Agustin Carlevaro interpreta Piazzolla

アグスティン・カルレバーロ/
アグスティン・カルレバーロ・インテルプレタ・ピアソラ(ピアソラを弾く)
Agustin Carlevaro / Agustin Carlevaro interpreta Piazzolla
(Ayui A/E 243-244 CD) ウルグアイ盤・新譜


Disco 1: [1] Primavera porteña [2] Verano porteño [3] Otoño porteño [4] Invierno porteño [5] Retrato de Alfredo Gobbi [6] Sens unique [7] Contrastes [8] Chau Paris [9] Marron y azul [10] Resurreccion del angel [11] Poema valseado [12] Soledad [13] Luz y sombra [14] Tanguisimo [15] Calambre [16] Decarisimo
Disco 2: [1] Buenos Aires hora cero [2] Adios Nonino [3] La mufa [4] Tema de Maria [5] Bando [6] Libertango [7] Fracanapa [8] Otoño porteño [9] Retrato de Alfredo Gobbi [10] Poema valseado [11] Tanguisimo [12] Alfonsina y el mar [13] Palabras sobre Atilio Rapat [14] Minueto (Beethoven) [15] Cancion (Mompou) [16] Alfonsina y el mar

アストル・ピアソラが残した作品をギターで演奏したCDは、現在ではかなりの量に及んでいる。その中には、ピアソラの死後クラシック界に巻き起こったブームの結果として録音されたものも確かに少なくはないのだが、ギドン・クレーメルやヨーヨー・マといった人気アーティストがピアソラ作品を取り上げる以前から、ギター界に於いてピアソラの名前はある程度認知されていたというのもまた事実である。ピアソラが初めて書いた「ギターのための」作品は、1980年にロベルト・アウセルのために書いた《5つの小品》で、次がアサド兄弟に贈られた1983年の《タンゴ組曲》となる。フルートとギターのための《タンゴの歴史》が書かれたのは1985年である。一方1984年、ウルグアイ出身でピアソラと親交のあった二人のギタリストが、それぞれ自分のオリジナル・アレンジによるピアソラ作品を録音した。一人はバルタサール・ベニーテス、もう一人はホルヘ・オライソン。特にベニーテスのアレンジ譜は、ジョン・ウィリアムス、福田進一、荘村清志といった人気ギタリストたちにも採用されている。このように、1980年代中期から、ギター曲以外のピアソラ作品をこのようにギター独奏(もしくはギター・アンサンブル)用にアレンジされるケースが増えていく。
そうした動きが起こる遥か以前から、まったく独自のスタンスでピアソラ作品のギター独奏化に取り組んで来たのが、今回ご紹介するアグスティン・カルレバーロ(1913〜1995)である。著名なクラシック・ギタリストのアベル・カルレバーロを兄に持つアグスティンは、ウルグアイのモンテビデオ出身。少年時代にはクラシック・ギターを学んだが、プロの道は歩まず、アマチュアとして長く活動した。タンゴのギター・ソロ用の編曲を手掛けるようになったのは、実に50代に差し掛かろうとしていた1960年代初頭のことで、1967年にオラシオ・フェレール(朗読)のアルバムの伴奏を務め、1971年からピアソラ作品を中心に自ら編曲したタンゴのギター独奏を録音し始めた。アジュイ・レーベルにはその1971年録音以来1991年までにLP3枚とカセット3本を残しているが、このCD2枚組は、その中からピアソラ作品全曲を収録したもの。いずれも原盤はまず入手不可能であり、待望の復刻と言える(ピアソラ作品以外のタンゴの方は、同時に発売された"Recital de tango"(Ayui A/E 245 CD)にまとめられた)。Disco 2の[8]以降はボーナス・トラックとなっているが、[8]〜[11]は2度目の録音となる曲、[12]以降はタンゴ以外のフォルクローレとクラシック作品などである。それにしても、なんと朴訥とした、墨絵のような(正にジャケットのイラストのような)ピアソラであろうか。一切の無駄を削ぎ落した端正な世界は好き嫌いが分かれるかも知れないが、この味わい深さは唯一無二のものだ。


Vida & Pazzia

スサーナ・リナルディ/ビーダ&パッツィア(人生と狂気)
Susana Rinaldi / Vida & Pazzia
(Argentina Musical 51749) アルゼンチン盤・新譜


[1] ...Y la vida va! [2] Pacia [3] No se [4] Naranjo en flor [5] Azulnoche / Cordon [6] Melodia de arrabal [7] Que vachache! [8] Compañeros del alma [9] Garras [10] Chiquilin de Bachin [11] Sueño de barrilete [12] Patente de aprendiz [13] Milonga de mis amores [14] El ultimo cafe [15] Desencuentro

