人で合議だから安定が保てるのではないか。
    津野 修  裁判が国民にとって使いやすくなる必要がある。 5年間の周知期間で、国民にどのくらいPRできるのかが課題だ。 国民の理解に尽きるのではないだろうか。
    今井 功  国民の良識を裁判に反映して、よりよいものにしようというのが狙いで、非常に有意義な制度だ。 しかし、まだ、国民に十分な理解を得られておらず、法曹三者(※裁判官・検察官・弁護士)やマスコミが協力して広報活動などに力を注がなければならない。
     無作為抽出で選ばれた裁判員による裁判が公平な裁判体かどうかについては議論になったところだが、結局、国民に広く参加してもらうということで無作為になったわけだ。 その場合、被告人から見て公平かどうか、ということになる。 公平な運用をしていくことの責務が法曹三者にあるのではないか。 
    中川了滋  最初は嫌がったり、時間がないという人がいるかもしれないが、無理ばかりお願いして制度を続けていくのも難しい。 裁判員になっても問題のない社会的システムづくりが必要だ。 
     鳴り物入りで一斉に強制的に制度を導入するというやり方がいいのかも、これから議論していくべき問題だと思う。 緩やかに考えれば、辞退するという事由をもう少し広げるという考え方もある。 要は、より定着するやり方はどちらか、ということだろう。
    堀籠幸男  司法制度改革の中では最もスケールの大きい改革だ。 ぜひ成功させなくてはならない。 ただ『自分に人は裁けない』という人が多いようだ。 『人を裁く』という点に重点があるのではなく、社会一般の人が、『被告人を犯人であるとの確信を持てたかどうか』について、意見を述べてもらうものであると説明すれば、理解も求めやすくなるのではないか。
     事件について十分な議論をするため、裁判員の人数は6人より少ない方がいいと考えていた。 6人の方がより妥当な裁判ができるというのが国民の判断なら、それを前提に裁判所が努力するべき。 国民の不安を解消する広報活動も必要だ。
    古田佑紀  国民が有罪・無罪の判断、刑の決定に参加することにより、犯罪に対する関心と、刑事司法に対する国民の理解を深めることが期待されるものであるので、その円滑・的確な運用のために、衆知を集めることが必要である。
     今までのような専門家任せではなく、普通の国民が参加することに大きな意義がある。 研修や模擬裁判などを通して、国民に理解を深めてもらえるよう努めたい。

     

     

    その他、参考にしていただきたい判断資料
  • 最高裁判所ホームページ
  • …で? (lcohさまのブログ)…… 平易な言葉を選んで執筆された解説文に好感が持てます。 内容も非常に高度です。
  • 「最高裁判所裁判官国民審査公報」 …… いつの間にかポストに入っていたりして、自宅に直接届くオフィシャル紙。
  • 新聞記事 …… 各社が独自に企画したアンケート結果などが掲載されており、それぞれの裁判官が秘めている価値観を比較できるスグレもの。
  •      【前回の国民審査(2003/11/09)に先だっての特集掲載状況】

          朝日・読売・東京 → 投票日前週の木曜日(11/06)
          毎日        → 投票日前週の金曜日(11/07)
          日経・産経    → なし

  • テレビ番組での特集企画 …… 9月10日(土)の「ブロードキャスター」(TBS系22:00-)には注目? (無責任発言)
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    現役最高裁判事プロフィール

    司法脱線ブログ「法治国家つまみぐい」