アルゼンチンの大スターであるスサーナ・リナルディは、1960年代にまず舞台女優として人気を得た。初めてタンゴを歌ったのは1966年のことで、この時彼女は既に30歳を迎えていた。従来のタンゴの歌唱法に捕われないアルトの歌声は魅力的で、以後登場した若手女性歌手のスタイルのひとつの規範ともなった。レパートリーも、現代の作品が多い。1975年のリサイタル以降、それまでの女優としてのキャリアを活かしたトータルなコンセプトを持ったステージ作りで、独自の世界を築いて来た。70年代後半からはヨーロッパや中南米諸国での公演も積極的にこなしていて、77年のパリ公演にバンドネオン奏者として同行したフアン・ホセ・モサリーニがそのまま亡命してしまったのは、よく知られた話である。80年代以降はレパートリーの幅を広げ、タンゴ以外の現代ポップスやシャンソンなども取り上げている。
今回ご紹介するこのCD(タイトルの“パッツィア”はスペイン語ではなくイタリア語)は、実は新録ではなく編集盤である。[1] [2] [3] [5] [9] [13] [15]は、1995年(一部の曲は1992年)にスタジオ録音された"Tiempo de mal vivir"、残りの曲は1999年にアルゼンチンのマル・デル・プラタでライヴ録音された"Sin estridencias '99"に収録されていたもの。"Tiempo de mal vivir"はコンセプト・アルバムだったが、バラバラに曲を抜き出されても不自然な感じはしない。"Sin estridencias '99"から選ばれた[6]が、元の盤では観客の拍手がかぶっていたために、冒頭の部分が1フレーズ分カットされているなどの不備はあるが、全体を通して音質ははっきりと向上している。
どちらの録音も、音楽監督と編曲はリナルディとは付き合いの長いフアン・カルロス・クアチが手掛けている。クアチはピアノ、ギター、指揮などをこなす才人で、作曲家としても優れたセンスの持ち主であることは「コンパニェーロス・デル・アルマ(魂の仲間たち)」(作詞はリナルディ)で証明されている。今回選曲された15曲は、古典と現代の作品がほぼ半分ずつで、それぞれに見合った解釈が聴きどころ。トロイロ=コントゥルシ作「ガーラス(かぎ爪)」はレオポルド・フェデリコのバンドネオンのみによる伴奏である。


Memoria musical Rosarina

アントニオ・リオス/
メモリア・ムシカル・ロサリーナ(ロサリオの音楽の記憶)
Antonio Rios / Memoria musical Rosarina
(:e(m)r; MMR02) アルゼンチン盤(新譜)


アルゼンチンのサンタ・フェ州ロサリオ出身のバンドネオン奏者、アントニオ・リオス(1917〜1991)は、一般的には無名だが優れた実力の持ち主だった。アストル・ピアソラの1970年のアルバム『五重奏のためのコンチェルト』には、バンドネオン四重奏による「ボヘミアンの想い出」という曲が収められているが、ここでピアソラがメンバーに選んだのがレオポルド・フェデリコ、ロドルフォ・メデーロス、そしてアントニオ・リオスだった。アニバル・トロイロもリオスのことを「南米で一番のバンドネオン」と絶賛したというから、リオスが音楽家仲間からいかに高く評価されていたかがわかる。
「ロ・ケ・ベンドラ」「アムラード」など収録曲中6曲はリオスを含む四重奏団、ロス・ポエタス・デル・タンゴによる1950年代後半の録音なのだが、ここでヴァイオリンを弾いているのは、何と若き日のアントニオ・アグリなのだ。ピアソラ五重奏団に参加する前、20代後半の話である。この6曲、音質は相当悪いが、内容は素晴らしい。バンドネオンと編曲のリオスはもちろん、アグリ、本当に無名なピアノのホセ・プエルタ、後に多方面で活躍するコントラバスのオマール・ムルタと、メンバー全員がアンサンブルにソロにと、その才能を遺憾なく発揮している。ロサリオという地方都市の名も知れぬグループがこれだけの音を出していたのだから、当時のタンゴ界の層の厚さが窺い知れるというものだ。
順序が逆になったが、CDの冒頭を飾っている2曲は、それまでブエノスアイレスで活動していたリオスが50年にロサリオに戻って結成した自己の楽団によるアセテート録音(つまり市販されたものではない貴重なもの)。そして残りの14曲は、リオスとギターのカルロス・ベラスケス、コントラバスのホセ・リオスとのトリオによる1981年のライヴ音源(一部はバンドネオン・ソロ)。カセットに録音されていたもので、こちらも音質は良くないが、独特の渋味のあるバンドネオンが堪能できて、やはり演奏は素晴らしい。
くどいようだが音質は良くないし、一般的に見ればこの手のCDは「マニア向け」ということになるのだろうが、マニアだけの手に留めておくには余りに惜しい内容である。これだって立派なタンゴ史の1ページだと思う。


Tango Buenos Aires

エドゥアルド・ロビーラ/タンゴ・ブエノスアイレス
Eduardo Rovira y su Agrupacion de Tango Moderno /
Tango Buenos Aires
(Fogon CDFOG 507) アルゼンチン盤


バンドネオン奏者/作曲家で、アグルパシオン・デ・タンゴ・モデルノ(現代タンゴ集団)を率いたエドゥアルド・ロビーラ(1925〜1980)は、1960年代にピアソラと共にモダン・タンゴ革命の最前線に立った極めて重要な存在である。だが、聴き手に媚びることの一切ない、クールで極めて内省的なその音楽は、ピアソラですらマイナーであった当時ではほとんど理解されることはなかった。その活動は断片的なものだったし、残されたレコードもとても少ない。ロビーラの名は一部のタンゴ通の間では知られていたものの、その実像はベールに包まれていたといっていい。
当時は異端児扱いすらされていたピアソラの音楽がようやく認知されてきた昨今、ロビーラの音楽にも注目が集まってもしかるべきと思われるのだが、肝心の音源を揃えることが絶望的ではどうしようもない、そんな歯痒い思いを数少ないファンは抱き続けていたのである。
そんなロビーラは、1961年から75年までの間に6枚のオリジナル・アルバムを残した。最初の3枚はロビーラのバンドネオンと弦4〜5本、ピアノ、コントラバスという編成、続く2枚はバンドネオン、ギター、ベースのトリオ、最後の1枚はバンドネオン、ヴァイオリン、ピアノ、ベースの四重奏である。オリジナル盤はいずれも激レアだが、日本ではかつて第3作と第6作がLP発売されたことがあり、アルゼンチンでは幸い98年にアクアから第5作"Sonico"と第6作"Que lo paren"がCD化された(現在も入手可能)。そして遂に、全作品の中で最もレアだった第2作が、このほどアルゼンチンで復刻された。しかもオリジナル盤の仕様が比較的忠実に再現されていて、これは正に快挙としか言いようがない。
この第2作は、1962年にミクロフォンからLP2枚組で発売されたもの。フェルナンド・ギベールの詩集『タンゴ』をベースに、ギベールとホセ・ダニエル・ビアカーバが筋書きを書いたバレエ組曲で、ロビーラが作曲した11の曲(場面)で構成されている。ロビーラにとっても唯一、タンゴ界でも当時はほとんど前例のなかったコンセプト・アルバムで、クラシック〜現代音楽の要素を取り入れたロビーラの真骨頂とも言える、スケールの大きな充実した作品に仕上がっている。
なお、ロビーラの詳細については、音楽誌『アンボス・ムンドス』第4号(2000年1月発行)の特集記事なども参照されたい。


VICC-60220-1

アストル・ピアソラ、オラシオ・フェレール他
ブエノスアイレスのマリア(全曲)〜2部構成のオペリータ
Astor Piazzolla - Horacio Ferrer / Maria de Buenos Aires
(ビクター VICC-60220-1) 国内盤・12/16発売


言わずと知れたアストル・ピアソラの名盤。極度のスランプに陥っていたピアソラが、友人で評論家/詩人のオラシオ・フェレールの持ち込んだ草稿に創作意欲を掻き立てられ、共同で書き上げた1968年のオペリータ(小オペラ)のオリジナル・キャスト盤である。
中南米の幻想文学にも通じるようなフェレールの詞に対し、ピアソラはそれまで培ってきた音楽的要素の全てをぶつけ、スケールの大きな作品に仕立て上げた。それをアメリータ・バルタールら歌手二人と演奏家たちが、見事に形にしたのである。60年代後半は、音楽のみならず様々な文化が大きく変革を遂げた、正に激動の時代だったが、本人たちが意識したかどうかはともかく、この作品には、あの時代ならではのとてつもないエネルギーが感じられる。
日本では過去2度にわたり新星堂のオーマガトキ・レーベルからCD発売されていたが、今回はビクターからの発売。ギドン・クレーメル版の『マリア』しか聴いていない方には特に、この機会に聴いて頂きたいアルバムである。
オーマガトキから98年にOMCX-9002の番号で発売された盤は、スペインDiscmedi盤に解説書と外箱を付けたものだったが、あれはステレオの左右チャンネルが逆になってしまっていた。今回はもちろん正しいチャンネルで収録されているほか、音質も向上しているが、それだけにラストの「タングス・デイ」の終盤でワウフラッター(テープの回転ムラ)が感じられるのがちょっと残念。高場将美氏による解説と対訳も、以前のものを踏襲しながら、細かい修正が行われている。そしてジャケットは今回初めて、オリジナルLPのデザインが、見開き内側も含めて忠実に再現された。



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